161 / 375
第8章
第161話
しおりを挟む
「美花も一緒でも大丈夫でしょうか?」
ドワーフ王国へ行くことになったケイは、美花と共にカンタルボスへ転移し、リカルドに会いに王城へ向かった。
美花も一緒に来たのは、ケイがドワーフに会いに行くと言ったら、自分も行きたいと言ったからだ。
自分も連れて行ってくれと言われたら、ケイとしては断れない。
とはいっても、人族が嫌いだというドワーフの国に、美花を連れて行っていいものか分からない。
なので、リカルドに聞いてみることにした。
「…………着く前に連絡しておけば恐らく大丈夫でしょう」
ドワーフの王には、生き残ったエルフは人族の女性と結婚したということは伝えてある。
それを言った時、ドワーフ王は一瞬不快そうな顔をしたが、その女性が日向の女性だと言ったらちょっとだけ和らいだようにも見えたので、もしかしたら大丈夫かもしれない。
なので、リカルドは美花の同行を了承した。
「ドワーフ王国まではどういった行程になるのですか?」
ドワーフ王国がある場所は大体聞いていたが、どうやって行くのかはケイには分からない。
そう言ったことは、全部リカルドが手配してくれるということだったので任せたが、とりあえず聞いておくことにした。
「カンタルボスから真っすぐ北西へ進み隣国のヴァーリャを通り、そこで船を借りて海を渡る予定だ」
「「船……」」
カンタルボスから北西の方角にドワーフ王国はある。
獣人大陸を横断するようなものだ。
カンタルボスからだと約1800kmといったところだろう。
ドワーフ王国は離島なので、船でないと渡ることはできない。
ケイと美花はいまだに海が苦手だ。
分かってはいても、船に乗らなければならないと思うと、今から身構えてしまう。
「半日もしないから我慢してほしい……」
ケイたちが海が苦手だということは聞いているし、島に遊びに行った時も泳いだりしているのを見たことはないので分かっている。
カンタルボスに来るときも、かなり青い顔をしていたとファウストから聞いている。
だが、今回はそんな長時間船に乗っているということにはならない。
なので、リカルドはケイたちに安心するように告げたのだった。
「馬ですか?」
「あぁ、一気に行こうと思ってな」
リカルドに連れられて城を出ると、ドワーフ王国へ向かう者の人数分の馬が用意されていた。
どうやら、これに乗って移動する移動をするようだ。
ケイと美花、リカルドとその護衛の者たち10人による行動になるのだが、
「馬に乗ったことがないのですが……」
「えっ?」
どうやら、リカルドはケイが馬に乗れるかどうか聞くのを忘れていたらしい。
ケイの告白に、リカルドは困惑の表情に変わる。
「走った方が早いのでは?」
「相当な距離だからきついぞ?」
魔闘術を使ったケイなら馬より早く走ることができる。
リカルドも同様に馬よりも速く走れるが、距離が距離だけにかなり疲れる。
ケイとリカルドだけならまだしも、美花や護衛の者たちが付いてこれるとは思えない。
だから馬を用意したのだ。
「練習しながら向かえば良いんじゃない?」
ケイは器用なので、大体のことはすぐに出来てしまう。
美花はそれを見越しての提案をした。
それに、多少の落馬でも、魔闘術を発動すれば大怪我をすることもないだろう。
「美花は馬に乗れんのか?」
「まぁね。昔取った杵柄って所かしら」
小さい頃は日向の追っ手から逃げるために、馬に乗れるようになっておいた方が良いと父から乗馬の訓練を教わっていた。
今となっては大分古い話だが、その経験はいまだに覚えている。
「じゃあ、ケイ殿が乗馬に慣れるまで少しゆっくりと向かうことにしよう」
「お手数かけます……」
自分のせいで余計な時間がかかってしまうことになり、ケイはなんとなく申し訳なくなる。
こうして出だしから躓きつつ、ケイたちの移動は始まったのだった。
「ところで……」
「んっ?」
城から出発すると、ケイは取りあえず歩くだけなら少しの時間でできるようになれた。
少しずつなれてくると、話すだけの余裕ができてきた。
そのため、ケイは疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「どうしてリカルド殿が案内してくれるのですか?」
案内だけなら、リカルドの息子のファウストの任せてもいい。
国のトップがわざわざ案内してくれるなんて、何か理由でもあるのだろうか。
「私が行かないと会ってくれるかわからないのでな……」
「……気難しい人なのですか?」
何だか聞いていると、リカルドはドワーフ王を苦手にしているなように見える。
もしかしたら、性格に難があるのかと勘繰りたくなる。
「頭が固く、偏屈な所がある方で……」
「そうですか……」
ファンタジー物だとドワーフは頑固な者が多いということがある。
もしかして、この世界のドワーフもそのような傾向にあるのかもしれない。
「年齢が年齢だから王位をそろそろ息子に譲るとつもりらしいが、今の王が魔道具を発展させたといわれているから、どうなることか……」
聞いた話によると、今の王はかなりの老齢であり、王太子もいい年齢に達しているためそろそろ王位を譲るつもりらしい。
魔道具開発に力を入れているのは昔からのことなのだが、今の王が特に多くの魔道具を世に広めたとのことだ。
それによって獣人はかなり助かったという話だ。
「……どんな方なのか楽しみです」
ケイとしては、ドワーフという種族がどういう姿をしているのか興味があっただけなのだが、魔道具開発の天才と聞くと、なんとなく興味がそそられる。
リカルドから色々聞いて、ケイはドワーフ王に会うことが楽しみになった。
ドワーフ王国へ行くことになったケイは、美花と共にカンタルボスへ転移し、リカルドに会いに王城へ向かった。
美花も一緒に来たのは、ケイがドワーフに会いに行くと言ったら、自分も行きたいと言ったからだ。
自分も連れて行ってくれと言われたら、ケイとしては断れない。
とはいっても、人族が嫌いだというドワーフの国に、美花を連れて行っていいものか分からない。
なので、リカルドに聞いてみることにした。
「…………着く前に連絡しておけば恐らく大丈夫でしょう」
ドワーフの王には、生き残ったエルフは人族の女性と結婚したということは伝えてある。
それを言った時、ドワーフ王は一瞬不快そうな顔をしたが、その女性が日向の女性だと言ったらちょっとだけ和らいだようにも見えたので、もしかしたら大丈夫かもしれない。
なので、リカルドは美花の同行を了承した。
「ドワーフ王国まではどういった行程になるのですか?」
ドワーフ王国がある場所は大体聞いていたが、どうやって行くのかはケイには分からない。
そう言ったことは、全部リカルドが手配してくれるということだったので任せたが、とりあえず聞いておくことにした。
「カンタルボスから真っすぐ北西へ進み隣国のヴァーリャを通り、そこで船を借りて海を渡る予定だ」
「「船……」」
カンタルボスから北西の方角にドワーフ王国はある。
獣人大陸を横断するようなものだ。
カンタルボスからだと約1800kmといったところだろう。
ドワーフ王国は離島なので、船でないと渡ることはできない。
ケイと美花はいまだに海が苦手だ。
分かってはいても、船に乗らなければならないと思うと、今から身構えてしまう。
「半日もしないから我慢してほしい……」
ケイたちが海が苦手だということは聞いているし、島に遊びに行った時も泳いだりしているのを見たことはないので分かっている。
カンタルボスに来るときも、かなり青い顔をしていたとファウストから聞いている。
だが、今回はそんな長時間船に乗っているということにはならない。
なので、リカルドはケイたちに安心するように告げたのだった。
「馬ですか?」
「あぁ、一気に行こうと思ってな」
リカルドに連れられて城を出ると、ドワーフ王国へ向かう者の人数分の馬が用意されていた。
どうやら、これに乗って移動する移動をするようだ。
ケイと美花、リカルドとその護衛の者たち10人による行動になるのだが、
「馬に乗ったことがないのですが……」
「えっ?」
どうやら、リカルドはケイが馬に乗れるかどうか聞くのを忘れていたらしい。
ケイの告白に、リカルドは困惑の表情に変わる。
「走った方が早いのでは?」
「相当な距離だからきついぞ?」
魔闘術を使ったケイなら馬より早く走ることができる。
リカルドも同様に馬よりも速く走れるが、距離が距離だけにかなり疲れる。
ケイとリカルドだけならまだしも、美花や護衛の者たちが付いてこれるとは思えない。
だから馬を用意したのだ。
「練習しながら向かえば良いんじゃない?」
ケイは器用なので、大体のことはすぐに出来てしまう。
美花はそれを見越しての提案をした。
それに、多少の落馬でも、魔闘術を発動すれば大怪我をすることもないだろう。
「美花は馬に乗れんのか?」
「まぁね。昔取った杵柄って所かしら」
小さい頃は日向の追っ手から逃げるために、馬に乗れるようになっておいた方が良いと父から乗馬の訓練を教わっていた。
今となっては大分古い話だが、その経験はいまだに覚えている。
「じゃあ、ケイ殿が乗馬に慣れるまで少しゆっくりと向かうことにしよう」
「お手数かけます……」
自分のせいで余計な時間がかかってしまうことになり、ケイはなんとなく申し訳なくなる。
こうして出だしから躓きつつ、ケイたちの移動は始まったのだった。
「ところで……」
「んっ?」
城から出発すると、ケイは取りあえず歩くだけなら少しの時間でできるようになれた。
少しずつなれてくると、話すだけの余裕ができてきた。
そのため、ケイは疑問に思っていたことを尋ねることにした。
「どうしてリカルド殿が案内してくれるのですか?」
案内だけなら、リカルドの息子のファウストの任せてもいい。
国のトップがわざわざ案内してくれるなんて、何か理由でもあるのだろうか。
「私が行かないと会ってくれるかわからないのでな……」
「……気難しい人なのですか?」
何だか聞いていると、リカルドはドワーフ王を苦手にしているなように見える。
もしかしたら、性格に難があるのかと勘繰りたくなる。
「頭が固く、偏屈な所がある方で……」
「そうですか……」
ファンタジー物だとドワーフは頑固な者が多いということがある。
もしかして、この世界のドワーフもそのような傾向にあるのかもしれない。
「年齢が年齢だから王位をそろそろ息子に譲るとつもりらしいが、今の王が魔道具を発展させたといわれているから、どうなることか……」
聞いた話によると、今の王はかなりの老齢であり、王太子もいい年齢に達しているためそろそろ王位を譲るつもりらしい。
魔道具開発に力を入れているのは昔からのことなのだが、今の王が特に多くの魔道具を世に広めたとのことだ。
それによって獣人はかなり助かったという話だ。
「……どんな方なのか楽しみです」
ケイとしては、ドワーフという種族がどういう姿をしているのか興味があっただけなのだが、魔道具開発の天才と聞くと、なんとなく興味がそそられる。
リカルドから色々聞いて、ケイはドワーフ王に会うことが楽しみになった。
0
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる