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第7章
第159話
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「おっす、終わったぞ」
「お帰り」
サンダリオを始末し、基地内から転移したケイたちは、近くの山へと来ていた。
虫の魔族によって呼び寄せられた魔物たちの残りを始末をするために、リシケサの兵たちが戦っているのが見える。
まさか、この間に自分たちの王が殺されているとは思ってもいないだろう。
ケイたちが戻ってきた場所には、レイナルドが待っていた。
「リカルド殿があっさりと済ませてくれたよ」
「ハッハッハ……、殴ったら一発だったわ」
レイナルドも知りたいだろうと、ケイはどういう風にサンダリオを倒したのかを説明し始めた。
とは言っても、リカルドが言ってしまったので、詳しく説明するようなことなんかはないのだが、一応どういう風に終わったかを話した。
「父さんたちが殺ったって分かるの?」
リカルドならサンダリオをあっさり殺ってしまっても仕方ない。
なので、そこには何も思わないが、殺した人間がエルフや獣人だと広まらないと抑止力に繋がらない。
ケイが思ったのと同じことを、レイナルドは心配になった。
「豚みたいな貴族の男がいたから、そいつ脅して広めるように言ってきた」
レイナルドの質問に、リカルドが答えを返す。
サンダリオの側にはアレホとか言う太った貴族がいたので、ケイたちが脅してきたことを告げる。
ケイに対してはたいして恐怖を抱いている様には思えなかったが、リカルドが最後に念を押した時はしっかりと返事をしていたので、どうにか広めてくれることだろう。
「そいつで大丈夫なの?」
「豚でも辺境伯らしいから大丈夫だろ?」
脅したからと言って、そいつの言うことを信じる者がいるか分からない。
そのため、レイナルドは不安そうに尋ねてくる。
たしかに、アレホの奴しか目撃者がいないのでは、信用してもらうことができるかどうか分からない。
むしろ、犯人として捕まるかもしれない。
それでも辺境伯の地位にいるような男なら、きっと何とかしてくれるだろう。
「あっ!?」
「んっ?」「ムッ?」
ケイたちが話していると、基地の方で何か動きがあった。
先程ケイたちが言ったような特徴を持った太った男が、基地から出て来て何か騒ぎ始めていた。
それを、ケイとレイナルドは望遠の魔法で、魔法が苦手なリカルドは、望遠の魔道具を使ってそれを眺める。
「もしかして、自分が見つけた時にはサンダリオが死んでいたという風に説明しているのかな?」
「……かもな」
基地から出てきたアレホは、身振り手振りで他の兵たちに説明をしているようだ。
アレホのいうことを確認するためだろうか、近くにいた兵たちはすぐさま基地内へと走り始めた。
「いや、もしかしたら犯人はまだ基地内にいると言っているのかもしれないぞ」
「なるほど……」
ケイとリカルドは基地内から転移してきたため、近くにいた兵たちは基地から出てきた者はいないと分かっているはず。
アレホも、廊下を見たらケイたちの姿が消えたようにいなくなったと思ったはずだ。
王都の王城を攻め込んだエルフと獣人は、大量の兵に包囲された状態から姿を消したと広まっている。
それを今回も利用して、ケイたちが犯人だということを広めるつもりなのかもしれない。
「あいつ、なんだかこれで撃ちたくなるな……」
レイナルドの言うこれとは、遠距離狙撃用のライフルのことだ。
虫の魔族が逃走を計ろうとしたのを邪魔したのは、実はレイナルドだったのだ。
逃げられて魔族の仲間を増やされでもしたら、かなり面倒なことになる。
人よりかは対処しやすいという思いがあったとしても、数が多ければ魔力が持つかというのが不安になってくる。
人族の連中は好かないが、ここで始末しておいた方が良いと思った。
そのため、ケイから預かったライフルを使って逃走阻止をしたのだった。
アレホが騒いだことで、段々と兵が基地に集まってくる。
魔物の次は、先代の王を殺したエルフと獣人の相手をすることになったため、兵たちは疲労しながらも気合十分で基地内へと入って行く。
アレホはそれを見て、どことなくどや顔をしているように見える。
その顔が気に入らないのか、レイナルドは物騒なことを言い出す。
「やめとけよ。あんなのでも役に立つんだから」
「殺らないよ」
ちょっと本気で言っているように聞こえたので、ケイはレイナルドに注意をする。
レイナルドも本気で言ったつもりはない。
なので、ちゃんと否定をした。
「仕事があることだし、そろそろ帰ろうか?」
「そうですね」
今回リカルドは、国内での書類仕事をしなければならなかいため、見に来ることができないでいた。
しかし、やっぱりリシケサの王都襲撃で仕留め損ねたサンダリオの始末を見届けたいだろうと、ケイはリカルドの息子のエリアスに頼んで連れてくることに成功したのだった。
ただし、絶対に今日のうちに帰ってくるように念を押された。
それをしないと、リカルドの妻のアレシアが何をするかわからないと脅しのようなことを言われていた。
それを聞いたリカルドは、顔を青くして頷いていた。
ケイはアレシアがそんなに怖いようには思えないが、リカルドが怯えるほどなのだから、それはきっちり守ることを約束した。
リカルド1人だけなら長距離転移も苦ではない。
目的のサンダリオの始末も住んだことだし、約束通りリカルドをカンタルボスの国に送り届けるため、ケイは転移魔法を発動させたのだった。
「お帰り」
サンダリオを始末し、基地内から転移したケイたちは、近くの山へと来ていた。
虫の魔族によって呼び寄せられた魔物たちの残りを始末をするために、リシケサの兵たちが戦っているのが見える。
まさか、この間に自分たちの王が殺されているとは思ってもいないだろう。
ケイたちが戻ってきた場所には、レイナルドが待っていた。
「リカルド殿があっさりと済ませてくれたよ」
「ハッハッハ……、殴ったら一発だったわ」
レイナルドも知りたいだろうと、ケイはどういう風にサンダリオを倒したのかを説明し始めた。
とは言っても、リカルドが言ってしまったので、詳しく説明するようなことなんかはないのだが、一応どういう風に終わったかを話した。
「父さんたちが殺ったって分かるの?」
リカルドならサンダリオをあっさり殺ってしまっても仕方ない。
なので、そこには何も思わないが、殺した人間がエルフや獣人だと広まらないと抑止力に繋がらない。
ケイが思ったのと同じことを、レイナルドは心配になった。
「豚みたいな貴族の男がいたから、そいつ脅して広めるように言ってきた」
レイナルドの質問に、リカルドが答えを返す。
サンダリオの側にはアレホとか言う太った貴族がいたので、ケイたちが脅してきたことを告げる。
ケイに対してはたいして恐怖を抱いている様には思えなかったが、リカルドが最後に念を押した時はしっかりと返事をしていたので、どうにか広めてくれることだろう。
「そいつで大丈夫なの?」
「豚でも辺境伯らしいから大丈夫だろ?」
脅したからと言って、そいつの言うことを信じる者がいるか分からない。
そのため、レイナルドは不安そうに尋ねてくる。
たしかに、アレホの奴しか目撃者がいないのでは、信用してもらうことができるかどうか分からない。
むしろ、犯人として捕まるかもしれない。
それでも辺境伯の地位にいるような男なら、きっと何とかしてくれるだろう。
「あっ!?」
「んっ?」「ムッ?」
ケイたちが話していると、基地の方で何か動きがあった。
先程ケイたちが言ったような特徴を持った太った男が、基地から出て来て何か騒ぎ始めていた。
それを、ケイとレイナルドは望遠の魔法で、魔法が苦手なリカルドは、望遠の魔道具を使ってそれを眺める。
「もしかして、自分が見つけた時にはサンダリオが死んでいたという風に説明しているのかな?」
「……かもな」
基地から出てきたアレホは、身振り手振りで他の兵たちに説明をしているようだ。
アレホのいうことを確認するためだろうか、近くにいた兵たちはすぐさま基地内へと走り始めた。
「いや、もしかしたら犯人はまだ基地内にいると言っているのかもしれないぞ」
「なるほど……」
ケイとリカルドは基地内から転移してきたため、近くにいた兵たちは基地から出てきた者はいないと分かっているはず。
アレホも、廊下を見たらケイたちの姿が消えたようにいなくなったと思ったはずだ。
王都の王城を攻め込んだエルフと獣人は、大量の兵に包囲された状態から姿を消したと広まっている。
それを今回も利用して、ケイたちが犯人だということを広めるつもりなのかもしれない。
「あいつ、なんだかこれで撃ちたくなるな……」
レイナルドの言うこれとは、遠距離狙撃用のライフルのことだ。
虫の魔族が逃走を計ろうとしたのを邪魔したのは、実はレイナルドだったのだ。
逃げられて魔族の仲間を増やされでもしたら、かなり面倒なことになる。
人よりかは対処しやすいという思いがあったとしても、数が多ければ魔力が持つかというのが不安になってくる。
人族の連中は好かないが、ここで始末しておいた方が良いと思った。
そのため、ケイから預かったライフルを使って逃走阻止をしたのだった。
アレホが騒いだことで、段々と兵が基地に集まってくる。
魔物の次は、先代の王を殺したエルフと獣人の相手をすることになったため、兵たちは疲労しながらも気合十分で基地内へと入って行く。
アレホはそれを見て、どことなくどや顔をしているように見える。
その顔が気に入らないのか、レイナルドは物騒なことを言い出す。
「やめとけよ。あんなのでも役に立つんだから」
「殺らないよ」
ちょっと本気で言っているように聞こえたので、ケイはレイナルドに注意をする。
レイナルドも本気で言ったつもりはない。
なので、ちゃんと否定をした。
「仕事があることだし、そろそろ帰ろうか?」
「そうですね」
今回リカルドは、国内での書類仕事をしなければならなかいため、見に来ることができないでいた。
しかし、やっぱりリシケサの王都襲撃で仕留め損ねたサンダリオの始末を見届けたいだろうと、ケイはリカルドの息子のエリアスに頼んで連れてくることに成功したのだった。
ただし、絶対に今日のうちに帰ってくるように念を押された。
それをしないと、リカルドの妻のアレシアが何をするかわからないと脅しのようなことを言われていた。
それを聞いたリカルドは、顔を青くして頷いていた。
ケイはアレシアがそんなに怖いようには思えないが、リカルドが怯えるほどなのだから、それはきっちり守ることを約束した。
リカルド1人だけなら長距離転移も苦ではない。
目的のサンダリオの始末も住んだことだし、約束通りリカルドをカンタルボスの国に送り届けるため、ケイは転移魔法を発動させたのだった。
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