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第7章
第133話
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「たいして時間はかからなかったな……」
「そうね」
美花の転移魔法によって、リシケサ王国のある町付近の草原に移動した。
そこから王都を目指して移動し始めたのだが、それも美花が町で人に話を聞いて情報を仕入れてきた。
美花は日向の人族なので、見た目を珍しがられたが、日向の人間だと言うとあっさりと受けいられ、何の苦労もなかった。
一応、カンタルボスから情報収取のプロを連れてきているのだが、彼らが動かずに分かってしまったので、なんとなく微妙な空気になってしまった。
だが、そんなことは些細なこと。
方角が分かってからは、数日で王都までたどり着いたのだった。
「この森なんか良いんじゃないか?」
「そうですね。王都からそれ程離れていないし良いかも知れないですね」
ケイの提案に諜報員の一人、ハコボが頷きながら返事をする。
今ケイたちが潜んでいる森は、魔物もたいして強いのがいないし、王都が目に見える距離にある。
ここから一気に門へと向かって行き、攻め込むにはちょうどいい距離だ。
他の者たちも賛成をしたので、ここを拠点にすることに決定した。
「ここからは我々の仕事になりますね……」
「みんな気を付けて言って来てください」
王都内の情報を収集するのがハコボたち諜報員の仕事になっている。
彼らは変装もできるので、普通に見ただけでは獣人だとバレることはないだろう。
とは言っても、危険なことには変わりない。
これからその任務に行こうとするハコボたちに、ケイは注意を促しておいたのだった。
「それでは……」
ケイが心配してくれているのが分かっているので、彼らは感謝の言葉を告げ頭を軽く下げると、王都へ向かって行ったのだった。
「さてと……、美花は一旦島に戻って、レイを連れて来てくれるか?」
「了解よ」
転移の魔法が使えるのはケイと美花とカルロスだけ、レイナルドも手が治ればすぐに使えるようになるとは思う。
まだ完治には至っていないだろうが、ケイがこれから行う作業を手伝ってもらいたい。
そのため、美花に連れて来てもらうことにした。
「じゃあ、行って来るね」
「あぁ」
ケイと軽く挨拶を交わすと、美花は転移していなくなった。
「…………始めるか」
一先ず1人になったケイが今から始めるのは、地下室づくりだ。
ここは王都からも近く、出現する魔物も弱い。
そうなると、初心者冒険者などが依頼を達成するのにちょうどいい場所になる。
ここに獣人たちを転移させて来るにしても、数が多くては見つかってしまう可能性が高い。
そのためにも、連れてきた獣人たちを隠すための場所が必要になる。
それをケイが作ることにしたのだった。
「ここら辺なら大丈夫だろう……」
少し行った先に水場があり、王都方面だけ少し視界が開けている。
ここなら冒険者が来たとしても気付くのは容易だし、姿を隠すにもちょうどいい場所だと言える。
そのため、ケイはここに地下室を作ることに決めたのだった。
「ケイ! 連れてきたわよ」
「あぁ、ありがとう」
ケイがどれほどの大きさの地下にするか考えている所へ、美花がレイナルドを連れて戻って来た。
それに、ケイは礼を言った。
「美花は戻ってていいぞ」
「そう? じゃあ、そうするわ」
ここからの作業はケイとレイナルドの担当。
美花もケイに教わったので土魔法を使えるが、魔力の量がケイたちに比べると少ない。
そのうえ、転移で魔力を使っているのでちょっと疲れているだろう。
もしものことを考えると美花が心配なので、ケイはこの報復作戦で戦わせるつもりはない。
ここから先は、しばらく美花の出番がないので、村に帰って孫たちの相手をしていてもらいたいところだ。
美花も昔に比べると戦闘に関わろうとはしなくなったので、むしろ孫たちと一緒にいることの方が楽しいようだ。
そのため、ケイに言われた美花は、あっさりとそれを受け入れ、挨拶もそこそこに転移して行ってしまった。
「……始めようか?」
「……あぁ」
なんだか置いてきぼりを食らったようなケイとレイナルドは、少し間をおいて目を合わせると、地下室づくりを開始したのだった。
「最初にレイが大雑把に穴を掘ってくれるか?」
「あいよ!」
ケイの指示に、レイナルドは素直に従う。
そして、左手を地面にかざすと、地面にゆっくりと穴が開いて行ったのだった。
空いた分の地面の土は、穴の周囲へと積もって行った。
土が山になった状態であると、関係ない者がここに来た時に不審に思われるので、誤魔化すようにケイは周辺に撒き散らした。
大雑把と言ってはいたが、エルフの血を引くレイナルドの魔力制御はケイに次ぐ実力だ。
右手の回復が終わっていないため、微妙にコントロールがズレると言っても、この程度のことならあまり気にしなくても使いこなせる。
そのため、レイナルドが作った穴は、パッと見は綺麗な形に整っている様にも見える。
「あとは任せる」
「あぁ」
ここでバトンタッチし、レイナルドが開けた部分を、ケイが強化していった。
これなら地震が起きても崩れることがないだろう。
「よし、完成だ」
その後、開けた穴の上に天井を作り、簡易的な地下室の完成した。
ここの魔物はたいしたものがいないので大丈夫だろうが、もしも巨大な魔物が乗ったのなら崩れてしまうだろう。
しかし、ケイなら襲われる前に対処できるし、そうなった時の強化もする必要もあるかもしれないが、これでカンタルボスの獣人たちを連れて来られる。
「じゃあ、俺は手の再生してるわ」
「あぁ」
地下室内の簡単な装飾をしたあとは、何もすることがなくなった。
そのため、レイナルドは残りは指だけとなった再生をおこなうことにした。
治ってもらって、転移が使えるようになれば、この作戦にとっても有利になる。
そのため、ケイはレイナルドの再生を許可したのだった。
「そうね」
美花の転移魔法によって、リシケサ王国のある町付近の草原に移動した。
そこから王都を目指して移動し始めたのだが、それも美花が町で人に話を聞いて情報を仕入れてきた。
美花は日向の人族なので、見た目を珍しがられたが、日向の人間だと言うとあっさりと受けいられ、何の苦労もなかった。
一応、カンタルボスから情報収取のプロを連れてきているのだが、彼らが動かずに分かってしまったので、なんとなく微妙な空気になってしまった。
だが、そんなことは些細なこと。
方角が分かってからは、数日で王都までたどり着いたのだった。
「この森なんか良いんじゃないか?」
「そうですね。王都からそれ程離れていないし良いかも知れないですね」
ケイの提案に諜報員の一人、ハコボが頷きながら返事をする。
今ケイたちが潜んでいる森は、魔物もたいして強いのがいないし、王都が目に見える距離にある。
ここから一気に門へと向かって行き、攻め込むにはちょうどいい距離だ。
他の者たちも賛成をしたので、ここを拠点にすることに決定した。
「ここからは我々の仕事になりますね……」
「みんな気を付けて言って来てください」
王都内の情報を収集するのがハコボたち諜報員の仕事になっている。
彼らは変装もできるので、普通に見ただけでは獣人だとバレることはないだろう。
とは言っても、危険なことには変わりない。
これからその任務に行こうとするハコボたちに、ケイは注意を促しておいたのだった。
「それでは……」
ケイが心配してくれているのが分かっているので、彼らは感謝の言葉を告げ頭を軽く下げると、王都へ向かって行ったのだった。
「さてと……、美花は一旦島に戻って、レイを連れて来てくれるか?」
「了解よ」
転移の魔法が使えるのはケイと美花とカルロスだけ、レイナルドも手が治ればすぐに使えるようになるとは思う。
まだ完治には至っていないだろうが、ケイがこれから行う作業を手伝ってもらいたい。
そのため、美花に連れて来てもらうことにした。
「じゃあ、行って来るね」
「あぁ」
ケイと軽く挨拶を交わすと、美花は転移していなくなった。
「…………始めるか」
一先ず1人になったケイが今から始めるのは、地下室づくりだ。
ここは王都からも近く、出現する魔物も弱い。
そうなると、初心者冒険者などが依頼を達成するのにちょうどいい場所になる。
ここに獣人たちを転移させて来るにしても、数が多くては見つかってしまう可能性が高い。
そのためにも、連れてきた獣人たちを隠すための場所が必要になる。
それをケイが作ることにしたのだった。
「ここら辺なら大丈夫だろう……」
少し行った先に水場があり、王都方面だけ少し視界が開けている。
ここなら冒険者が来たとしても気付くのは容易だし、姿を隠すにもちょうどいい場所だと言える。
そのため、ケイはここに地下室を作ることに決めたのだった。
「ケイ! 連れてきたわよ」
「あぁ、ありがとう」
ケイがどれほどの大きさの地下にするか考えている所へ、美花がレイナルドを連れて戻って来た。
それに、ケイは礼を言った。
「美花は戻ってていいぞ」
「そう? じゃあ、そうするわ」
ここからの作業はケイとレイナルドの担当。
美花もケイに教わったので土魔法を使えるが、魔力の量がケイたちに比べると少ない。
そのうえ、転移で魔力を使っているのでちょっと疲れているだろう。
もしものことを考えると美花が心配なので、ケイはこの報復作戦で戦わせるつもりはない。
ここから先は、しばらく美花の出番がないので、村に帰って孫たちの相手をしていてもらいたいところだ。
美花も昔に比べると戦闘に関わろうとはしなくなったので、むしろ孫たちと一緒にいることの方が楽しいようだ。
そのため、ケイに言われた美花は、あっさりとそれを受け入れ、挨拶もそこそこに転移して行ってしまった。
「……始めようか?」
「……あぁ」
なんだか置いてきぼりを食らったようなケイとレイナルドは、少し間をおいて目を合わせると、地下室づくりを開始したのだった。
「最初にレイが大雑把に穴を掘ってくれるか?」
「あいよ!」
ケイの指示に、レイナルドは素直に従う。
そして、左手を地面にかざすと、地面にゆっくりと穴が開いて行ったのだった。
空いた分の地面の土は、穴の周囲へと積もって行った。
土が山になった状態であると、関係ない者がここに来た時に不審に思われるので、誤魔化すようにケイは周辺に撒き散らした。
大雑把と言ってはいたが、エルフの血を引くレイナルドの魔力制御はケイに次ぐ実力だ。
右手の回復が終わっていないため、微妙にコントロールがズレると言っても、この程度のことならあまり気にしなくても使いこなせる。
そのため、レイナルドが作った穴は、パッと見は綺麗な形に整っている様にも見える。
「あとは任せる」
「あぁ」
ここでバトンタッチし、レイナルドが開けた部分を、ケイが強化していった。
これなら地震が起きても崩れることがないだろう。
「よし、完成だ」
その後、開けた穴の上に天井を作り、簡易的な地下室の完成した。
ここの魔物はたいしたものがいないので大丈夫だろうが、もしも巨大な魔物が乗ったのなら崩れてしまうだろう。
しかし、ケイなら襲われる前に対処できるし、そうなった時の強化もする必要もあるかもしれないが、これでカンタルボスの獣人たちを連れて来られる。
「じゃあ、俺は手の再生してるわ」
「あぁ」
地下室内の簡単な装飾をしたあとは、何もすることがなくなった。
そのため、レイナルドは残りは指だけとなった再生をおこなうことにした。
治ってもらって、転移が使えるようになれば、この作戦にとっても有利になる。
そのため、ケイはレイナルドの再生を許可したのだった。
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