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第6章
第129話
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「おぉ!! やはり3人ともボロボロだな?」
そう言いながらケイたちの姿を見たリカルドは、でかい岩を持ち上げて逃げて行く敵兵の小舟へと放り投げ、更なる恐怖を敵に植え付けようとしていた。
息子のエリアスとファウストも同じようにし、何隻かの船はその岩が直撃し、敵兵は海に落ちて鎧の重さで溺れて沈んでい行っている。
リカルドが言うように、ケイは服が血まみれで青い顔、レイナルドは片腕で体中傷だらけ、カルロスは顔面の至るところが腫れてる状況。
まさにボロボロだ。
「……どうやってここに来れたのですか?」
小舟の全てが帆船にたどり着き、敵はそのまま船を動かして逃げ出していった。
それを確認したリカルドたちは、一息ついた後ケイたちへと向かい合った。
そこで、ケイはまずこのことを聞かずにはいられなかった。
ある程度は予想がつくが、一応念のためだ。
「美花殿がちょっと無茶をしてくれてな……」
「やっぱり……」
リカルドたちは、遠く離れたカンタルボス王国の王族。
王都を出発して、昨日今日でこの島へたどり着くはずがない。
となれば、考えられるのは転移魔法しかない。
この島を知っていて、ケイの他に転移魔法が使えるのは今の所妻の美花だけ、しかし、その美花は開戦前に、戦いに参加しない島民を連れて、今朝カンタルボス王都付近へ避難してもらった。
開戦からもう5時間以上経っているとはいえ、多少魔力が回復したといっても、まだ疲労感が残ったままのはずだ。
そんな状態で3人も長距離転移させるなんて、明日は疲労困憊で1日中寝込むことになるだろう。
「母さん……」「無茶するな……」
レイナルドとカルロスも、母親のことが想像でき、何とも言いにくい表情になった。
「今朝早くに、美花殿が島民を連れて王都付近に現れ、一人で城へ伝えにきてくれた」
美花が転移させてくれたということは、3人なら思いつくのはリカルドも分かっていた。
しかし、その経緯までは分からないだろうと、一から説明を始めることにした。
リカルドが言うように、転移したら王城へ行き、リカルドへ人族の襲来を伝えて、救いを求めるようにケイは美花に言っておいた。
指定された転移させる場所である王都すぐ側の草原に、仮設の救助所を作ってもらえるように話が済んでいた。
「戦いが終わるか、島を放棄して避難して来るかまでの間だし、人数もたいした人数でもない。元々ケイ殿に相談されていたので、すぐに我々は行動に移った」
敵兵の数次第では勝てるかもしれないし、最悪島を捨てて逃げるつもりでいるとケイはリカルドに言っていた。
そして、勝てれば数日以内に島に帰るし、逃げてきた場合はカンタルボスの平民として、どこかの町か村で住まわせてほしいと頭を下げていた。
「大量の敵兵相手に戦い、我が国の兵たちまでも犠牲にすること無く転移してきたが、ケイ殿たちだけ来ないことに美花殿が不安に感じてな……」
ケイのことを誰よりも良く知る美花なら、ケイたちだけ来ないのは何かあったと察するのは当然かもしれない。
それによって、疑問に思っていなかった者たちも心配をし始めたともリカルドは続けた。
「それを見かねたイバンという名の者が、レイナルド殿とカルロス殿が捕まったと言い、更にケイ殿が救いに行ったと聞いた時は、美花殿も我々も顔を青ざめたわ……」
ケイの強さは、一度手合わせしたリカルドも知っている。
しかし、元々魔力を使わずに強いリカルドたち獣人と違い、魔力こそが最大の力となるエルフのケイが、その魔力を失って大量の敵を相手に戦って生き残るのは難しい。
「いくらケイ殿でも、あれだけの人数を転移させておいて主力と戦うなんて、無謀もいいところだ!」
「心配かけたようで、すいません……」
リカルドのワザとらしい立腹の表現と、心配したことの言葉に、ケイは素直に謝った。
あの時、息子たちが捕まったと聞いて、ケイの中にあるアンヘルの記憶がチラついた。
自分を逃がすために死んでいった父と叔父。
それを助けられず、何もできない自分への嫌悪。
その記憶がケイの心とリンクしたのかもしれない。
あの時のように何もせずにいられず、頭に血が上り、あとのことをあまり考えずに行動してしまった。
ケイは本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。
「美花殿が助けに行くと言って聞かなくなったのだが、無理して転移できても、魔力がなくなった美花殿がいっても危険なだけとなり、我々が来ることになったのだ」
ケイたちのことが心配で顔面蒼白になった美花は、みんなの制止も聞かずに島へ転移をしようとしたらしい。
そこで、リカルドたち3人が手を上げてくれたとのことだった。
明日のことは考えず、転移できるのは2、3人。
これほど心強い助けはない。
リカルドたちは武器や防具を魔法の指輪に常備しており、すぐに支度ができて美花の魔法で転移したのだそうだ。
「それにしても、3人とも国にとって重要な方たちなのに、よく許可が出ましたね?」
ケイたちにとって最高の助っ人たちだが、最初に言ったように彼らは王族。
戦闘力の高い兵を選んで送るという選択肢もできる。
それなのに、彼らが来てくれたことが信じられず、ケイは問いかけた。
大抵こういう時は止める人間が出るのが当然だからだ。
「……あ、いえ、許可を取る前に来てしまいました」
「「「えっ?」」」
その問いに、言いにくそうに答えたのは息子のエリアスだった。
そして、その返答にケイたち親子は口を開けて固まった。
「そんなことして、もしもの事があったらどうするつもりだったのですか?」
レイナルドのこの発言も出て当然だ。
しつこいが彼らは王族、代わりになるような者はどこにもいないのだから。
「最悪、妻のアデリアと娘のルシアもいるから何とかなるだろう?」
「……………豪胆な」
リカルドの発した言葉に、ケイは思ったままのことが口から出ていた。
たしかに、リカルドには妻で王妃のアデリアと、息子のエリアスたちの他にルシアと言う娘がいる。
王妃のアデリアが一先ず女王へ、そして幼いルシアが大きくなったら継がせればいいとは言っても、あっさりとそれを選択できるなんて、それ以外言いようがないではないか。
「自分のところの島民たちだけでなく、派遣していた我らの兵まで守って頂いたのだ。そこで動かぬのは獣人の恥だ!」
「…………ありがとうございます。助かりました。」
「「ありがとうございました!」」【ありがとう! おうさま!】
その豪胆な選択をしたのも、仲間である自国の兵までも救ってくれたことによるリカルド(というより獣人)の心意気といったところだろうか。
何にせよ、ケイたちは命を救われたので、感謝するしかない。
3人と、ケイの懐に入って大人しくしているキュウは、お礼の言葉と共に頭を下げたのだった。
「困った時はお互い様だ!」
「そうです! こちらこそ兵を救っていただきました」「ありがとうございました」
ケイたちの礼に対し、リカルドたちは頭を左右に振る。
彼らとしても、仲間を救ってもらった恩がある。
そのため、リカルドたちの方も感謝の言葉と共に頭を下げたのだった。
「……ところでケイ殿」
「はい?」
お互い感謝し合うのはやめ、いつも通りに戻ることになった。
敵や魔物の遺体処理は島民が戻って来た時にやることにし、6人(+1匹)は東の居住区に向かうことにした。
もしかしたら、まだ島内に逃げ遅れた敵兵がいるかもしれないため、リカルドたちが周りを固めてくれているのだが、貧血気味で足がふらつくケイの背を支えながら歩くリカルドが話しかけてきた。
「せっかくだし来たのだし、以前のように釣りにでもいかないか?」
「「っ!?」」
その言葉を聞いたエリアスとファウストの兄弟は、目を見開いてリカルドを見た。
「父上!! 何を言っているのですか!?」
こんな時に遊びの話をし出した父の神経が信じられず、ファウストは思わず大きな声でツッコミを入れた。
「いや、考えてみろ。ケイ殿も美花殿も魔力がない。明日、いや、体のことを考えて明後日まで我々は国に戻れないのだぞ?」
たしかに、疲労感の残る状態での魔法行使をした美花は当然明日寝込むのだろうし、ケイも死にかけたのだから明日1日はゆっくりとしたい。
そうなると、リカルドたちを国に返せる者がいない。
「……なるほど、ならばゆっくり楽しもうと?」
「…………兄上まで」
先ほど一緒に驚いたエリアスも、父の言葉に賛成するかのようなことを言い出した。
兄はいつも真面目に仕事をこなしているだけに、同意するとは思わなかった。
「いいじゃないか。父上、母上、それにお前もここの料理は美味いと言っていただろ? 2人はともかく、俺は次いつチャンスが来るか分からないんだから」
「そ、そうですが」
以前、リカルドと妻のアデリアは突然この島に遊びに来た。
そのことを知ったエリアスたちは怒っていたが、随分楽しそうな両親を久々に見て、エリアスはこの島への興味が湧いていた。
仕事をサボりがちな父の代わりに、自分が忙しい思いをする事があるエリアスは、気まぐれに来れるようなところではない。
ファウストは国の代表として定期的に小鬼来れるかもしれないが、エリアスは次がいつかは分からない。
たまには羽を伸ばすのも文句はないだろう。
「諦めたほうがいいんじゃないか?」
リカルドの言う通り、明後日までいなくちゃいけないのは決まったようなもの。
そのため、カルロスは仲の良いファウストを宥めるように言った。
父と兄が決めたら、弟は従うしかないのだ。
それはカルロスも同じなので、こういった場合は諦めて乗っかるのが一番いい。
「……そうだな」
カルロスに言われて納得したのか、ファウストも父たちに乗っかることにした。
「よし! 今からみんなで遊ぶぞ!」
ふらつくケイを支えながら、リカルドは意気揚々と東へ向かって歩を進める。
心なしか足取りが軽そうだ。
「ガッハッハ……」
「ハハ……」
ついさっきまで死を覚悟していたケイだったが、今となってはその時の緊張感が消え失せている。
重傷者は沢山出たが、結果的に誰も死人が出ないで済んだ。
戦いが終わったばかりで血が足りずにフラフラしながらも、このあとケイはリカルドたちを接待することに何故かなり、豪快に笑うリカルドとは違い、若干乾いた笑いになったのは仕方がないかもしれない。
そう言いながらケイたちの姿を見たリカルドは、でかい岩を持ち上げて逃げて行く敵兵の小舟へと放り投げ、更なる恐怖を敵に植え付けようとしていた。
息子のエリアスとファウストも同じようにし、何隻かの船はその岩が直撃し、敵兵は海に落ちて鎧の重さで溺れて沈んでい行っている。
リカルドが言うように、ケイは服が血まみれで青い顔、レイナルドは片腕で体中傷だらけ、カルロスは顔面の至るところが腫れてる状況。
まさにボロボロだ。
「……どうやってここに来れたのですか?」
小舟の全てが帆船にたどり着き、敵はそのまま船を動かして逃げ出していった。
それを確認したリカルドたちは、一息ついた後ケイたちへと向かい合った。
そこで、ケイはまずこのことを聞かずにはいられなかった。
ある程度は予想がつくが、一応念のためだ。
「美花殿がちょっと無茶をしてくれてな……」
「やっぱり……」
リカルドたちは、遠く離れたカンタルボス王国の王族。
王都を出発して、昨日今日でこの島へたどり着くはずがない。
となれば、考えられるのは転移魔法しかない。
この島を知っていて、ケイの他に転移魔法が使えるのは今の所妻の美花だけ、しかし、その美花は開戦前に、戦いに参加しない島民を連れて、今朝カンタルボス王都付近へ避難してもらった。
開戦からもう5時間以上経っているとはいえ、多少魔力が回復したといっても、まだ疲労感が残ったままのはずだ。
そんな状態で3人も長距離転移させるなんて、明日は疲労困憊で1日中寝込むことになるだろう。
「母さん……」「無茶するな……」
レイナルドとカルロスも、母親のことが想像でき、何とも言いにくい表情になった。
「今朝早くに、美花殿が島民を連れて王都付近に現れ、一人で城へ伝えにきてくれた」
美花が転移させてくれたということは、3人なら思いつくのはリカルドも分かっていた。
しかし、その経緯までは分からないだろうと、一から説明を始めることにした。
リカルドが言うように、転移したら王城へ行き、リカルドへ人族の襲来を伝えて、救いを求めるようにケイは美花に言っておいた。
指定された転移させる場所である王都すぐ側の草原に、仮設の救助所を作ってもらえるように話が済んでいた。
「戦いが終わるか、島を放棄して避難して来るかまでの間だし、人数もたいした人数でもない。元々ケイ殿に相談されていたので、すぐに我々は行動に移った」
敵兵の数次第では勝てるかもしれないし、最悪島を捨てて逃げるつもりでいるとケイはリカルドに言っていた。
そして、勝てれば数日以内に島に帰るし、逃げてきた場合はカンタルボスの平民として、どこかの町か村で住まわせてほしいと頭を下げていた。
「大量の敵兵相手に戦い、我が国の兵たちまでも犠牲にすること無く転移してきたが、ケイ殿たちだけ来ないことに美花殿が不安に感じてな……」
ケイのことを誰よりも良く知る美花なら、ケイたちだけ来ないのは何かあったと察するのは当然かもしれない。
それによって、疑問に思っていなかった者たちも心配をし始めたともリカルドは続けた。
「それを見かねたイバンという名の者が、レイナルド殿とカルロス殿が捕まったと言い、更にケイ殿が救いに行ったと聞いた時は、美花殿も我々も顔を青ざめたわ……」
ケイの強さは、一度手合わせしたリカルドも知っている。
しかし、元々魔力を使わずに強いリカルドたち獣人と違い、魔力こそが最大の力となるエルフのケイが、その魔力を失って大量の敵を相手に戦って生き残るのは難しい。
「いくらケイ殿でも、あれだけの人数を転移させておいて主力と戦うなんて、無謀もいいところだ!」
「心配かけたようで、すいません……」
リカルドのワザとらしい立腹の表現と、心配したことの言葉に、ケイは素直に謝った。
あの時、息子たちが捕まったと聞いて、ケイの中にあるアンヘルの記憶がチラついた。
自分を逃がすために死んでいった父と叔父。
それを助けられず、何もできない自分への嫌悪。
その記憶がケイの心とリンクしたのかもしれない。
あの時のように何もせずにいられず、頭に血が上り、あとのことをあまり考えずに行動してしまった。
ケイは本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。
「美花殿が助けに行くと言って聞かなくなったのだが、無理して転移できても、魔力がなくなった美花殿がいっても危険なだけとなり、我々が来ることになったのだ」
ケイたちのことが心配で顔面蒼白になった美花は、みんなの制止も聞かずに島へ転移をしようとしたらしい。
そこで、リカルドたち3人が手を上げてくれたとのことだった。
明日のことは考えず、転移できるのは2、3人。
これほど心強い助けはない。
リカルドたちは武器や防具を魔法の指輪に常備しており、すぐに支度ができて美花の魔法で転移したのだそうだ。
「それにしても、3人とも国にとって重要な方たちなのに、よく許可が出ましたね?」
ケイたちにとって最高の助っ人たちだが、最初に言ったように彼らは王族。
戦闘力の高い兵を選んで送るという選択肢もできる。
それなのに、彼らが来てくれたことが信じられず、ケイは問いかけた。
大抵こういう時は止める人間が出るのが当然だからだ。
「……あ、いえ、許可を取る前に来てしまいました」
「「「えっ?」」」
その問いに、言いにくそうに答えたのは息子のエリアスだった。
そして、その返答にケイたち親子は口を開けて固まった。
「そんなことして、もしもの事があったらどうするつもりだったのですか?」
レイナルドのこの発言も出て当然だ。
しつこいが彼らは王族、代わりになるような者はどこにもいないのだから。
「最悪、妻のアデリアと娘のルシアもいるから何とかなるだろう?」
「……………豪胆な」
リカルドの発した言葉に、ケイは思ったままのことが口から出ていた。
たしかに、リカルドには妻で王妃のアデリアと、息子のエリアスたちの他にルシアと言う娘がいる。
王妃のアデリアが一先ず女王へ、そして幼いルシアが大きくなったら継がせればいいとは言っても、あっさりとそれを選択できるなんて、それ以外言いようがないではないか。
「自分のところの島民たちだけでなく、派遣していた我らの兵まで守って頂いたのだ。そこで動かぬのは獣人の恥だ!」
「…………ありがとうございます。助かりました。」
「「ありがとうございました!」」【ありがとう! おうさま!】
その豪胆な選択をしたのも、仲間である自国の兵までも救ってくれたことによるリカルド(というより獣人)の心意気といったところだろうか。
何にせよ、ケイたちは命を救われたので、感謝するしかない。
3人と、ケイの懐に入って大人しくしているキュウは、お礼の言葉と共に頭を下げたのだった。
「困った時はお互い様だ!」
「そうです! こちらこそ兵を救っていただきました」「ありがとうございました」
ケイたちの礼に対し、リカルドたちは頭を左右に振る。
彼らとしても、仲間を救ってもらった恩がある。
そのため、リカルドたちの方も感謝の言葉と共に頭を下げたのだった。
「……ところでケイ殿」
「はい?」
お互い感謝し合うのはやめ、いつも通りに戻ることになった。
敵や魔物の遺体処理は島民が戻って来た時にやることにし、6人(+1匹)は東の居住区に向かうことにした。
もしかしたら、まだ島内に逃げ遅れた敵兵がいるかもしれないため、リカルドたちが周りを固めてくれているのだが、貧血気味で足がふらつくケイの背を支えながら歩くリカルドが話しかけてきた。
「せっかくだし来たのだし、以前のように釣りにでもいかないか?」
「「っ!?」」
その言葉を聞いたエリアスとファウストの兄弟は、目を見開いてリカルドを見た。
「父上!! 何を言っているのですか!?」
こんな時に遊びの話をし出した父の神経が信じられず、ファウストは思わず大きな声でツッコミを入れた。
「いや、考えてみろ。ケイ殿も美花殿も魔力がない。明日、いや、体のことを考えて明後日まで我々は国に戻れないのだぞ?」
たしかに、疲労感の残る状態での魔法行使をした美花は当然明日寝込むのだろうし、ケイも死にかけたのだから明日1日はゆっくりとしたい。
そうなると、リカルドたちを国に返せる者がいない。
「……なるほど、ならばゆっくり楽しもうと?」
「…………兄上まで」
先ほど一緒に驚いたエリアスも、父の言葉に賛成するかのようなことを言い出した。
兄はいつも真面目に仕事をこなしているだけに、同意するとは思わなかった。
「いいじゃないか。父上、母上、それにお前もここの料理は美味いと言っていただろ? 2人はともかく、俺は次いつチャンスが来るか分からないんだから」
「そ、そうですが」
以前、リカルドと妻のアデリアは突然この島に遊びに来た。
そのことを知ったエリアスたちは怒っていたが、随分楽しそうな両親を久々に見て、エリアスはこの島への興味が湧いていた。
仕事をサボりがちな父の代わりに、自分が忙しい思いをする事があるエリアスは、気まぐれに来れるようなところではない。
ファウストは国の代表として定期的に小鬼来れるかもしれないが、エリアスは次がいつかは分からない。
たまには羽を伸ばすのも文句はないだろう。
「諦めたほうがいいんじゃないか?」
リカルドの言う通り、明後日までいなくちゃいけないのは決まったようなもの。
そのため、カルロスは仲の良いファウストを宥めるように言った。
父と兄が決めたら、弟は従うしかないのだ。
それはカルロスも同じなので、こういった場合は諦めて乗っかるのが一番いい。
「……そうだな」
カルロスに言われて納得したのか、ファウストも父たちに乗っかることにした。
「よし! 今からみんなで遊ぶぞ!」
ふらつくケイを支えながら、リカルドは意気揚々と東へ向かって歩を進める。
心なしか足取りが軽そうだ。
「ガッハッハ……」
「ハハ……」
ついさっきまで死を覚悟していたケイだったが、今となってはその時の緊張感が消え失せている。
重傷者は沢山出たが、結果的に誰も死人が出ないで済んだ。
戦いが終わったばかりで血が足りずにフラフラしながらも、このあとケイはリカルドたちを接待することに何故かなり、豪快に笑うリカルドとは違い、若干乾いた笑いになったのは仕方がないかもしれない。
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