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第6章
第100話
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「これって大砲か?」
「そうですね」
ケイたちが沈めた人族の船には、大砲が積まれていた。
それを見つけたケイは、どんな構造になっているのかを色々な角度から眺めながら尋ねた。
すると、聞かれたモイストから肯定の答えが返って来た。
「これ、どれくらい飛ぶんだろ?」
もう一つの人格のアンヘルもそうだが、平和な日本で生まれ育った啓は大砲なんて初めて見た。
こんな鉄の筒で、重く、でかい鉄球を遠くまで飛ばせるなんて、信じられない気がする。
「20~30㎞くらいでしょうか?」
「結構飛ぶんだな……」
それだけ離れた場所へこうげきできるのならば、ケイたちが人族の船を沈めたように、大規模な魔法を撃たなくても大打撃を与えることができるかもしれない。
「魔力の込め方によってはもっと飛ぶかもしれませんね」
「魔力? 火薬の爆発で飛ばすんじゃないのか?」
前世の記憶ではそうだったので、この世界でも同じなのかと思ったが、この大砲もどうやら魔道具なのだそうだ。
火薬で飛ばすのではなく、圧縮した魔力を一気に解放することによって砲弾を飛ばす仕組みになっているらしい。
「火薬は取り扱いが重要ですし、作るのに手間がかかるので……」
「そうか……」
言われてみればそうだと思った。
この世界にも火薬はある。
ケイの薄い知識だと、火薬を詰めて砲弾入れて火も引いて火薬に着火して吹き飛ばすという手順だと思っていた。
その方法でするとなると多くの火薬を必要とし、扱いもしっかりしないといけないという欠点が存在する。
魔力でなら、練習すれば制御ミスなんてことは滅多に起こらない。
わざわざ危険な荷物になるような火薬より、断然こっちを選ぶだろう。
「獣人の場合はどういう風になっているんだ?」
他の種族なら、魔力をコントロールしてこの大砲を発射させることができるだろうが、獣人の魔力は他より少ない。
魔力を圧縮するにしても、量が少なければたいした飛距離を稼げないだろう。
離れた的へ大打撃を与えられるから使えるのであって、飛距離がなければただの鉄の塊でしかない。
獣人は魔力が少ない分、身体能力が極めて高いのは良いのだが、魔力を必要とする魔道具になるとかなりのネックになって来る。
もしも人族と戦争になった時、大砲が使えないというのはかなり苦しい。
「魔力を圧縮する魔道具が付属された大砲を使用します」
「ふ~ん……」
やはりこれもドワーフ族によって改良されているらしい。
獣人が使う時のために、付属品を使うことで数人分の魔力を込めれば発射できるようになっているそうだ。
「圧縮する魔力が多ければ多い程、距離が稼げるのか?」
「確かにそうですが、ケイ殿の場合、あまり魔力を込めすぎると砲身が爆発に耐えられなくなるかもしれません」
圧縮した魔力を解放し、爆発に似た反発力を利用して発射するというのなら、単純に考えると、多くの魔力を圧縮してから解放すれば、更に強力な威力が生み出せるはずだ。
それができれば、こっちからの攻撃は届いて、相手の攻撃は届かないという状況が作れる。
つまりはハチの巣にできるということだ。
まあ、魔力障壁で防がれるかもしれないが、長時間魔力障壁を張り続けさせ、この島に着くころには使える魔導士はあまりいないという状況を作り出せるということだ。
論理的には正しいが、砲身がその反発力に耐えられるかは懐疑的だ。
「……なるほど、じゃあ、そこを改良してみるか……」
沈めたばかりなので、人族がすぐにまたここへ攻め込んでくるとは思わないが、ここの少ない人数で勝利する可能性を高めるには、この大砲はかなり使える。
ケイだけではなく、息子のレイナルドとカルロスもいれば、昨日の倍の船や人が来ても余裕をもって潰せるはずだ。
そのためには、大砲の砲身の強化をする必要がありそうだ。
「錬金術で強化するということですか?」
「あぁ、小粒だが魔石も大量にある。ダンジョン内の魔物なら鉄より硬い素材持ちもいるだろうし」
人族の船に搭載されていた大砲は、一隻に4台。
3隻なので、全部で12台が今回手に入ったのだが、ケイたち親子がはっちゃけたせいで、3台が壊れて使いようがなくなっていた。
しかし、壊れていても直せばまた使えるようになるし、砲身の強化にも使えるだろう。
修復や砲身の強化をするにしても、ケイの場合は錬金術しかない。
その錬金術も作る物が特にないので、最近は使う頻度が減って来ていた。
なので、ただ食材集めに魔物を狩るだけでも魔石がドンドン手に入り、念のために保管していた洞窟には結構な量が溜まっている。
小さいとはいえ、魔石には魔力が内包されている。
少しならともかく、大量に壊れたりして魔力が漏れたりした場合、それを素に強力な魔物が発生したりしたら面倒だ。
ダンジョンに吸収させてしまうのも良いのだが、ここ以外の国だと魔石は大きさなどによって専門店で売却できる。
紙幣や硬貨を使用していないこの国だと、他の国との交易に使う資金を手に入れるとなると、魔石を売るしかなくなる。
そのため取っておいたのだが、魔石は集めようと思えばいつでも集められるので、ケイは大砲の修復・改良に使ってしまうことにしたのだった。
「そうですね」
ケイたちが沈めた人族の船には、大砲が積まれていた。
それを見つけたケイは、どんな構造になっているのかを色々な角度から眺めながら尋ねた。
すると、聞かれたモイストから肯定の答えが返って来た。
「これ、どれくらい飛ぶんだろ?」
もう一つの人格のアンヘルもそうだが、平和な日本で生まれ育った啓は大砲なんて初めて見た。
こんな鉄の筒で、重く、でかい鉄球を遠くまで飛ばせるなんて、信じられない気がする。
「20~30㎞くらいでしょうか?」
「結構飛ぶんだな……」
それだけ離れた場所へこうげきできるのならば、ケイたちが人族の船を沈めたように、大規模な魔法を撃たなくても大打撃を与えることができるかもしれない。
「魔力の込め方によってはもっと飛ぶかもしれませんね」
「魔力? 火薬の爆発で飛ばすんじゃないのか?」
前世の記憶ではそうだったので、この世界でも同じなのかと思ったが、この大砲もどうやら魔道具なのだそうだ。
火薬で飛ばすのではなく、圧縮した魔力を一気に解放することによって砲弾を飛ばす仕組みになっているらしい。
「火薬は取り扱いが重要ですし、作るのに手間がかかるので……」
「そうか……」
言われてみればそうだと思った。
この世界にも火薬はある。
ケイの薄い知識だと、火薬を詰めて砲弾入れて火も引いて火薬に着火して吹き飛ばすという手順だと思っていた。
その方法でするとなると多くの火薬を必要とし、扱いもしっかりしないといけないという欠点が存在する。
魔力でなら、練習すれば制御ミスなんてことは滅多に起こらない。
わざわざ危険な荷物になるような火薬より、断然こっちを選ぶだろう。
「獣人の場合はどういう風になっているんだ?」
他の種族なら、魔力をコントロールしてこの大砲を発射させることができるだろうが、獣人の魔力は他より少ない。
魔力を圧縮するにしても、量が少なければたいした飛距離を稼げないだろう。
離れた的へ大打撃を与えられるから使えるのであって、飛距離がなければただの鉄の塊でしかない。
獣人は魔力が少ない分、身体能力が極めて高いのは良いのだが、魔力を必要とする魔道具になるとかなりのネックになって来る。
もしも人族と戦争になった時、大砲が使えないというのはかなり苦しい。
「魔力を圧縮する魔道具が付属された大砲を使用します」
「ふ~ん……」
やはりこれもドワーフ族によって改良されているらしい。
獣人が使う時のために、付属品を使うことで数人分の魔力を込めれば発射できるようになっているそうだ。
「圧縮する魔力が多ければ多い程、距離が稼げるのか?」
「確かにそうですが、ケイ殿の場合、あまり魔力を込めすぎると砲身が爆発に耐えられなくなるかもしれません」
圧縮した魔力を解放し、爆発に似た反発力を利用して発射するというのなら、単純に考えると、多くの魔力を圧縮してから解放すれば、更に強力な威力が生み出せるはずだ。
それができれば、こっちからの攻撃は届いて、相手の攻撃は届かないという状況が作れる。
つまりはハチの巣にできるということだ。
まあ、魔力障壁で防がれるかもしれないが、長時間魔力障壁を張り続けさせ、この島に着くころには使える魔導士はあまりいないという状況を作り出せるということだ。
論理的には正しいが、砲身がその反発力に耐えられるかは懐疑的だ。
「……なるほど、じゃあ、そこを改良してみるか……」
沈めたばかりなので、人族がすぐにまたここへ攻め込んでくるとは思わないが、ここの少ない人数で勝利する可能性を高めるには、この大砲はかなり使える。
ケイだけではなく、息子のレイナルドとカルロスもいれば、昨日の倍の船や人が来ても余裕をもって潰せるはずだ。
そのためには、大砲の砲身の強化をする必要がありそうだ。
「錬金術で強化するということですか?」
「あぁ、小粒だが魔石も大量にある。ダンジョン内の魔物なら鉄より硬い素材持ちもいるだろうし」
人族の船に搭載されていた大砲は、一隻に4台。
3隻なので、全部で12台が今回手に入ったのだが、ケイたち親子がはっちゃけたせいで、3台が壊れて使いようがなくなっていた。
しかし、壊れていても直せばまた使えるようになるし、砲身の強化にも使えるだろう。
修復や砲身の強化をするにしても、ケイの場合は錬金術しかない。
その錬金術も作る物が特にないので、最近は使う頻度が減って来ていた。
なので、ただ食材集めに魔物を狩るだけでも魔石がドンドン手に入り、念のために保管していた洞窟には結構な量が溜まっている。
小さいとはいえ、魔石には魔力が内包されている。
少しならともかく、大量に壊れたりして魔力が漏れたりした場合、それを素に強力な魔物が発生したりしたら面倒だ。
ダンジョンに吸収させてしまうのも良いのだが、ここ以外の国だと魔石は大きさなどによって専門店で売却できる。
紙幣や硬貨を使用していないこの国だと、他の国との交易に使う資金を手に入れるとなると、魔石を売るしかなくなる。
そのため取っておいたのだが、魔石は集めようと思えばいつでも集められるので、ケイは大砲の修復・改良に使ってしまうことにしたのだった。
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