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第5章
第89話
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「……知らない天井だ」
「何言ってんの?」
ベッドの上で目を覚ましたケイは、お決まりのセリフを呟いた。
その横でイスに座って看病していた美花は、目を覚ました旦那が急に発した言葉にツッコミを入れた。
美花のその目は、ケイの頭を心配している目だ。
「……あぁ、倒れたんだっけ?」
自分がこうしてベッドで横になっているのは、怪我をしているからだというのは、体中の痛みで分かる。
しかし、その怪我をどうしてしたのかが、記憶がいまいちハッキリしない。
「……そうだ。戦ったんだっけ……」
「そうよ」
王都に着いてからのことをゆっくり思い出していたら、リカルドと戦って怪我をしたことを思いだした。
結果的に引き分けに終わって、気が抜けた倒れたのだった。
それからどれだけ目を覚まさなかったのか美花に聞くと、ほぼ1日経っていた。
“コン! コン!”
「はいっ! どうぞ!」
扉をノックされ、美花は返事と共に扉を開けて客人を招き入れた。
「目を覚ましたかケイ殿! ガッハッハ……」
入って来たのは、ケイと戦ったリカルドだった。
元気そうなケイの顔を見ると、安心したのか元気に笑い出した。
「リカルド殿……ぐっ!」
「あぁ、起きなくて大丈夫。そのままで結構です」
わざわざ確認にきてくれるとはありがたい。
寝たままでは悪いので、ケイは起き上がろうとするが、体の痛みでなかなか起き上がれない。
その様子に、リカルドは言葉と手で制止の合図する。
この状態にした張本人だから、当然と言えば当然かもしれないが、れっきとした国王なのだから他にも仕事があるだろうに、大丈夫なのだろうか。
「いやー、参りました。随分痛め付けられました」
「それはこちらのセリフですよ」
美花に出された椅子に座り、横になったままのケイに話しかけた。
言葉とは裏腹に、今のリカルドは戦った時ケイが負わせた怪我はどこにも残っていない。
どうやら回復薬で治したらしい。
獣人は魔力が少ない種族がほとんど。
魔法で回復させるようなことができないため、薬師という職業が発展してきた。
色々な病気や怪我、毒に対しての回復薬の製造にも長けているが、骨折を治すような薬はまだ存在していない。
なので、リカルドの怪我は治っているが、ケイの折れた腕と肋骨は治っていないらしい。
「結果は引き分けだけど、今の状態をみればケイの負けが一目瞭然ね?」
「ぐぅ……」
「……美花どのは手厳しいですな」
あまりにもっともな美花の意見に、ケイは何の文句も言えなかった。
気を失って、ベッドに横になっているケイと、普通に国王としての仕事をしているリカルド。
お互い降参したとは言っても、その後の状態は全く真逆。
ケイ自身も、立場が違えば美花と同じことを言っていただろう。
その一言でケイを打ちのめした美花に、さすがのリカルドも引いていた。
「帰るのが遅くなって申し訳ないですが、肋骨の痛みがなくなるまでは一応休んでいて下され」
この国の医者によってケイの骨折の治療はしてある。
とは言っても、骨が付くまではこのまま固定して安静にしてもらうのが前提だ。
ケイはもうこの国にとって要人なのだから、きっちり治して帰ってもらいたい。
「あぁ、それならちょっと待っててください。イタタタ……」
「……?」
リカルドとの会話を一旦区切ったケイは、美花に手伝ってもらい上半身を起こす。
痛みで少し顔を歪ませるが、何とか座禅を組んだ状態になる。
別にこの状態でなくてもいいのだが、この状態が一番やりやすいのでちょっと我慢だ。
何をするのか分からないため、リカルドはただ黙って見ている。
「……………………」
座禅を組んだケイは、無言になり瞑想をし始めた。
すると……
「おぉっ!!」
ゆっくりとケイを包むように魔力が膨らんでいき、まるで光に覆われているような状態へと変化していった。
とても幻想的な光景に、初めて見たリカルドは感嘆の声をあげた。
少しの間その状況が続くと、少しずつ光の加減が弱まっていき、座禅を組んだ状態のケイに戻っていった。
そして、瞑っていた目を開くと、折れていた右手を曲げたり伸ばしたりし、体を右左へ捻ってみたりした。
「もう大丈夫です。治りました」
さっきの光景は、自分で自分の怪我を治す回復魔法を行なったのだ。
エルフのケイは魔力量が多い。
なので、回復魔法も使える。
程度に差はあるが、他人を治すのは比較的早く覚えられた。
しかし、痛みで集中が途切れたりすることがあるので、自己治癒を使いこなせるようになるのは結構時間がかかった。
その時、集中しやすい方法として、座禅を組むという方法を試してみた。
すると、ピタッとハマったというか、上手く回復できるようになったのだ。
「……すごいですな。骨折をすぐに治せるなんて……」
先ほども言ったように、この国では薬師により大体の怪我や病気などは治せるが、骨折した腕を即座に治せるようなことはできない。
獣人の場合、骨折は、ちゃんと処置をすれば、高い自己治癒力から大した時間がかからず治る。
人族の三分の二程度の時間といったところだろうか。
なので、薬師たちは骨折をすぐに治せるような回復薬の製造を研究しているが、あまり熱心とは言えないかもしれない。
あっという間に治したケイに、リカルドは驚きと羨ましい感情で呟いた。
「……やはり、もう少し我が国も骨折の治療薬の研究を進めさせるべきか……」
「……リカルド殿?」
ベッドから降りて、もう何ともないように立つケイを見ていると、早急な対策をした方が良いのではと考え込み始めた。
自分の世界に入ってしまったようにブツブツ言い出したリカルドに、ケイが呼びかけるが、返事は少しの間戻ってこなかった。
「何言ってんの?」
ベッドの上で目を覚ましたケイは、お決まりのセリフを呟いた。
その横でイスに座って看病していた美花は、目を覚ました旦那が急に発した言葉にツッコミを入れた。
美花のその目は、ケイの頭を心配している目だ。
「……あぁ、倒れたんだっけ?」
自分がこうしてベッドで横になっているのは、怪我をしているからだというのは、体中の痛みで分かる。
しかし、その怪我をどうしてしたのかが、記憶がいまいちハッキリしない。
「……そうだ。戦ったんだっけ……」
「そうよ」
王都に着いてからのことをゆっくり思い出していたら、リカルドと戦って怪我をしたことを思いだした。
結果的に引き分けに終わって、気が抜けた倒れたのだった。
それからどれだけ目を覚まさなかったのか美花に聞くと、ほぼ1日経っていた。
“コン! コン!”
「はいっ! どうぞ!」
扉をノックされ、美花は返事と共に扉を開けて客人を招き入れた。
「目を覚ましたかケイ殿! ガッハッハ……」
入って来たのは、ケイと戦ったリカルドだった。
元気そうなケイの顔を見ると、安心したのか元気に笑い出した。
「リカルド殿……ぐっ!」
「あぁ、起きなくて大丈夫。そのままで結構です」
わざわざ確認にきてくれるとはありがたい。
寝たままでは悪いので、ケイは起き上がろうとするが、体の痛みでなかなか起き上がれない。
その様子に、リカルドは言葉と手で制止の合図する。
この状態にした張本人だから、当然と言えば当然かもしれないが、れっきとした国王なのだから他にも仕事があるだろうに、大丈夫なのだろうか。
「いやー、参りました。随分痛め付けられました」
「それはこちらのセリフですよ」
美花に出された椅子に座り、横になったままのケイに話しかけた。
言葉とは裏腹に、今のリカルドは戦った時ケイが負わせた怪我はどこにも残っていない。
どうやら回復薬で治したらしい。
獣人は魔力が少ない種族がほとんど。
魔法で回復させるようなことができないため、薬師という職業が発展してきた。
色々な病気や怪我、毒に対しての回復薬の製造にも長けているが、骨折を治すような薬はまだ存在していない。
なので、リカルドの怪我は治っているが、ケイの折れた腕と肋骨は治っていないらしい。
「結果は引き分けだけど、今の状態をみればケイの負けが一目瞭然ね?」
「ぐぅ……」
「……美花どのは手厳しいですな」
あまりにもっともな美花の意見に、ケイは何の文句も言えなかった。
気を失って、ベッドに横になっているケイと、普通に国王としての仕事をしているリカルド。
お互い降参したとは言っても、その後の状態は全く真逆。
ケイ自身も、立場が違えば美花と同じことを言っていただろう。
その一言でケイを打ちのめした美花に、さすがのリカルドも引いていた。
「帰るのが遅くなって申し訳ないですが、肋骨の痛みがなくなるまでは一応休んでいて下され」
この国の医者によってケイの骨折の治療はしてある。
とは言っても、骨が付くまではこのまま固定して安静にしてもらうのが前提だ。
ケイはもうこの国にとって要人なのだから、きっちり治して帰ってもらいたい。
「あぁ、それならちょっと待っててください。イタタタ……」
「……?」
リカルドとの会話を一旦区切ったケイは、美花に手伝ってもらい上半身を起こす。
痛みで少し顔を歪ませるが、何とか座禅を組んだ状態になる。
別にこの状態でなくてもいいのだが、この状態が一番やりやすいのでちょっと我慢だ。
何をするのか分からないため、リカルドはただ黙って見ている。
「……………………」
座禅を組んだケイは、無言になり瞑想をし始めた。
すると……
「おぉっ!!」
ゆっくりとケイを包むように魔力が膨らんでいき、まるで光に覆われているような状態へと変化していった。
とても幻想的な光景に、初めて見たリカルドは感嘆の声をあげた。
少しの間その状況が続くと、少しずつ光の加減が弱まっていき、座禅を組んだ状態のケイに戻っていった。
そして、瞑っていた目を開くと、折れていた右手を曲げたり伸ばしたりし、体を右左へ捻ってみたりした。
「もう大丈夫です。治りました」
さっきの光景は、自分で自分の怪我を治す回復魔法を行なったのだ。
エルフのケイは魔力量が多い。
なので、回復魔法も使える。
程度に差はあるが、他人を治すのは比較的早く覚えられた。
しかし、痛みで集中が途切れたりすることがあるので、自己治癒を使いこなせるようになるのは結構時間がかかった。
その時、集中しやすい方法として、座禅を組むという方法を試してみた。
すると、ピタッとハマったというか、上手く回復できるようになったのだ。
「……すごいですな。骨折をすぐに治せるなんて……」
先ほども言ったように、この国では薬師により大体の怪我や病気などは治せるが、骨折した腕を即座に治せるようなことはできない。
獣人の場合、骨折は、ちゃんと処置をすれば、高い自己治癒力から大した時間がかからず治る。
人族の三分の二程度の時間といったところだろうか。
なので、薬師たちは骨折をすぐに治せるような回復薬の製造を研究しているが、あまり熱心とは言えないかもしれない。
あっという間に治したケイに、リカルドは驚きと羨ましい感情で呟いた。
「……やはり、もう少し我が国も骨折の治療薬の研究を進めさせるべきか……」
「……リカルド殿?」
ベッドから降りて、もう何ともないように立つケイを見ていると、早急な対策をした方が良いのではと考え込み始めた。
自分の世界に入ってしまったようにブツブツ言い出したリカルドに、ケイが呼びかけるが、返事は少しの間戻ってこなかった。
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