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第5章
第87話
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「ウラーッ!!」
迫り来る弾を左手のナイフで防ぎ、時には躱し、リカルドはケイとの距離を詰める。
そして、ナイフの投擲でケイの逃走経路を塞ぐように誘導し、そのまま木剣で上段からケイに斬りかかる。
「くっ!?」
躱すのが不可能なほどに接近され、ケイはリカルドの木剣を左手に持つ短刀で防ぎにかかる。
ただの木を削って作っただけの短刀では、魔力を纏っても大した耐久力がなく、攻撃を防げても1発で砕けてしまった。
『くそっ!! 次はやばないな……』
元々、木の短刀は2本しかもっていなかった。
こんなことなら、もっと作っておくべきだった。
ケイにとって、短刀は防御用に持っているだけだが、銃が通用しない今の状況では重要な存在だ。
リカルドの剣での攻撃は強力の一言。
武器無しで防ごうとしたら、魔力を多めに使わないと無事では済まない。
ケイが魔力が多いと言っても、無限じゃない。
「…………仕方がない」
あんな剣の攻撃なんて、痛そうで食らいたくない。
なので、ケイは奥の手を出すことにした。
文字通り、魔法の指輪から出したのは、もう1丁の銃だった。
「えっ!?」
「っ!? まだ本気じゃなかったのですかな?」
1丁でも少々厄介なのに、もう1丁出てくるとは思わなかった。
両手に銃を持ったケイに、リカルドは警戒心が上がった。
驚いたのは、闘技場内への出入り口で見ている美花も同じだった。
ケイがそんな戦法を取るなんて、一緒になって初めて見たからだ。
「本気でしたよ。しかしあなた相手に手加減は必要ないでしょ?」
ここまでは全力と言えば全力。
ただ、リカルドへ大怪我をさせないようにとの配慮を考えたままでの全力だ。
しかし、ケイの攻撃を受けてもピンピンしている所を見ると、むしろもっと手数を増やしてダメージを与える必要がある。
これまで考えていた戦闘スタイルだが、ぶっつけでやってみることにした。
「………………?」
ケイの言葉を聞いたリカルドは、僅かに手が震えた。
一見、舐めているような発言にも取れる言葉だったため、怒りで震えているのかとケイは思った。
しかし、その口元は怒りのようには思えない。
「最高だ!!こんな楽しいのは久々だぜ!!」
腹を立てて震えていたのかと思ったのだが、やっぱり違ったようだ。
リカルドはこれまでで一番の笑顔になり、木剣を強く握った。
さっきの震えは、ただの武者震いだったらしい。
しかも、口調が完全に素になっている。
「行くぞ!!」
2丁拳銃スタイルでマジになったケイに、同じくマジになったリカルドは、何のためらいもなく地を蹴った。
素になったからなのか、気のせいかもしれないがまた速度が上がったようにも見える。
「ハッ!!」
“パンッ!!”“パンッ!!”
接近してくるリカルドに、ケイは両手の銃で魔弾を撃って迎撃を計る。
2丁になり飛んで来る弾が増えたにもかかわらず、2丁にしてもリカルドは防ぎ、躱して付いてくる。
『完全に慣れたか……』
ケイが思ったように、どうやらリカルドはここまでの戦いで、完全に銃への対処に慣れてしまったようた。
銃口から一直線に高速の弾を放出するのが銃。
つまりは銃口の射線に注意をすれば当たらない。
しかし、それが分かっていても、実行に移せるのは話が別。
この短期間でそれができるようになるとは、恐るべき戦闘センスだ。
「『だが銃だけじゃないぜ!』はっ!!」
「んっ!?」
銃がもう通用していないが、ケイは焦ってはいない。
接近してくるリカルドへ、まだ距離のあるのにもかかわらず蹴りを放つ。
何の意味があるのか分からず、リカルドは不思議に思った。
「ガッ!?」
当然ケイが距離を誤って空振りしたわけではない。
蹴りによってサッカーボール大の魔力の球を放ったのだ。
かなりの勢いで近付き、距離もないことから、リカルドは避けられない。
しかし、リカルドは超反応をして、剣で受け止め、そのまま上へ弾き飛ばした。
「っ!?」
魔力の球を弾いて、一時リカルドは胴の部分がガラ空きになる。
「ぐっ!?」
そこを逃さず、ケイは脇腹にミドルキックをクリーンヒットさせる。
当然拳で殴られたよりも痛く、リカルドは一瞬呻く。
しかし、蹴られて体勢が崩れたまま、ケイへ剣を薙ぐ。
それを予期していたかのように、ケイはバックステップして距離を取った。
「……………」「……………」
ケイとリカルドはお互い無言でにらみ合う。
2丁拳銃での戦闘スタイルは、アウトインアウト。
銃と魔法で相手の体勢を崩し、その一瞬に接近、一撃加えて離脱する。
先程の攻防で、リカルドはケイの攻略方法を、ケイは次はどんな方法で意表を突くかを、お互い模索している。
「ハッ!!」
「っ!?」
リカルドが動かないならケイには好都合。
離れた位置から銃と魔法で痛めつければいい。
避けられても、リカルドを動かし続けて体力を消耗させる。
エルフという人種のおかげか、魔力は潤沢にある。
いくらリカルドでも、さすがに体力が無尽蔵という理不尽なことは言うまい。
体力を削って速度が落ちれば、距離を詰められずに銃と魔法でケイの勝利が確定する。
それが分かっているリカルドは、これまで通り距離詰めなければならない。
自分の有利な土俵に引きずり込んだのは、ケイの方だった。
迫り来る弾を左手のナイフで防ぎ、時には躱し、リカルドはケイとの距離を詰める。
そして、ナイフの投擲でケイの逃走経路を塞ぐように誘導し、そのまま木剣で上段からケイに斬りかかる。
「くっ!?」
躱すのが不可能なほどに接近され、ケイはリカルドの木剣を左手に持つ短刀で防ぎにかかる。
ただの木を削って作っただけの短刀では、魔力を纏っても大した耐久力がなく、攻撃を防げても1発で砕けてしまった。
『くそっ!! 次はやばないな……』
元々、木の短刀は2本しかもっていなかった。
こんなことなら、もっと作っておくべきだった。
ケイにとって、短刀は防御用に持っているだけだが、銃が通用しない今の状況では重要な存在だ。
リカルドの剣での攻撃は強力の一言。
武器無しで防ごうとしたら、魔力を多めに使わないと無事では済まない。
ケイが魔力が多いと言っても、無限じゃない。
「…………仕方がない」
あんな剣の攻撃なんて、痛そうで食らいたくない。
なので、ケイは奥の手を出すことにした。
文字通り、魔法の指輪から出したのは、もう1丁の銃だった。
「えっ!?」
「っ!? まだ本気じゃなかったのですかな?」
1丁でも少々厄介なのに、もう1丁出てくるとは思わなかった。
両手に銃を持ったケイに、リカルドは警戒心が上がった。
驚いたのは、闘技場内への出入り口で見ている美花も同じだった。
ケイがそんな戦法を取るなんて、一緒になって初めて見たからだ。
「本気でしたよ。しかしあなた相手に手加減は必要ないでしょ?」
ここまでは全力と言えば全力。
ただ、リカルドへ大怪我をさせないようにとの配慮を考えたままでの全力だ。
しかし、ケイの攻撃を受けてもピンピンしている所を見ると、むしろもっと手数を増やしてダメージを与える必要がある。
これまで考えていた戦闘スタイルだが、ぶっつけでやってみることにした。
「………………?」
ケイの言葉を聞いたリカルドは、僅かに手が震えた。
一見、舐めているような発言にも取れる言葉だったため、怒りで震えているのかとケイは思った。
しかし、その口元は怒りのようには思えない。
「最高だ!!こんな楽しいのは久々だぜ!!」
腹を立てて震えていたのかと思ったのだが、やっぱり違ったようだ。
リカルドはこれまでで一番の笑顔になり、木剣を強く握った。
さっきの震えは、ただの武者震いだったらしい。
しかも、口調が完全に素になっている。
「行くぞ!!」
2丁拳銃スタイルでマジになったケイに、同じくマジになったリカルドは、何のためらいもなく地を蹴った。
素になったからなのか、気のせいかもしれないがまた速度が上がったようにも見える。
「ハッ!!」
“パンッ!!”“パンッ!!”
接近してくるリカルドに、ケイは両手の銃で魔弾を撃って迎撃を計る。
2丁になり飛んで来る弾が増えたにもかかわらず、2丁にしてもリカルドは防ぎ、躱して付いてくる。
『完全に慣れたか……』
ケイが思ったように、どうやらリカルドはここまでの戦いで、完全に銃への対処に慣れてしまったようた。
銃口から一直線に高速の弾を放出するのが銃。
つまりは銃口の射線に注意をすれば当たらない。
しかし、それが分かっていても、実行に移せるのは話が別。
この短期間でそれができるようになるとは、恐るべき戦闘センスだ。
「『だが銃だけじゃないぜ!』はっ!!」
「んっ!?」
銃がもう通用していないが、ケイは焦ってはいない。
接近してくるリカルドへ、まだ距離のあるのにもかかわらず蹴りを放つ。
何の意味があるのか分からず、リカルドは不思議に思った。
「ガッ!?」
当然ケイが距離を誤って空振りしたわけではない。
蹴りによってサッカーボール大の魔力の球を放ったのだ。
かなりの勢いで近付き、距離もないことから、リカルドは避けられない。
しかし、リカルドは超反応をして、剣で受け止め、そのまま上へ弾き飛ばした。
「っ!?」
魔力の球を弾いて、一時リカルドは胴の部分がガラ空きになる。
「ぐっ!?」
そこを逃さず、ケイは脇腹にミドルキックをクリーンヒットさせる。
当然拳で殴られたよりも痛く、リカルドは一瞬呻く。
しかし、蹴られて体勢が崩れたまま、ケイへ剣を薙ぐ。
それを予期していたかのように、ケイはバックステップして距離を取った。
「……………」「……………」
ケイとリカルドはお互い無言でにらみ合う。
2丁拳銃での戦闘スタイルは、アウトインアウト。
銃と魔法で相手の体勢を崩し、その一瞬に接近、一撃加えて離脱する。
先程の攻防で、リカルドはケイの攻略方法を、ケイは次はどんな方法で意表を突くかを、お互い模索している。
「ハッ!!」
「っ!?」
リカルドが動かないならケイには好都合。
離れた位置から銃と魔法で痛めつければいい。
避けられても、リカルドを動かし続けて体力を消耗させる。
エルフという人種のおかげか、魔力は潤沢にある。
いくらリカルドでも、さすがに体力が無尽蔵という理不尽なことは言うまい。
体力を削って速度が落ちれば、距離を詰められずに銃と魔法でケイの勝利が確定する。
それが分かっているリカルドは、これまで通り距離詰めなければならない。
自分の有利な土俵に引きずり込んだのは、ケイの方だった。
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