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第3章

第41話

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「ハッ!」

“スッ!”

 軽く食事を終えたルイスと話をし、ケイは亡くなった人たちの遺体を魔法の指輪に収納した。
 ルイスに、獣人族では遺体を魔法の指輪に収納するのはタブーかどうか尋ねると、問題ないとのことだった。
 人族大陸では、魔法の指輪に遺体を収納するのは、少し躊躇われる風潮にある。
 遺体を物のように扱うのが不快に思う人間がいたからだ。
 そうはいっても、町から町へ移動することが多い商人や冒険者は、魔物に遭遇する確率が高い。
 魔物に殺されたりした場合、魔物に喰われるよりも、せめて家族に遺体を届けてあげるべきと考えるのが普通。
 遺族としても、遺体のない墓に手を合わせるよりも、全然気持ちが違うはずだ。
 今回も全員の遺体を連れていけるかもしれないが、時間がかかる上に血の匂いで魔物が寄ってくる可能性も高い。
 家族の身としたら、無意味にこれ以上遺体を傷つけられたくはないだろう。
 それもきちんと説明したのだが、気を遣う意味がなかった。
 獣人族ではきちんと死者を弔うことを優先すべきことで、遺体を運ぶ方法は問題ではないそうだ。

「いこうか?」

「ハイ……」

 獣人の皆は体調的にまだ魔物と戦わせるのは不安がある。
 一番元気そうなルイスでもそうなので、ケイを先頭、美花を最後尾にして獣人たち5人を挟むように移動し始めた。
 キュウはケイのポケットに入ってのんびりしている。

「っ!?」

 東に向けて進んで行く途中、蛇の魔物が出現した。

「前に魔物が……」

“パンッ!!”

 魔物の発見を伝えようとルイスがしようとしたが、その言葉が言い終わる前にケイが銃の引き金を引いた。
 その一発でケイは蛇を仕留めた。

「…………」

「んっ? ルイスも気付いたのか?」

 ケイが蛇を仕留めて銃をホルスターにしまうと、ケイの早業に目を見開いた状態のルイスと目が合った。

「探知の範囲が広いんだな?」

 撃つ前にルイスが何か言おうとしていたようなので、ケイはその探知の広さに感心した。

「……いや、俺たち獣人は鼻が利く。臭いで判断しているだけだ」

「へぇ~、なるほど……」

 獣人は他の種族と比べて魔力が少ない。
 その分、生まれ持った高い身体能力で補う。
 先程の魔物の出現も、嗅覚で判断したようだ。
 彼らは獣人族の中でも狼人族と呼ばれる種族のようで、狼から進化したと言われているらしい。
 結構獣人には多い種族だそうだ。
 蛇は貴重なたんぱく源。
 だいぶ歩いてきたので、ここで一旦休憩をいれることにした。
 丁度いいので、蛇を調理して振舞った。



「ちょっと待ってくれ」

 休憩を取って、またしばらく歩いていくと、ようやくケイたちの家がある東の島が見える所まで来た。
 そこでケイは皆を止めて、休んでいるように言った。

「何をしているのですか?」

 昔造った組み立て式の橋を取り出すケイに、ルイスは問いかけた。

「ルイスはこの距離は飛び越えられるか?」

「大丈夫です。今は弱っているので難しいですが、アレシアと、イバンもギリギリ飛べるかもしれません。リリアナも数年経てば越えられるんじゃないかと……」

 西の島と東の島の間の海峡は、結構な距離がある。
 鍛練でも積まない限り、人族では簡単には飛び越せられないだろう。
 筋肉が付いているルイスなら、ケイはもしかしたら飛び越せられるのではないかと感じた。
 ルイスの言うアレシアとは20代中旬の女性、イバンとリリアナは高校生くらいの少年、少女のことだ。

「大人になれば飛び越えられるようになるのか?」

 まるで、成長するだけで飛び越せられるような言い方に、少し羨ましく感じる。

「脚力にも自信があるので……」

「ふ~ん」

 ケイが飛び越えられるようになったのは、かなりの鍛練をしたからだと言うのに、成長するだけでいいなんて、獣人とは何とも羨ましいものだ。

 ともかく、飛び越せられないような少女もいるので、組み立て式の橋を渡した。

「お~い! 帰ったぞ!」

「っ!?」

“ピョン! ピョン!”

 少し歩いて家につくと、ケイは帰宅の声をあげた。
 その声に反応したマルが、嬉しそうに飛び跳ねてきた。

「……珍しい。ケセランパサラン?」

 ルイスはマルの存在に気付いていたが、ケイが何もしていないので様子を窺っていた。
 そして姿を見ると、小さな毛玉だったので警戒心が薄れた。
 それに、キュウとかいうケセランパサランをケイが従魔にしていたので、こちらも同じ存在なのだろうと思っていた。

「俺の従魔だから安心していいぞ」

 キュウのことも説明していたから大丈夫だと思っていたが、ルイスが僅かに警戒していたようなので、一応説明しておくことにした。

「おかえり!」「パパ!」

「ただいま」

 ケイの声に反応したのか、家の中にいたレイナルドとカルロスも外に出てきた。
 可愛い息子たちの出迎えに、ケイはだらしなく表情を崩した。

「んっ? 誰?」

「あぁ、皆、西の海岸に流れ着いた人達だ」

 ケイに頭を撫でられた後、レイナルドは両親と弟以外の人間を初めて見て首を傾げた。
 カルロスの方は驚いたのか、ケイの足にしがみついた。

『『『『『……可愛い』』』』』』

 獣人たちは、綺麗に整った顔立ちのレイナルドと、とてつもなく可愛らしいカルロスを見て、同じ感想を思っていた。
 ケイも美形だが、目が覚めたばかりの時はそれどころではなかったので、気にしていなかった。
 それから時間が経ち、少しだけ余裕ができたからだろうか、レイナルドたちの不意打ちにはやられてしまったようだ。
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