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第2章
第34話
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10層まで攻略し、ケイと美花は一度拠点に戻った。
翌日、残りの階層を攻略するため、2人はまたダンジョンに入って行った。
24時間経過していないからか、5層、10層に侵入してもボスが出なかった。
美花への案内も含めているので、無駄な時間が省略できてよかったかもしれない。
「狼はいたけど、ちょっと無理そうね……」
「そうだね……」
12層に入ると、狼が群れを作っていた。
ただ、気性が荒く、中途半端に痛めつけてもお構いなしに向かって来た。
従魔にしようにも、これでは指示を聞かなそうだ。
美花が言うように、狼を従魔にするのは諦めた方がよさそうだ。
下層に入ったが、ケイと美花は上手く連携を取って、ダンジョンの最下層にあたる15層に到着した。
「最下層だから気を付けて」
「分かった」
ここまでは危なげなく進んでこれたが、流石に最後のボスはどうなるか分からない。
ケイも時々手こずることが多い。
そのことは昨日のうちに美花にも伝えてある。
なので、美花もちょっと表情が硬い。
「カニ?」
「カニだね……」
ケイと美花がボス部屋に入ると、待ち受けていたのはカニだった。
「でかいな……」
「そうね……」
カニはカニでも、大きさがまともではなかった。
とんでもなくでかい。
島の周りで見つけるカニは、手のひらくらいの大きさしかない。
身が少ないので、たまに捕まえたりする程度だ。
「一先ずハサミに気を付けて」
「了解!」
カニの攻撃で思いつくのは、やはりハサミ。
ケイは美花に警戒するように言った。
そして、言ってる側からカニは巨大なハサミを振り回してきた。
その質量から威力は確かにすごそうだ。
だが、所詮当たらなければどうってことはない。
重そうな攻撃ではあるが、速度はかなり遅い。
「攻めてもいいかしら?」
「いや、ちょっと待って」
2人とも難なく攻撃を躱せている。
なので、美花はそろそろこっちから攻めようと提案してきたが、ケイがそれを止めた。
カニの様子が少し変わったからだ。
「泡?」
カニが口から泡のような物を出してきた。
ポコポコと幾つも吐き出した泡の1つが、美花の方にゆっくりと飛んできた。
“パンッ!!”
「っ!?」
その泡が破裂したと思ったら、空気の塊のような物が美花に襲い掛かった。
「ぐっ!?」
その空気が直撃すると、美花は体を浮かされ吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた美花は、そのままボス部屋の壁に背中を打ちつけた。
「美花!?」
突然のことでケイも何が起きたのか分からず、慌てて美花の安否を尋ねた。
「だ、大丈夫……」
打ちつけた背中をさすりながら、美花はケイに返事をした。
結構痛かったのか、表情は曇っている。
「泡自体に攻撃力はないみたい。けど、割れた後の圧縮された空気に気を付けて」
「分かった」
泡自体は攻撃するためではないようだ。
弾けて出た空気で吹き飛ばしすことが目的かもしれない。
そうやって壁に追い込んでハサミで仕留めるつもりなのかもしれない。
「思ったより厄介な魔物だな」
“パンッ!!”“パンッ!!”
部屋中に巻き散らした泡を、ケイは銃を撃って破壊する。
「切りがないな……」
ケイが銃で何度割っても、カニは何度も吐き出してくる。
確かにケイが言うように切りがない。
「美花は泡とハサミを避けていてくれ! 俺がやる!」
「分かった! 任せたわ!」
美花に指示を出した後、ケイは一気にカニに接近していった。
「ギッ!?」
近付いてくるケイに向かって、カニはハサミを振り下ろす。
“フッ!!”
そのハサミを避けると共に、ケイは更に加速した。
それによって、カニのハサミが床を打ちつける
「ギッ!?」
ハサミを躱され、カニはケイの姿を見失う。
「こっちだ!」
「ッ!?」
聞こえたケイの声は、カニの背後からだった。
巨大であるがゆえにカニの体の下は隙間だらけだ。
加速したケイはそのまま体の下を通って背後へと回ったのだ。
カニがケイの姿を見失っている間に、ケイはカニの上空に魔力を集めていた。
「ハッ!!」
その魔力が巨大な水球へと変化した。
その水球が落ちると、カニ全身を包み込んだ。
「ギャッ!?」
その水球に包み込まれると、カニは悲鳴のような声をあげた。
ケイによる火と水を組み合わせた熱湯攻撃。
熱さに苦しみ少し暴れた後、カニはすぐに動かなくなった。
巨大なゆでガニが出来あがりだ。
「…………不謹慎かもしれないけど、美味しそうね?」
「……うん」
真っ赤にゆで上がった巨大ガニを見ていると、美花は真面目な顔をしてそう言った。
ケイも同じように思っていたので、すぐに頷いた。
「「ちょっと持ち帰ろうか?」」
ダンジョン内の物を持ち帰ると、内部の魔力が減って出てくる魔物の質が落ちる。
今でもボス部屋以外でそれほど強い魔物が出ていない状況なのに、これ以上質が落ちたらレベルアップどころではない。
でも、それが分かっていても目の前のカニは食べてみたい。
全部はともかく、少しくらいは持ち帰ってもいいのではないかと2人とも思い、声がそろってしまった。
「ハハ……」「フフ……」
同じことを思っていたことがおかしくなり、2人は思わず笑ってしまったのだった。
翌日、残りの階層を攻略するため、2人はまたダンジョンに入って行った。
24時間経過していないからか、5層、10層に侵入してもボスが出なかった。
美花への案内も含めているので、無駄な時間が省略できてよかったかもしれない。
「狼はいたけど、ちょっと無理そうね……」
「そうだね……」
12層に入ると、狼が群れを作っていた。
ただ、気性が荒く、中途半端に痛めつけてもお構いなしに向かって来た。
従魔にしようにも、これでは指示を聞かなそうだ。
美花が言うように、狼を従魔にするのは諦めた方がよさそうだ。
下層に入ったが、ケイと美花は上手く連携を取って、ダンジョンの最下層にあたる15層に到着した。
「最下層だから気を付けて」
「分かった」
ここまでは危なげなく進んでこれたが、流石に最後のボスはどうなるか分からない。
ケイも時々手こずることが多い。
そのことは昨日のうちに美花にも伝えてある。
なので、美花もちょっと表情が硬い。
「カニ?」
「カニだね……」
ケイと美花がボス部屋に入ると、待ち受けていたのはカニだった。
「でかいな……」
「そうね……」
カニはカニでも、大きさがまともではなかった。
とんでもなくでかい。
島の周りで見つけるカニは、手のひらくらいの大きさしかない。
身が少ないので、たまに捕まえたりする程度だ。
「一先ずハサミに気を付けて」
「了解!」
カニの攻撃で思いつくのは、やはりハサミ。
ケイは美花に警戒するように言った。
そして、言ってる側からカニは巨大なハサミを振り回してきた。
その質量から威力は確かにすごそうだ。
だが、所詮当たらなければどうってことはない。
重そうな攻撃ではあるが、速度はかなり遅い。
「攻めてもいいかしら?」
「いや、ちょっと待って」
2人とも難なく攻撃を躱せている。
なので、美花はそろそろこっちから攻めようと提案してきたが、ケイがそれを止めた。
カニの様子が少し変わったからだ。
「泡?」
カニが口から泡のような物を出してきた。
ポコポコと幾つも吐き出した泡の1つが、美花の方にゆっくりと飛んできた。
“パンッ!!”
「っ!?」
その泡が破裂したと思ったら、空気の塊のような物が美花に襲い掛かった。
「ぐっ!?」
その空気が直撃すると、美花は体を浮かされ吹き飛ばされた。
吹き飛ばされた美花は、そのままボス部屋の壁に背中を打ちつけた。
「美花!?」
突然のことでケイも何が起きたのか分からず、慌てて美花の安否を尋ねた。
「だ、大丈夫……」
打ちつけた背中をさすりながら、美花はケイに返事をした。
結構痛かったのか、表情は曇っている。
「泡自体に攻撃力はないみたい。けど、割れた後の圧縮された空気に気を付けて」
「分かった」
泡自体は攻撃するためではないようだ。
弾けて出た空気で吹き飛ばしすことが目的かもしれない。
そうやって壁に追い込んでハサミで仕留めるつもりなのかもしれない。
「思ったより厄介な魔物だな」
“パンッ!!”“パンッ!!”
部屋中に巻き散らした泡を、ケイは銃を撃って破壊する。
「切りがないな……」
ケイが銃で何度割っても、カニは何度も吐き出してくる。
確かにケイが言うように切りがない。
「美花は泡とハサミを避けていてくれ! 俺がやる!」
「分かった! 任せたわ!」
美花に指示を出した後、ケイは一気にカニに接近していった。
「ギッ!?」
近付いてくるケイに向かって、カニはハサミを振り下ろす。
“フッ!!”
そのハサミを避けると共に、ケイは更に加速した。
それによって、カニのハサミが床を打ちつける
「ギッ!?」
ハサミを躱され、カニはケイの姿を見失う。
「こっちだ!」
「ッ!?」
聞こえたケイの声は、カニの背後からだった。
巨大であるがゆえにカニの体の下は隙間だらけだ。
加速したケイはそのまま体の下を通って背後へと回ったのだ。
カニがケイの姿を見失っている間に、ケイはカニの上空に魔力を集めていた。
「ハッ!!」
その魔力が巨大な水球へと変化した。
その水球が落ちると、カニ全身を包み込んだ。
「ギャッ!?」
その水球に包み込まれると、カニは悲鳴のような声をあげた。
ケイによる火と水を組み合わせた熱湯攻撃。
熱さに苦しみ少し暴れた後、カニはすぐに動かなくなった。
巨大なゆでガニが出来あがりだ。
「…………不謹慎かもしれないけど、美味しそうね?」
「……うん」
真っ赤にゆで上がった巨大ガニを見ていると、美花は真面目な顔をしてそう言った。
ケイも同じように思っていたので、すぐに頷いた。
「「ちょっと持ち帰ろうか?」」
ダンジョン内の物を持ち帰ると、内部の魔力が減って出てくる魔物の質が落ちる。
今でもボス部屋以外でそれほど強い魔物が出ていない状況なのに、これ以上質が落ちたらレベルアップどころではない。
でも、それが分かっていても目の前のカニは食べてみたい。
全部はともかく、少しくらいは持ち帰ってもいいのではないかと2人とも思い、声がそろってしまった。
「ハハ……」「フフ……」
同じことを思っていたことがおかしくなり、2人は思わず笑ってしまったのだった。
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