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第5章
第177話 決着③
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「くそっ!! 奴ら息を吹き返し追って……」
敷斎王国兵一人で、数体のミノタウロスと化したが敷島奴隷たちを道連れにした自爆攻撃が連鎖する。
それによって、かなりの勢いでミノタウロスたちが消えて行った。
城を囲っているアデマス軍の戦力において一番の戦闘力のミノタウロスたちが減ることで、敷斎王国兵たちの勢いが戻りつつあった。
そのことに、ラトバラは忌々しそうに声を漏らす。
「勝ち目が薄いというのに……」
オリアーナが作り出した新型強化薬によってミノタウロスと化した敷島奴隷たちがいたことで優位に立っていたというのに、これではこちらにかなりの被害を覚悟しなければならなくなった。
それでも数で優る自分たちの勝利は覆らないというのに無駄な抵抗をする敷斎王国の兵たちを、リンドンは不愉快そうに呟いた。
「何としても奴らを潰せ!!」
「「「「「オォーーー!!」」」」」
このまま勢いづかせるわけにはいかない。
敷斎王国兵を潰すために、ラトバラは全ての策を使い切ることにした。
それは、王都内にいた敷島人たちだ。
敷島兵になれなかったとはいっても、敷島人は戦闘力が高い。
魔物化させるために残していたが、ラクト帝国から提供された魔物化薬は底をついている。
そのため、奴隷化した敷島人たちを使い切ることにしたのだ。
「しかし……」
「分かっている。だからまともにはいかない」
敷島奴隷は確かに強いが、新型強化薬を使用した敷斎王国兵たちを相手に戦うには実力が足りない。
そのことは戦闘を開始した初期に証明されている。
それを指摘しようとしたリンドンの言葉を遮るように、ラトバラは笑みを浮かべて返答した。
まともに戦ったら勝ち目がないなら、正攻法にはいかなければいい。
ラトバラには、何か考えがあるような言い方だった。
「同族だろうが関係ねえ!」
ミノタウロスが減った時点で、数以外でラトバラ軍を脅威に思うことはない。
たとえ同じ敷島人だろうと、敵には容赦をしない敷斎王国兵たちは、迫りくる敷島奴隷たちに斬りかかった。
「「「「「…………」」」」」
“スッ!!”
「なっ!?」
自分たちに迫りくる敷斎王国兵たち。
そんな彼らに対し、敷斎奴隷の者たちは体内の魔力を一気に高める。
それが何を意味するのかを理解した敷斎王国兵たちは、目を見開くと共にその場から退避しようとした。
“ズドンッ!!”
退避は間に合わない。
敷島奴隷たちがおこなった自爆攻撃によって、敷斎王国兵たちは大怪我を負った。
「言っただろ? 目には目をだ」
自爆攻撃により減らされたのなら、自爆攻撃で返す。
またしても敵の策を真似したラトバラは笑みを浮かべ、声が届くはずがない距離にいる敷斎王国兵たちに呟いた。
「しかし……」
「ぬっ!?」
自爆攻撃返しによって、敷斎王国兵たちに大怪我を負わせることには成功した。
しかし、そうなった人数はそれほど多くなかったため、リンドンとラトバラは表情を硬くした。
「やってくれるじゃねえか!?」
「少しでも道連れにしてやるぜ!!」
敷島奴隷を使用しての自爆攻撃返しをしてきたアデマス軍に対し、脳筋の多い敷斎王国兵たちは怒りの籠った笑みを浮かべ、周囲にいるアデマス軍の兵たちに襲い掛かって行った。
「ギャー!!」「グワッ!!」「グエッ!!」
新型強化薬を使用した敷斎王国兵たちの戦闘力は、驚異の一言に尽きる。
アデマス軍の兵たちも懸命に抵抗するが、まるで紙を斬るかのように殺されていった。
「くっ!! しつこい奴らめ!!」
こちらが一人の敷斎王国兵を倒すために、何百ものアデマス兵が殺される。
勝ち目がないのが分かっているのに、手負いの獣のように暴れまわる敷斎王国兵たちを見て、ラトバラは苛立ちを隠せないでいた。
◆◆◆◆◆
「ハァ、ハァ……」
多くのアデマス兵を道連れにしつつ、敷斎王国の兵たちは一人また一人と倒れていく。
そして、とうとう最後の一人となった。
近藤家当主の勝昭だ。
王である重蔵と息子の天祐が来るまでの防衛を任されていた勝昭は、最後までその指示をこなそうと耐え続けていた。
しかし、懸命に戦った仲間たちはもうどこにもいない。
これ以上指示の遂行は不可能だ。
息を切らす勝昭は、自分も最期の時が来たのだと受け入れていた。
「ようやく最後か……」
数の上では圧倒的に上回っており、もっと早く終わらせることができると思っていた。
しかし、敷島人は化け物の集まりだった。
アデマス軍の勝利が確定するまで、大量の命を犠牲にすることになってしまった。
それでも、悲願のアデマス王国の奪還が目の前に迫っている。
そのことを感慨深く思いながら、ラトバラは城の前に立っている勝昭のことを見つめていた。
「やれ!」
「「「「「オォーーー!!」」」」」
傷だらけで仲間もいなくなった勝昭。
そんな相手でも油断することなく、ラトバラは大量の兵たちで仕留めにかかった。
「フッ!」
もうすぐ死ぬと分かっている勝昭は、迫りくるアデマス軍の兵を見て何故か笑みを浮かべる。
そして、いつの間にか手に持っていた物を口の中に放り込んだ。
「グッ!! ガアァーー!!」
勝昭が口に含んだ物、それは新型強化薬だ。
それを数錠呑み込んだことにより、勝昭の体に大量の魔力が沸き上がる。
その魔力を利用して、勝昭はすぐさま行動した。
“ズガーーーン!!”
「「っっっ!?」」
勝昭を中心とした大爆発が起きる。
それは、離れたラトバラやリンドンのすぐそばまで巻き込み、二人は熱風でかなりの距離まで吹き飛ばされることになった。
勝昭がおこなったのは、仲間たちがおこなったのと同じ自爆魔法だ。
規模が全く違う理由。
それは、新型強化薬の過剰摂取によって生み出した大量の魔力を利用して、威力を巨大化させたからだ。
「……なんて、奴だ……」
「これだから、敷島人は……」
爆発によって起きたきのこ雲が少しずつ治まり始め、熱風で遠くまで吹き飛ばされたラトバラとリンドンはヨロヨロと立ち上がる。
そして、現状を見て驚嘆の声を漏らす。
先程の爆発により、五体満足なアデマス軍の兵は数百人程度しかいなかったからだ。
大量のアデマス軍を巻き添えにして、ようやく敷斎王国兵は全滅した。
敷斎王国兵一人で、数体のミノタウロスと化したが敷島奴隷たちを道連れにした自爆攻撃が連鎖する。
それによって、かなりの勢いでミノタウロスたちが消えて行った。
城を囲っているアデマス軍の戦力において一番の戦闘力のミノタウロスたちが減ることで、敷斎王国兵たちの勢いが戻りつつあった。
そのことに、ラトバラは忌々しそうに声を漏らす。
「勝ち目が薄いというのに……」
オリアーナが作り出した新型強化薬によってミノタウロスと化した敷島奴隷たちがいたことで優位に立っていたというのに、これではこちらにかなりの被害を覚悟しなければならなくなった。
それでも数で優る自分たちの勝利は覆らないというのに無駄な抵抗をする敷斎王国の兵たちを、リンドンは不愉快そうに呟いた。
「何としても奴らを潰せ!!」
「「「「「オォーーー!!」」」」」
このまま勢いづかせるわけにはいかない。
敷斎王国兵を潰すために、ラトバラは全ての策を使い切ることにした。
それは、王都内にいた敷島人たちだ。
敷島兵になれなかったとはいっても、敷島人は戦闘力が高い。
魔物化させるために残していたが、ラクト帝国から提供された魔物化薬は底をついている。
そのため、奴隷化した敷島人たちを使い切ることにしたのだ。
「しかし……」
「分かっている。だからまともにはいかない」
敷島奴隷は確かに強いが、新型強化薬を使用した敷斎王国兵たちを相手に戦うには実力が足りない。
そのことは戦闘を開始した初期に証明されている。
それを指摘しようとしたリンドンの言葉を遮るように、ラトバラは笑みを浮かべて返答した。
まともに戦ったら勝ち目がないなら、正攻法にはいかなければいい。
ラトバラには、何か考えがあるような言い方だった。
「同族だろうが関係ねえ!」
ミノタウロスが減った時点で、数以外でラトバラ軍を脅威に思うことはない。
たとえ同じ敷島人だろうと、敵には容赦をしない敷斎王国兵たちは、迫りくる敷島奴隷たちに斬りかかった。
「「「「「…………」」」」」
“スッ!!”
「なっ!?」
自分たちに迫りくる敷斎王国兵たち。
そんな彼らに対し、敷斎奴隷の者たちは体内の魔力を一気に高める。
それが何を意味するのかを理解した敷斎王国兵たちは、目を見開くと共にその場から退避しようとした。
“ズドンッ!!”
退避は間に合わない。
敷島奴隷たちがおこなった自爆攻撃によって、敷斎王国兵たちは大怪我を負った。
「言っただろ? 目には目をだ」
自爆攻撃により減らされたのなら、自爆攻撃で返す。
またしても敵の策を真似したラトバラは笑みを浮かべ、声が届くはずがない距離にいる敷斎王国兵たちに呟いた。
「しかし……」
「ぬっ!?」
自爆攻撃返しによって、敷斎王国兵たちに大怪我を負わせることには成功した。
しかし、そうなった人数はそれほど多くなかったため、リンドンとラトバラは表情を硬くした。
「やってくれるじゃねえか!?」
「少しでも道連れにしてやるぜ!!」
敷島奴隷を使用しての自爆攻撃返しをしてきたアデマス軍に対し、脳筋の多い敷斎王国兵たちは怒りの籠った笑みを浮かべ、周囲にいるアデマス軍の兵たちに襲い掛かって行った。
「ギャー!!」「グワッ!!」「グエッ!!」
新型強化薬を使用した敷斎王国兵たちの戦闘力は、驚異の一言に尽きる。
アデマス軍の兵たちも懸命に抵抗するが、まるで紙を斬るかのように殺されていった。
「くっ!! しつこい奴らめ!!」
こちらが一人の敷斎王国兵を倒すために、何百ものアデマス兵が殺される。
勝ち目がないのが分かっているのに、手負いの獣のように暴れまわる敷斎王国兵たちを見て、ラトバラは苛立ちを隠せないでいた。
◆◆◆◆◆
「ハァ、ハァ……」
多くのアデマス兵を道連れにしつつ、敷斎王国の兵たちは一人また一人と倒れていく。
そして、とうとう最後の一人となった。
近藤家当主の勝昭だ。
王である重蔵と息子の天祐が来るまでの防衛を任されていた勝昭は、最後までその指示をこなそうと耐え続けていた。
しかし、懸命に戦った仲間たちはもうどこにもいない。
これ以上指示の遂行は不可能だ。
息を切らす勝昭は、自分も最期の時が来たのだと受け入れていた。
「ようやく最後か……」
数の上では圧倒的に上回っており、もっと早く終わらせることができると思っていた。
しかし、敷島人は化け物の集まりだった。
アデマス軍の勝利が確定するまで、大量の命を犠牲にすることになってしまった。
それでも、悲願のアデマス王国の奪還が目の前に迫っている。
そのことを感慨深く思いながら、ラトバラは城の前に立っている勝昭のことを見つめていた。
「やれ!」
「「「「「オォーーー!!」」」」」
傷だらけで仲間もいなくなった勝昭。
そんな相手でも油断することなく、ラトバラは大量の兵たちで仕留めにかかった。
「フッ!」
もうすぐ死ぬと分かっている勝昭は、迫りくるアデマス軍の兵を見て何故か笑みを浮かべる。
そして、いつの間にか手に持っていた物を口の中に放り込んだ。
「グッ!! ガアァーー!!」
勝昭が口に含んだ物、それは新型強化薬だ。
それを数錠呑み込んだことにより、勝昭の体に大量の魔力が沸き上がる。
その魔力を利用して、勝昭はすぐさま行動した。
“ズガーーーン!!”
「「っっっ!?」」
勝昭を中心とした大爆発が起きる。
それは、離れたラトバラやリンドンのすぐそばまで巻き込み、二人は熱風でかなりの距離まで吹き飛ばされることになった。
勝昭がおこなったのは、仲間たちがおこなったのと同じ自爆魔法だ。
規模が全く違う理由。
それは、新型強化薬の過剰摂取によって生み出した大量の魔力を利用して、威力を巨大化させたからだ。
「……なんて、奴だ……」
「これだから、敷島人は……」
爆発によって起きたきのこ雲が少しずつ治まり始め、熱風で遠くまで吹き飛ばされたラトバラとリンドンはヨロヨロと立ち上がる。
そして、現状を見て驚嘆の声を漏らす。
先程の爆発により、五体満足なアデマス軍の兵は数百人程度しかいなかったからだ。
大量のアデマス軍を巻き添えにして、ようやく敷斎王国兵は全滅した。
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