92 / 179
第4章
第92話 1対多③
しおりを挟む
「「ハッ!!」」
「フッ!」
敷島兵の2人が、ほぼ同時に限に襲い掛かる。
2人からの攻撃を、限は盾にするようにして樹木の背後に回り込む、
「だったら……」
樹の裏に隠れたくらいで、回避しきれたわけではない。
だったら邪魔する樹ごと始末してしまおうと、敷島の2人はそのまま斬りかかる。
「「ハッ!!」」
“ドサッ!!”
2人の攻撃により、樹が斬り倒される。
「っ!!」「いない!?」
これで隠れることができなくなった限を斬り殺そうと、敷島の2人が刀を構えるが、肝心の限の姿がない。
いつの間に移動したのかと周囲を見渡すが、どこにも見つからない。
「上だ!!」
「何っ!?」
樹を斬った2人が限の見失っていると、他の敷島兵が声を上げる。
その声を聞いて、2人だけでなく他の敷島兵たちも視線を上に向けた。
「いたぞっ!!」
太陽の光によってなかなか見つからないでいた限の姿を発見した1人が、上空を指差す。
多くの視線が向かった先には、刀に魔力を溜めた限がいた。
「まずい!!」
「迎撃……!!」
「そんなの間に合わん!!」
限の姿を確認した敷島の者たちは慌てる。
あの状態の限が次に何をするのかをすぐに理解したからだ。
自分たちも跳びあがって迎撃をするという選択肢が浮かんだが、すぐにそれを否定する。
「ハーッ!!」
魔法を放つには溜めが必要で、それはどんな達人であろうと一緒だ。
しかし、溜めの時間を短くすることはできる。
その方法は、魔力のコントロールを徹底的に鍛えることだ。
人体実験による副作用で魔力を感じることが出来るようになった限は、魔力を感じる力は誰よりも上だ。
その魔力感知を使用してのコントロール訓練により、限の魔力操作は天下一品まで高められている。
つまり、他の敷島の者たちが迎撃をするよりも、限の攻撃の方が早く発動する。
「グアッ!!」「うわっ!!」「ギャー!!」
上空から刀を振り回すことにより、限は魔力の斬撃の雨を地上にいる敷島の兵たちに降らした。
その斬撃により、多くの敷島兵たちが怪我を負う。
「くっ!」「このっ!」「っと!」
「チッ!! やっぱり大量にとはいかないか……」
斬撃により怪我を負う敷島の兵たちがいるのとは反対に、斬撃を防いだり躱したりする者もいる。
むしろ、7割は後者だ。
ぜいたくを言えば半分くらいは戦闘不能に持ち込みたかっただけに、限は思わず舌打ちをした。
しかし、それも予想の範疇。
敷島の者なら、あの状況で咄嗟に防御や回避に意識を向けるのが当然。
攻撃を受けた者は、実力不足と言った方が良いだろう。
「でも、少しは減らせたか……」
希望通りとはいかなかったが、実力不足や防御下手を潰せた。
そんな者たちでも、居れば数となり力になる。
近接戦で役に立たないまでも、魔法による援護で邪魔をしてくるかもしれない。
数を減らしたことで、その危険性を多少は回避できたため、限はひとまず良しとした。
「野郎!!」
「今のうちに囲め!!」
攻撃を終えて落下してくる限。
その間に、攻撃を防御・回避した敷島兵たちは、周りを囲みにかかる。
「フッ……狙い通りだ」
このまま地上に降り立てば周囲を敷島兵に囲まれ、限でも無傷では済まないかもしれない。
にもかかわらず、落下しながら笑みを浮かべた限は、小さく呟きつつ敷島兵の集まる地上に刀を向けた。
「発動!!」
「「「「「っっっ!?」」」」」
限の言葉と共に地面に魔法陣が浮かぶ。
突然のことに、さすがの敷島兵たちも驚きで目を見開く。
“ズドンッ!!”
浮かび上がった魔法陣が、大爆発を起こす。
それにより、限の周囲を囲むために集まっていた敷島兵たちが吹き飛んだ。
「くっ! 思ったより爆風が強かったな」
ここまで、限はただ無策で動き回りながら迎撃をし続けていたのではない。
動き回りながら、地面に少しずつ魔力を設置していたのだ。
どんなに限が強くても、増え続ける敷島兵相手に逃げ続けることができるわけがない。
いつか囲まれてしまう。
しかし、その時は逆に自分にとってもチャンスだ。
敵が一ヵ所に集中しているということなのだから。
そのため、用意していたのが爆撃だ。
その爆撃により思っていたよりも熱風が巻き上がり、それを受けた限は手で顔を覆った。
「がっ……」「うぐ……」「うぅ……」
爆撃によって巻き上がった土煙が治まると、そこはまさに死屍累々といった状況になっていた。
大量の敷島兵が爆発によって怪我を負い、五体満足で生き残っているのは数えきれるくらいしか存在していなかった。
そういった者たちは、魔法陣の外側にいたのだろう。
魔法陣の中心にいた者たちは僅かな肉片だけ残して、跡形もなく吹き飛んでしまったようだ。
「あっ! 刀……、まあいいか」
殺した敷島兵から刀を奪う。
限はそれを密かに楽しんでいたのだが、爆撃によって刀までもが持ち主と共に吹き飛んでしまった。
全員の刀を手に入れなければ気が済まない。
などというほど完全主義者じゃないため、限は仕方ないことだと諦めた。
「さて、生き残っている奴らを仕留めるか……」
残っている敷島兵は、全体の2割程度。
その程度なら、囲まれずに戦うことも難しくない。
しかも、そのほとんどが怪我をしている。
そんな相手が自分に脅威を与えることはできないと、限は自信をもって仕留めにかかることにした。
「っっっ!?」
“ゴウッ!!”
生き残った者たちを仕留めようと足を踏み出そうとした時、限は強烈な殺気を感じ、その場から跳び退いた。
跳び退いた瞬間、先程まで限のいた場所に巨大な火球が落ちてきた。
もしもあのまま回避に移っていなかったら、限は消し炭になっていたことだろう。
「貴様……よくも我が兵をやってくれたな!?」
火球が飛んできた方角に視線を向ける限。
すると、こめかみに青筋を立てた菱山源斎がゆっくりと限へと向かってきていた。
仲間を大量に殺されて、完全にお冠のようだ。
「おぉ! 大将のお出ましか……」
元々、限はここにいる敷島兵を皆殺しをするつもりでこの戦いに参戦した。
大将である源斎の殺害も、当然その計画の1つだ。
まだ生き残っている敷島兵がいるが、源斎の相手をするのが優先だ。
自分の父である斎藤家当主の重蔵。
それと同等の実力を有すると言われている源斎と戦える良い機会に、限は嬉しそうに笑みを浮かべたのだった。
「フッ!」
敷島兵の2人が、ほぼ同時に限に襲い掛かる。
2人からの攻撃を、限は盾にするようにして樹木の背後に回り込む、
「だったら……」
樹の裏に隠れたくらいで、回避しきれたわけではない。
だったら邪魔する樹ごと始末してしまおうと、敷島の2人はそのまま斬りかかる。
「「ハッ!!」」
“ドサッ!!”
2人の攻撃により、樹が斬り倒される。
「っ!!」「いない!?」
これで隠れることができなくなった限を斬り殺そうと、敷島の2人が刀を構えるが、肝心の限の姿がない。
いつの間に移動したのかと周囲を見渡すが、どこにも見つからない。
「上だ!!」
「何っ!?」
樹を斬った2人が限の見失っていると、他の敷島兵が声を上げる。
その声を聞いて、2人だけでなく他の敷島兵たちも視線を上に向けた。
「いたぞっ!!」
太陽の光によってなかなか見つからないでいた限の姿を発見した1人が、上空を指差す。
多くの視線が向かった先には、刀に魔力を溜めた限がいた。
「まずい!!」
「迎撃……!!」
「そんなの間に合わん!!」
限の姿を確認した敷島の者たちは慌てる。
あの状態の限が次に何をするのかをすぐに理解したからだ。
自分たちも跳びあがって迎撃をするという選択肢が浮かんだが、すぐにそれを否定する。
「ハーッ!!」
魔法を放つには溜めが必要で、それはどんな達人であろうと一緒だ。
しかし、溜めの時間を短くすることはできる。
その方法は、魔力のコントロールを徹底的に鍛えることだ。
人体実験による副作用で魔力を感じることが出来るようになった限は、魔力を感じる力は誰よりも上だ。
その魔力感知を使用してのコントロール訓練により、限の魔力操作は天下一品まで高められている。
つまり、他の敷島の者たちが迎撃をするよりも、限の攻撃の方が早く発動する。
「グアッ!!」「うわっ!!」「ギャー!!」
上空から刀を振り回すことにより、限は魔力の斬撃の雨を地上にいる敷島の兵たちに降らした。
その斬撃により、多くの敷島兵たちが怪我を負う。
「くっ!」「このっ!」「っと!」
「チッ!! やっぱり大量にとはいかないか……」
斬撃により怪我を負う敷島の兵たちがいるのとは反対に、斬撃を防いだり躱したりする者もいる。
むしろ、7割は後者だ。
ぜいたくを言えば半分くらいは戦闘不能に持ち込みたかっただけに、限は思わず舌打ちをした。
しかし、それも予想の範疇。
敷島の者なら、あの状況で咄嗟に防御や回避に意識を向けるのが当然。
攻撃を受けた者は、実力不足と言った方が良いだろう。
「でも、少しは減らせたか……」
希望通りとはいかなかったが、実力不足や防御下手を潰せた。
そんな者たちでも、居れば数となり力になる。
近接戦で役に立たないまでも、魔法による援護で邪魔をしてくるかもしれない。
数を減らしたことで、その危険性を多少は回避できたため、限はひとまず良しとした。
「野郎!!」
「今のうちに囲め!!」
攻撃を終えて落下してくる限。
その間に、攻撃を防御・回避した敷島兵たちは、周りを囲みにかかる。
「フッ……狙い通りだ」
このまま地上に降り立てば周囲を敷島兵に囲まれ、限でも無傷では済まないかもしれない。
にもかかわらず、落下しながら笑みを浮かべた限は、小さく呟きつつ敷島兵の集まる地上に刀を向けた。
「発動!!」
「「「「「っっっ!?」」」」」
限の言葉と共に地面に魔法陣が浮かぶ。
突然のことに、さすがの敷島兵たちも驚きで目を見開く。
“ズドンッ!!”
浮かび上がった魔法陣が、大爆発を起こす。
それにより、限の周囲を囲むために集まっていた敷島兵たちが吹き飛んだ。
「くっ! 思ったより爆風が強かったな」
ここまで、限はただ無策で動き回りながら迎撃をし続けていたのではない。
動き回りながら、地面に少しずつ魔力を設置していたのだ。
どんなに限が強くても、増え続ける敷島兵相手に逃げ続けることができるわけがない。
いつか囲まれてしまう。
しかし、その時は逆に自分にとってもチャンスだ。
敵が一ヵ所に集中しているということなのだから。
そのため、用意していたのが爆撃だ。
その爆撃により思っていたよりも熱風が巻き上がり、それを受けた限は手で顔を覆った。
「がっ……」「うぐ……」「うぅ……」
爆撃によって巻き上がった土煙が治まると、そこはまさに死屍累々といった状況になっていた。
大量の敷島兵が爆発によって怪我を負い、五体満足で生き残っているのは数えきれるくらいしか存在していなかった。
そういった者たちは、魔法陣の外側にいたのだろう。
魔法陣の中心にいた者たちは僅かな肉片だけ残して、跡形もなく吹き飛んでしまったようだ。
「あっ! 刀……、まあいいか」
殺した敷島兵から刀を奪う。
限はそれを密かに楽しんでいたのだが、爆撃によって刀までもが持ち主と共に吹き飛んでしまった。
全員の刀を手に入れなければ気が済まない。
などというほど完全主義者じゃないため、限は仕方ないことだと諦めた。
「さて、生き残っている奴らを仕留めるか……」
残っている敷島兵は、全体の2割程度。
その程度なら、囲まれずに戦うことも難しくない。
しかも、そのほとんどが怪我をしている。
そんな相手が自分に脅威を与えることはできないと、限は自信をもって仕留めにかかることにした。
「っっっ!?」
“ゴウッ!!”
生き残った者たちを仕留めようと足を踏み出そうとした時、限は強烈な殺気を感じ、その場から跳び退いた。
跳び退いた瞬間、先程まで限のいた場所に巨大な火球が落ちてきた。
もしもあのまま回避に移っていなかったら、限は消し炭になっていたことだろう。
「貴様……よくも我が兵をやってくれたな!?」
火球が飛んできた方角に視線を向ける限。
すると、こめかみに青筋を立てた菱山源斎がゆっくりと限へと向かってきていた。
仲間を大量に殺されて、完全にお冠のようだ。
「おぉ! 大将のお出ましか……」
元々、限はここにいる敷島兵を皆殺しをするつもりでこの戦いに参戦した。
大将である源斎の殺害も、当然その計画の1つだ。
まだ生き残っている敷島兵がいるが、源斎の相手をするのが優先だ。
自分の父である斎藤家当主の重蔵。
それと同等の実力を有すると言われている源斎と戦える良い機会に、限は嬉しそうに笑みを浮かべたのだった。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。


私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる