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第3章
第79話 任務完了
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「ハッ!! 1体なら通用しなくても、数体相手なら簡単にはいかないだろ!?」
仲間を魔物へと変化させた研究員の男は、レラに向かって笑みを浮かべる。
先程倒されはしたが、この生物兵器は敷島の人間ですら手こずる強さをしている。
1体でダメなら、複数で攻めかかれば良いだけの話。
この研究員はそう考えたようだ。
「グアァーー!!」「ウグゥ――!!」
仲間によって薬品を投与された研究員たちの肉体は、すぐに変化を始める。
その苦しみによるものなのか、彼らは悲鳴を上げて蹲る。
「くたばれくそ女!!」
「馬鹿なことを……」
「……何?」
悲鳴が小さくなっていくごとに、次第に魔物への変化が治まっていく。
それを見て、薬物を投与した研究員は、勝利したかのようにレラへ罵る言葉を投げかけた。
しかし、レラはそれを冷静な目で見つめているだけで、焦る様子はない。
その姿に、研究員の男は疑問を抱いた。
「…………」
「な、なんだ? 何故こっちを見ている?」
魔物へと変化を終えた者たちは、立ち上がると自分に薬物を投与した研究員に目を向ける。
その様子に、投与した男はたじろぐ。
その目には敵意がこもっているように見えたからだ。
「グルル……」
「お、おいっ! 敵はあの女だ!! 来るな!! 来るな!!」
「ガアァーー!!」
「ギャッ!!」
睨みつけていた魔物は、そのまま研究員へ近付いて行く。
何故自分に向かってくるのか分からず、研究員の男はレラに向かうように叫ぶのだが、魔物は聞く耳を持たない。
そして、自分を魔物に変えた研究員の男を、西瓜を割るように頭部を殴り飛ばした。
「やっぱり、奴隷化していない状態の人間を魔物化したらそうなるのね」
生物兵器として魔物化される人間は、重犯罪者などの奴隷だ。
奴隷だから魔物化しても命令を聞くのであって、奴隷化していない人間を魔物化させれば指示を聞かないであろうことはレラでも予想できた。
なのに、生物兵器の研究をしていた研究員たちの方がそのことに気付かず、魔物化した仲間に殺されるなんて、レラにはこの状況が滑稽に見えた。
「ガアァーー!!」「グルァーー!!」
「うぎゃっ!!」「ぐわっ!!」
魔物化した者たちが暴れ出した。
それにより、残っていた研究員や、兵器化する材料となる奴隷たちが次々と殺されて行った。
「……ちょっとまずいわね。ハッ!!」
「ウガッ!?」
魔物たちが暴れるのを レラは少しの間黙って見ていた。
しかし、このままにしておくわけにはいかないと、魔物たちへと魔法を放った。
あくまでも暴れるのを止め、自分に気を引くための魔力の玉。
それをくらった魔物たちは、一旦暴れるのをやめ、一斉にレラに目を向けた。
「そいつらは私の獲物よ。あなたたちに譲る訳にはいかないわ」
この魔物たちに任せておけば、自分の手を煩わすこともなく研究員たちの殲滅が可能だろう。
しかし、研究員への復讐は、限やアルバだけでなく自分のためでもある。
このまま魔物に殺させるのも癪に障ったレラは、自分の手で復讐を果たすために、先に魔物たちを始末することにした。
「ガアァーー!!」「グウァーー!!」
自分たちに対して敵意を向けてくるレラに、魔物たちも反応する。
レラを殺そうと、魔物たちはレラへと向かって走り出した。
「またお願いできますか? ニール様」
「キュッ!!」
「ありがとうございます」
魔物たちが迫り来るなか、レラはニールに頼みごとをし、ニールは了解したというように返事をした。
ニールの許可を得たレラは感謝の言葉を言い、魔物たちへ武器を構えた。
「ガアァーー!!」
「ウガァーー!!」
「キュー!!」
あと一歩でレラを殴り飛ばせる位置へと来たところで、ポケットの中のニールが動く。
ニールが鳴き声と共に魔法を放つと、魔物たちの動きが止まった。
「ウガッ!?」「グウッ!?」
レラを殴り殺す予定だった魔物たちは、何か壁の中に閉じ込められたかのような状態になり、慌てるような声を漏らす。
そして、その壁のようなものを殴るが、全くなんの変化ももたらさないため、困惑の表情へと変化していった。
「無駄よ。あなたたち程度がニール様の防御は突破できるわけないわ」
魔物たちが何かに閉じ込められたように動けなくなったのは、ニールの魔法によるものだ。
限の訓練によって強くなっているのはレラだけではない。
従魔の2匹も強くなっている。
ニールの得意な魔力による防御。
その長所を訓練で強化したニールは、魔物たちを魔力の枠に閉じ込めたのだ。
「死になさい!!」
「ギャッ!」「ゴゥッ!!」
ニールの協力をえることで、レラはこうなることを予期していた。
そのため、防御に気を使うことなく、薙刀を構えて魔力を練ることができた。
魔力を練ったレラは、魔物たちに対して薙刀を振るった。
レラの薙刀の振りに合わせるように、ニールは魔物にかけていた魔力壁を解く。
それにより、魔物たちはほぼ無防備な状態でレラの薙刀の攻撃を受けることになった。
まるで豆腐を斬るかのように、魔物たちの体が斬り裂かれて行く。
レラが少しの間薙刀を振り回すと、斬り刻まれた魔物たちの肉片が床へと落ちた。
「キュッ?」
「駄目ですよ。ニール様が食するような体に良くありませんよ」
床に転がった魔物たちの肉片を見て、ニールは食べられるか問いかける。
しかし、薬物によって魔物へと変化した人間の肉を、限の使徒であるニールに食べさせるわけにはいかない。
こんな肉を食べるよりも、これまでの旅で手に入れてきた肉の方が安全で安心だ。
そのため、レラはニールがこの肉を諦めるように、やんわりと説得した。
「う、うぅ……」「よ、良かった……」
自分たちを襲って来ていた魔物が死に、僅かに生き残った研究員たちは息を吐くと共に安堵する。
しかし、彼らの安堵は全くの無意味だ。
「もうこれだけしか残っていないみたいね。もっと早く魔物を殺しておけばよかったかしら?」
「あ、あっ……」「や、やめ……」
「エイッ!!」
この部屋に入ってきた時よりも真っ赤に染まった薙刀を手に、レラはゆっくりと生き残った研究員たちへと歩み寄る。
そこでようやく、自分たちが魔物に殺されるという結末から、レラに殺されるという結末に変わっただけなのだと理解した。
せめて言葉の分かるレラに助けを求めようとするが、その言葉が届くわけもなく、研究員たちは命を落とすことになった。
「限様からの指示は完了しました。脱出しましょう」
「キュッ!」
室内に残る全ての人間を始末し終えたレラは、一息ついて薙刀の血を殺した研究員の白衣で拭いとる。
そして、任務完了というかのように、ニールと共にこの砦から脱出することにした。
仲間を魔物へと変化させた研究員の男は、レラに向かって笑みを浮かべる。
先程倒されはしたが、この生物兵器は敷島の人間ですら手こずる強さをしている。
1体でダメなら、複数で攻めかかれば良いだけの話。
この研究員はそう考えたようだ。
「グアァーー!!」「ウグゥ――!!」
仲間によって薬品を投与された研究員たちの肉体は、すぐに変化を始める。
その苦しみによるものなのか、彼らは悲鳴を上げて蹲る。
「くたばれくそ女!!」
「馬鹿なことを……」
「……何?」
悲鳴が小さくなっていくごとに、次第に魔物への変化が治まっていく。
それを見て、薬物を投与した研究員は、勝利したかのようにレラへ罵る言葉を投げかけた。
しかし、レラはそれを冷静な目で見つめているだけで、焦る様子はない。
その姿に、研究員の男は疑問を抱いた。
「…………」
「な、なんだ? 何故こっちを見ている?」
魔物へと変化を終えた者たちは、立ち上がると自分に薬物を投与した研究員に目を向ける。
その様子に、投与した男はたじろぐ。
その目には敵意がこもっているように見えたからだ。
「グルル……」
「お、おいっ! 敵はあの女だ!! 来るな!! 来るな!!」
「ガアァーー!!」
「ギャッ!!」
睨みつけていた魔物は、そのまま研究員へ近付いて行く。
何故自分に向かってくるのか分からず、研究員の男はレラに向かうように叫ぶのだが、魔物は聞く耳を持たない。
そして、自分を魔物に変えた研究員の男を、西瓜を割るように頭部を殴り飛ばした。
「やっぱり、奴隷化していない状態の人間を魔物化したらそうなるのね」
生物兵器として魔物化される人間は、重犯罪者などの奴隷だ。
奴隷だから魔物化しても命令を聞くのであって、奴隷化していない人間を魔物化させれば指示を聞かないであろうことはレラでも予想できた。
なのに、生物兵器の研究をしていた研究員たちの方がそのことに気付かず、魔物化した仲間に殺されるなんて、レラにはこの状況が滑稽に見えた。
「ガアァーー!!」「グルァーー!!」
「うぎゃっ!!」「ぐわっ!!」
魔物化した者たちが暴れ出した。
それにより、残っていた研究員や、兵器化する材料となる奴隷たちが次々と殺されて行った。
「……ちょっとまずいわね。ハッ!!」
「ウガッ!?」
魔物たちが暴れるのを レラは少しの間黙って見ていた。
しかし、このままにしておくわけにはいかないと、魔物たちへと魔法を放った。
あくまでも暴れるのを止め、自分に気を引くための魔力の玉。
それをくらった魔物たちは、一旦暴れるのをやめ、一斉にレラに目を向けた。
「そいつらは私の獲物よ。あなたたちに譲る訳にはいかないわ」
この魔物たちに任せておけば、自分の手を煩わすこともなく研究員たちの殲滅が可能だろう。
しかし、研究員への復讐は、限やアルバだけでなく自分のためでもある。
このまま魔物に殺させるのも癪に障ったレラは、自分の手で復讐を果たすために、先に魔物たちを始末することにした。
「ガアァーー!!」「グウァーー!!」
自分たちに対して敵意を向けてくるレラに、魔物たちも反応する。
レラを殺そうと、魔物たちはレラへと向かって走り出した。
「またお願いできますか? ニール様」
「キュッ!!」
「ありがとうございます」
魔物たちが迫り来るなか、レラはニールに頼みごとをし、ニールは了解したというように返事をした。
ニールの許可を得たレラは感謝の言葉を言い、魔物たちへ武器を構えた。
「ガアァーー!!」
「ウガァーー!!」
「キュー!!」
あと一歩でレラを殴り飛ばせる位置へと来たところで、ポケットの中のニールが動く。
ニールが鳴き声と共に魔法を放つと、魔物たちの動きが止まった。
「ウガッ!?」「グウッ!?」
レラを殴り殺す予定だった魔物たちは、何か壁の中に閉じ込められたかのような状態になり、慌てるような声を漏らす。
そして、その壁のようなものを殴るが、全くなんの変化ももたらさないため、困惑の表情へと変化していった。
「無駄よ。あなたたち程度がニール様の防御は突破できるわけないわ」
魔物たちが何かに閉じ込められたように動けなくなったのは、ニールの魔法によるものだ。
限の訓練によって強くなっているのはレラだけではない。
従魔の2匹も強くなっている。
ニールの得意な魔力による防御。
その長所を訓練で強化したニールは、魔物たちを魔力の枠に閉じ込めたのだ。
「死になさい!!」
「ギャッ!」「ゴゥッ!!」
ニールの協力をえることで、レラはこうなることを予期していた。
そのため、防御に気を使うことなく、薙刀を構えて魔力を練ることができた。
魔力を練ったレラは、魔物たちに対して薙刀を振るった。
レラの薙刀の振りに合わせるように、ニールは魔物にかけていた魔力壁を解く。
それにより、魔物たちはほぼ無防備な状態でレラの薙刀の攻撃を受けることになった。
まるで豆腐を斬るかのように、魔物たちの体が斬り裂かれて行く。
レラが少しの間薙刀を振り回すと、斬り刻まれた魔物たちの肉片が床へと落ちた。
「キュッ?」
「駄目ですよ。ニール様が食するような体に良くありませんよ」
床に転がった魔物たちの肉片を見て、ニールは食べられるか問いかける。
しかし、薬物によって魔物へと変化した人間の肉を、限の使徒であるニールに食べさせるわけにはいかない。
こんな肉を食べるよりも、これまでの旅で手に入れてきた肉の方が安全で安心だ。
そのため、レラはニールがこの肉を諦めるように、やんわりと説得した。
「う、うぅ……」「よ、良かった……」
自分たちを襲って来ていた魔物が死に、僅かに生き残った研究員たちは息を吐くと共に安堵する。
しかし、彼らの安堵は全くの無意味だ。
「もうこれだけしか残っていないみたいね。もっと早く魔物を殺しておけばよかったかしら?」
「あ、あっ……」「や、やめ……」
「エイッ!!」
この部屋に入ってきた時よりも真っ赤に染まった薙刀を手に、レラはゆっくりと生き残った研究員たちへと歩み寄る。
そこでようやく、自分たちが魔物に殺されるという結末から、レラに殺されるという結末に変わっただけなのだと理解した。
せめて言葉の分かるレラに助けを求めようとするが、その言葉が届くわけもなく、研究員たちは命を落とすことになった。
「限様からの指示は完了しました。脱出しましょう」
「キュッ!」
室内に残る全ての人間を始末し終えたレラは、一息ついて薙刀の血を殺した研究員の白衣で拭いとる。
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