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第2章
第31話 湖の畔で
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「どんな魔物が出現したんだか……」
「楽しみですね?」
「ワンッ!!」
研究員たちの情報も入って来ないので、限たちは魔物の情報から探ることにした。
ギルドから得た情報で、海の近くの森の中に何か巨大な魔物が身を隠しているという話だ。
その情報通りの森の付近へと限たちはたどり着いた。
「確かに大きいようですね」
「あぁ……」
噂の魔物が通った跡らしく、樹々がなぎ倒されている。
言われていた通り、森の一部に入り口ができていた。
その様を見て、限とレラはその魔物が何なのか気になってきた。
「アルバ! 何か匂いがしたら教えてくれ」
「ワンッ!」
限が魔力を広げて魔物を探知するという方法があるが、それよりも限の従魔て白狼のアルバが嗅覚を使って捜索した方が労力は低い。
そのため、限はある程度の範囲内しか魔力を広げず、広範囲の捜索はアルバに任せることにした。
アルバの方は、主人の限に頼りにされて嬉しそうに返事をしている。
「んじゃ、アルバ、レラ、俺の並びで行くとしよう」
「はい」「ワンッ!」
アルバが嗅覚を使って捜索し、見つけたらレラが魔法で攻撃をする。
後方から襲われたら危険なため、限が殿を務めるというのがこの並びの狙いだ。
元々聖女見習いの中で回復魔法のレベルが高かったレラは、攻撃魔法も日に日に上達している。
とは言っても、近接戦闘は苦手なので、それを限とアルバがフォローする形になっている。
「……どこまで続いているんだ?」
「そうですね……」
倒れた樹々を道順として、周囲へ目を向けながら進む限たち一行。
しかし、いつまで経っても巨大魔物の姿なんて見受けられない。
アルバの鼻にも引っかからないなんて、存在自体が疑わしくなってきた。
「ギギ……ギャッ!!」
「小物ばっかりだな……」
「全くです」
ここの森にはたいした魔物が出ないのか、出てきた魔物はレラの魔法一発で仕留めている。
今出てきたのもゴブリンで、限たちを認識した瞬間に水弾を食らって吹き飛び、動かなくなった。
流石にこんなことが続いていることに限やレラは飽きてきていた。
「んっ? 海……じゃなくて、でかい湖か?」
森の中を進んでいた限たちの前に大きな湖が出現した。
最初海も近いことからどこかの海岸に出てしまったのかと思ったが、水を舐めてみるとしょっぱくないため、限は湖だと訂正した。
「長閑な景色ですね?」
「そうだな……」
レラの言うように、緑の樹々に囲まれて水面が太陽の光をキラキラと反射させ、水鳥たち浮いている様を見ていると、何だか気分がのんびりしてくる。
周囲に魔物が出てくるのが不思議に思えてくるような景色だ。
「ここで飯でも食うか?」
「はい!」
「ワウッ!」
この景色の中で食事をすれば何でも美味く思えてきたため、限はこの場での食事を提案する。
同じ思いになっていたのか、レラもそれにすぐさま賛成した。
アルバは単純にお腹が空いていたという可能性もあるが、そこは気にしないことにした。
「どうぞ!」
「サンキュー!」
普段ならジャーキーでも食って腹を紛らわせるところだが、この景色でそれは味気ない。
そのため、レラは手を加えた料理を提供することにした。
土魔法で作った簡易の竈を使い、レラは出来たばかりの焼肉と野菜スープとパンを乗せたお盆を限に渡してきた。
かなりの出来栄えに、限は目を輝かせつつ感謝の言葉と共にそのお盆を受け取った。
「「いただきます!」」「ワウッ!」
両手を合わせ、敷島だけの風習となる食事前の挨拶をして食事を始める。
最初は限だけがおこなっていたのだが、アルバも食事前に頭を下げるようになり、レラも説明を受けて真似するようになった。
聖女見習いだった時、教会でも手を合わせて神に祈りを捧げてから食事をしていたらしいが、神に祈っても救われなかったからか、限のやっている挨拶の方が正しいと今は思っているようだ。
「魔物の向った方角が分かりませんね……?」
「そうだな……」
食事を堪能して片付けを済ませた後、限たちは魔物の捜索を再開しようとした。
しかし、相変わらずアルバの鼻にヒットがないし、倒れていた樹々もここで終わっている。
ここからどうやって捜索を再開しようかと考えていた。
「考えられるのは、まず何かに倒されてしまった」
「それはないですよね?」
「あぁ」
でかい魔物だからと言って、強いとは限らない。
しかし、樹々をなぎ倒すような魔物が、ここまでで遭遇したような弱い魔物たちに倒されるとは考えられないし、そもそも死んだ痕跡すら残っていないのはおかしい。
タコ、イカ、クラゲ、スライムなどの無脊椎動物系の魔物だったとしても、何かしらの痕跡が残っていても良いような気がする。
そのため、限とレラは最初の案を却下した。
「次に考えられるのは、発見されたのは空を飛べる魔物で、ここから空へと飛んで行った可能性……」
「そうだと探すのは無理ですね……」
「そうだな」
たまたま飛空可能の魔物が、この湖に休みに来たと言う可能性。
そうなると、どうして森の外からここまで向かう必要があったのか気になる。
湖を発見して下りようとしたのなら、そのまま湖の畔に下りればいいわけだし、そもそもレラの言うように、その場合捜索するだけ無駄になるというものだ。
「最後は……」
「はい……」
顎に手を当て考える素振りをしながら、限はもったいぶるように言葉を溜める。
それに乗っかるように、レラは限の言葉を待った。
「この湖の中にいるかもしれない」
「……湖の中?」
アルバの嗅覚に反応しないということは、さっきも言ったように飛んで行ってしまったか、湖の中にいるかもしれないということだ。
水の中の匂いを嗅ぎ取ることは、さすがに無理だからだ。
しかし、その可能性もあるとは言っても、特に何かが潜んでいるように思えないほど湖面は穏やかに揺らいでいる。
「確認のために探知してみる。もしもの時のためにアルバと一緒に構えていてくれ」
「はい!」「ワウッ!」
限がしていた探知は、周囲数mで地中も浅くだが探知していた。
しかし、湖の底に沈んでいるとしたらそれでは反応しない。
もしも考えた通りだとしたら、もっと探知を広げる必要がある。
何の魔物かも分からないしそもそもいるかも分からないが、念のためレラたちには警戒してもらい、限は確認するために探知してみることにした。
「…………っ!! いたっ!!」
「えっ!?」「ワウッ!?」
少しずつ水中に魔力を流して探知をしていっていると、思った通り底の方でおとなしくしている魔物を発見することができた。
発見できた事と噂通りの大きさに、限は思わず大きな声が出てしまった。
その反応に、レラとアルバも驚く。
「おわっ!」「キャッ!」「ワウッ!」
限が探知したと同時に、僅かに地面が揺れる。
それに限たちが反応していると、湖に異変が起きてきた。
湖の中央の水が、沸き上がるように波立ち始めたのだ。
そのせいで、さっきまで優雅に浮かんでいた鳥たちも我先にと逃げ出して行ってしまった。
「気を付けろ! 出てくるみたいだ!」
「はいっ!」「ワンッ!」
限の魔力が触れたことで反応したのかは分からないが、どうやら沈んでいた魔物が上昇してきたようだ。
いきなり攻撃してくる可能性もあるため、限はレラたちに警戒を促す。
レラたちもその言葉に反応するように身構えて、魔物の出現を待った。
「……亀?」
少しの間、魔物の全身が浮かんでくるまで限たちが待っていると、水面から顔を出したのは、大きな甲羅を背負った亀の魔物だった。
その姿を見た限は、小さく自己完結するように呟いたのだった。
「楽しみですね?」
「ワンッ!!」
研究員たちの情報も入って来ないので、限たちは魔物の情報から探ることにした。
ギルドから得た情報で、海の近くの森の中に何か巨大な魔物が身を隠しているという話だ。
その情報通りの森の付近へと限たちはたどり着いた。
「確かに大きいようですね」
「あぁ……」
噂の魔物が通った跡らしく、樹々がなぎ倒されている。
言われていた通り、森の一部に入り口ができていた。
その様を見て、限とレラはその魔物が何なのか気になってきた。
「アルバ! 何か匂いがしたら教えてくれ」
「ワンッ!」
限が魔力を広げて魔物を探知するという方法があるが、それよりも限の従魔て白狼のアルバが嗅覚を使って捜索した方が労力は低い。
そのため、限はある程度の範囲内しか魔力を広げず、広範囲の捜索はアルバに任せることにした。
アルバの方は、主人の限に頼りにされて嬉しそうに返事をしている。
「んじゃ、アルバ、レラ、俺の並びで行くとしよう」
「はい」「ワンッ!」
アルバが嗅覚を使って捜索し、見つけたらレラが魔法で攻撃をする。
後方から襲われたら危険なため、限が殿を務めるというのがこの並びの狙いだ。
元々聖女見習いの中で回復魔法のレベルが高かったレラは、攻撃魔法も日に日に上達している。
とは言っても、近接戦闘は苦手なので、それを限とアルバがフォローする形になっている。
「……どこまで続いているんだ?」
「そうですね……」
倒れた樹々を道順として、周囲へ目を向けながら進む限たち一行。
しかし、いつまで経っても巨大魔物の姿なんて見受けられない。
アルバの鼻にも引っかからないなんて、存在自体が疑わしくなってきた。
「ギギ……ギャッ!!」
「小物ばっかりだな……」
「全くです」
ここの森にはたいした魔物が出ないのか、出てきた魔物はレラの魔法一発で仕留めている。
今出てきたのもゴブリンで、限たちを認識した瞬間に水弾を食らって吹き飛び、動かなくなった。
流石にこんなことが続いていることに限やレラは飽きてきていた。
「んっ? 海……じゃなくて、でかい湖か?」
森の中を進んでいた限たちの前に大きな湖が出現した。
最初海も近いことからどこかの海岸に出てしまったのかと思ったが、水を舐めてみるとしょっぱくないため、限は湖だと訂正した。
「長閑な景色ですね?」
「そうだな……」
レラの言うように、緑の樹々に囲まれて水面が太陽の光をキラキラと反射させ、水鳥たち浮いている様を見ていると、何だか気分がのんびりしてくる。
周囲に魔物が出てくるのが不思議に思えてくるような景色だ。
「ここで飯でも食うか?」
「はい!」
「ワウッ!」
この景色の中で食事をすれば何でも美味く思えてきたため、限はこの場での食事を提案する。
同じ思いになっていたのか、レラもそれにすぐさま賛成した。
アルバは単純にお腹が空いていたという可能性もあるが、そこは気にしないことにした。
「どうぞ!」
「サンキュー!」
普段ならジャーキーでも食って腹を紛らわせるところだが、この景色でそれは味気ない。
そのため、レラは手を加えた料理を提供することにした。
土魔法で作った簡易の竈を使い、レラは出来たばかりの焼肉と野菜スープとパンを乗せたお盆を限に渡してきた。
かなりの出来栄えに、限は目を輝かせつつ感謝の言葉と共にそのお盆を受け取った。
「「いただきます!」」「ワウッ!」
両手を合わせ、敷島だけの風習となる食事前の挨拶をして食事を始める。
最初は限だけがおこなっていたのだが、アルバも食事前に頭を下げるようになり、レラも説明を受けて真似するようになった。
聖女見習いだった時、教会でも手を合わせて神に祈りを捧げてから食事をしていたらしいが、神に祈っても救われなかったからか、限のやっている挨拶の方が正しいと今は思っているようだ。
「魔物の向った方角が分かりませんね……?」
「そうだな……」
食事を堪能して片付けを済ませた後、限たちは魔物の捜索を再開しようとした。
しかし、相変わらずアルバの鼻にヒットがないし、倒れていた樹々もここで終わっている。
ここからどうやって捜索を再開しようかと考えていた。
「考えられるのは、まず何かに倒されてしまった」
「それはないですよね?」
「あぁ」
でかい魔物だからと言って、強いとは限らない。
しかし、樹々をなぎ倒すような魔物が、ここまでで遭遇したような弱い魔物たちに倒されるとは考えられないし、そもそも死んだ痕跡すら残っていないのはおかしい。
タコ、イカ、クラゲ、スライムなどの無脊椎動物系の魔物だったとしても、何かしらの痕跡が残っていても良いような気がする。
そのため、限とレラは最初の案を却下した。
「次に考えられるのは、発見されたのは空を飛べる魔物で、ここから空へと飛んで行った可能性……」
「そうだと探すのは無理ですね……」
「そうだな」
たまたま飛空可能の魔物が、この湖に休みに来たと言う可能性。
そうなると、どうして森の外からここまで向かう必要があったのか気になる。
湖を発見して下りようとしたのなら、そのまま湖の畔に下りればいいわけだし、そもそもレラの言うように、その場合捜索するだけ無駄になるというものだ。
「最後は……」
「はい……」
顎に手を当て考える素振りをしながら、限はもったいぶるように言葉を溜める。
それに乗っかるように、レラは限の言葉を待った。
「この湖の中にいるかもしれない」
「……湖の中?」
アルバの嗅覚に反応しないということは、さっきも言ったように飛んで行ってしまったか、湖の中にいるかもしれないということだ。
水の中の匂いを嗅ぎ取ることは、さすがに無理だからだ。
しかし、その可能性もあるとは言っても、特に何かが潜んでいるように思えないほど湖面は穏やかに揺らいでいる。
「確認のために探知してみる。もしもの時のためにアルバと一緒に構えていてくれ」
「はい!」「ワウッ!」
限がしていた探知は、周囲数mで地中も浅くだが探知していた。
しかし、湖の底に沈んでいるとしたらそれでは反応しない。
もしも考えた通りだとしたら、もっと探知を広げる必要がある。
何の魔物かも分からないしそもそもいるかも分からないが、念のためレラたちには警戒してもらい、限は確認するために探知してみることにした。
「…………っ!! いたっ!!」
「えっ!?」「ワウッ!?」
少しずつ水中に魔力を流して探知をしていっていると、思った通り底の方でおとなしくしている魔物を発見することができた。
発見できた事と噂通りの大きさに、限は思わず大きな声が出てしまった。
その反応に、レラとアルバも驚く。
「おわっ!」「キャッ!」「ワウッ!」
限が探知したと同時に、僅かに地面が揺れる。
それに限たちが反応していると、湖に異変が起きてきた。
湖の中央の水が、沸き上がるように波立ち始めたのだ。
そのせいで、さっきまで優雅に浮かんでいた鳥たちも我先にと逃げ出して行ってしまった。
「気を付けろ! 出てくるみたいだ!」
「はいっ!」「ワンッ!」
限の魔力が触れたことで反応したのかは分からないが、どうやら沈んでいた魔物が上昇してきたようだ。
いきなり攻撃してくる可能性もあるため、限はレラたちに警戒を促す。
レラたちもその言葉に反応するように身構えて、魔物の出現を待った。
「……亀?」
少しの間、魔物の全身が浮かんでくるまで限たちが待っていると、水面から顔を出したのは、大きな甲羅を背負った亀の魔物だった。
その姿を見た限は、小さく自己完結するように呟いたのだった。
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