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第1章
第22話 マナー違反
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「流石王都だな……」
「平日にこの人の数はすごいですね……」
走り続けて数週間。
ようやくアデマス王国南東の国であるミゲーカ王国の王都へと辿り着いた。
町の中へ入る列に並んで数時間。
ようやく町に入ると、大きな通りを多くの人が行きかっている。
アデマス王国出身の限は、一度も王都へ行ったことがなかったので比較できないが、これだけ多くの人が集まっているのは、大きな祭りの時でもない限り見たことがない。
何度かアデマス王国の王都にも行った経験のあるレラも、多くの人に感心したようなコメントをしている。
「これからのご予定は?」
「そうだな……、とりあえず旅の資金を稼いで次の町へ向かう感じだな」
小人族のゼータは、ミゲーカの南にある国を抜け、更に南に向かったヴェールデ王国の森に棲んでいたという話だ。
まだまだ距離があるし、これから先進むためにも多少の資金を手に入れておきたい。
ここに来るまでに、限たちは魔物を倒して魔石を手に入れた。
魔石は魔道具を動かすために必要な電池になるため需要があるのだが、手に入れた魔石はどれも小粒で、売ってもたいした金額にはならないだろう。
「では、ギルドを探しましょう!」
資金を手に入れるためには、ギルドへ行って依頼を達成するのが速い。
そう判断したレラは、すぐにギルドへ向かうことを提案してきた。
「この人数だとスリとかが良くいるから気を付けろよ」
「ハイ!」
限にギルドを探させる訳にはいかないと、レラは少し先を歩き出した。
元々聖女見習いということもあって、犯罪への警戒感が薄いためなんとなく不安にさせられる。
人が多いとスリがを警戒した方が良い。
そのため、限はレラへ警告をしておいた。
「アルバ。足踏まれても我慢してくれよ」
「ワウッ!」
それはそれとして、白狼のアルバは他に注意しないといけない事がある。
大きな町だと従魔にちょっかいを出してワザと反撃を食らい、慰謝料を請求するという詐欺もあるという話だ。
街中で従魔が他人に怪我をさせた場合、罰金、状況によっては牢獄に入れられる事すらある。
白狼は珍しいうえになかなか強力な魔物だ。
ちょっかいをかけてくる詐欺師まがいの人間も中に入るはず。
そのため、限はあらかじめアルバに説明をしておいた。
アルバは、限の言うことは素直に聞くし、しっかり従う。
限の忠告に対し、アルバは了解したと言うかのように返事をした。
「Dランクの仕事は……」
町から町へ移動してきたが、毎回多少の金額を手に入れる程度しか依頼を達成していないため、限たちはまだ一番下のDランクのままだ。
Dランクのため大きな資金を得られることは無いが、堅実に稼ぐしかないだろう。
「何だ? なんか騒がしいな……」
受付へ行き、掲示板に貼られた依頼を受けてギルドを出ようと限たちは思っていたのだが、ギルド内がなんとなく騒がしく思える。
どこの町でも、冒険者は朝に依頼を受けて、依頼内容によるが夕方くらいまで帰ってくるものだ。
昼近いこの時間に、これだけの人数がギルドにいることすら不思議に感じる。
「なんでも、Aランクの冒険者パーティーがくるらしいですよ」
「へぇ~……」
冒険者の中でもランクがあるように、パーティーにもランクが存在する。
Aランクパーティーとなると、その町の主力の冒険者たちになる。
Sランクとなるのは、よっぽどの実力や実績でないとなれないため、実質Aランクがトップの扱いを受けることが多い。
ここにいる冒険者たちは、Aランク冒険者を中心としたパーティーを一目見に集まっているらしい。
レラの説明に納得しつつも、限は特に反応する訳でもなく生返事をした。
「要するに見物人か……」
「そうですね」
高ランクになるまで上り詰めたパーティーを、ここにいる人間は何のために見たいのか分からないが、つまりは見物に集まっているだけ。
見てどうする訳でもないのに集まっている彼らの意図が分からず、限は冷めたように呟いた。
「興味はないですか?」
「ないな……」
Aランクにまでなると、同業者からすると尊敬の対象になって来る。
なので、レラも一目見るくらいなら気持ちは分からなくもないが、限の様子に考えが変わった。
高ランク冒険者よりも、レラにとっては限の方が重要だ。
そのため、レラもあっさりと気持ちが冷めて、興味を失った。
「本人たちが来たらもっと騒がしくなるだろ? さっさと依頼を達成しに向かおう」
「ハイ!」
まだ来てもいないのに、これだけ人が集まっているとなると、本人たちが来たらもっと騒がしくなるだろう。
そんな中に居てすし詰め状態になるのは気分が悪い。
依頼は受けたのだし、限たちは早々に町の外へ向かうことにした。
「行ったぞ!」
「ハイ!」
レラの風魔法が発動し、風の刃が飛んで行き魔物を倒した。
Dランクでは珍しい討伐依頼。
一角兎と呼ばれる額の部分に一本の角が生えた兎を狩りに、近くの草原へと来た限たち。
依頼内容はその角の採取が達成の条件になっている。
アルバとゼータしてはのんびりしており、限は薬草の採取をして時間を潰している中、一角兎の討伐はレラの仕事になっている。
別に限たちがサボっている訳ではない。
「なかなか使えるようになってきたな」
「ありがとうございます!」
この依頼を選んだ理由は、これまでのレラの訓練を実戦で確認するためだ。
聖女見習いの経験上、回復魔法の腕はかなりのものがあるのだが、攻撃魔法の腕は最初はいまいちだった。
しかし、それもここまでの道のりで限の指導を受けたからか、かなり上達してきた。
発動速度や威力を見る限り、かなりの魔物を相手にしても十分通用するレベルにまで達している。
魔法の腕前を限が褒めると、レラは嬉しそうに頬を染めた。
「んっ? 次来るぞ!」
「ハイ!」
食用の肉としても需要がある一角兎。
本来はたいして気にするほどでもない弱小の魔物でも、少し数が増えたことによる間引きがこの依頼の本質なのだろう。
少し探すだけでもう一羽の兎が発見できた。
限が発見した方向を指差すと、レラは魔法を放つ準備を始めた。
「っ!!」
「よっしゃ! 肉ゲット!」
限たちの前に姿を現した兎に、レラが先程同様に魔法を放とうと思っていると、離れた所から高速で氷の槍が飛んできた。
その槍が兎に当たると、遠くから数人の冒険者らしき者たちが近付いてきた。
「……何だ? お前らは……?」
完全に獲物の横取りの状態に、限は採取した薬草をしまい、その者たちに目を向けて尋ねた。
他の人間の出現に、ゼータはアルバの陰に姿を隠した。
近付いてきたのは、剣士・槍使い・弓使い・魔法使いらしき4人組。
見た目の年齢から、20代中盤から後半のといったところだろうか。
「あぁ? お前、俺たちを知らないのか?」
「……知る訳ないだろ」
まるで知っているのが当然だろうと言うかのような物言いに、限もどこかで会ったのかと考えてしまう。
しかし、当然今日来たばかりの限たちが、王都の冒険者のことなんて知る訳がない。
「うわっ! マジかよ……」
「こいつモグリか?」
剣士の男の問いに限が答えると、槍使いと弓使いも意外そうに言葉を漏らした。
その発言から察するに、有名な冒険者なのかもしれない。
「そんな事より、それは俺たちの獲物だ」
「は? 名前でも書いてあるのか?」
恐らく魔法使いの者が先程の氷槍魔法を放ったのだろうが、近くで戦っていたのは明らかに限たちだ。
冒険者のマナーとして、他の冒険者の獲物を横取りするのは御法度だ。
明らかな違反を注意した限に対し、剣士の男は軽い態度で程度の低い言葉を返してきた。
「……ガキか?」
「……何?」
あまりにもバカバカしい発言に、限は思ったことをそのまま口に出した。
年下の限にガキ扱いされたことが癇に障ったのか、剣士の男は表情が強張った。
「ケンカ売ってんのか?」
「売って来たのはお前らだろ?」
4人ともマナー違反を注意しても何の反省もしていない様子。
それだけでケンカを売っている状況だ。
そのうえ、限の発言に腹を立てるなど、どう考えても確定だ。
ケンカなんて望んでしようなんて思わないが、こいつらの態度には腹が立ってくる。
限と剣士の男は、短い言い合いの後に睨み合い、一触即発の空気が流れた。
「平日にこの人の数はすごいですね……」
走り続けて数週間。
ようやくアデマス王国南東の国であるミゲーカ王国の王都へと辿り着いた。
町の中へ入る列に並んで数時間。
ようやく町に入ると、大きな通りを多くの人が行きかっている。
アデマス王国出身の限は、一度も王都へ行ったことがなかったので比較できないが、これだけ多くの人が集まっているのは、大きな祭りの時でもない限り見たことがない。
何度かアデマス王国の王都にも行った経験のあるレラも、多くの人に感心したようなコメントをしている。
「これからのご予定は?」
「そうだな……、とりあえず旅の資金を稼いで次の町へ向かう感じだな」
小人族のゼータは、ミゲーカの南にある国を抜け、更に南に向かったヴェールデ王国の森に棲んでいたという話だ。
まだまだ距離があるし、これから先進むためにも多少の資金を手に入れておきたい。
ここに来るまでに、限たちは魔物を倒して魔石を手に入れた。
魔石は魔道具を動かすために必要な電池になるため需要があるのだが、手に入れた魔石はどれも小粒で、売ってもたいした金額にはならないだろう。
「では、ギルドを探しましょう!」
資金を手に入れるためには、ギルドへ行って依頼を達成するのが速い。
そう判断したレラは、すぐにギルドへ向かうことを提案してきた。
「この人数だとスリとかが良くいるから気を付けろよ」
「ハイ!」
限にギルドを探させる訳にはいかないと、レラは少し先を歩き出した。
元々聖女見習いということもあって、犯罪への警戒感が薄いためなんとなく不安にさせられる。
人が多いとスリがを警戒した方が良い。
そのため、限はレラへ警告をしておいた。
「アルバ。足踏まれても我慢してくれよ」
「ワウッ!」
それはそれとして、白狼のアルバは他に注意しないといけない事がある。
大きな町だと従魔にちょっかいを出してワザと反撃を食らい、慰謝料を請求するという詐欺もあるという話だ。
街中で従魔が他人に怪我をさせた場合、罰金、状況によっては牢獄に入れられる事すらある。
白狼は珍しいうえになかなか強力な魔物だ。
ちょっかいをかけてくる詐欺師まがいの人間も中に入るはず。
そのため、限はあらかじめアルバに説明をしておいた。
アルバは、限の言うことは素直に聞くし、しっかり従う。
限の忠告に対し、アルバは了解したと言うかのように返事をした。
「Dランクの仕事は……」
町から町へ移動してきたが、毎回多少の金額を手に入れる程度しか依頼を達成していないため、限たちはまだ一番下のDランクのままだ。
Dランクのため大きな資金を得られることは無いが、堅実に稼ぐしかないだろう。
「何だ? なんか騒がしいな……」
受付へ行き、掲示板に貼られた依頼を受けてギルドを出ようと限たちは思っていたのだが、ギルド内がなんとなく騒がしく思える。
どこの町でも、冒険者は朝に依頼を受けて、依頼内容によるが夕方くらいまで帰ってくるものだ。
昼近いこの時間に、これだけの人数がギルドにいることすら不思議に感じる。
「なんでも、Aランクの冒険者パーティーがくるらしいですよ」
「へぇ~……」
冒険者の中でもランクがあるように、パーティーにもランクが存在する。
Aランクパーティーとなると、その町の主力の冒険者たちになる。
Sランクとなるのは、よっぽどの実力や実績でないとなれないため、実質Aランクがトップの扱いを受けることが多い。
ここにいる冒険者たちは、Aランク冒険者を中心としたパーティーを一目見に集まっているらしい。
レラの説明に納得しつつも、限は特に反応する訳でもなく生返事をした。
「要するに見物人か……」
「そうですね」
高ランクになるまで上り詰めたパーティーを、ここにいる人間は何のために見たいのか分からないが、つまりは見物に集まっているだけ。
見てどうする訳でもないのに集まっている彼らの意図が分からず、限は冷めたように呟いた。
「興味はないですか?」
「ないな……」
Aランクにまでなると、同業者からすると尊敬の対象になって来る。
なので、レラも一目見るくらいなら気持ちは分からなくもないが、限の様子に考えが変わった。
高ランク冒険者よりも、レラにとっては限の方が重要だ。
そのため、レラもあっさりと気持ちが冷めて、興味を失った。
「本人たちが来たらもっと騒がしくなるだろ? さっさと依頼を達成しに向かおう」
「ハイ!」
まだ来てもいないのに、これだけ人が集まっているとなると、本人たちが来たらもっと騒がしくなるだろう。
そんな中に居てすし詰め状態になるのは気分が悪い。
依頼は受けたのだし、限たちは早々に町の外へ向かうことにした。
「行ったぞ!」
「ハイ!」
レラの風魔法が発動し、風の刃が飛んで行き魔物を倒した。
Dランクでは珍しい討伐依頼。
一角兎と呼ばれる額の部分に一本の角が生えた兎を狩りに、近くの草原へと来た限たち。
依頼内容はその角の採取が達成の条件になっている。
アルバとゼータしてはのんびりしており、限は薬草の採取をして時間を潰している中、一角兎の討伐はレラの仕事になっている。
別に限たちがサボっている訳ではない。
「なかなか使えるようになってきたな」
「ありがとうございます!」
この依頼を選んだ理由は、これまでのレラの訓練を実戦で確認するためだ。
聖女見習いの経験上、回復魔法の腕はかなりのものがあるのだが、攻撃魔法の腕は最初はいまいちだった。
しかし、それもここまでの道のりで限の指導を受けたからか、かなり上達してきた。
発動速度や威力を見る限り、かなりの魔物を相手にしても十分通用するレベルにまで達している。
魔法の腕前を限が褒めると、レラは嬉しそうに頬を染めた。
「んっ? 次来るぞ!」
「ハイ!」
食用の肉としても需要がある一角兎。
本来はたいして気にするほどでもない弱小の魔物でも、少し数が増えたことによる間引きがこの依頼の本質なのだろう。
少し探すだけでもう一羽の兎が発見できた。
限が発見した方向を指差すと、レラは魔法を放つ準備を始めた。
「っ!!」
「よっしゃ! 肉ゲット!」
限たちの前に姿を現した兎に、レラが先程同様に魔法を放とうと思っていると、離れた所から高速で氷の槍が飛んできた。
その槍が兎に当たると、遠くから数人の冒険者らしき者たちが近付いてきた。
「……何だ? お前らは……?」
完全に獲物の横取りの状態に、限は採取した薬草をしまい、その者たちに目を向けて尋ねた。
他の人間の出現に、ゼータはアルバの陰に姿を隠した。
近付いてきたのは、剣士・槍使い・弓使い・魔法使いらしき4人組。
見た目の年齢から、20代中盤から後半のといったところだろうか。
「あぁ? お前、俺たちを知らないのか?」
「……知る訳ないだろ」
まるで知っているのが当然だろうと言うかのような物言いに、限もどこかで会ったのかと考えてしまう。
しかし、当然今日来たばかりの限たちが、王都の冒険者のことなんて知る訳がない。
「うわっ! マジかよ……」
「こいつモグリか?」
剣士の男の問いに限が答えると、槍使いと弓使いも意外そうに言葉を漏らした。
その発言から察するに、有名な冒険者なのかもしれない。
「そんな事より、それは俺たちの獲物だ」
「は? 名前でも書いてあるのか?」
恐らく魔法使いの者が先程の氷槍魔法を放ったのだろうが、近くで戦っていたのは明らかに限たちだ。
冒険者のマナーとして、他の冒険者の獲物を横取りするのは御法度だ。
明らかな違反を注意した限に対し、剣士の男は軽い態度で程度の低い言葉を返してきた。
「……ガキか?」
「……何?」
あまりにもバカバカしい発言に、限は思ったことをそのまま口に出した。
年下の限にガキ扱いされたことが癇に障ったのか、剣士の男は表情が強張った。
「ケンカ売ってんのか?」
「売って来たのはお前らだろ?」
4人ともマナー違反を注意しても何の反省もしていない様子。
それだけでケンカを売っている状況だ。
そのうえ、限の発言に腹を立てるなど、どう考えても確定だ。
ケンカなんて望んでしようなんて思わないが、こいつらの態度には腹が立ってくる。
限と剣士の男は、短い言い合いの後に睨み合い、一触即発の空気が流れた。
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