復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

文字の大きさ
上 下
4 / 179
第1章

第4話 地獄

しおりを挟む
「ぐあぁぁぁーーー!!」

 敷島からは遠く離れた、アデマス王国の南西にある研究所。
 そこに着いた翌日から限にとっての地獄が始まった。
 長い時間をかけてここへ着いたその日はもう夕方になっており、夕食を取った後これから寝起きする場所と言われた部屋へと限は案内された。
 2週間程の移動により、旅の疲れからかその日はぐっすりと眠れた。
 しかし、次に目が覚めた時には、どこだか分からない一室で磔の状態にされており、多く線が限に巻き付けられていた。
 何の冗談かと思い、窓ガラスの奥の隣室へいるオリアーナへ問いかけるが、何の答えもされない。
 そして、オリアーナが笑みを浮かべた次の瞬間、限に巻きつけられた線へ強力な電流が流れてきた。
 少しの間流され続けたことによって、限はあまりの苦しみから叫び声を上げて気を失った。

「なかなか耐えられるものなのね?」

 限の叫び声を聞いても特に何か感じる訳でもなく、普通の人間よりも電流への耐性があることに感心したような言葉をオリアーナは呟く。
 強化ガラス一枚隔てた何もない部屋で、研究員によって巻きつけられた線を解かれている限を見ながら笑みを浮かべた。

「魔力の抵抗無しでここまでとは……、敷島の血ですかね?」

 巨大な機器に出された数値を見ていた男が、オリアーナへと問いかける。
 これまでも数人の人間へ同じような実験を行ったが、限の耐久力を目の当たりにして、僅かばかり驚いている表情だ。

「ふんっ! 何が敷島よ! 野蛮な脳筋どもが……」

 オリアーナとしては、敷島の人間が嫌いだ。
 同じアデマス王国に所属している者同士なのだが、この研究所はまだ王族から何の評価も得られていない。
 逆に敷島の人間は、王族に頼まれればすぐさま行動し、その暗殺術によって敵を討ち倒してきたことで大きな評価を得ている。

「私たちの研究が成功すれば、ただ人を殺すだけの奴らなんて必要なくなるわ」

 敷島のやっていることはただの人殺し。
 その程度のことは別に敷島の人間でなくてもできること。
 この研究所の最終目的が達成されれば、同じことをするのは簡単なことだ。
 人殺し程度で、王族から好評価を受けている敷島の者たちがでかいツラしているのが、オリアーナはずっと気に入らないでいたのだ。

「父親にとって邪魔でしかないという魔無しの子の話を聞いてチャンスだと思ったわ。奴らの厄介払いに手を貸すことになるのが気に入らないけれど、出来損ないでも奴らの強さがわかるかもしれない。私たちにとってあの子は良いサンプルになるわ」

「そうですね」

 この研究員の男は、オリアーナのように敷島の人間に何も思う所はない。
 しかし、研究材料として敷島の人間が欲しいという思いはどこかにあった。
 手に入れたのは魔無しの出来損ないではあるが、れっきとした敷島の人間だ。
 オリアーナの言う通り、サンプルにはなる。

「今日はここまでにしましょう」

「初日に潰してはもったいないですからな」

 初日の実験は様々な魔法の耐性を計るというもの。
 電流の後には火責めや冷却責めなど、限はいくつかの耐性を計られた。
 そして、体中に傷や火傷を負った限はようやく解放されることになった。
 研究員の回復魔法によってある程度回復され、後は回復薬を飲まされ、自分で歩く気力のない限は昨日自室といわれた部屋へと運ばれて行ったのだった。

『何なんだ? 何でこんなことをされているんだ? これからどうなるんだ? 分からない……。何が何だか……』

 部屋に放り込まれた限は、床にうつ伏せになったまま思考を回転させる。
 父の重蔵からは、自分はここで防衛の手伝いをするという話をされていた。
 そのはずなのに、これでは防衛どころかただの実験体でしかないではないか。
 何故このようなことをされているのかが分からず、限は精神的疲労から眠りにつく事しか出来なかった。





「がはっ!!」

「おぉ、以前よりも毒の耐性が上がっている。他の者なら死んでいるだろう」

 毎日毎日、限への実験はおこなわれた。
 様々な魔法耐性力を計られた後は、様々な薬品による実験だった。
 致死量ギリギリの毒を飲まされ、どこまで耐えられるのか。
 そして、耐えられなくなる寸前の所を見極めての解毒を行なうということを繰り返す。
 苦しみの連続により、限は頭がおかしくなりそうだ。

「う、うぅ……」

 毒による長い苦しみから解放され、限はようやくまともに呼吸ができる。
 しかし、これに耐えたからと言って終わりではない。
 次に何が来るかに怯えながら辛うじて意識を保つことしかできない。

「威力を間違えるなよ! 貴重なサンプルだ」

「はい!」

 隣の部屋からは、多くの研究員が限の実験結果を眺めている。
 魔無しへの実験は珍しいからか、新人研究員には見世物のように扱われる時もあった。

「ウギャーー!!」

「くそっ!? この分量には耐えられないか……」

 研究所へ来て2年経った。
 様々な研究により、ある程度のサンプルが取れた限への実験は次の段階へと移っていった。
 この日も致死量ギリギリを計るための毒実験を行われたのだが、その分量を研究員が間違えたらしく、いつも以上の苦痛が限へと襲い掛かってきた。
 敷島の血によるものなのか、限は何とか一命をとりとめる。

「チッ! 手足が壊死しだしたか?」

「仕方ない。切り落としましょう」

 以前の実験失敗によるものなのか、限には回復薬が効きづらくなっていった。
 そのせいなのか、次第に限の体には徐々に変化が起きていた。
 実験によって爛れた皮膚は治らず、次第に容姿が崩れていった。
 そして、実験によって蓄積されたダメージからか、手足が壊死し始めた。
 それを見て、オリアーナはあっさりと切断の決断を取る。
 暴れないようにという意味で麻酔を打たれはしたが、度重なる実験によって限は体の感覚が鈍くなっており、痛みを感じないまま両手足の切断は終わっていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

処理中です...