1 / 179
第1章
第1話 プロローグ
しおりを挟む
「ぐっ…………!!」
深い闇に包まれ、腐敗臭が漂う中、芋虫のように這いずる物体が存在していた。
その姿は醜くこの世界に存在する豚の魔物、オークよりも醜い姿をしている。
闇に包まれているのは、ある施設の地下空間にいるため、そして、漂う腐敗臭は色々な生物の死骸が積み重なっているからだ。
その中には人間の死体も多い。
というよりも、半分以上は人間のものと言った方が良い。
『おのれー!! おのれーー!!』
この這いずる物体は、姿から想像できないが、元は人の姿をしていた。
彼は、境遇に恵まれていなかった。
しかし、それにもめげず、真面目で懸命に過ごしてきたつもりだ。
それが今では醜い廃棄物とされ、様々な死肉の中で這いずることしかできないでいる。
爛れて固まり、もう皮膚とも呼べないような外装に、片目が微かに開いている。
所詮は光も入らないような地下廃棄施設。
目が開こうが何も視野には入らない。
体内も同様に変容しており、口は僅かに開いても声のような物は発せられない。
辛うじて小さく呻き声を上げられるくらいだ。
意識だけはしっかりしており、彼は心の中で怒りの言葉を発し続ける。
『おのれー!! 死んでたまるか!! どいつもこいつもぶっ殺してやる!!』
声も出せず、何もできない。
自分をこのような姿へと変えた者たち、それとここに来ることになった原因を作った者たちの顔ばかりが浮かぶ。
どいつもこいつも、彼が苦しむことばかりを強いてきた者だ。
そいつらへの怒りや恨みが、辛うじて彼の心を折れないように繋ぎとめていた。
「ゔ~……!! ゔ~……!!」
声なのか、それともただ呼吸をしている音なのか分からないような音が、彼の口から小さく漏れる。
ここは死体の廃棄所の中でも廃棄口の真下。
いつまた廃棄された死体が上から落ちて来るか分からない。
死体に埋もれ、圧迫死のようなことにはなりたくない。
絶対に生き延びる。
そのためには、この場を離れないといけない。
手足もなく、自分の体ながら自由に動かすことができない。
それも怒りを助長させる要因になる。
『……まるで芋虫。いや、芋虫の方がまだ見られるか……』
僅かずつだが動ける。
しかし、自分でもこの姿を滑稽だと思えてくる。
芋虫は特に女性に嫌われるが、今の自分の姿を考えると、芋虫の方が遥かにましに思えるはずだ。
『クックック……』
芋虫の方が上なんて、もう笑うしかない。
内心で、自嘲しながら、彼はゆっくりと地下の奥へと這いずって行った。
この地下処理場は光が入らず、暗闇で何も見えない。
そのため、誰も見ることはできないが、僅かに開いている彼の目からは、大粒の涙が自然と流れていた。
深い闇に包まれ、腐敗臭が漂う中、芋虫のように這いずる物体が存在していた。
その姿は醜くこの世界に存在する豚の魔物、オークよりも醜い姿をしている。
闇に包まれているのは、ある施設の地下空間にいるため、そして、漂う腐敗臭は色々な生物の死骸が積み重なっているからだ。
その中には人間の死体も多い。
というよりも、半分以上は人間のものと言った方が良い。
『おのれー!! おのれーー!!』
この這いずる物体は、姿から想像できないが、元は人の姿をしていた。
彼は、境遇に恵まれていなかった。
しかし、それにもめげず、真面目で懸命に過ごしてきたつもりだ。
それが今では醜い廃棄物とされ、様々な死肉の中で這いずることしかできないでいる。
爛れて固まり、もう皮膚とも呼べないような外装に、片目が微かに開いている。
所詮は光も入らないような地下廃棄施設。
目が開こうが何も視野には入らない。
体内も同様に変容しており、口は僅かに開いても声のような物は発せられない。
辛うじて小さく呻き声を上げられるくらいだ。
意識だけはしっかりしており、彼は心の中で怒りの言葉を発し続ける。
『おのれー!! 死んでたまるか!! どいつもこいつもぶっ殺してやる!!』
声も出せず、何もできない。
自分をこのような姿へと変えた者たち、それとここに来ることになった原因を作った者たちの顔ばかりが浮かぶ。
どいつもこいつも、彼が苦しむことばかりを強いてきた者だ。
そいつらへの怒りや恨みが、辛うじて彼の心を折れないように繋ぎとめていた。
「ゔ~……!! ゔ~……!!」
声なのか、それともただ呼吸をしている音なのか分からないような音が、彼の口から小さく漏れる。
ここは死体の廃棄所の中でも廃棄口の真下。
いつまた廃棄された死体が上から落ちて来るか分からない。
死体に埋もれ、圧迫死のようなことにはなりたくない。
絶対に生き延びる。
そのためには、この場を離れないといけない。
手足もなく、自分の体ながら自由に動かすことができない。
それも怒りを助長させる要因になる。
『……まるで芋虫。いや、芋虫の方がまだ見られるか……』
僅かずつだが動ける。
しかし、自分でもこの姿を滑稽だと思えてくる。
芋虫は特に女性に嫌われるが、今の自分の姿を考えると、芋虫の方が遥かにましに思えるはずだ。
『クックック……』
芋虫の方が上なんて、もう笑うしかない。
内心で、自嘲しながら、彼はゆっくりと地下の奥へと這いずって行った。
この地下処理場は光が入らず、暗闇で何も見えない。
そのため、誰も見ることはできないが、僅かに開いている彼の目からは、大粒の涙が自然と流れていた。
1
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
勇者パーティを追放されそうになった俺は、泣いて縋って何とか残り『元のDQNに戻る事にした』どうせ俺が生きている間には滅びんだろう!
石のやっさん
ファンタジー
今度の主人公はマジで腐っている。基本悪党、だけど自分のルールあり!
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのドルマンにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ドルマンの物で、全員から下に見られているのが解った。
だが、意外にも主人公は馬鹿にされながらも残る道を選んだ。
『もう友達じゃ無いんだな』そう心に誓った彼は…勇者達を骨の髄までしゃぶり尽くす事を決意した。
此処迄するのか…そう思う『ざまぁ』を貴方に
前世のDQNに戻る事を決意した、暗黒面に落ちた外道魔法戦士…このざまぁは知らないうちに世界を壊す。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる