祖国奪還

ポリ 外丸

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第34話 王都奪還

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「チッ! せっかくオルトロスを倒したというのに……」

 セヴェーロの副将軍であるパルミーロと反対側の方角へと魔物の退治へと向かったエフィージオの方にも、帝国の装備をしたスケルトンたちが迫って来ていた。
 パルミーロと同様に、エフィージオも強敵であるオルトロスを強力な魔法で大ダメージを与えて退治できた。
 兵たちと共に喜んですぐにこのような状況になり、舌打ちしたくなるのも仕方がない。

「くそっ!!」

 パルミーロとエフィージオの総合的な実力は、ほぼ同程度。
 違うとすれば、エフィージオの方がやや魔法の腕が上という所だろうか。
 そのため、エフィージオはまだ戦える。
 迫り来るスケルトンたち、何もしないでいれば当然殺されてしまうため、エフィージオは迫り来るスケルトンに剣で斬りかかった。

「ハッ! フンッ!」

 魔力をかなり消耗してかなりの疲労を感じているが、副将軍にまで就いた実力は偽物ではない。
 エフィージオは迫り来るスケルトンを倒していく。
 しかし、

「何なんだ! この数のスケルトンは……?」

「スケルトンたちが王都に溢れかえっているもようです!!」

「何だと……」

 倒しても、あとからあとからスケルトンが湧くように出現して迫り来る。
 休む間もなく戦い続けなくてはならず、いくらエフィージオでも少しずつ剣の腕が鈍っていった。
 このままではまずいと思っているエフィージオに、兵の一人が最悪な報告してきた。

「ぐあっ!!」

「っ!? くっ!!」

 共にオルトロスと戦った兵たちもスケルトンの相手をしているが、数に耐えきれなくなってきたらしく、怪我を負う者が増えだした。
 悲鳴が上がった方に目を向けると、そこには足に怪我を負い動けなくなった兵が、スケルトンに囲まれて体中に剣を突き刺される寸前だった。
 助けに行きたいところだが、エフィージオ自身も手いっぱいで動けない。
 そのため、その兵はそのまま攻撃を受け、体中に穴を開けて絶命することになった。

「おの……れ!!」

 仲間を殺られ、エフィージオは歯噛みする。
 このままでは、ここにいる者全てが殺されてしまう。
 しかし、囲まれている状況では逃げることすらできそうにない。

『誰か……、救援を……』

 期待できるとすれば、同じ副将軍のパルミーロ。
 彼が救援に来てくれるのを願うしかエフィージオにはできなかった。

「エフィージオ様!! パルミーロ様が……」

 エフィージオがパルミーロの救援を願いつつ戦い続けていると、遠くから兵の声が聞こえてくる。
 その言葉に、エフィージオは救援が来たと期待した。

「ケルベロスを討伐後、スケルトンたちに討たれてお亡くなりになりました!!」

「…………何だと?」

 期待とは裏腹に、この現状で絶望的な報告がされた。
 この報告によって、パルミーロが自分と同様にケルベロスという強力な魔物と戦っていたことを知る。
 そんな状況でスケルトンたちに襲われたのでは、パルミーロですら討たれるのも分からなくない。
 しかし、パルミーロの救援を期待していたこの場にいるの者の心を、打ち砕くには充分な報告だった。

「畜生……」

 目に見えて抵抗する力が弱まり、一人また一人とスケルトンに兵が討たれて行く。
 最後まで粘ったエフィージオもとうとう剣を弾かれ、無念の言葉を呟くと共にこの世から去っていったのだった。





◆◆◆◆◆

「フフッ! 見ろ! どんどん死んでいくぞ!」

 大和王国の王都にある王城。
 突如出現した魔物との戦闘を指揮していたセヴェーロを殺した司は、王城の最上部で王都内の戦闘を部下である吸血鬼のファウストと共に眺めていた。
 王都中から聞こえてくる帝国兵たちの断末魔を聞きながら、司は上機嫌で笑みを浮かべていた。

「左様ですね。強敵の討伐を果たした歓喜の直後の絶望。ゴミにふさわしい死に顔でございます」

 司の機嫌が良いことが嬉しいファウストは、同意して死人をこき下ろすような発言をした。
 このような状況にするために、少しずつ強い魔物を召喚して集まった帝国兵に戦わせていたのだ。
 ケルベロスとオルトロスが殺されたのは意外だったが、それでも結果は司の思い通りだった。

「ハハッ! ハッ……」

「送様!?」

 機嫌が良さそうな司だったが、突然足元をふらつかせた。
 それを見たファウストは、慌てて司へと駆け寄る。

「大丈夫ですか?」

「あぁ……」

 ファウストが心配そうに話しかける。
 それに返答するが、司の顔色は少し悪いようにも見える。
 そのため、あまり大丈夫なように見えない。

「これ以上の召喚は危険なのでは……?」

 原因は分かっている。
 王都全体に仕掛けられた、魔法陣を耐えず使い続けていることによる、魔力の大量消費のせいだ。
 魔物を召喚するだけならそこまでの魔力を消費しないが、最終段階のスケルトンの大量召喚にはかなりの魔力を消費している状況だ。
 それによって、魔力が豊富な司であっても疲労が襲いかかってきているのだろう。
 これ以上魔力を使い続けて枯渇状態になれば、しばらくの間気を失うことになりかねない。
 今後のことを考えたら、それは司にとっても好ましいことではない。
 そのため、ファウストは司にスケルトンの召喚を停止するように提案した。

「大丈夫。王都にいる者の殲滅までもつはずだ」

 ファウストの提案に対し、司は聞き入れるつもりが無いようだ。
 最初の計画通り、このまま行けば魔力が枯渇する前に片が付くはずだからだ。

「……では、殲滅を早めるために私にも参加の許可を頂けますか?」

 止めようにも、司が止まることはないとファウストは判断した。
 ならば、少しでも早く帝国兵たちを殲滅して司を休ませるべきだ。
 そう判断したファウストは、自分も帝国兵の殲滅に参加することの許可を求めた。

「……そうだな、お前も行ってくれ」

「畏まりました!」

 思いを読み取ったのか、司はファウストの参加を許可した。
 許可を得たファウストは、背中の翼を広げ、窓から飛び出していった。

「司様のために、本気で行きます!」

 窓から飛び出し、王都の上空で制止したファウストは、地上にいる帝国兵たちを探知する。
 そして、ある程度探知し終えると、真面目な顔をして両手に魔力を集め始めた。

「拡散!!」

 魔力を集めた両手を地上へと向け、ファウストが叫ぶ。
 それによって、上空から無数の魔力の弾丸が地上に降り注いだ。

“ガガガガガガガガ……!!”

 地上に降り注いだ魔力弾の一発一発が、帝国兵たちを物言わぬ骸へ変化させていった。
 ファウストの魔力弾が治まった頃には、生き残っている帝国兵は全体の1割にも満たなかった。

「フゥ、フゥ……、危ない危ない、きちんと調整しないと、私の方が司様より先に動けなくなるところでした」

 司のためとはいえ、本気の攻撃で危うく魔力を使い切る所だった。
 自分が使えなくなっては、主である司が困ることになる。
 魔力消費によって掻いた汗を拭ったファウストは、腰に差していた剣を抜き、地上へを下降していった。
 そこからファウストはは、スケルトンから逃げ回る帝国兵を見つけては、剣で殺害するという方法を取りながら数を減らしていった。






「……どうやら終了したようですね」

 王都の上空からの探知に、司以外の生物の反応がない。
 そのことを確認したファウストは、一息ついて王城の司の下へと翼をはばたかせる。

「ただいま戻りました」

「あぁ、ご苦労」

 戻ったことを伝えると、軽く手を振りファウストを労う。
 ファウストが王城に戻ると、司は玉座の間におり、疲れた表情で玉座に座っていた。
 その対応から相当疲労しているようだ。

「王都奪還おめでとうございます!」

「あぁ、まず・・は計画通りだ」

 王都の奪還。
 それを成したことをファウストは賛辞する。
 司は玉座の背にもたれかけ、感慨深げに天井を見上げたのだった。

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