祖国奪還

ポリ 外丸

文字の大きさ
上 下
20 / 63

第19話 再挟撃

しおりを挟む
「司様。そろそろ行動を開始した方が宜しいのでは?」

「……そうだな」

 昔のことを思いだしていた司。
 その間に、帝国軍は青垣砦へと攻撃を開始していた。
 エレウテリオの時のように、ビアージョとコージモも初めは奴隷兵を送り込んでいた。
 相変わらず江奈たちは、同国民を相手にしなければならないことにやりづらそうにしている。
 しかし、前回の経験があったからか、躊躇うようなことはしていない。
 門を破られたら終わりは今回も同じ。
 全力の抵抗をしているが、敵も数を連れて来ているため、いつまで城壁に登らせないようにできるか分かったものではない。
 そのため、前回よりも早い段階で動くべきではないかと進言してきたファウストの言葉に、司も納得の頷きを返した。

「そろそろ動かすか」

 多少早いが、司からすると帝国兵を1人でも多く青垣砦前に集めるのが目的だ。
 その背後にスケルトンたちを展開し、今回も砦とスケルトンたちの挟み撃ちをおこなうことで、帝国兵を殲滅する予定だ。
 集まってしまえば、後は司の指示次第。
 砦が潰される前に、行動を開始することにした。

「失礼ながら、スケルトンだけで大丈夫でしょうか?」

 帝国の背後から攻め込むのは、前回と同様に大量のスケルトンたちだ。
 しかし、今回は前回よりも帝国兵の数が多い。
 司のスケルトンがそれよりも多いとは言っても、全滅させるには厳しいかもしれない。
 そう考えたファウストは、不安そうに司へと問いかけた。

「あぁ、あの2人か……」

 ファウストが言うことに心当たりがあった司は、すぐに何が不安要素なのかを理解した。
 今回帝国兵を指揮している2人の副将軍。
 彼らは前回攻め込んで来た将軍エレウテリオと同様に、戦闘技術の高さによって今の地位を手に入れた者たちだ。
 スケルトンに攻め込まれようとも、その戦闘力でこの場から逃げきられてしまう可能性がある。
 全滅を目指す司からすると、それは由々しき問題だ。

「折角一気に減らすためにここに集めたんだ。逃げられそうになったらも出すさ」

 この戦いで使うのはスケルトンがメイン。
 後は、戦場を把握するために、ゴーストを数体上空へ放っている。
 スケルトンだけでも大量の数だが、司にはまだ使える戦力が残っている。
 それを出しても別に構わないが、司にとって問題がないわけではないため、今の所出すつもりはない。
 しかし、数人でも逃げられると自分の戦術がバレてしまうため、場合によっては手持ちの駒を出すことも検討している。

「あの2人はエレウテリオと同じ位とか言っていたから、お前なら余裕だろ? 念のためお前も準備しておいてくれ」

「了解しました」

 2人の副将軍は、調査によってある程度の実力は分かっている。
 エレウテリオと同様に、武器による戦闘が得意だという話だが、ファウストなら相手にならないだろう。
 念のためを考えて、今回もファウストに動いてもらうことにした。
 司に協力を求められたことが嬉しいのか、ファウストは笑みを浮かべながら頭を下げたのだった。





◆◆◆◆◆

「何かあるかと思っていたが、これまでと変わったことなどして来ないな」

「そうだな」

 青垣砦へと攻撃を開始したエレウテリオ軍の副将軍のビアージョとコージモだったが、まずはこれまで通り大量の大和国民の奴隷を攻め込ませた。
 戦闘好きのコージモも、エレウテリオのこともあるため、警戒してビアージョの策を仕方なく受け入れた。
 しかし、警戒したのが無駄だったかのように、砦からの攻撃はこれまでと変わりがない。
 そのせいか、コージモはいら立ちが募っていた。

「このままなら問題なく攻略できるだろう。門が開いたら、俺は突っ込むぞ?」

「あぁ、好きにしてくれ」

 奴隷兵の数に、砦の対応も間に合わなくなりつつある。
 もう数時間経てば、恐らく門の開閉もおこなわれるはずだ。
 それが分かっているからか、コージモはビアージョよりも先に砦内へ攻め込むことを宣言した。
 エレウテリオがやられた理由が分からないが、このまま砦を攻略できるはずだ。
 兵たちに任せておくだけで問題ないが、コージモが攻め入るならなおさら安心して任せられる。
 ビアージョはコージモの宣言を受け入れ、砦内への侵攻を任せることにした。

「ビアージョ様! コージモ様!」

「ん?」「どうした?」

 警戒が薄れ、ビアージョとコージモはあとどれくらいの時間で攻略できるかを考えるようになっていた。
 そんな時になって、1人の兵が慌てたように2人へと駆け寄ってきた。
 何を慌てているのか分からず、2人は不思議そうにその兵へと問いかけた。

「我らの軍の背後から、大量のスケルトンが出現しました!!」

「何っ!?」「そんなバカな!?」

 その兵から伝えられた報告に、2人は同時に慌てたような声を出した。
 虚偽の報告かとも思ったが、たしかに何者かがこちらへ向けて歩み寄る足音らしきものが聞こえてくる。
 それが本当にスケルトンによるものかは分からないが、この兵の言っていることは本当と羽猿を得ないようだ。

「魔物なんて出るはずが……」

「あぁ……」

 青垣砦までの道のりで出現した魔物は、兵たちによって狩られているため、大量の魔物が出るなんてことはあり得ない。
 そのことが分かっているため、コージモは納得できないように呟き、ビアージョも同意の呟きを返した。

「そうか! これがエレウテリオ様がやられた理由か!?」

「何だと!?」

「何の警戒もしていない背後からの奇襲なんて、どんな指揮官でもどうしようもない。エレウテリオ様でもだ」

「なるほど。そう言うことか……」

 あまりにもタイミングよく、そして王国軍にとっては都合よく魔物の大群が現れた。
 というより、都合が良すぎる。
 そのことから、ビアージョはこの魔物の群れによる背後からの攻撃を、王国軍の仕業だと導き出した。
 背後からはスケルトンによる攻撃、前方には王国軍が防衛する青垣砦。
 挟み撃ちを受ければ、当然兵は慌てて統率がとれなくなる。
 そんな状況では、エレウテリオが1人が頑張ろうと、軍を立て直すことは不可能だろう。
 王国軍の者たちがどうやってこの状況を作っているのかは分からないが、これがエレウテリオがやられた原因だと2人は理解した。
 自分を引き上げてくれたエレウテリオが、王国軍を相手にどうしてやられることになったのかを理解したことで、コージモは獰猛な笑みを浮かべた。
 復讐相手が何なのかが分かったことで、自分が今どうするべきかが決まったからだ。

「ふんっ! 今回は挟み撃ちごときで敗北などあり得ん! 何かがあった時のために数を増やしているのだからな!」

「あぁ、そうだ!」

 魔物を使っての挟み撃ち、これが王国の最後の策だと知り、コージモは鼻で笑う。
 たしかに挟み撃ちを受けたことは驚いた。
 しかし、今回は何かあるかもしれないと用心のために兵を大量に連れて来ているため、挟み撃ちにされても充分対応できるはずだ。
 そのことから、2人はすぐに冷静になることができた。

「先兵隊はそのまま奴隷に砦を攻めさせろ! 他の隊は背後から来る魔物の相手をするんだ!」

「「「「「了解しました!!」」」」」

 連れてきた兵の数を考えると、スケルトンの大群を相手にしつつも砦の攻略を止める必要はない。
 そのため、ビアージョは奴隷を指揮している隊の者たちにはそのまま砦攻略をさせ、他の者で魔物の相手をすることにした。

「お前はどうする? 砦と魔物」

 少し前に奴隷たちが砦内へ入り込み開門をした場合、コージモは自分が攻め込むと言っていた。
 しかし、背後からはスケルトンの大群が近付いてきている。
 スケルトン化王国兵か、どっちの相手をするのかは本人に任せようと、ビアージョはコージモへどっちを相手にするのかを尋ねた。

「砦はまだ時間がかかる。魔物を相手にしよう!」

「分かり易くていいな。お前らしい」

 コージモの性格上、単純に暴れたいのだろう。
 どっちと戦うことができるかよりも、自分がすぐ暴れられるのはどっちかでコージモは選んだようだ。
 この答えは簡単に予想できたが、そんな選択が迷わずできるのことがビアージョとしては羨ましく感じたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界サバイバルセットでダンジョン無双。精霊樹復活に貢献します。

karashima_s
ファンタジー
 地球にダンジョンが出来て10年。 その当時は、世界中が混乱したけれど、今ではすでに日常となっていたりする。  ダンジョンに巣くう魔物は、ダンジョン外にでる事はなく、浅い階層であれば、魔物を倒すと、魔石を手に入れる事が出来、その魔石は再生可能エネルギーとして利用できる事が解ると、各国は、こぞってダンジョン探索を行うようになった。 ダンジョンでは魔石だけでなく、傷や病気を癒す貴重なアイテム等をドロップしたり、また、稀に宝箱と呼ばれる箱から、後発的に付与できる様々な魔法やスキルを覚える事が出来る魔法書やスキルオーブと呼ばれる物等も手に入ったりする。  当時は、危険だとして制限されていたダンジョン探索も、今では門戸も広がり、適正があると判断された者は、ある程度の教習を受けた後、試験に合格すると認定を与えられ、探索者(シーカー)として認められるようになっていた。  運転免許のように、学校や教習所ができ、人気の職業の一つになっていたりするのだ。  新田 蓮(あらた れん)もその一人である。  高校を出て、別にやりたい事もなく、他人との関わりが嫌いだった事で会社勤めもきつそうだと判断、高校在学中からシーカー免許教習所に通い、卒業と同時にシーカーデビューをする。そして、浅い階層で、低級モンスターを狩って、安全第一で日々の糧を細々得ては、その収入で気楽に生きる生活を送っていた。 そんなある日、ダンジョン内でスキルオーブをゲットする。手に入れたオーブは『XXXサバイバルセット』。 ほんの0.00001パーセントの確実でユニークスキルがドロップする事がある。今回、それだったら、数億の価値だ。それを売り払えば、悠々自適に生きて行けるんじゃねぇー?と大喜びした蓮だったが、なんと難儀な連中に見られて絡まれてしまった。 必死で逃げる算段を考えていた時、爆音と共に、大きな揺れが襲ってきて、足元が崩れて。 落ちた。 落ちる!と思ったとたん、思わず、持っていたオーブを強く握ってしまったのだ。 落ちながら、蓮の頭の中に声が響く。 「XXXサバイバルセットが使用されました…。」 そして落ちた所が…。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

処理中です...