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第5話 ファウスト
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「ケタケタケタ……」
「そんな……」
「こっちにも……」
多くの部下たちを犠牲にして西へと逃走を図った将軍のエレウテリオだったが、逃げた先にも多くのスケルトンがいた。
なんとか付いてきた兵たちは、スケルトンたちが打ち鳴らす歯の音に絶望を感じていた。
「くそっ!!」
もう少し進めば、王国から占領した町へと辿りつける。
そこに行けば、兵という駒が大勢いる。
態勢を整えて全力で当たれば、数が多いだけのスケルトンなんて苦にもならないはずだ。
あと少しだというのに邪魔をするスケルトンたちに、エレウテリオは悪態の言葉を呟いた。
「お前ら!! 全員全力の合成魔法を放て!!」
「えっ!?」
この先に進むために、エレウテリオは兵たちへと指示を出す。
合成魔法というのは、魔導砲の攻撃を人間でおこなう魔法のことだ。
多くの人間の魔力を合わせることにより、1人で出すには難しい強力な魔法を放つことかできる。
しかし、合成魔法を放ったとしたら、術者に反動が来る。
魔法を放った瞬間、肉体が耐えられず吹き飛ぶ可能性がある。
つまりは、エレウテリオが行っているのは命を懸けて道を作れという指示だ。
ここまで残っている帝国兵は、かなりの優秀な者たちばかり。
他の兵とは違い使い捨てるには惜しい存在だ。
「俺が生き残った時には、貴様らの家族は厚遇すると約束しよう!!」
惜しいからと言って、使い潰さなければ自分がここを抜けることはできない。
彼らも、誰かが犠牲にならなければ全滅することは気付いているはず。
当然、地位からいって将軍である自分を生かすべきだ。
僅かに躊躇った彼らに、エレウテリオは無駄死にをする訳ではないという理由を与えた。
「……や、やるぞ!!」
「「「「「あぁ……」」」」」
ここにいる数十人が、均等になるように3組に分かれる。
1人を中心にして、その者に向けて他の者たちが魔力を放出する。
魔力を放出した者たちは、その場へと崩れ落ちる。
魔力切れを起こしての気絶だ。
「エ、エレウテリオ様! い、行きます!」
「おうっ!!」
魔力を受けた者が、エレウテリオに声をかける。
彼らは発射台だ。
数人の魔力を抑えるために、体が悲鳴を上げている。
「ハッ!」
魔力を集められた者の中で、発射で来たのは2人。
他の者たちは、発射する前に膨大な魔力に耐えられず、肉体が爆散した。
「よくやったぞ! お前たち!」
エレウテリオからすれば、たった2人でも発射出来れば充分だ。
強力な魔力砲が発射され、前方にいたスケルトンたちが魔力砲が放たれた線上に消滅した。
これにより道ができた。
魔法を放つと共に血を吐き出して倒れた兵へと言葉をかけると、エレウテリオは乗っていた馬に走るように合図を送った。
エレウテリオを乗せた馬は、合成魔法によってできた道を全速力で走る。
将軍の地位を使って手に入れた、帝国でも駿馬として有名の馬だ。
人骨のスケルトンたちでは追いつけないし、動物のスケルトンも付いてこれない。
「あと少しだ!!」
かなりの距離を走ったことで、スケルトンも疎らになってきた。
もう少し行けば、スケルトンの脅威から脱せる。
馬は疲労しているが、がんばってもらうしかない。
「やはり駒は多い方が良かったな」
脱出できたのは、兵たちの合成魔法による結果だ。
犠牲になった兵たちに感謝するかと思ったが、どうやらそんなことはなかったようだ。
彼らの家族を厚遇するといったことも、所詮は口約束でしかない。
そもそも、彼らの名前を憶えているかも怪しいところだ。
最初から反故にする気だったのだろう。
「よしっ!」
兵と馬のお陰で、エレウテリオはようやくスケルトンの群れから抜けることに成功した。
逃がすまいと、スケルトンたちは追いかけて来るが、肉がないためか速度はいまいちないため離される一方だ。
「っっっ!?」
「ヒヒ―ーン!!」
スケルトンたちの脅威が去り、助かったとエレウテリオが安堵していると、炎の槍が飛んでくる。
そのことに気付いたエレウテリオは、慌てて馬から飛び降りた。
すると、炎の槍は馬に突き刺さり、全身を包み込んだ。
「おおっ! 上手く躱しましたね」
炎の槍によって、馬はあっという間に絶命して炭化した。
エレウテリオが突然の攻撃に驚いていると、炎の槍が飛んできた方向から1人の男が拍手をしながら姿を露わした。
「貴様っ!! 何者だ!?」
炎の槍の魔法を放ったのは、どうやらこの男のようだ。
そのことに気付いたエレウテリオは、愛馬を殺されて怒り心頭といったように男を睨みつけた。
この場に似つかわしくないモーニングのスーツを着て、肌はやたら色白、黒髪で鼻が高く堀も深い顔のつくりから、大和国民ではないことがうかがえる。
帝国の中には似たような者もいることから、帝国人の可能性もある。
しかし、どこの誰であろうと、こんな仕打ちをしておいて、ただで済ませるつもりはない。
そのため、エレウテリオは腰に差していた剣を抜いた。
「俺を帝国軍5将が1人と知ってのことか!?」
「えぇ、知ってますよ」
「……何?」
帝国には5人の将軍がいる。
大和王国が5つの地域に分けられていることから、5人の将軍は1人1地区の制圧という具合に担当することになった。
全員でことに当たればもっと早く王国は滅亡していただろうが、彼らは将軍同士で揉めるわけにはいかないと、今回は均等に功を得ることにしたのだ。
もしかしたら、1人でいたために将軍エレウテリオだと気付かなかった可能性もある。
どちらにせよ殺すつもりだが、エレウテリオは男に向けて自分のことを認知しているのか尋ねた。
その問いに対し、男は当然と言いたげに答えを返してきた。
知っていて攻撃してきたという答えに、エレウテリオは眉根を寄せた。
「部下に助けられた雑魚将軍でしょう?」
「っ!? 貴様っ!!」
たしかに部下の力によって危機を脱したが、自分でもスケルトンたちへ攻撃したことによる結果だと思っている。
実際、エレウテリオは馬に乗りながら、かなりの数のスケルトンを破壊している。
そもそも、弱い者は将軍にはなれない。
エレウテリオもかなりの件の使い手だ。
だからこそ、男の侮辱に耐えられず、エレウテリオは攻撃を繰り出した。
「ハッ!!」
一気に距離を詰めてのエレウテリオの突きが、男の腹へ深々と刺さる。
男はピクリとも動かないまま、何の抵抗もしなかった。
「…………」
「ふっ! 口ほどにもない」
自分の移動速度が速すぎ、何の抵抗も出来ず絶命したと判断したエレウテリオは、興醒めしたように男のことを鼻で笑った。
「本当ですね。ハエが止まるような突きでしたよ」
「なっ!?」
腹を突き刺されて死んだと思ったが、男は顔を上げた笑みを浮かべる。
その反応に、エレウテリオは驚きの声を上げた。
そして、突き刺した剣を抜くと共に、エレウテリオはバックステップをして距離を取った。
「どういうことだ!? 痛みを感じないのか……」
「痛いと言えば痛いですが、この程度の怪我など私にとっては意味がないものですよ」
「……?」
腹から大量に出血しているというのに、まるで痛がる素振りをしない男に、エレウテリオは反射的に問いかけてしまった。
その問いに対し、男は丁寧な返答をするが、エレウテリオには何を言っているのか分からなかった。
腹を刺されて痛いというのに、何故避けるなり防ぐなりしなかったのだろうか。
「っ!? 回復魔法か!?」
答えの意味に、エレウテリオはすぐに理解することになった。
男が刺された腹の部分を手で撫でると、あっという間に傷口が消えた。
しかも、もう一度撫でると、服に開いた穴も修復された。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね? まぁ、死にゆく者に言ってもしょうがないですが……」
大怪我を一瞬で回復したことに驚いているエレウテリオの馬鹿面を見て、男はため息交じりに話し始める。
こちらは目の前の人間がエレウテリオだと分かっているが、エレウテリオはまだ自分のことを知らない。
紹介しても意味のないこととは分りつつも、男は自己紹介をすることにした。
「私、ヴァンパイアのファウストと申します」
エレウテリオの相手をしていた男(ファウスト)は、名を名乗ると共に胸に手を当ててお辞儀をしたのだった。
「そんな……」
「こっちにも……」
多くの部下たちを犠牲にして西へと逃走を図った将軍のエレウテリオだったが、逃げた先にも多くのスケルトンがいた。
なんとか付いてきた兵たちは、スケルトンたちが打ち鳴らす歯の音に絶望を感じていた。
「くそっ!!」
もう少し進めば、王国から占領した町へと辿りつける。
そこに行けば、兵という駒が大勢いる。
態勢を整えて全力で当たれば、数が多いだけのスケルトンなんて苦にもならないはずだ。
あと少しだというのに邪魔をするスケルトンたちに、エレウテリオは悪態の言葉を呟いた。
「お前ら!! 全員全力の合成魔法を放て!!」
「えっ!?」
この先に進むために、エレウテリオは兵たちへと指示を出す。
合成魔法というのは、魔導砲の攻撃を人間でおこなう魔法のことだ。
多くの人間の魔力を合わせることにより、1人で出すには難しい強力な魔法を放つことかできる。
しかし、合成魔法を放ったとしたら、術者に反動が来る。
魔法を放った瞬間、肉体が耐えられず吹き飛ぶ可能性がある。
つまりは、エレウテリオが行っているのは命を懸けて道を作れという指示だ。
ここまで残っている帝国兵は、かなりの優秀な者たちばかり。
他の兵とは違い使い捨てるには惜しい存在だ。
「俺が生き残った時には、貴様らの家族は厚遇すると約束しよう!!」
惜しいからと言って、使い潰さなければ自分がここを抜けることはできない。
彼らも、誰かが犠牲にならなければ全滅することは気付いているはず。
当然、地位からいって将軍である自分を生かすべきだ。
僅かに躊躇った彼らに、エレウテリオは無駄死にをする訳ではないという理由を与えた。
「……や、やるぞ!!」
「「「「「あぁ……」」」」」
ここにいる数十人が、均等になるように3組に分かれる。
1人を中心にして、その者に向けて他の者たちが魔力を放出する。
魔力を放出した者たちは、その場へと崩れ落ちる。
魔力切れを起こしての気絶だ。
「エ、エレウテリオ様! い、行きます!」
「おうっ!!」
魔力を受けた者が、エレウテリオに声をかける。
彼らは発射台だ。
数人の魔力を抑えるために、体が悲鳴を上げている。
「ハッ!」
魔力を集められた者の中で、発射で来たのは2人。
他の者たちは、発射する前に膨大な魔力に耐えられず、肉体が爆散した。
「よくやったぞ! お前たち!」
エレウテリオからすれば、たった2人でも発射出来れば充分だ。
強力な魔力砲が発射され、前方にいたスケルトンたちが魔力砲が放たれた線上に消滅した。
これにより道ができた。
魔法を放つと共に血を吐き出して倒れた兵へと言葉をかけると、エレウテリオは乗っていた馬に走るように合図を送った。
エレウテリオを乗せた馬は、合成魔法によってできた道を全速力で走る。
将軍の地位を使って手に入れた、帝国でも駿馬として有名の馬だ。
人骨のスケルトンたちでは追いつけないし、動物のスケルトンも付いてこれない。
「あと少しだ!!」
かなりの距離を走ったことで、スケルトンも疎らになってきた。
もう少し行けば、スケルトンの脅威から脱せる。
馬は疲労しているが、がんばってもらうしかない。
「やはり駒は多い方が良かったな」
脱出できたのは、兵たちの合成魔法による結果だ。
犠牲になった兵たちに感謝するかと思ったが、どうやらそんなことはなかったようだ。
彼らの家族を厚遇するといったことも、所詮は口約束でしかない。
そもそも、彼らの名前を憶えているかも怪しいところだ。
最初から反故にする気だったのだろう。
「よしっ!」
兵と馬のお陰で、エレウテリオはようやくスケルトンの群れから抜けることに成功した。
逃がすまいと、スケルトンたちは追いかけて来るが、肉がないためか速度はいまいちないため離される一方だ。
「っっっ!?」
「ヒヒ―ーン!!」
スケルトンたちの脅威が去り、助かったとエレウテリオが安堵していると、炎の槍が飛んでくる。
そのことに気付いたエレウテリオは、慌てて馬から飛び降りた。
すると、炎の槍は馬に突き刺さり、全身を包み込んだ。
「おおっ! 上手く躱しましたね」
炎の槍によって、馬はあっという間に絶命して炭化した。
エレウテリオが突然の攻撃に驚いていると、炎の槍が飛んできた方向から1人の男が拍手をしながら姿を露わした。
「貴様っ!! 何者だ!?」
炎の槍の魔法を放ったのは、どうやらこの男のようだ。
そのことに気付いたエレウテリオは、愛馬を殺されて怒り心頭といったように男を睨みつけた。
この場に似つかわしくないモーニングのスーツを着て、肌はやたら色白、黒髪で鼻が高く堀も深い顔のつくりから、大和国民ではないことがうかがえる。
帝国の中には似たような者もいることから、帝国人の可能性もある。
しかし、どこの誰であろうと、こんな仕打ちをしておいて、ただで済ませるつもりはない。
そのため、エレウテリオは腰に差していた剣を抜いた。
「俺を帝国軍5将が1人と知ってのことか!?」
「えぇ、知ってますよ」
「……何?」
帝国には5人の将軍がいる。
大和王国が5つの地域に分けられていることから、5人の将軍は1人1地区の制圧という具合に担当することになった。
全員でことに当たればもっと早く王国は滅亡していただろうが、彼らは将軍同士で揉めるわけにはいかないと、今回は均等に功を得ることにしたのだ。
もしかしたら、1人でいたために将軍エレウテリオだと気付かなかった可能性もある。
どちらにせよ殺すつもりだが、エレウテリオは男に向けて自分のことを認知しているのか尋ねた。
その問いに対し、男は当然と言いたげに答えを返してきた。
知っていて攻撃してきたという答えに、エレウテリオは眉根を寄せた。
「部下に助けられた雑魚将軍でしょう?」
「っ!? 貴様っ!!」
たしかに部下の力によって危機を脱したが、自分でもスケルトンたちへ攻撃したことによる結果だと思っている。
実際、エレウテリオは馬に乗りながら、かなりの数のスケルトンを破壊している。
そもそも、弱い者は将軍にはなれない。
エレウテリオもかなりの件の使い手だ。
だからこそ、男の侮辱に耐えられず、エレウテリオは攻撃を繰り出した。
「ハッ!!」
一気に距離を詰めてのエレウテリオの突きが、男の腹へ深々と刺さる。
男はピクリとも動かないまま、何の抵抗もしなかった。
「…………」
「ふっ! 口ほどにもない」
自分の移動速度が速すぎ、何の抵抗も出来ず絶命したと判断したエレウテリオは、興醒めしたように男のことを鼻で笑った。
「本当ですね。ハエが止まるような突きでしたよ」
「なっ!?」
腹を突き刺されて死んだと思ったが、男は顔を上げた笑みを浮かべる。
その反応に、エレウテリオは驚きの声を上げた。
そして、突き刺した剣を抜くと共に、エレウテリオはバックステップをして距離を取った。
「どういうことだ!? 痛みを感じないのか……」
「痛いと言えば痛いですが、この程度の怪我など私にとっては意味がないものですよ」
「……?」
腹から大量に出血しているというのに、まるで痛がる素振りをしない男に、エレウテリオは反射的に問いかけてしまった。
その問いに対し、男は丁寧な返答をするが、エレウテリオには何を言っているのか分からなかった。
腹を刺されて痛いというのに、何故避けるなり防ぐなりしなかったのだろうか。
「っ!? 回復魔法か!?」
答えの意味に、エレウテリオはすぐに理解することになった。
男が刺された腹の部分を手で撫でると、あっという間に傷口が消えた。
しかも、もう一度撫でると、服に開いた穴も修復された。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね? まぁ、死にゆく者に言ってもしょうがないですが……」
大怪我を一瞬で回復したことに驚いているエレウテリオの馬鹿面を見て、男はため息交じりに話し始める。
こちらは目の前の人間がエレウテリオだと分かっているが、エレウテリオはまだ自分のことを知らない。
紹介しても意味のないこととは分りつつも、男は自己紹介をすることにした。
「私、ヴァンパイアのファウストと申します」
エレウテリオの相手をしていた男(ファウスト)は、名を名乗ると共に胸に手を当ててお辞儀をしたのだった。
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