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第 1 章
第 50 話
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「先ずは子供たちだな……」
睡眠魔法によって眠っている誘拐された子供たち。
眠らせたのには正解だったようだ。
起きていたら、転移させるときに説明することに時間がかかってしまっていただろうからだ。
「ハッ!」
子供たちを集め、エルヴィーノは転移魔法を発動させる。
すると、子供たちはエルヴィーノの影の中に入って行き、その場からいなくなった。
「……あっ、こいつらも送っとくか……」
子供たちがいなくなり、この建物内にいるのは自分と誘拐犯の2人だけだ。
今回の誘拐事件はアルーオ側によるもの。
しかし、そのことを分かっているのは今のところエルヴィーノだけで、証拠となるものはどこにもない。
救出した子供たちから証言を取れば、もしかしたら犯行立証できるかもしれないが、それだけでは弱い気がする。
ならば、犯人を送ってしまえば良い。
アルーオはともかく、チョディア王国との関係修復には役に立つはずだ。
そう考えたエルヴィーノは、寝ている犯人2人に魔力封じの手錠の魔道具をかけた後、「犯人一味」という書いた紙を背中に張り付け、転移魔法でセラフィーナのところに送った。
「……っと!」
犯人の2人も送ったエルヴィーノは、この建物に近づいてくる気配を感じる。
隣の建物にいた4人のうちの2人が、こちらに向かってきているようだ。
「お~い!」
「交代の時間……」
2人の男が、扉を開と共に声をかけてくる。
どうやら、言葉通り見張りの交代時間のようだ。
「なっ!?」
「なんだこりゃ!?」
部屋の中を見て、男たちは驚きの声を上げる。
交代するはずの仲間どころか、攫ってきた子供たちの姿がなくなっていたからだ。
「誰…がっ!?」
「っっっ!?」
いくら他国からこの拠点まで連れてくることができて気が緩んでいたといっても、子供たちが逃げようと外に出たのなら気づいていたはずだ。
だが、物音は全くしなかった。
そのため、男たちは仲間と子供たちがどこから出て行ったのかを調べるために、部屋の中を調べ始めた。
しかし、すぐに異変が起きる。
2人のうちの1人が、急に声を漏らして前のめりに倒れたのだ。
「だ、誰だ!?」
倒れた仲間の側には男(エルヴィーノ)が立っている。
どこから現れたのか分からないが、この男が仲間の背後から攻撃を加えたようだ。
そのことに気付いた男は、腰に差していた剣を抜いて、エルヴィーノに向けて構えた。
「…………」
「がっ!?」
1対1なら相手にならない。
剣を向けられたエルヴィーノだが、そんなこと気にすることなく男との距離を詰めて、腹に拳を打ち込んだ。
全く反応できずエルヴィーノの強力な攻撃を受けた男は、その一撃で気を失った。
「残りも捕まえて帰るか……」
子供たちを逃がした時点で、エルヴィーノも帰ってしまっても良かったのだが、犯人たちを捕まえない限り、また同じような事件が起きるかもしれない。
アルーオ側が何人雇ったのか分からないが、念のためここにいる者たちは捕まえてしまおうと考えたため、この場に残ったのだ。
残っているのはあと2人。
今しがた気絶させた2人を拘束したエルヴィーノは、建物から出て隣の建物へと向かって行った。
「ったく。微妙な関係の国に進入してガキ捕まえてこいなんて、依頼主も無茶を言ってくれるぜ」
「全くだ」
残った2人は酒を飲んでいるらしく、依頼主への愚痴をこぼしていた。
もしも捕まれば、確実に奴隷落ちにされるような犯罪だ。
そんな危険な仕事をこなすとなると、金額的に合わない気がしてきた。
「それにしても、転移石まで貸してくれるなんてな」
「っっっ!?」
建物の側で聞き耳を立てていたエルヴィーノは、その言葉を聞いて声を出さずに驚いた。
カンリーンとチョディアを揉めさせるためとはいえ、まさか転移石まで使用していたとは思えなかった。
しかし、転移石を使用しているとしたら、犯人が誰だかわからないのも無理はない。
「でも、魔石は自分たちで用意しろなんて、ふざけてるよな」
「本当だよ。この周辺の魔物の魔石しか手に入らないから、大した距離転移できなずに、手間が掛かるったらないぜ」
エルヴィーノのように大量の魔力を持っていれば魔石なんていらないが、転移石を使用する時は、距離に応じてそれ相応の魔石が必要になる。
大きな魔石なら1個で事足りるだろうが、そんな魔石を手に入れるのには相当な資金が必要になる。
しかし、アルーオ王国はここ最近の不況で資金難。
転移石は用意できても、それを使用するための魔石までは用意できなかった。
そのため、男たは質より量で補うために、この周辺の魔物を倒して魔石をかき集めなければならないことになった。
その手間を掛けなければならなくなったことに、男たちは文句をいう。
『なるほど……』
2人の会話を聞いて、エルヴィーノは少し気になっていたことの答えを知ることができ、頭の中で納得した。
気になっていたことの1つは、犯人がどうやってダーヤ川を渡ったのかということだ。
川の水流と水量を考えると、渡るのには相当な危険が伴う。
エルヴィーノでもしたくないようなことを、この男たちがやるだろうか。
いや、何か安全にわたる方法がないと、きっとやらないだろう。
その安全に川を渡る方法が、まさか自分がやったことと同じだったとは思わなかった。
対岸に転移するのに使用したのが、魔法だったか転移石だったかの違いだけだ。
そして、もう1つ気になっていたこと。
この周辺に魔物が全然いないということだ。
チョディア王国から山を越えてアルーオ王国に入るとき、チョディア側ではチラホラといた魔物が、アルーオ側に入ったら全然遭遇しなくなった。
魔物は大概森の中に潜んでいるため、これだけ遭遇しないなんて違和感を覚えずにはいられなかった。
しかし、ダーヤ川を渡るための転移に使用するために、魔石をかき集めたというのなら理解できる。
『さてと……』
知りたいことを勝手に話してくれたことに、この2人には感謝の言葉を述べたいところだ。
しかし、誘拐犯にそんなことをするわけもなく、エルヴィーノはそろそろ2人を捕まえることにした。
“バンッ!!”
「「っっっ!?」」
軽い深呼吸をしたエルヴィーノは、建物の扉を一気に開ける。
その扉が開いた音に、犯人の2人は話をやめて扉に目を向けた。
「てめ…うがっ!?」
「…………」
扉を開けたエルヴィーノを見て声を上げようとするが、そんな余裕はどこにあるのだろうか。
それは余裕ではなく、ただ反応が鈍いというだけだったようだ。
側に置かれた剣を掴ませることなく、エルヴィーノは椅子に腰かけて酒を飲んでいた男の1人の腹を無言で殴って気を失わせた。
「な、なんなんだ? お前は……」
残ったのは1人。
酒に酔って判断が遅れたのか、その男は剣を取るより戸惑いから後退する。
「……ただの子供好きのおっさんだよ!」
なんだと言われて答えるならばと、エルヴィーノは一番最初に思いついた言葉を返した。
育ての親のアンジェラに救われたように、自分も人助けをしたいという思いを持っている。
とはいっても、誰もかれも助けたいなんて思うような殊勝な考えを持っているわけではなく、基本的に自分の力ではどうしようもない子供が対象だ。
そのため、このような言葉が思いついたのだろう。
「ふざけ…んっ!?」
訳のわからないことをいうエルヴィーノに対し、男は右手を向けてくる。
魔力を貯めているところから、どうやら魔法を使うつもりのようだ。
しかし、そんなことをさせるわけもなく、エルヴィーノは一気に距離を詰めて男の背後に回ってチョークスリーパーで絞め落とした。
「ふぅ~」
これで、とりあえずここにいた犯人を無力化することができた。
周囲に探知魔法を広げても他に反応がないことから、エルヴィーノはようやく一息ついたのだった。
睡眠魔法によって眠っている誘拐された子供たち。
眠らせたのには正解だったようだ。
起きていたら、転移させるときに説明することに時間がかかってしまっていただろうからだ。
「ハッ!」
子供たちを集め、エルヴィーノは転移魔法を発動させる。
すると、子供たちはエルヴィーノの影の中に入って行き、その場からいなくなった。
「……あっ、こいつらも送っとくか……」
子供たちがいなくなり、この建物内にいるのは自分と誘拐犯の2人だけだ。
今回の誘拐事件はアルーオ側によるもの。
しかし、そのことを分かっているのは今のところエルヴィーノだけで、証拠となるものはどこにもない。
救出した子供たちから証言を取れば、もしかしたら犯行立証できるかもしれないが、それだけでは弱い気がする。
ならば、犯人を送ってしまえば良い。
アルーオはともかく、チョディア王国との関係修復には役に立つはずだ。
そう考えたエルヴィーノは、寝ている犯人2人に魔力封じの手錠の魔道具をかけた後、「犯人一味」という書いた紙を背中に張り付け、転移魔法でセラフィーナのところに送った。
「……っと!」
犯人の2人も送ったエルヴィーノは、この建物に近づいてくる気配を感じる。
隣の建物にいた4人のうちの2人が、こちらに向かってきているようだ。
「お~い!」
「交代の時間……」
2人の男が、扉を開と共に声をかけてくる。
どうやら、言葉通り見張りの交代時間のようだ。
「なっ!?」
「なんだこりゃ!?」
部屋の中を見て、男たちは驚きの声を上げる。
交代するはずの仲間どころか、攫ってきた子供たちの姿がなくなっていたからだ。
「誰…がっ!?」
「っっっ!?」
いくら他国からこの拠点まで連れてくることができて気が緩んでいたといっても、子供たちが逃げようと外に出たのなら気づいていたはずだ。
だが、物音は全くしなかった。
そのため、男たちは仲間と子供たちがどこから出て行ったのかを調べるために、部屋の中を調べ始めた。
しかし、すぐに異変が起きる。
2人のうちの1人が、急に声を漏らして前のめりに倒れたのだ。
「だ、誰だ!?」
倒れた仲間の側には男(エルヴィーノ)が立っている。
どこから現れたのか分からないが、この男が仲間の背後から攻撃を加えたようだ。
そのことに気付いた男は、腰に差していた剣を抜いて、エルヴィーノに向けて構えた。
「…………」
「がっ!?」
1対1なら相手にならない。
剣を向けられたエルヴィーノだが、そんなこと気にすることなく男との距離を詰めて、腹に拳を打ち込んだ。
全く反応できずエルヴィーノの強力な攻撃を受けた男は、その一撃で気を失った。
「残りも捕まえて帰るか……」
子供たちを逃がした時点で、エルヴィーノも帰ってしまっても良かったのだが、犯人たちを捕まえない限り、また同じような事件が起きるかもしれない。
アルーオ側が何人雇ったのか分からないが、念のためここにいる者たちは捕まえてしまおうと考えたため、この場に残ったのだ。
残っているのはあと2人。
今しがた気絶させた2人を拘束したエルヴィーノは、建物から出て隣の建物へと向かって行った。
「ったく。微妙な関係の国に進入してガキ捕まえてこいなんて、依頼主も無茶を言ってくれるぜ」
「全くだ」
残った2人は酒を飲んでいるらしく、依頼主への愚痴をこぼしていた。
もしも捕まれば、確実に奴隷落ちにされるような犯罪だ。
そんな危険な仕事をこなすとなると、金額的に合わない気がしてきた。
「それにしても、転移石まで貸してくれるなんてな」
「っっっ!?」
建物の側で聞き耳を立てていたエルヴィーノは、その言葉を聞いて声を出さずに驚いた。
カンリーンとチョディアを揉めさせるためとはいえ、まさか転移石まで使用していたとは思えなかった。
しかし、転移石を使用しているとしたら、犯人が誰だかわからないのも無理はない。
「でも、魔石は自分たちで用意しろなんて、ふざけてるよな」
「本当だよ。この周辺の魔物の魔石しか手に入らないから、大した距離転移できなずに、手間が掛かるったらないぜ」
エルヴィーノのように大量の魔力を持っていれば魔石なんていらないが、転移石を使用する時は、距離に応じてそれ相応の魔石が必要になる。
大きな魔石なら1個で事足りるだろうが、そんな魔石を手に入れるのには相当な資金が必要になる。
しかし、アルーオ王国はここ最近の不況で資金難。
転移石は用意できても、それを使用するための魔石までは用意できなかった。
そのため、男たは質より量で補うために、この周辺の魔物を倒して魔石をかき集めなければならないことになった。
その手間を掛けなければならなくなったことに、男たちは文句をいう。
『なるほど……』
2人の会話を聞いて、エルヴィーノは少し気になっていたことの答えを知ることができ、頭の中で納得した。
気になっていたことの1つは、犯人がどうやってダーヤ川を渡ったのかということだ。
川の水流と水量を考えると、渡るのには相当な危険が伴う。
エルヴィーノでもしたくないようなことを、この男たちがやるだろうか。
いや、何か安全にわたる方法がないと、きっとやらないだろう。
その安全に川を渡る方法が、まさか自分がやったことと同じだったとは思わなかった。
対岸に転移するのに使用したのが、魔法だったか転移石だったかの違いだけだ。
そして、もう1つ気になっていたこと。
この周辺に魔物が全然いないということだ。
チョディア王国から山を越えてアルーオ王国に入るとき、チョディア側ではチラホラといた魔物が、アルーオ側に入ったら全然遭遇しなくなった。
魔物は大概森の中に潜んでいるため、これだけ遭遇しないなんて違和感を覚えずにはいられなかった。
しかし、ダーヤ川を渡るための転移に使用するために、魔石をかき集めたというのなら理解できる。
『さてと……』
知りたいことを勝手に話してくれたことに、この2人には感謝の言葉を述べたいところだ。
しかし、誘拐犯にそんなことをするわけもなく、エルヴィーノはそろそろ2人を捕まえることにした。
“バンッ!!”
「「っっっ!?」」
軽い深呼吸をしたエルヴィーノは、建物の扉を一気に開ける。
その扉が開いた音に、犯人の2人は話をやめて扉に目を向けた。
「てめ…うがっ!?」
「…………」
扉を開けたエルヴィーノを見て声を上げようとするが、そんな余裕はどこにあるのだろうか。
それは余裕ではなく、ただ反応が鈍いというだけだったようだ。
側に置かれた剣を掴ませることなく、エルヴィーノは椅子に腰かけて酒を飲んでいた男の1人の腹を無言で殴って気を失わせた。
「な、なんなんだ? お前は……」
残ったのは1人。
酒に酔って判断が遅れたのか、その男は剣を取るより戸惑いから後退する。
「……ただの子供好きのおっさんだよ!」
なんだと言われて答えるならばと、エルヴィーノは一番最初に思いついた言葉を返した。
育ての親のアンジェラに救われたように、自分も人助けをしたいという思いを持っている。
とはいっても、誰もかれも助けたいなんて思うような殊勝な考えを持っているわけではなく、基本的に自分の力ではどうしようもない子供が対象だ。
そのため、このような言葉が思いついたのだろう。
「ふざけ…んっ!?」
訳のわからないことをいうエルヴィーノに対し、男は右手を向けてくる。
魔力を貯めているところから、どうやら魔法を使うつもりのようだ。
しかし、そんなことをさせるわけもなく、エルヴィーノは一気に距離を詰めて男の背後に回ってチョークスリーパーで絞め落とした。
「ふぅ~」
これで、とりあえずここにいた犯人を無力化することができた。
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