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第 1 章
第 30 話
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「ハァ、ハァ、ハァ……」
大量の汗を掻き、息を切らすフィオレンツォ。
その周辺には鋭い牙を生やした猪が倒れている。
「よくやった!」
「そう…で…すか?」
猪を倒したフィオレンツォに対し、近くで見ていたエルヴィーノが称賛の言葉と共に近づく。
師匠であるエルヴィーノから褒められてうれしいフィオレンツォは、息切れで途切れ途切れになりつつ返答した。
「これで猪肉が食えるぞ!」
「……そ、そっち…すか?」
近づいてきたエルヴィーノは、すぐさま倒れた猪の解体を始めた。
どうやら、エルヴィーノが褒めたのは自分の戦闘に関してではなかったらしく、猪の肉が手に入ったことを喜んだ発言だったようだ。
そのことに気が付いたフィオレンツォは一気に力が抜けて、疲労からその場に座り込んでしまった。
“グ~……”
「あ~腹減った……」
座り込んだフィオレンツォの腹が鳴る。
戦闘で動き回ったことが原因だろう。
「……仕方ない。食事休憩としよう」
腹が減っては戦はできぬ。
それに、そろそろオルフェオのミルクの時間だ。
そういうわけで、エルヴィーノは食事休憩を取ることにした。
「本当ですか!?」
「あぁ、ちょっと待ってろ」
ようやくの休憩。
その言葉を聞いて、フィオレンツォは疲れを忘れたかのように反応する。
そんなフィオレンツォをそのままに、エルヴィーノは影の中から調理道具を出し始めた。
「……すごいですね」
闇魔法による影収納の利便性は理解していたが、包丁や鍋、様々な調味料などがポンポン出てくるのを見たら、便利の一言で片づけられない。
だが、闇魔法は燃費が悪いため、使いこなせる人間はかなり少ない。
それが普通なのに、エルヴィーノは影転移も行っているというのに、全然疲弊している様子がない。
それだけ魔力量が、けた違いに多いということなのだろう。
そう考えると、フィオレンツォは思わず称賛の言葉が口から洩れていた。
「今猪肉が手に入ったから、こいつをもらうぞ」
「えぇ、どうぞ」
今しがた解体した猪肉があるため、エルヴィーノのその肉を使った料理を作ることにした。
猪を倒したのは自分だが、エルヴィーノがいなければ持ち帰ることなんてできないし、調理器具なんて持ってきていない自分では料理ができない。
というか、貴族出身の自分は、生まれてから今まで料理をしたことがないため、せっかくの猪肉を無駄にしないためにも、フィオレンツォはエルヴィーノの好きにしてもらうことにした。
「……そうか。料理も覚えないとだめだな……」
猪肉を使い、てきぱきと料理を進めるエルヴィーノ。
その手さばきは見事としか言いようがない。
それを見ていたフィオレンツォは、料理も冒険者には必要なのだと気づいた。
「そうだぞ。ソロで活動するにしても、パーティーを組んで活動するにしても、料理はできた方が良いに決まっている」
フィオレンツォは、冒険者になったばかりだ。
そのため、今後どういう風に活動していくのかも決まっていない。
もしかしたらソロかもしれないし、パーティーを組んでかもしれない。
しかし、どちらを選ぶにしても、エルヴィーノは料理の重要性を説く。
「ダンジョンの中だろうと外だろうと、魔物との戦闘は気を張るため、余計に体力を削る。それを回復をするためには食事だ」
「そうですね」
人間の3大欲求である食欲・性欲・睡眠欲。
そのなかで一番手っ取り早く満たせるのは食欲だろう。
しかし、ただ腹を満たすだけよりも、おいしい料理の方が良いに決まっている。
そう思うと、たしかに料理は重要だ。
「あっ!」
「おっ?」
エルヴィーノがミンチにした猪肉をこねていると、遠くから誰かが近づいてきた。
誰かと思っていたら、先に行かせていたセラフィーナが従魔のリベルタと共に戻ってきたのだ。
そのことに気づいたフィオレンツォは、軽く会釈する。
「良かった。間に合ったみたいね」
「ちょうどいいところに来たな」
そろそろ昼食の時間だろうと思って戻ってきたが、エルヴィーノが調理しているところを見るとグッドタイミングだったようだ。
これでエルヴィーノの料理にありつけると思い、セラフィーナは笑みを浮かべた。
「おぉ、いい感じにくたびれてるわね」
エルヴィーノの料理ができるのを待つ間、セラフィーナはフィオレンツォの様子を見る。
怪我をしている様子はないが、疲労困憊のうえ、全身埃まみれになっている。
セラフィーナとしては、予想通りの状態といった様子だ。
「朝からずっと魔物退治してましたから」
セラフィーナはいなかったため、自分がこんな状態になった理由を知らない。
そのため、フィオレンツォは短く説明をした。
フィオレンツォが言ったように、セラフィーナがいなくなってからもずっと魔物退治をさせられていたのだ。
休憩と呼べるのは、エルヴィーノが倒した魔物から魔石を取り出すまでの僅かな時間しかなかった。
気を張り続けたうえで出現した魔物との戦闘。
心身ともに疲弊するのは当然といったところだ。
「でしょうね。私も同じことやらされたから」
「えっ?」
せめて自分の苦労を知ってもらおうと思って言ったのだが、セラフィーナは当然といったように話す。
帰ってきたその言葉に、フィオレンツォは驚きの声を上げた。
「言ってなかったわね。私もエル様に指導を受けて強くなったのよ」
「そうなんですか……」
同じ方法で強くなったと聞いて、フィオレンツォはこれがエルヴィーノの指導法なのだと分かった。
そして、こんなことを続けなければならないのかと思うと、なんだか心が重くなった。
「だから言ったでしょ。短期訓練は選ばない方が良いって」
「全くですね」
自分の忠告を無視して、フィオレンツォは短期の指導を選択した。
その選択を、彼は後悔しているようにも見える。
そのため、言わんこっちゃないとばかりにセラフィーナが話しかけると、フィオレンツォは頷きつつ返事をする。
「でも、できる限り頑張ってみます」
「そう……」
自分で選んでおいて、もうやめますというのはなんとなくみっともない気がする。
そのため、フィオレンツォはまだ続けることを選択する。
それを聞いて、セラフィーナは「何気に負けず嫌い?」と心の中で思っていた。
「はいよ。トンテキにハンバーグ、それに生姜焼きに肉団子。猪肉料理のオンパレードだ」
「やった!」
「すごい!」
セラフィーナとフィオレンツォが話している間に、エルヴィーノの領地が完成した。
その見事に茶色一色の料理に、従魔たちを含めた全員が一斉に食べ始めたのだった。
大量の汗を掻き、息を切らすフィオレンツォ。
その周辺には鋭い牙を生やした猪が倒れている。
「よくやった!」
「そう…で…すか?」
猪を倒したフィオレンツォに対し、近くで見ていたエルヴィーノが称賛の言葉と共に近づく。
師匠であるエルヴィーノから褒められてうれしいフィオレンツォは、息切れで途切れ途切れになりつつ返答した。
「これで猪肉が食えるぞ!」
「……そ、そっち…すか?」
近づいてきたエルヴィーノは、すぐさま倒れた猪の解体を始めた。
どうやら、エルヴィーノが褒めたのは自分の戦闘に関してではなかったらしく、猪の肉が手に入ったことを喜んだ発言だったようだ。
そのことに気が付いたフィオレンツォは一気に力が抜けて、疲労からその場に座り込んでしまった。
“グ~……”
「あ~腹減った……」
座り込んだフィオレンツォの腹が鳴る。
戦闘で動き回ったことが原因だろう。
「……仕方ない。食事休憩としよう」
腹が減っては戦はできぬ。
それに、そろそろオルフェオのミルクの時間だ。
そういうわけで、エルヴィーノは食事休憩を取ることにした。
「本当ですか!?」
「あぁ、ちょっと待ってろ」
ようやくの休憩。
その言葉を聞いて、フィオレンツォは疲れを忘れたかのように反応する。
そんなフィオレンツォをそのままに、エルヴィーノは影の中から調理道具を出し始めた。
「……すごいですね」
闇魔法による影収納の利便性は理解していたが、包丁や鍋、様々な調味料などがポンポン出てくるのを見たら、便利の一言で片づけられない。
だが、闇魔法は燃費が悪いため、使いこなせる人間はかなり少ない。
それが普通なのに、エルヴィーノは影転移も行っているというのに、全然疲弊している様子がない。
それだけ魔力量が、けた違いに多いということなのだろう。
そう考えると、フィオレンツォは思わず称賛の言葉が口から洩れていた。
「今猪肉が手に入ったから、こいつをもらうぞ」
「えぇ、どうぞ」
今しがた解体した猪肉があるため、エルヴィーノのその肉を使った料理を作ることにした。
猪を倒したのは自分だが、エルヴィーノがいなければ持ち帰ることなんてできないし、調理器具なんて持ってきていない自分では料理ができない。
というか、貴族出身の自分は、生まれてから今まで料理をしたことがないため、せっかくの猪肉を無駄にしないためにも、フィオレンツォはエルヴィーノの好きにしてもらうことにした。
「……そうか。料理も覚えないとだめだな……」
猪肉を使い、てきぱきと料理を進めるエルヴィーノ。
その手さばきは見事としか言いようがない。
それを見ていたフィオレンツォは、料理も冒険者には必要なのだと気づいた。
「そうだぞ。ソロで活動するにしても、パーティーを組んで活動するにしても、料理はできた方が良いに決まっている」
フィオレンツォは、冒険者になったばかりだ。
そのため、今後どういう風に活動していくのかも決まっていない。
もしかしたらソロかもしれないし、パーティーを組んでかもしれない。
しかし、どちらを選ぶにしても、エルヴィーノは料理の重要性を説く。
「ダンジョンの中だろうと外だろうと、魔物との戦闘は気を張るため、余計に体力を削る。それを回復をするためには食事だ」
「そうですね」
人間の3大欲求である食欲・性欲・睡眠欲。
そのなかで一番手っ取り早く満たせるのは食欲だろう。
しかし、ただ腹を満たすだけよりも、おいしい料理の方が良いに決まっている。
そう思うと、たしかに料理は重要だ。
「あっ!」
「おっ?」
エルヴィーノがミンチにした猪肉をこねていると、遠くから誰かが近づいてきた。
誰かと思っていたら、先に行かせていたセラフィーナが従魔のリベルタと共に戻ってきたのだ。
そのことに気づいたフィオレンツォは、軽く会釈する。
「良かった。間に合ったみたいね」
「ちょうどいいところに来たな」
そろそろ昼食の時間だろうと思って戻ってきたが、エルヴィーノが調理しているところを見るとグッドタイミングだったようだ。
これでエルヴィーノの料理にありつけると思い、セラフィーナは笑みを浮かべた。
「おぉ、いい感じにくたびれてるわね」
エルヴィーノの料理ができるのを待つ間、セラフィーナはフィオレンツォの様子を見る。
怪我をしている様子はないが、疲労困憊のうえ、全身埃まみれになっている。
セラフィーナとしては、予想通りの状態といった様子だ。
「朝からずっと魔物退治してましたから」
セラフィーナはいなかったため、自分がこんな状態になった理由を知らない。
そのため、フィオレンツォは短く説明をした。
フィオレンツォが言ったように、セラフィーナがいなくなってからもずっと魔物退治をさせられていたのだ。
休憩と呼べるのは、エルヴィーノが倒した魔物から魔石を取り出すまでの僅かな時間しかなかった。
気を張り続けたうえで出現した魔物との戦闘。
心身ともに疲弊するのは当然といったところだ。
「でしょうね。私も同じことやらされたから」
「えっ?」
せめて自分の苦労を知ってもらおうと思って言ったのだが、セラフィーナは当然といったように話す。
帰ってきたその言葉に、フィオレンツォは驚きの声を上げた。
「言ってなかったわね。私もエル様に指導を受けて強くなったのよ」
「そうなんですか……」
同じ方法で強くなったと聞いて、フィオレンツォはこれがエルヴィーノの指導法なのだと分かった。
そして、こんなことを続けなければならないのかと思うと、なんだか心が重くなった。
「だから言ったでしょ。短期訓練は選ばない方が良いって」
「全くですね」
自分の忠告を無視して、フィオレンツォは短期の指導を選択した。
その選択を、彼は後悔しているようにも見える。
そのため、言わんこっちゃないとばかりにセラフィーナが話しかけると、フィオレンツォは頷きつつ返事をする。
「でも、できる限り頑張ってみます」
「そう……」
自分で選んでおいて、もうやめますというのはなんとなくみっともない気がする。
そのため、フィオレンツォはまだ続けることを選択する。
それを聞いて、セラフィーナは「何気に負けず嫌い?」と心の中で思っていた。
「はいよ。トンテキにハンバーグ、それに生姜焼きに肉団子。猪肉料理のオンパレードだ」
「やった!」
「すごい!」
セラフィーナとフィオレンツォが話している間に、エルヴィーノの領地が完成した。
その見事に茶色一色の料理に、従魔たちを含めた全員が一斉に食べ始めたのだった。
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