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第 1 章
第 8 話
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「エルヴィーノさん!」
「あいよ!」
オルフェオをあやして時間を潰していると、受付の女性から声をかけられる。
それに応じ、エルヴィーノは受付のカウンターへと向かった。
「こちらが3件の依頼達成費になります」
「どうも!」
受付に向かうと、ギルド職員の女性は硬貨をトレイに乗せ、エルヴィーノの前へと差し出す。
エルヴィーノは、そのトレイに乗っている硬貨を受け取り、財布としている小さい袋の中に入れた。
今朝受けた依頼を達成したことによる報酬金で、エルヴィーノは難なく成功させた。
特にザンナ猪は自分たちの食材用として多めに狩ったこともあり、報酬に色がついたほどだ。
「エルヴィーノ!」
「んっ?」
報酬も得たし、家に帰って夕飯の準備でも始めようかと考えていたエルヴィーノだったが、ギルドの建物から出る前に声をかけられ、立ち止まって振り返る。
誰かと思ったら、ここのギルド所長のトリスターノだった。
“クイッ!”
「……了解」
呼び止めたトリスターノへ向いつつ受付の方に向かって歩いて行くと、トリスターノは親指を立てて後方を指さした。
受付奥にある所長室に来てくれという合図だ。
その意味を理解したエルヴィーノは、それに従って所長室へと向かった。
「それで?」
「その坊のことだよ」
「あぁ……」
所長室に入り、トリスターノと向かい合わせでソファーに座ると、エルヴィーノはさっそくと言わんばかりに、所長室に呼んだ理由を問いかける。
すると、トリスターノはエルヴィーノの胸に抱かれているオルフェオのことを指さして返答した。
「生後半年ほどの赤ん坊関連の事件を調べた結果だ」
「仕事が早いな……」
エルヴィーノの前に3枚の紙を差し出すトリスターノ。
一昨日の朝、大繁殖した一角兎の討伐に向かう前に話したオルフェオのことを、さっそく調べてくれたらしい。
ギルド所長の仕事は、他にも色々と仕事があって忙しいはず。
それなのに、もう動いてくれていたなんて、エルヴィーノは頭に浮かんだ思いが口から出ていた。
「一昨日も思ったが、お前子供好きだろ?」
ギルド所長ともなると、荒事にも対処しなければならないため、腕っぷしも求められる。
トリスターノも元は高ランク冒険者だった。
修羅場もいくつか潜り抜けているせいか、顔は少々強面だ。
顔で判断するのは良くないが、とても子供好きには思えなかったため、エルヴィーノとしては意外だったため、ストレートに問いかけた。
「まあ、それもそうだが、孫のこともあってな」
「孫? あぁ、そいえば、あの娘は結婚して子供を産んだんだっけ……」
トリスターノには、結婚して隣の町に住んでいる娘がいる。
その娘が、何年か前に子供を産んだということをエルヴィーノは聞いていた。
そのため、孫という言葉を聞いたエルヴィーノは、何となく納得できた。
隣町のため会いに行こうと思えばそんなに難しいことではないが、仕事のこともあってなかなか頻繁に会いに行けていなとトリスターノはぼやいていた。
そのため、その孫とオルフェオのことを重ねているのかもしれない。
「よく考えると、あの娘が親なんてやっぱ人族の成長は早いな」
「そういや、お前たちには何度も面倒見てもらったっけ……」
トリスターノの娘のことを思い出し、エルヴィーノはしみじみと呟く。
なぜなら、トリスターノの奥さんは体が弱く、体調を崩すことが少なくなかったため、エルヴィーノとセラフィーナが奥さんと娘の面倒を見ていたからだ。
仕事と看病を懸命に両立していたトリスターノの努力もむなしく、奥さんが亡くなったときは、残された2人を一日中慰めたものだ。
その時大泣きしたことを思い出したからか、トリスターノは少し照れくさそうに呟いた。
「つい先日のような気もするが……」
「ダークエルフからすると時間の流れが違うんだろ」
「かもな……」
年寄りがいうようなエルヴィーノの台詞に、トリスターノはツッコミを入れる。
ダークと付くが、髪と目の色が違うだけのエルフだ。
人族の寿命が長くて100年とすると、ドワーフがその倍。
そして、エルフはドワーフの倍と言われている。
そのことから、エルヴィーノとセラフィーナも長くて400年くらい生きることができるはずだ。
それだけ長い年月を生きることができる者からすると、確かにトリスターノが言うように時間の感じ方が違うのかもしれない。
そのため、エルヴィーノはトリスターノのツッコミを受け入れた。
「話を元に戻そう」
「あぁ」
いつの間にか話がずれてしまった。
そのことに気づいた2人は、ようやく先ほどの紙の内容に移ることにした。
「3件か……」
「あぁ。とはいっても、1件は違うと思うがな」
トリスターノがエルヴィーノの前に出した紙には、この町付近の町や村で起きた生後半年前後の赤ん坊に関連する事件の内容が書かれていた。
それに目を通すエルヴィーノに対し、トリスターノは一枚を指さしてオルフェオのことではないと告げる。
「魔物に襲われたって話だからな……」
トリスターノが否定した事件とは、乗り合い馬車が森で魔物に襲われ、御者や乗客が行方不明になっているというものだ。
魔物から逃げきれず、御者も乗客も命を落としたというのが、一番考えられる可能性だ。
もしもの話として、その中の誰かが赤ん坊を連れて逃げてきたとしても、どうしてエルヴィーノの家の前に置いて行ったのか分からないため可能性は低い。
そもそも、馬車の目的地がこの町ではない。
そんな理由から、トリスターノはこれがオルフェオのことではないと判断したようだ。
「こっちも違うだろ……」
トリスターノが否定して残った2件のうち、エルヴィーノはもう1件に対して懐疑的な声を上げる。
その件とは、奴隷商が襲撃を受けて、赤ん坊がいなくなったというものだった。
この国では、法律上奴隷は認められているが、取り扱うのは犯罪者限定だ。
奴隷が生んだ子なのか分からないが、奴隷商に赤ん坊がいること自体があり得ない。
つまり、そこは悪徳奴隷商。
襲撃を受けたのも、家族や友人等が不当に奴隷にされた人間からだろう。
となると、赤ん坊も親の手に戻っているはず。
そのため、エルヴィーノはこの件もオルフェオのことではないと判断した。
「これは……」
残り一件に目を通す。
すると、エルヴィーノは小さく声を漏らして、書かれている内容をじっくりと読み始めた。
「あいよ!」
オルフェオをあやして時間を潰していると、受付の女性から声をかけられる。
それに応じ、エルヴィーノは受付のカウンターへと向かった。
「こちらが3件の依頼達成費になります」
「どうも!」
受付に向かうと、ギルド職員の女性は硬貨をトレイに乗せ、エルヴィーノの前へと差し出す。
エルヴィーノは、そのトレイに乗っている硬貨を受け取り、財布としている小さい袋の中に入れた。
今朝受けた依頼を達成したことによる報酬金で、エルヴィーノは難なく成功させた。
特にザンナ猪は自分たちの食材用として多めに狩ったこともあり、報酬に色がついたほどだ。
「エルヴィーノ!」
「んっ?」
報酬も得たし、家に帰って夕飯の準備でも始めようかと考えていたエルヴィーノだったが、ギルドの建物から出る前に声をかけられ、立ち止まって振り返る。
誰かと思ったら、ここのギルド所長のトリスターノだった。
“クイッ!”
「……了解」
呼び止めたトリスターノへ向いつつ受付の方に向かって歩いて行くと、トリスターノは親指を立てて後方を指さした。
受付奥にある所長室に来てくれという合図だ。
その意味を理解したエルヴィーノは、それに従って所長室へと向かった。
「それで?」
「その坊のことだよ」
「あぁ……」
所長室に入り、トリスターノと向かい合わせでソファーに座ると、エルヴィーノはさっそくと言わんばかりに、所長室に呼んだ理由を問いかける。
すると、トリスターノはエルヴィーノの胸に抱かれているオルフェオのことを指さして返答した。
「生後半年ほどの赤ん坊関連の事件を調べた結果だ」
「仕事が早いな……」
エルヴィーノの前に3枚の紙を差し出すトリスターノ。
一昨日の朝、大繁殖した一角兎の討伐に向かう前に話したオルフェオのことを、さっそく調べてくれたらしい。
ギルド所長の仕事は、他にも色々と仕事があって忙しいはず。
それなのに、もう動いてくれていたなんて、エルヴィーノは頭に浮かんだ思いが口から出ていた。
「一昨日も思ったが、お前子供好きだろ?」
ギルド所長ともなると、荒事にも対処しなければならないため、腕っぷしも求められる。
トリスターノも元は高ランク冒険者だった。
修羅場もいくつか潜り抜けているせいか、顔は少々強面だ。
顔で判断するのは良くないが、とても子供好きには思えなかったため、エルヴィーノとしては意外だったため、ストレートに問いかけた。
「まあ、それもそうだが、孫のこともあってな」
「孫? あぁ、そいえば、あの娘は結婚して子供を産んだんだっけ……」
トリスターノには、結婚して隣の町に住んでいる娘がいる。
その娘が、何年か前に子供を産んだということをエルヴィーノは聞いていた。
そのため、孫という言葉を聞いたエルヴィーノは、何となく納得できた。
隣町のため会いに行こうと思えばそんなに難しいことではないが、仕事のこともあってなかなか頻繁に会いに行けていなとトリスターノはぼやいていた。
そのため、その孫とオルフェオのことを重ねているのかもしれない。
「よく考えると、あの娘が親なんてやっぱ人族の成長は早いな」
「そういや、お前たちには何度も面倒見てもらったっけ……」
トリスターノの娘のことを思い出し、エルヴィーノはしみじみと呟く。
なぜなら、トリスターノの奥さんは体が弱く、体調を崩すことが少なくなかったため、エルヴィーノとセラフィーナが奥さんと娘の面倒を見ていたからだ。
仕事と看病を懸命に両立していたトリスターノの努力もむなしく、奥さんが亡くなったときは、残された2人を一日中慰めたものだ。
その時大泣きしたことを思い出したからか、トリスターノは少し照れくさそうに呟いた。
「つい先日のような気もするが……」
「ダークエルフからすると時間の流れが違うんだろ」
「かもな……」
年寄りがいうようなエルヴィーノの台詞に、トリスターノはツッコミを入れる。
ダークと付くが、髪と目の色が違うだけのエルフだ。
人族の寿命が長くて100年とすると、ドワーフがその倍。
そして、エルフはドワーフの倍と言われている。
そのことから、エルヴィーノとセラフィーナも長くて400年くらい生きることができるはずだ。
それだけ長い年月を生きることができる者からすると、確かにトリスターノが言うように時間の感じ方が違うのかもしれない。
そのため、エルヴィーノはトリスターノのツッコミを受け入れた。
「話を元に戻そう」
「あぁ」
いつの間にか話がずれてしまった。
そのことに気づいた2人は、ようやく先ほどの紙の内容に移ることにした。
「3件か……」
「あぁ。とはいっても、1件は違うと思うがな」
トリスターノがエルヴィーノの前に出した紙には、この町付近の町や村で起きた生後半年前後の赤ん坊に関連する事件の内容が書かれていた。
それに目を通すエルヴィーノに対し、トリスターノは一枚を指さしてオルフェオのことではないと告げる。
「魔物に襲われたって話だからな……」
トリスターノが否定した事件とは、乗り合い馬車が森で魔物に襲われ、御者や乗客が行方不明になっているというものだ。
魔物から逃げきれず、御者も乗客も命を落としたというのが、一番考えられる可能性だ。
もしもの話として、その中の誰かが赤ん坊を連れて逃げてきたとしても、どうしてエルヴィーノの家の前に置いて行ったのか分からないため可能性は低い。
そもそも、馬車の目的地がこの町ではない。
そんな理由から、トリスターノはこれがオルフェオのことではないと判断したようだ。
「こっちも違うだろ……」
トリスターノが否定して残った2件のうち、エルヴィーノはもう1件に対して懐疑的な声を上げる。
その件とは、奴隷商が襲撃を受けて、赤ん坊がいなくなったというものだった。
この国では、法律上奴隷は認められているが、取り扱うのは犯罪者限定だ。
奴隷が生んだ子なのか分からないが、奴隷商に赤ん坊がいること自体があり得ない。
つまり、そこは悪徳奴隷商。
襲撃を受けたのも、家族や友人等が不当に奴隷にされた人間からだろう。
となると、赤ん坊も親の手に戻っているはず。
そのため、エルヴィーノはこの件もオルフェオのことではないと判断した。
「これは……」
残り一件に目を通す。
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