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本編

それは突然に

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ふと東雲凛は、この世界が乙女ゲームの世界だと思い出した。


ウソ臭い笑顔を振りまいているアイドルが出ている番組を、ハンバーグを食べながら見ている夕飯の最中に突然。



ーーーこの世界が乙女ゲームの世界だと思い出した。



この世界での私の役はそう、脇役だ。


ヒロインが攻略対象と恋に落ちる様を、遠巻きに見ている人間の1人だ。


そして、脇役の中でも私は一際嫌なポジションだ。


ヒロインが何かとイベントを起こす際に、必ず私がいる。


これはなんと不幸か、神は私に味方してくれない。


しかも攻略対象の相手によっては、私は学校を追放されるのだ。


濡れ衣を着せられてだ、なんてこった。


こうなったら私はーーー




「もういっそ、堂々と邪魔をしてやろうと思うの!」


「何でそんな考えに行きつくんだ!?」




私がそう断言すると、従兄弟の水無月柊聖が大きな声を上げた。


こらこら、うるさいぞ。




「だって、学校追放されるくらいなら堂々と邪魔をしてやろうと思うじゃん」


「いや、思わねぇよ」


「分からず屋」


「何とでも言え」




残りのハンバーグを食べながら、小言を吐く。


従兄弟である柊聖は、暇ができたらうちに来る暇人だ。



「・・・で、乙女ゲームの世界なら、なんてゲームだったんだ?」


「えーと・・・」




確か、略称が『恋月』だったから・・・・・・




「思い出した!『恋する12ヶ月~運命の王子様との出会い~』だったはず!」


「なんだよその恥ずかしい名前は。よくそんな名前、でかでかと言ったな」


「ちなみにこのゲームでは、柊聖も攻略対象だからね」


「・・・は?」




呆けた顔をする我が従兄弟。


いやいやいやいや、冗談は言ってないよ。



「ど、どうして俺まで!?」


「言ったじゃん。恋する12ヶ月って」


「それで何で、俺が関係ある!?」


「うー・・・んと、名字」


「は?」


「その、水無月って名字」



何言ってんだコイツ、みたいな顔をするな。


こっちだって真剣なんだから。




「俺の名字のどの辺が問題なんだ」


「全部」


「・・・・・・」




この『恋する12ヶ月~運命の王子様との出会い~』という乙女ゲームは、学校を舞台にした乙女ゲームだ。


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