いつか、桜の森で。【8P短編】

ジェリージュンジュン

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【1】

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――5月。



 私は、すっかり緑色になった桜の木を見上げていた。



またいつか、桜の森が満開になったら逢いましょう

桜の森の満開の下

 必ず、きみに逢いにくるから



彼は、私にそう言ってくれた。

それが、最後の言葉。

 彼は、その言葉を置き土産に、遠い遠い都会へと旅立ってしまった。

それは1ヶ月前。

 4月1日のこと。


ねえ、あの約束は本当なの?

 私たちは、また逢うことができるの?


 私は、やっぱり信じきれないんだ。

だって、その日は、エイプリルフール。

 嘘を言っても許される日。

ううん。

 分かってるよ。

あなたが、嘘を言っていないことぐらい。

でも、それはあなたの願望で、もう叶うことがない約束。

だから、私はやっぱり悲しくなっちゃうんだ。

でもね、私は頑張るよ。

あなたに逢えると信じて、毎日を精一杯生きるからね。


だから、

だからいつかもう一度、




 桜の森の満開の下で



私と逢ってください



私に逢いに来てください



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