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エピソード2【天才科学者の兄妹】
【13】
しおりを挟むガチャ──
ドアが開き、黒いシャツの男が入ってきた。
その男は、左京。
先ほど、別室で大臣と話をしていた張本人。
実は、不良品駆除を1人でこなしている人物とは左京のことだった。
銀色の長い髪をかき上げながら、黒いシャツを淫らに着こなしている姿は、近寄りがたい雰囲気をかもし出している。
そして左京の姿が目に入ると、すかさず大臣は尋ねた。
「どうした? 仕事に向かったんじゃなかったのか?」
「終わりました」
「あいかわらず早いな」
軽く答える左京。
大臣は、その仕事の早さに関心するしかなかった。
そして、左京は独特の低い声でまた静かに喋り始める。
「最近、不良品が発生する確率があがってきているように思います。このままでは、人間の生活自体が危ういですよ」
「大丈夫だ」
大臣は言った。
「プログラムの見直しをするように、全ての科学者に伝え始めているところだ。たった今も、2人の科学者に話を通しておいた」
「そうですか。だったら、安心ですね」
「ところで左京よ、おまえも1人では大変だろう。ここにいる近藤を、相棒として使っていいぞ」
「足手まといになられても困ります。俺1人で充分ですよ」
さらっと断る左京。
近藤に目をやることもなく、淡々と銃の手入れをこなしている。
(やはり断ったか。だが、これから先の事を考えると……)
左京の性格上、大臣にとって、この答えは想定内だった。
しかし、不良品駆除を1人で行うには、いずれ限界がくる。
そう考えていた大臣は、ここで引くわけにはいかない。
「まあ、そう言うな。こう見えても、近藤の銃の腕は確かだ」
大臣は、左京を納得させる為の言葉を並べようとしていた。
だが左京は、2人に背を向けたまま、
「ふっ……」
ニヤッと口角を吊り上げ言った。
「そんな風には……見えないですけどね!」
バッ!──
そう言うと同時に、近藤に向けて銃口を突きつける。
しかし、その時、左京の目に映ったのは、ほぼ同時に自分に銃を向けている近藤の姿。
この瞬間、左京は、近藤がかなりの腕を持っている事を認識する。
「私のほうが0、2秒早かったですね」
近藤の言葉に、左京は何も言い返すことができない。
『腕のある者』を素直に認めることもまた『腕のある者』の実力なのである。
「……いいだろう。パシリにでも使ってやる」
それは、吐き捨てるような素直じゃない言葉だった。
だが、左京の性格ではこれが精一杯なのだろう。
「ありがとうございます」
そして、近藤は嫌な顔ひとつせず一礼をする。
左京とは対照的に、実によくできた人間だ。
「左京さん、これからよろしくお願いいたします」
握手を求める近藤。
だが、左京は、
「言っておくが、あくまでも俺に従え。おまえはペットの犬コロと一緒だ」
握手をすることもなく、ソファーに足を投げ出してゴロンと寝転んだ。
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