上 下
27 / 52
エピソード2【天才科学者の兄妹】

【13】

しおりを挟む




ガチャ──


ドアが開き、黒いシャツの男が入ってきた。

その男は、左京。

 先ほど、別室で大臣と話をしていた張本人。

 実は、不良品駆除を1人でこなしている人物とは左京のことだった。

 銀色の長い髪をかき上げながら、黒いシャツを淫らに着こなしている姿は、近寄りがたい雰囲気をかもし出している。

そして左京の姿が目に入ると、すかさず大臣は尋ねた。


 「どうした? 仕事に向かったんじゃなかったのか?」

 「終わりました」

 「あいかわらず早いな」


 軽く答える左京。

 大臣は、その仕事の早さに関心するしかなかった。

そして、左京は独特の低い声でまた静かに喋り始める。


 「最近、不良品が発生する確率があがってきているように思います。このままでは、人間の生活自体が危ういですよ」

 「大丈夫だ」


 大臣は言った。


 「プログラムの見直しをするように、全ての科学者に伝え始めているところだ。たった今も、2人の科学者に話を通しておいた」

 「そうですか。だったら、安心ですね」

 「ところで左京よ、おまえも1人では大変だろう。ここにいる近藤を、相棒として使っていいぞ」

 「足手まといになられても困ります。俺1人で充分ですよ」


さらっと断る左京。

 近藤に目をやることもなく、淡々と銃の手入れをこなしている。


 (やはり断ったか。だが、これから先の事を考えると……)


 左京の性格上、大臣にとって、この答えは想定内だった。

しかし、不良品駆除を1人で行うには、いずれ限界がくる。

そう考えていた大臣は、ここで引くわけにはいかない。


 「まあ、そう言うな。こう見えても、近藤の銃の腕は確かだ」


 大臣は、左京を納得させる為の言葉を並べようとしていた。

だが左京は、2人に背を向けたまま、


 「ふっ……」


ニヤッと口角を吊り上げ言った。


 「そんな風には……見えないですけどね!」


バッ!──


そう言うと同時に、近藤に向けて銃口を突きつける。

しかし、その時、左京の目に映ったのは、ほぼ同時に自分に銃を向けている近藤の姿。

この瞬間、左京は、近藤がかなりの腕を持っている事を認識する。


 「私のほうが0、2秒早かったですね」


 近藤の言葉に、左京は何も言い返すことができない。

 『腕のある者』を素直に認めることもまた『腕のある者』の実力なのである。


 「……いいだろう。パシリにでも使ってやる」


それは、吐き捨てるような素直じゃない言葉だった。

だが、左京の性格ではこれが精一杯なのだろう。


 「ありがとうございます」


そして、近藤は嫌な顔ひとつせず一礼をする。

 左京とは対照的に、実によくできた人間だ。


 「左京さん、これからよろしくお願いいたします」


 握手を求める近藤。
だが、左京は、


 「言っておくが、あくまでも俺に従え。おまえはペットの犬コロと一緒だ」


 握手をすることもなく、ソファーに足を投げ出してゴロンと寝転んだ。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...