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エピソード2【天才科学者の兄妹】

【12】

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そして、その姿を見て安心したのだろう。

 大臣にも少し笑みが浮かんでいた。


 「すまないのう……科学者としては、苦渋の決断だろうに……不良品になるアンドロイドの暴走原因さえ判明すれば、話は別だが……」

 「僕も、レイナと一緒に原因を調べてみます」

 「悪いな。だが、宇宙船の製造を優先すればいいからな」

 「でも……」

 「心配するな。原因の究明は、他の科学者にも依頼している。すぐに判明するさ」

 「そうですか……分かりました」


ハルトは、不良品のことがやはり頭から離れない。

しかし、念願の宇宙船製造に、一刻も早く取りかかりたいのも事実。

 頭の中で、板ばさみになっていた。

だが、


 「お~、そうじゃ、そうじゃ!」


 大臣の一言が、ハルトの気持ちを急変させる。


 「その代わりといっちゃなんだが、宇宙船造りの人員なら、ロボット検定で優秀な成績を残したやつを手配してやるから、好きなものを選ぶといい」

 「本当ですか!? 作業がはかどります! ありがとうございます!」


やはり、宇宙船製造にかける思いは強いようだ。

 一気に、目がキラキラと輝き始める。


「ほっほっほっ」


そして、それを見た大臣も、嬉しそうにヒゲを触りながら話を続けた。


 「ところで、どんなタイプがいいのじゃ?」

 「そうですね……」


ハルトは言った。


 「ちゃんと仕事をしてくれれば、特に希望はありません。まあ、しいて言えば、うちの工場にいないタイプなんか面白いかも……あっ! 太ってるアンドロイドなんか面白いかも!」


 子供のように、純粋にはしゃぐハルト。

 優しい眼差しで見つめる大臣は、まるで良きパパのようだ。


 「分かった、分かった。何ヶ月か時間がかかるかもしれんが、そのようなアンドロイドをそちらに派遣しておこう」

 「ありがとうございます!」


ハルトとレイナはお辞儀をすると、花梨に連れられ部屋をあとにした。

 一方、大臣は部屋から出て行くハルトの後姿を見送ったあと、


 (ふう……)


 『一安心』といった感じで大きく息を吐き、近藤に真面目な口調で話し始める。


 「近藤、頼みたいことがある」

 「何でしょう?」

 「おまえには、不良品駆除の任務についてもらう。不良品駆除のチームはいくつかあるが、誰とも組まず1人で仕事をこなしている奴がいるんだ。悪いがそいつの仕事を手伝ってやってくれ」

 「了解いたしました」


 近藤が、大臣の秘書に就任した理由。

それは、増え続ける不良品対策のためだった。

そして、深々と頭を下げる近藤に、大臣はうってかわって静かな声で言った。


 「それともう1つ……先ほどの宇宙船に関して大事な話が……」

 「宇宙船のこと……?」


 近藤が耳に全神経を傾け、大臣の話を聞こうとしたその時──


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