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⑫
しおりを挟む大丈夫だ。
俺は予定通り面接に行くことができる。
俺は耐えた。
1秒が何時間にも感じるようなこの空間で、指先一つ動かさずに立ち尽くしていた。
大丈夫だ。
もうじき、全てが終わる。
俺は、このまま早く時間が過ぎることだけを祈っていた。
――しかし、次の瞬間!
「おとなしくしろ!」
こともあろうか、俺は大声をあげながら、男に飛びついていた。
それは、一瞬の出来事。
自分でも、なぜそんな行動に出たのか分からない。
頭より先に体が反応したというべきだろうか。
男が紙幣をポケットにねじこもうとした時、一瞬隙ができた。
ナイフの刃が下を向いた瞬間を逃さず、俺は飛びついていた。
「てめえ! 殺すぞ!」
「ナイフを離せ!」
俺は男と揉み合いになった。
すると!
グサッ!――
「うっ!」
俺の腹に、偶然、ナイフが刺さってしまった。
「く、くそ!」
それを見た男は、ドアを乱暴に開け、外に飛び出して行った。
「うっ……うぅ……」
俺は床に仰向けで倒れた。
血が止まらない。
意識が遠くなる。
目に映るものが、全て歪み始めていた。
あぁ……いったい、なんでこんなことに……
俺は、何もせずにただの傍観者でいるはずだった。
予定通り、面接に行くはずだった。
なのに、なんで……こんなことに……
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