俺とあいつと貯金箱【短編】

ジェリージュンジュン

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というのは、理沙が花嫁道具として貰った祖母の形見の指輪が、なんと2500万もの価値があったのだ。
 当然、1億の借金返済の足しにしようと考えたが、それでも到底追いつかない。
 2人で返していくことには変わりがなかった。

「ねえ、英治」

里沙は夕食のカレーを煮込みながら言った。

「なんで、私と結婚する気になったの?」
 「え?」
 「いや、だって……あんなに大きな借金があったのに……」
 「ああ……」

俺は言った。

「どうせ1億を払うなら、勿論、里沙のためのほうがいいと思ってね」
 「え?」
 「あっ、いや、何でもないよ。あのね……」

俺はニコッと笑って言った。

「里沙のことが好きだからに決まってるだろ」
 「英治……ありがとう」

よほど嬉しかったのか、里沙は少し涙を流しながら笑みを浮かべた。

 俺の決断は正しかった。
なぜなら、その分の幸せを得ることができたからだ。

 実は、嬉しいことに子供を授かった。
 1億、いや、それ以上の価値がある。
 幸せは、ちゃんと返ってくるもんだな。

「でも……」

 理沙は涙を拭きながら言った。

 「未だに信じられないわ。もう借金がないなんて……」
 「あぁ、そうだな……」

俺は理沙をやさしく抱き寄せた。

そう。
 現在、すでに1億の借金は返済。
なぜかというと、一つの考えが成功したからだ。

それは『マイナスの金額』を貯金箱に入れるという方法。

 試しに俺は、携帯の請求書を入れてみた。
ちなみに、請求額は6千円。
すると、6千円の半分の3千円が出ていって、1万2千円が返ってきた。

 全く逆になったのだ。

だから、1億円の借金の借用書を入れてみた。
すると父親が、素人なのに手を出した株で失敗し、5千万円の借金を負うはめに。
その穴埋めのために、祖父から譲り受けた土地を手放すことになった。

その土地の価値は、5千万円。

 一応、父親の借金は無くなった。
だが、その土地はいずれ、俺が相続するもの。
だから実質的には、俺にとっても5千万円の損をしたことになる。

だが、奇跡がおこった――

ある日、職場のごみ箱に捨てていた宝くじを拾って確認した所、見事に大当り。

 2億円が手元に転がりこんできた。



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