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⑱
しおりを挟む俺は救われた。
絶望のふちで救われた。
これで、全てが解決できると思った。
──だが。
「それでだ……」
父親は言った。
「だから、通帳が必要なんだ」
「え?」
「あの通帳の最後のページに、宝くじが3枚挟まってるだろ? 3枚だから当たるわけないと思いながら、一応、番号は控えといたんだ」
「え……」
俺は電話を持ったまま固まった。
う、嘘だろ……
もう、その宝くじは貯金箱に入ってしまった。
ということは、5千万円を入れたと同じこと。
たぶん、半分の2500万が何かしらの形で返ってくる。
でも、俺は何かしらの形で1億円を払わなければいけない――
「ど、どうしよう……」
「何だ? まさか通帳、無くしたんじゃないだろうな?」
「いや……すぐに渡すよ」
貯金箱に入ってしまったものは、取り出しても効果は消えない。
1億という大きなしっぺ返しは、確実に俺に跳ね返ってくる。
最悪だ。
俺の人生、最悪だ。
なんで……なんでこんな事に……
「あぁ……そうか……」
ハハッ……答えは簡単だ……
俺は
お金に負けたんだな
* * *
――2年後。
そろそろ日も落ちてきた午後6時すぎ。
リビングには、カレーのいい匂いが充満している。
「もう少し待っててね」
「じゃあ、テーブルを拭いとくよ」
俺は、ふきんを片手にテーブルを拭き始めた。
あれから、俺には大きな変化があった。
結婚──
そう。
俺は、里沙と結婚した。
実は里沙が俺のもとを離れていったのは、知り合いの連帯保証人になってしまい、多額の借金を負ってしまったから。
あの時、喫茶店での『ごめんなさい』はそういう意味だったのだ。
再開したのは本当に偶然。
街中でバッタリと出会い、それから再び付き合うことに。
もちろん、付き合う前に里沙は、1億の借金のこともちゃんと話してくれた。
それを聞いて俺は、ピンときた。
おそらくこれが、あの貯金箱に入れた5千万の当りくじのしっぺがえし分……その1億なんだろうなと。
ちなみに、5千万の半分として返ってくる2500万円は、理沙との結婚と共に手に入れた。
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