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⑭
しおりを挟む「まあ、いいか」
だが、俺は気にも止めなかった。
今までの俺なら必死でさがしていたかもしれない。
正直、全くどこにいったのか分からないというのもあるが、それだけじゃない。
今の俺には余裕がある。
もうすぐ大金が入ってくるという余裕があった。
──40分後。
「募金、お願いします~」
職場の最寄り駅に着いた俺の目に、小さな子供達が募金活動をする姿が飛びこんできた。
うん、いいもんだな。
こういう風景は、すごく心を打たれる。
頑張っている姿を見たからか、俺は反射的に、普段はしない募金をすることにした。
だが、ここでちょっとした誤算が。
財布の中の半端な小銭、合わせて100円分を募金するつもりが、間違って200円分を入れてしまった。
自分でも、なぜ、100円分を多めに募金するというミスをしたのか分からない。
だが、まあいい。
全然いい。
この募金が、誰かの役に立つんだしな。
何より、俺には余裕がある。
あぁ。
余裕というのは素晴らしい。
こんなにも、全てに対してやさしい気持ちでいられるんだからな。
「よし、仕事だ、仕事」
俺は、さらに清々しい気持ちで歩みを進めた。
──3日後。
今日は仕事が休み。
俺は電車に乗って大型の電気屋に来ていた。
ここで、新しい携帯用ゲーム機のソフトを買うつもりだが、店に行く途中で、576円分のポイントカードを落としてしまった。
「ハァ……ついてないな……」
この間の自販機で落とした200円や、間違って募金した100円は、たいして気にならなかったが、500円を越える損失は、なんだかブルーな気分になるな。
いくら、いずれ大金が入ってくるといっても、なんだか嫌なもんだ。
やっぱり、こういう所が、俺の貧乏性なんだろうな。
貧乏が染み付いて、小さい男になっているんだろうな。
1時間後、店で買い物を済ませた俺は、アスファルトの地面に目を落としながら、トボトボと駅に向かって戻っていた。
すると、その時――
「あれ?」
ふと足元に目をやると、そこには馬券が落ちていた。
「馬券か……」
拾いあげ、じっくり覗き込むと、つい1時間ほど前に終わったレースだった。
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