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⑩
しおりを挟む──2時間後。
「いや~ん、テレビってほんと超楽しい~」
ジェリックは、相変わらずバラエティー番組に夢中。
長年住んでいる我が家のように、ゆったりとくつろいでいた。
もう時計の針は、午前1時を回っていた。
明日も仕事があるから、布団に入り早めに寝ようと思っていたが、いまだに寝つけない。
別に、ジェリックのテレビの音が原因じゃない。
実は、ゴミを捨てに行ってから、俺はずっと考え事をしていた。
「何かが引っかかるな……」
手元には、自販機の返却口にあった25円。
これを俺はずっと眺めていた。
ジュースの自販機で、返却口に10円玉があるのは理解できるが、5円玉まであるのは、なかなか珍しい。
何だろう。
何かすごく気になるな。
「あっ、もしかして……」
すると、やがて一つの考えが浮かんだ。
確か、ジェリックは貯金箱に魔法をかけた時、こんなことを言っていた。
《いずれは自分に返ってくるわよ。幸せ2倍、全てが2倍。幸せを掴むため、今日から貯金ライフを始めましょうね!》
自分に……返ってくる……
「あっ」
俺はピンとひらめいた。
もし、これが本当なら合点がいく。
「えっと……」
最初に、貯金箱に百円を入れた。
すると、牛丼屋のスクラッチで、50円の割引きになった。
そして、次に貯金箱に50円を入れた時は、自販機の返却口に25円入っていた。
そう。
『半分』
2つとも、貯金箱に入れた金額のちょうど半分が返ってきている。
ということは、あの貯金箱に入れた額の半分が返ってくるんじゃないだろうか。
「なあ、ジェリック」
俺は急いでベッドから立ち上がり尋ねた。
「この貯金箱って、入れた分の半分が返ってくるんじゃないの?」
「ピンポ~ン!」
ジェリックはニコッと笑った。
「よく分かったわね! まあ、現金で返ってくるってわけじゃないけどね」
さらに、拍手をし始める。
「じゃあ、どんどん貯金をしてみましょ~!お金を支配して幸せを手に入れるのよ~!」
また、ジェリックの踊りが始まった。
どうもテンションがあがると、自然と踊り出すらしい。
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