上 下
9 / 20

しおりを挟む



「日本のテレビって面白いわね~」
 「そうか? まあ、ゆっくり見ててよ」

 俺は、かばんを置き、本棚の隅に置いている貯金箱に向かった。

 「さてと、せっかくだから……」

そして、浮いた分の50円を貯金箱に入れた。
だって、元々、スクラッチなんかあてにしてなかったしな。
ふってわいた50円なんだから、ここは貯金に回すのが賢い選択だろう。


チャリン──


50円が貯金箱に吸い込まれる音が心地好く響いた。

 「あら? また貯金したの? えら~い」
 「ちょっとした臨時収入があったんだ。なるべく貯めなきゃね」
 「そうよ~、お金は裏切らないわよ~。まっ、あたしはお金に逃げられて、おまけに死んじゃったけどね~、いや~ん、うける~」
 「は、はは……」

こ、この幽霊……たまに、自虐ネタを言うよな。

ま、まあ、いい。
とりあえず、夕飯にするか。


──数時間後。


 牛丼も食べ終わり、部屋でくつろいで夜も11時を回った頃、俺はゴミを出しに行った。
 働いていると、24時間いつでもゴミを出せるマンションに住んでいて本当に良かったと思う。

そして、ゴミを出しに行った時、マンションの側にある自販機に目が止まった。

 「おっ、今だけ80円か」

これは、お買い得だな。
 俺は、ジーパンのポケットに手を入れ、小銭を確認。
すると百円玉があった。

 「買おうかな……貯金に回したとはいえ、牛丼屋で50円得したし、別にいいよな」

 俺は、鼻歌混じりで百円玉を投入。

 「いや、待てよ……」

しかし、ボタンを押そうとする手が、すぐにピタッと止まった。

ダメだ。
ダメだ、ダメだ。

こういうことをしているから、金が貯まらないんだ。
 俺はすぐに返却レバーを押した。

 「あれ?」

すると、返却口に百円玉があるのはもちろんだが、さらに小銭が入っていた。

 「あっ……誰かが取り忘れたのかな……」

それは、10円玉2枚と5円玉1枚の25円だった。

 「ハハッ、こりゃついてるな」


 俺は、ゴミを捨てにいったついでに、25円を手に入れることになった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...