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⑤
しおりを挟む「でね」
幽霊は、さらに言った。
「ということで、あなたにお礼してあげる」
「お礼?」
「こう見えても、あたしはこの世に300年近くもいるベテラン幽霊よ。お金にまつわる魔法ならお手の物よ」
「え!?」
俺は目を見開いた。
「ま、魔法??」
「うん、そうよ。お金がらみの未練があるからか、お金に囲まれて過ごしたいって思ったからか、魔法が使えるようになっちゃった。えへっ」
「は、はあ……」
ぬ、ぬおぉぉぉ~~~~~~!!
ま、また、キャラが濃くなったぞ~~~~~~~!!!!
元王子の幽霊でニューハーフってだけでもびっくりなのに、さらに魔法使いときたもんだ。
俺の頭は、もはやキャパシティーオーバー寸前だった。
すると、
「それでさぁ~」
幽霊は再び尋ねてきた。
「あなた、名前は?」
「え? 戸倉英治です」
「そう。じゃあ、呼び名は、えいじちゃんね」
ところで、と幽霊は言った。
「えいじちゃんは、お金持ってるの?」
「い、いや、全く……」
「だめよ! お金はいっぱい持ってなくちゃ! 振り回されちゃだめだけど、頭を使えば、どんどん幸せになれるんだから」
「は、はあ……」
お金……か。
思い返せば、俺は今まで貯金なんてしたことがない。
入ってきたお金は、後先考えずに、すぐに使ってしまう。
欲しい物をすぐに買ってしまう。
もちろん、使わなくてもいい無駄金も多かった。
そういうお金をコツコツと貯めていれば、俺も賢い日常が送れたに違いない。
「里沙……」
俺はふと、前の彼女のことが浮かんだ。
理沙と最後に会ったのは、もう2年前。
場所は、近くの喫茶店だった。
そこで30分ほどくつろいでいると、理沙は突然、涙を流しながら、
『ごめんなさい。英治とはもう付き合えないの。さようなら』
とだけ言い残し、喫茶店から走り去っていった。
俺は、呆然と冷えていくホットコーヒーだけを眺めて、しばらく椅子から立ち上がれなかった。
何度も振られる理由を考えた。
だが、やはり1つしか浮かばない。
それは、俺の稼ぎが悪いから。
いつまでも正社員になれない俺に、理沙は見切りをつけたんだと、自然にそういう結論に達した。
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