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③
しおりを挟む「それが何か?」
「んとね、ピレネディーニュ城って小さなお城があったでしょ?」
「ええ」
俺はコクリと頷いた。
「ツアーのオプションにそこの観光が入ってましたから」
「そこで、あなたが、あたしにプレゼントをくれたの」
「へ?」
「実はあたしは……」
幽霊は言った。
「西暦1750年頃、あのお城の王子だったのよん」
「お、王子!?」
「うん、そう」
でも、と幽霊は悲しそうな顔を浮かべた。
「戦争であたしたちは全滅……あたしはこの世に未練が残って……あのお城に幽霊として残ってしまったの」
「なるほど……大事な人がみんな殺されたんですもんね……お気持ち分かります」
「まあ、それもあるんだけど……ちょっと違うんだよね」
幽霊は手に力を入れて、怒りをあらわにし始めた。
「あ~! もう嫌! 今思い出しても腹が立つわ~!」
「へ?」
あ、あの、と俺は尋ねた。
「何があったんですか?」
「だ~~か~~ら~~!」
幽霊は声を荒げた。
「あたしのへそくりが全部取られたのよ~~! こっそりと地下に隠しておいたあたしの財宝が全て敵国に持ってかれたのよ~!」
「え!?」
「悲しすぎるでしょ! ねぇ、そう思うでしょ!?」
「は、はぁ……」
…………
え~!
そっち~!!!
未練ってそこかよ~~~~~~!!!!
「あぁ、悲しい……悲しいわ……」
幽霊は、再び寂しい口調になった。
「あたしはお金が大好きなのよ。だから、あの時、あなたがプレゼントしてくれたのがすごく嬉しかったの」
「え……?」
俺が……プレゼント……?
「あの……」
俺は首を傾げながら尋ねた。
「僕……あなたに何かあげましたっけ?」
「もう~、照れちゃって~、あたしが壁にもたれて立っていた時、あたしの足元に百円玉を置いてくれたじゃないの~」
「百円玉……?」
ひゃくえん……だま……
「あっ!」
な、何だか少し思い出したぞ。
あの城は確か、お金にまつわる歴史がある場所だとガイドさんが言っていた。
だから、俺たちツアー客は、あの城の好きな場所に小銭を置いていくと幸せになれると聞いていた。
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