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エキドナの呪い編
本当の歴史
しおりを挟むティアの心の世界から戻ってくると、リナの氷漬けは解けており、アリアを庇うよう木陰に身を潜めていた。
「ティアぁ~っ!!!」
ティアが正気に戻ったのを見たアリアが泣きながら抱き着きにいった。
「アリア....。ごめん、アタシ、アリアにも攻撃を...」
「ううん、そんなの全然気にしてないよ。ティアが無事ならそれで!」
お互いに抱きしめ合い、2人で泣いていた。
「カルマ様、何をされたのですか?突然、あの化物が消えて....」
どうやら凍っていても見えている事は覚えているらしく、僕に問い詰めてきた。
「違うわ!消えたんじゃない。コイツが倒したのよ!!」
「た、倒した?!」
まだ涙の浮かぶ目をキリッとさせて、ティアが否定した。
しかし、どうやらリナは納得ができないようだ。
その驚きぶりは普段のリナからは想像も出来ないほどの豹変ぶりだ。
「それより、あんた、さっさと説明しなさいよ!炎とか雷とか氷とか使って、一体何者なの?」
「た、確かに、この土の壁もカルマ様が出したような...」
「ええっ?!カルマって水以外も使えるの?!!」
「えーと、あはは....」
シキ、どうやって説明するの?!
『この際だ。儂を実体化してみろ』
実体化...。
前にリナが言っていたやつか。
『竜力を出し、儂の姿をイメージしろ。器が出来れば儂が移動する』
わ、わかった。
とりあえず、やってみるよ!
シキは全身が黒くて、翼型で、大きさは大人が5人分くらいかな。
後は、角が2本生えてて、目は鋭い感じの瞳孔は赤。
それを竜力で形取る感じで...。
『そうだ。そのままでいろ』
言われた通り待って、少ししたら、アリアの歓声が聞こえた。
「すごーいっ!!これがカルマの相棒っ?!!」
目を開けるとそこにシキがいた。
だが、想像した大きさよりかは遥かに小さく、大人1人分くらいになっていた。
「あれ、小さい?」
「いや、話すだけだ。この大きさで十分だろう」
まぁ確かに、木より大きくなって他の人に見られても困るだろうし。
「それで?この竜がどうしたのよ」
「ふん、小娘、救ってやったのに礼もなしか」
「なっ....?!」
ティアが顔を赤く染めた。
「まぁいい。それより、カルマがなぜ水以外を使える、だったか...。それは、儂が全色竜だからだ」
「全色竜...?そんなの聞いたことないわっ!嘘をつくならもっとマシな嘘をつきなさいよ!!」
「嘘ではない。全色竜は存在する。全色竜とは全ての竜の原点。つまり竜王だ」
「竜王って、あの童話に出てくる?!!」
アリアはシキを見た時から、目を輝かせていたが、竜王という単語を聞いた瞬間、その輝きは倍増した。
「そこの小娘が前に読んでいたものか。確かにあれは儂のことだが、あの童話は真実ではないぞ」
「それこそ嘘ね!!だってあの童話は、パパやママも小さい時に読んで歴史を学んでいるもの!!」
「さっきから貴様は何かと突っかかるやつだな。あの四つん這いで相棒に近寄る姿の方が....」
「ああぁぁぁっっっ!!!それ以上言うんじゃ無いわよっ!!」
ティアはさっきよりも顔を真っ赤にして言った。
あのティアがシキに言葉で押されていた。
「よく分からん奴だ。それより、久しぶりにこっちに来たんだ、せっかくだから本当の歴史を教えてやろう」
「本当の歴史?じゃあ、僕がリナから教わったのは本当の歴史じゃなかったってこと?」
「ああ、あの童話は事実をねじ曲げられた歴史だ」
そう言ってシキは続けた。
当時は人と竜が一対となって共存していた。
その頃からシキは竜王で対となっていたいたのは人の王だったそうだ。
その人がアルカディア。
ある時、アルカディアに2人の子供が産まれた。
童話で出てきた、2人の兄妹だ。
人と共存を始めてから初めての命。
シキも大いに喜び、自分の恩恵を授けようとした。
それが黒竜と白竜だった。
2人の子供と2体の子竜はすくすくと育ち、大人になっていった。
この2組の子供達にはシキ達の後を継いでもらう予定だった。
その予行として、それぞれに領地を持たせて統治させた。
どちらが王に相応しいか見極めるためでもあった。
しかし、どちらとも上手くいかなかった。
初めは誰でも失敗するものだ。
そう言って励ましても上手くいくことは無かった。
色々なことを試したが、成功することは無く、不満だけが溜まっていった。
その溝口がシキ達に向き、童話の反乱が起きた。
それは僕達では想像もつかない程、激しい戦争だったそうだ。
何人、何体もの犠牲が出たと言う。
結果は民の気持ちを組んだシキ達の負け。
これ以上の犠牲は出すまいと降伏した。
でも、ただでは降伏しなかった。
シキは全ての竜から恩恵を剥奪した。
シキが言うには、竜王の恩恵がないと、この現世では消滅してしまうらしい。
結果、全ての竜が生き場をなくし、人の中に宿ることになった。
「今にして思えば、竜と人が共存するには相棒という方法が最も効果的だった」
そう言って、シキはどこか寂しそうな顔をした。
「「....」」
そして、3人は言葉を失っていた。
3人からしてみれば、今までの常識が覆された様なものだろうから、無理もないよね。
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