47 / 52
47 対決
しおりを挟む
驚いて目を開けると、顔を真っ赤にしてサイラスが怒鳴った。
「何事だ! 誰にも攻撃されないように結界を張っていたんだぞ!」
攻撃を受けたって事は誰かが結界を破ったと言う事かしら。
サイラスは鉄格子から手を抜くと、扉の方を向いて身構えた。
ドタドタと足音が近付いて来て勢いよく扉が開かれた。
「サイラス! 見つけたぞ! 今日こそはお前を捕まえてやる!」
真っ先に顔を出したのは魔術師団長だった。
「ジェラード、お前が俺に勝てると思うのか?」
「サイラス、たとえ相討ちになったとしても絶対にお前を倒す!」
二人は睨み合ったまま動かないけれど、どちらの手にも魔力が集まっているのが垣間見える。
こんな狭い部屋で魔力を繰り出したら、周囲への影響が半端ないと思うんだけど、とばっちりは受けたくないわね。
二人が睨み合っている隙に他の魔術師の人が私が入っている檻に近付いて来た。
だけど、この檻には何処にも出入り口がないのよね。
一体どうやって私をこの檻の中に入れたのかしら?
「アリス様、少し離れてください」
魔術師の人に言われたけれど、私は相変わらず身体を動かす事が出来ない。
首を横に振ることすら出来ない私を見て、魔術師の人は私から一番遠い鉄格子に向かって手のひらをかざした。
手のひらから炎の玉が飛び出して鉄格子を焼き尽くす。
「貴様、何をしてる!」
サイラスが魔術師の人に向かって魔力を投げつけたが、何故かその魔力は魔術師の人が着ているローブに吸収された。
「な、何だと!?」
驚いているサイラスに向かって魔術師団長が魔力を放つ。
その魔力をギリギリのところで躱したサイラスは魔術師団長に向かって魔力を放った。
だが、その攻撃も魔術師団長の着ているローブに吸収されてしまった。
「貴様! 一体そのローブにどんな細工をしたんだ!」
ワナワナと怒りに震えるサイラスが問いただすが、魔術師団長はニヤリとする。
「そんな手の内を明かすような真似はしないよ。今のうちに降伏するのならば命までは奪わない。だが、これ以上抵抗すれば命の保障はないぞ!」
「うるさい! 誰がお前に降伏なんかするか! 俺の方がお前よりも優れているんだ!」
そう言うなりサイラスは魔術師団長に向かって再度魔力を繰り出すが、その攻撃は再びローブに吸い込まれていった。
「…サイラス… 仕方がない。エイブラム、やれ!」
魔術師団長の合図と共に、なにもない空間からエイブラムさんが姿を現した。
そしてあっけに取られているサイラスに向かって剣を振り下ろした。
サイラスは咄嗟にエイブラムに向かって魔力を放ったが、その魔力もエイブラムが身に着けていたローブに吸収された。
サイラスはエイブラムさんの剣に切り裂かれ、真っ赤な血が辺りに飛び散る。
身動きが出来ない私は飛び散る血を避けることも出来なかった。
エイブラムさんは素早く剣を仕舞うと焼けた鉄格子の隙間から私の所にやって来てクリーン魔法で血を洗い流してくれた。
「アリス様、お怪我は?」
「怪我は無いわ。助けに来てくれてありがとう」
魔術師の人が私の拘束を解いてくれたお陰で、ようやく口もきけるようになったわ。
それでも歩こうとすると身体が強張っていて思うように歩けない。
「アリス様、失礼いたします」
そう言うなりエイブラムさんは私を抱き上げた。
そのまま鉄格子を抜けて檻から出ると、倒れたサイラスの側に魔術師団長がしゃがんでいた。
「サイラス、何か言い残す事はないか?」
魔術師団長が尋ねるとサイラスはフッと笑いを漏らした。
「…なにも… ただ、そのローブの細工がわからないのが悔しい…」
「そうか。私があの世に行ったら教えてやるよ」
「…それは…楽しみ…」
サイラスはゴフリと血を吐くとそれきり動かなくなった。
魔術師団長は辛そうな顔でサイラスの目を閉じさせると俯いてしまった。
もしかしたらこの二人も同級生とかライバルとか呼べる関係だったのだろうか。
しんみりした空気を破るようにドタドタと足音が近付いて来た。
ん?
この足音はもしかして…
「アリス、大丈夫かい?」
案の定、姿を現したのはお兄様だった。
お兄様はエイブラムさんにお姫様抱っこされている私を見ると、エイブラムさんから引ったくるように私を奪い取った。
「さあ、アリス。私が部屋まで連れて行ってあげるよ」
私をお姫様抱っこしてご満悦のお兄様がニコニコと笑いかける。
そんなに長い時間このままなの?
ところでここは何処?
「何事だ! 誰にも攻撃されないように結界を張っていたんだぞ!」
攻撃を受けたって事は誰かが結界を破ったと言う事かしら。
サイラスは鉄格子から手を抜くと、扉の方を向いて身構えた。
ドタドタと足音が近付いて来て勢いよく扉が開かれた。
「サイラス! 見つけたぞ! 今日こそはお前を捕まえてやる!」
真っ先に顔を出したのは魔術師団長だった。
「ジェラード、お前が俺に勝てると思うのか?」
「サイラス、たとえ相討ちになったとしても絶対にお前を倒す!」
二人は睨み合ったまま動かないけれど、どちらの手にも魔力が集まっているのが垣間見える。
こんな狭い部屋で魔力を繰り出したら、周囲への影響が半端ないと思うんだけど、とばっちりは受けたくないわね。
二人が睨み合っている隙に他の魔術師の人が私が入っている檻に近付いて来た。
だけど、この檻には何処にも出入り口がないのよね。
一体どうやって私をこの檻の中に入れたのかしら?
「アリス様、少し離れてください」
魔術師の人に言われたけれど、私は相変わらず身体を動かす事が出来ない。
首を横に振ることすら出来ない私を見て、魔術師の人は私から一番遠い鉄格子に向かって手のひらをかざした。
手のひらから炎の玉が飛び出して鉄格子を焼き尽くす。
「貴様、何をしてる!」
サイラスが魔術師の人に向かって魔力を投げつけたが、何故かその魔力は魔術師の人が着ているローブに吸収された。
「な、何だと!?」
驚いているサイラスに向かって魔術師団長が魔力を放つ。
その魔力をギリギリのところで躱したサイラスは魔術師団長に向かって魔力を放った。
だが、その攻撃も魔術師団長の着ているローブに吸収されてしまった。
「貴様! 一体そのローブにどんな細工をしたんだ!」
ワナワナと怒りに震えるサイラスが問いただすが、魔術師団長はニヤリとする。
「そんな手の内を明かすような真似はしないよ。今のうちに降伏するのならば命までは奪わない。だが、これ以上抵抗すれば命の保障はないぞ!」
「うるさい! 誰がお前に降伏なんかするか! 俺の方がお前よりも優れているんだ!」
そう言うなりサイラスは魔術師団長に向かって再度魔力を繰り出すが、その攻撃は再びローブに吸い込まれていった。
「…サイラス… 仕方がない。エイブラム、やれ!」
魔術師団長の合図と共に、なにもない空間からエイブラムさんが姿を現した。
そしてあっけに取られているサイラスに向かって剣を振り下ろした。
サイラスは咄嗟にエイブラムに向かって魔力を放ったが、その魔力もエイブラムが身に着けていたローブに吸収された。
サイラスはエイブラムさんの剣に切り裂かれ、真っ赤な血が辺りに飛び散る。
身動きが出来ない私は飛び散る血を避けることも出来なかった。
エイブラムさんは素早く剣を仕舞うと焼けた鉄格子の隙間から私の所にやって来てクリーン魔法で血を洗い流してくれた。
「アリス様、お怪我は?」
「怪我は無いわ。助けに来てくれてありがとう」
魔術師の人が私の拘束を解いてくれたお陰で、ようやく口もきけるようになったわ。
それでも歩こうとすると身体が強張っていて思うように歩けない。
「アリス様、失礼いたします」
そう言うなりエイブラムさんは私を抱き上げた。
そのまま鉄格子を抜けて檻から出ると、倒れたサイラスの側に魔術師団長がしゃがんでいた。
「サイラス、何か言い残す事はないか?」
魔術師団長が尋ねるとサイラスはフッと笑いを漏らした。
「…なにも… ただ、そのローブの細工がわからないのが悔しい…」
「そうか。私があの世に行ったら教えてやるよ」
「…それは…楽しみ…」
サイラスはゴフリと血を吐くとそれきり動かなくなった。
魔術師団長は辛そうな顔でサイラスの目を閉じさせると俯いてしまった。
もしかしたらこの二人も同級生とかライバルとか呼べる関係だったのだろうか。
しんみりした空気を破るようにドタドタと足音が近付いて来た。
ん?
この足音はもしかして…
「アリス、大丈夫かい?」
案の定、姿を現したのはお兄様だった。
お兄様はエイブラムさんにお姫様抱っこされている私を見ると、エイブラムさんから引ったくるように私を奪い取った。
「さあ、アリス。私が部屋まで連れて行ってあげるよ」
私をお姫様抱っこしてご満悦のお兄様がニコニコと笑いかける。
そんなに長い時間このままなの?
ところでここは何処?
2
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■


【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる