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40 グレンダへの尋問
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目覚めてから二日後、グレンダさんに事情聴取をすると言われて私も同席をお願いした。
「同席するのは構わないが、あの女が何を口走るかわからないぞ。それでも良いのか?」
「あの女は母上を目の敵にしていたんだ。母上にそっくりなアリスが傷付けられるのは耐えられないよ」
お父様もお兄様も私を気遣ってくれるけれど、どうしてグレンダさんがエイブラムさんにちょっかいをかけていたのかが気になるのよね。
聞いたところでグレンダさんが素直に話してくれるかどうかはわからないけどね。
同席を許されたとは言っても、私はグレンダさんに認識されないように隠蔽魔法をかけられる事になった。
グレンダさんが拘束されている独房へ、お父様とお兄様と私、そしてエイブラムさんが訪れた。
そして万が一を考えて魔術師団長と数人の魔術師がすぐ側に待機している。
グレンダさんは首と両手首、両足首の5箇所に輪っかがはめられていた。
これはグレンダさんの魔力を抑えるためのもので、これを取り付けた人物にしか外されないようになっている。
ここまでされるってどれだけの魔力をグレンダさんは持っているのかしら。
そもそもその魔力はグレンダさんのものなのか、魂を入れ替えたコーデリアさんのものなのか…。
それとも二人分の魔力だから多いのかしら。
独房とは言っても扉は鉄格子で出来ているので、中が丸見えになっている。
独房の前にお父様達が姿を見せると、ベッドに腰掛けていたグレンダさんはニヤリと笑った。
「やっと姿を見せたわね。いつまでもこんな所に閉じ込めていないでさっさと処刑したらどう?」
「グレンダ、いやコーデリアか。お前はアリスをどうするつもりだったのだ?」
グレンダさんはお父様に「コーデリア」と呼ばれて「ククッ」と可笑しそうに笑う。
「コーデリア? あら、誰の事かしら?」
そう言いながらも何処か嬉しそうに見えるのは私の気の所為かしら。
「しらばっくれるな! 五年前にコーデリアを処刑した際、その者は『自分はグレンダだ』と訴えていた。あの時は罪を逃れる為の作り話かと思っていたが、そうではなかった。今のお前の雰囲気はコーデリアそのものだ!」
お父様がそう指摘すると、ますますグレンダさんが嬉しそうに微笑む。
自分がグレンダではなくコーデリアだと認識されるのが嬉しいのかしら。
「私がコーデリアだったらどうだって言うの? どちらにしても処刑されるのに変わりはないんでしょ?」
「望み通りに処刑してやる。だから洗いざらい話せ! アリスをどうするつもりだった?」
お兄様が問い詰めるとグレンダさんはそこでお兄様がいる事に気付いたようだ。
「あら、あなたもいたのね。クリスティンにそっくりな娘なんてあの世に送ってやるつもりだったわ。それをエイブラムにさせるつもりだったの」
「何故、エイブラムを誑かしていたんだ? 随分前からエイブラムにちょっかいをかけていただろう?」
「本当はコンラッドに近付きたかったのよ。だけど一介の魔術師がコンラッドに近付けないでしょ。だからアンドリューに近いエイブラムから足掛かりを掴もうとしたのよ。それも中々ガードが固くて、ようやく手中に収めそうな時にあの娘が帰って来たの。そしたらあの娘、エイブラムに気があるみたいだったから、エイブラムに始末させようと思ったのに、私の魔法を跳ね返すなんて…」
ブルブルと首を振りながら悔しそうにまくし立てるグレンダさんに、私は彼女の本音を察した。
この人は本当にお父様が好きだったのだと…。
勿論、彼女のしてきた事は到底許されるようなものではない。
それでもなりふり構ってはいられないくらいにお父様を愛していたのだ。
お父様とお母様がただの政略結婚だったのならば、コーデリアさんも側妃なり、後妻なり、なれたかもしれない。
だけど、結果として恋愛結婚に発展してしまったからお父様はコーデリアさんを受け入れなかったのだろう。
だけど、そんなコーデリアさんの思いもお父様には通じなかったみたいだ。
「はあ、まったく話にならんな。さっさとこの女を処刑にしろ」
お父様はそう言い残してこの場を去ろうとしている。
「待って、お父様!」
私が隠蔽魔法から姿を現すと、コーデリアさんが叫んだ。
「クリスティン! あんたの施しなんて受けないわ! これ以上私を惨めにさせないでよ!」
何故、そこでお母様の名前が?
そう疑問に思うと同時にコーデリアさんが口をギュッと噛み締めた。
パキッ!
何かが折れたような音がしたと思うとコーデリアさんの口から一筋の血が流れ落ち、彼女の身体はその場に倒れ込んだ。
「同席するのは構わないが、あの女が何を口走るかわからないぞ。それでも良いのか?」
「あの女は母上を目の敵にしていたんだ。母上にそっくりなアリスが傷付けられるのは耐えられないよ」
お父様もお兄様も私を気遣ってくれるけれど、どうしてグレンダさんがエイブラムさんにちょっかいをかけていたのかが気になるのよね。
聞いたところでグレンダさんが素直に話してくれるかどうかはわからないけどね。
同席を許されたとは言っても、私はグレンダさんに認識されないように隠蔽魔法をかけられる事になった。
グレンダさんが拘束されている独房へ、お父様とお兄様と私、そしてエイブラムさんが訪れた。
そして万が一を考えて魔術師団長と数人の魔術師がすぐ側に待機している。
グレンダさんは首と両手首、両足首の5箇所に輪っかがはめられていた。
これはグレンダさんの魔力を抑えるためのもので、これを取り付けた人物にしか外されないようになっている。
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そもそもその魔力はグレンダさんのものなのか、魂を入れ替えたコーデリアさんのものなのか…。
それとも二人分の魔力だから多いのかしら。
独房とは言っても扉は鉄格子で出来ているので、中が丸見えになっている。
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「やっと姿を見せたわね。いつまでもこんな所に閉じ込めていないでさっさと処刑したらどう?」
「グレンダ、いやコーデリアか。お前はアリスをどうするつもりだったのだ?」
グレンダさんはお父様に「コーデリア」と呼ばれて「ククッ」と可笑しそうに笑う。
「コーデリア? あら、誰の事かしら?」
そう言いながらも何処か嬉しそうに見えるのは私の気の所為かしら。
「しらばっくれるな! 五年前にコーデリアを処刑した際、その者は『自分はグレンダだ』と訴えていた。あの時は罪を逃れる為の作り話かと思っていたが、そうではなかった。今のお前の雰囲気はコーデリアそのものだ!」
お父様がそう指摘すると、ますますグレンダさんが嬉しそうに微笑む。
自分がグレンダではなくコーデリアだと認識されるのが嬉しいのかしら。
「私がコーデリアだったらどうだって言うの? どちらにしても処刑されるのに変わりはないんでしょ?」
「望み通りに処刑してやる。だから洗いざらい話せ! アリスをどうするつもりだった?」
お兄様が問い詰めるとグレンダさんはそこでお兄様がいる事に気付いたようだ。
「あら、あなたもいたのね。クリスティンにそっくりな娘なんてあの世に送ってやるつもりだったわ。それをエイブラムにさせるつもりだったの」
「何故、エイブラムを誑かしていたんだ? 随分前からエイブラムにちょっかいをかけていただろう?」
「本当はコンラッドに近付きたかったのよ。だけど一介の魔術師がコンラッドに近付けないでしょ。だからアンドリューに近いエイブラムから足掛かりを掴もうとしたのよ。それも中々ガードが固くて、ようやく手中に収めそうな時にあの娘が帰って来たの。そしたらあの娘、エイブラムに気があるみたいだったから、エイブラムに始末させようと思ったのに、私の魔法を跳ね返すなんて…」
ブルブルと首を振りながら悔しそうにまくし立てるグレンダさんに、私は彼女の本音を察した。
この人は本当にお父様が好きだったのだと…。
勿論、彼女のしてきた事は到底許されるようなものではない。
それでもなりふり構ってはいられないくらいにお父様を愛していたのだ。
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「待って、お父様!」
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