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27 舞踏会
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私がこの世界に転移してから早くも一ヶ月が過ぎた。
あれから王宮での生活にも慣れ、貴族社会の常識を学び、ダンスやマナーも身に着けた。
そして、今日は国内の主だった貴族を招いての舞踏会が開かれる。
そう、つまり私のお披露目である。
私の事は生まれてすぐに病弱のため、王都の外れで静養していたという事になっている。
私と入れ替えられたアリシアが生きていれば、私の代わりをさせるつもりだったが、アリシアは虚弱で長くは生きられないとわかっていたからだ。
実際にアリシアは一歳を迎える前に亡くなった。
彼女のお墓は王都にある平民の墓地に埋葬された。
私はお忍びでお兄様に連れられてアリシアのお墓参りに行ってきた。
小さな墓石に『アリシア』と刻まれ、周りを花で埋め尽くされていた。
この花は魔法で一年中枯れないようになっているそうだ。
私達が入れ替えられずにアリシアが健康で、私が異世界に飛ばされなかったら、きっと仲の良い友達になれたかもしれない。
舞踏会の夜、私は大広間に続く扉の前に立っていた。
既に大広間には大勢の貴族達で埋め尽くされている。
さっき、うっかり大広間の様子を覗いたのは大きな間違いだったわ。
まさかあんなに集まっているとは思わなかったのよ。
そのため、今にも心臓が口から飛び出しそうな勢いでドキドキドキ脈打っている。
「アリス、大丈夫かい? 顔が引き攣っているよ」
隣に立つお兄様が心配そうに私の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫よ。これくらい耐えてみせるわ」
声が震えているのは気の所為よ。
やがてお父様が先に大広間へと入場していった。
次は私とお兄様が呼ばれる番だわ。
「続いてアンドリュー王子様、アリス王女様」
名前が呼ばれてサッと扉が開かれる。
お兄様にエスコートされて私は大広間の中へと足を踏み入れた。
「「「おおっ!」」」
という歓声と共に
「王妃様によく似ていらっしゃるわ」
「お元気そうで安心したわ」
などと言う声が私の耳に届く。
ご令嬢達の鋭い視線は、お兄様にエスコートされている私への牽制かしらね。
まだ、誰とも婚約していないのだから、私達がペアを組むのは当然だと思うのよね。
大広間の壇上に上がり、お父様の横に並べられた椅子に腰掛ける。
皆が静まり返ったのを見計らってお父様が立ち上がった。
「本日はよく集まってくれた。既に聞き及んでいるかもしれないが、長らく静養していたアリスがようやく健康を取り戻してくれた。亡き王妃も喜んでいるだろう。アリス、皆さんにご挨拶しなさい」
お父様に促されて私は立ち上がると、一歩前に進み出てお辞儀をした。
「本日はようこそおいでくださいました。こうして元気になれて皆様にお会いできて大変嬉しく思います。どうかよろしくお願いいたします」
割れんばかりの拍手が大広間に響き渡る。
とりあえず第一関門突破ね。
ホッとする間もなくダンスの時間がやってくる。
最初は主催である王族が踊るのだが、打ち合わせでは私とお兄様が踊る事になっていた。
しかし…。
何故か私の手を取って、お父様とお兄様が睨み合っている。
「父上。私とアリスが踊る事になっていたはずですが?」
「何を言う! ここは当然、私と踊るに決まっているだろう」
…恥ずかしいから止めてもらいたいものだわ。
いつもはお父様を諌める宰相も、今日は我関せずを決め込んでいる。
そうなるとこの場を収めるのは私しかいないだろう。
ここはやはりお父様の顔を立てておくべきだろう。
「お兄様。申し訳ありませんが、先にお父様と踊ります。その後はお兄様と踊りますわ。よろしいでしょう?」
ニコリと微笑むと、お兄様は渋々とお父様にダンスの権利を譲った。
大広間にいる貴族達の目が、生暖かいものになっている。
誰か!
お兄様にお嫁さんを紹介して!
あれから王宮での生活にも慣れ、貴族社会の常識を学び、ダンスやマナーも身に着けた。
そして、今日は国内の主だった貴族を招いての舞踏会が開かれる。
そう、つまり私のお披露目である。
私の事は生まれてすぐに病弱のため、王都の外れで静養していたという事になっている。
私と入れ替えられたアリシアが生きていれば、私の代わりをさせるつもりだったが、アリシアは虚弱で長くは生きられないとわかっていたからだ。
実際にアリシアは一歳を迎える前に亡くなった。
彼女のお墓は王都にある平民の墓地に埋葬された。
私はお忍びでお兄様に連れられてアリシアのお墓参りに行ってきた。
小さな墓石に『アリシア』と刻まれ、周りを花で埋め尽くされていた。
この花は魔法で一年中枯れないようになっているそうだ。
私達が入れ替えられずにアリシアが健康で、私が異世界に飛ばされなかったら、きっと仲の良い友達になれたかもしれない。
舞踏会の夜、私は大広間に続く扉の前に立っていた。
既に大広間には大勢の貴族達で埋め尽くされている。
さっき、うっかり大広間の様子を覗いたのは大きな間違いだったわ。
まさかあんなに集まっているとは思わなかったのよ。
そのため、今にも心臓が口から飛び出しそうな勢いでドキドキドキ脈打っている。
「アリス、大丈夫かい? 顔が引き攣っているよ」
隣に立つお兄様が心配そうに私の顔を覗き込む。
「だ、大丈夫よ。これくらい耐えてみせるわ」
声が震えているのは気の所為よ。
やがてお父様が先に大広間へと入場していった。
次は私とお兄様が呼ばれる番だわ。
「続いてアンドリュー王子様、アリス王女様」
名前が呼ばれてサッと扉が開かれる。
お兄様にエスコートされて私は大広間の中へと足を踏み入れた。
「「「おおっ!」」」
という歓声と共に
「王妃様によく似ていらっしゃるわ」
「お元気そうで安心したわ」
などと言う声が私の耳に届く。
ご令嬢達の鋭い視線は、お兄様にエスコートされている私への牽制かしらね。
まだ、誰とも婚約していないのだから、私達がペアを組むのは当然だと思うのよね。
大広間の壇上に上がり、お父様の横に並べられた椅子に腰掛ける。
皆が静まり返ったのを見計らってお父様が立ち上がった。
「本日はよく集まってくれた。既に聞き及んでいるかもしれないが、長らく静養していたアリスがようやく健康を取り戻してくれた。亡き王妃も喜んでいるだろう。アリス、皆さんにご挨拶しなさい」
お父様に促されて私は立ち上がると、一歩前に進み出てお辞儀をした。
「本日はようこそおいでくださいました。こうして元気になれて皆様にお会いできて大変嬉しく思います。どうかよろしくお願いいたします」
割れんばかりの拍手が大広間に響き渡る。
とりあえず第一関門突破ね。
ホッとする間もなくダンスの時間がやってくる。
最初は主催である王族が踊るのだが、打ち合わせでは私とお兄様が踊る事になっていた。
しかし…。
何故か私の手を取って、お父様とお兄様が睨み合っている。
「父上。私とアリスが踊る事になっていたはずですが?」
「何を言う! ここは当然、私と踊るに決まっているだろう」
…恥ずかしいから止めてもらいたいものだわ。
いつもはお父様を諌める宰相も、今日は我関せずを決め込んでいる。
そうなるとこの場を収めるのは私しかいないだろう。
ここはやはりお父様の顔を立てておくべきだろう。
「お兄様。申し訳ありませんが、先にお父様と踊ります。その後はお兄様と踊りますわ。よろしいでしょう?」
ニコリと微笑むと、お兄様は渋々とお父様にダンスの権利を譲った。
大広間にいる貴族達の目が、生暖かいものになっている。
誰か!
お兄様にお嫁さんを紹介して!
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