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112 アラン達の救出
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テオとドニの手を借りて僕は閉じ込められていた獣人達を屋敷の外に連れ出した。
母さんは何とか歩けるようで父さんに支えられるようにしてついてきた。
屋敷の玄関先にはペルラン伯爵家に仕えていた侍女や侍従だけでなく、門や玄関に立っていた騎士までもが拘束されていた。
そこへランベール様が拘束された貴族と共に玄関から出てくる。
おそらくあれがペルラン伯爵なんだろう。
こうして見るとかなりの人数の騎士がペルラン伯爵の屋敷に乗り込んで来ていたようだ。
そんな中、僕はアランとその弟の姿が見えない事に気付いた。
「テオ、アラン達はどうしたの? まだ屋敷の中?」
テオもぐるりと辺りを見回して、ようやくアラン達がいない事に気付いたようだ。
「獣人達の開放に集中してたからな。アラン達の事は頭から抜けてたよ」
あっけらかんとした答えに僕はがっくりと項垂れる。
確かにペルラン伯爵の手先になって獣人を攫って来たけれど、弟を人質に取られて仕方なくだったんだからね。
薄情なテオは置いといて僕が探しに行くとしよう。
「僕が行ってくるよ。父さん達はここで皆と一緒にいてね」
屋敷の中に向かって駆け出した僕をテオが追いかけてくる。
「待て、シリル! 俺も一緒に行くよ」
アランが書いた屋敷の見取り図を思い出しながら、奥へと進んでいくと扉がいくつも続いている場所に出た。
「こんなに部屋が並んでいるとは思わなかったな。一体何処に閉じ込められているんだ?」
テオと一緒に片端から部屋を開けて回るとようやく檻が二つ置いてある部屋に行き着いた。
「テオ! ここだ!」
部屋に入ると片方の黒猫が立ち上がって檻に前足をかけていた。
「アラン!」
檻の駆け金を外してアランを出してやると、アランはすぐにもう一匹の黒猫の檻へと駆け出した。
そちらの檻にはぐったりと横たわって動かない黒猫がいた。
まるで先程までの母さんみたいだ。
僕はすぐにそちらの檻に近寄ると駆け金を外してぐったりとしている黒猫を檻から出した。
アランも心配そうに黒猫に寄り添っている。
黒猫を魔法陣の上に乗せて首輪を解除したけれど、ぐったりしたままで人型には戻らない。
「こいつは相当弱ってるな。アラン。お前もさっさと首輪を解除しろ」
テオに言われてようやくアランは魔法陣の上に乗り、自分の首輪を解除して人型に戻った。
「ブノワ、しっかりしろ! もう大丈夫だぞ! ブノワ!」
アランの呼びかけにもブノワはピクリとも反応しなかった。
「くそっ! ペルランの野郎、ブノワに回復魔法をかけなかったんだな!」
アランは必死にブノワの体を揺さぶるが、それでもブノワが目を開ける事はなかった。
「ブノワ! 息をしてるか? ブノワ!」
どうやら非常に危ないところまできているようだ。
僕は先程母さんにしたみたいにブノワに回復魔法をかける事にした。
ブノワの側に跪くとブノワの体に両手を当てて回復魔法をかける。
僕の手から眩い光が放たれるとブノワの体も光に包まれた。
やがてその光が徐々に消えていくと、ブノワの目が薄っすらと開いていった。
「…に、兄さん?」
「ブノワ! 気が付いたか?」
ブノワはゆっくり休んで立ち上がるとその姿を人型に変えた。
そこにはアランに瓜二つの青年が立っていた。
「兄さん、ごめんね。僕のせいで他の獣人を攫って来なきゃいけなかったんだよね。ごめんね」
アランに抱きついて泣きじゃくるブノワの背中をアランは優しくさすっている。
「もう、そんな事はしなくて済むんだ。ここにいるテオやシリル、そしてランベール樣のおかげだ」
それを聞いたブノワはパッと顔を上げてアランに問いかける。
「本当に? もう、誰も攫って来なくていいんだね」
アランが頷くのを見てブノワは、床に座り込んでいる僕を見た、
「君がシリル? ありがとう。君が僕を助けてくれたんだよね」
ブノワが僕に手を差し出してくる。
僕はブノワの手を取って立ち上がろうとしたが、その瞬間目の前が真っ暗になった。
あれ?
一体、僕はどうしたんだ?
母さんは何とか歩けるようで父さんに支えられるようにしてついてきた。
屋敷の玄関先にはペルラン伯爵家に仕えていた侍女や侍従だけでなく、門や玄関に立っていた騎士までもが拘束されていた。
そこへランベール様が拘束された貴族と共に玄関から出てくる。
おそらくあれがペルラン伯爵なんだろう。
こうして見るとかなりの人数の騎士がペルラン伯爵の屋敷に乗り込んで来ていたようだ。
そんな中、僕はアランとその弟の姿が見えない事に気付いた。
「テオ、アラン達はどうしたの? まだ屋敷の中?」
テオもぐるりと辺りを見回して、ようやくアラン達がいない事に気付いたようだ。
「獣人達の開放に集中してたからな。アラン達の事は頭から抜けてたよ」
あっけらかんとした答えに僕はがっくりと項垂れる。
確かにペルラン伯爵の手先になって獣人を攫って来たけれど、弟を人質に取られて仕方なくだったんだからね。
薄情なテオは置いといて僕が探しに行くとしよう。
「僕が行ってくるよ。父さん達はここで皆と一緒にいてね」
屋敷の中に向かって駆け出した僕をテオが追いかけてくる。
「待て、シリル! 俺も一緒に行くよ」
アランが書いた屋敷の見取り図を思い出しながら、奥へと進んでいくと扉がいくつも続いている場所に出た。
「こんなに部屋が並んでいるとは思わなかったな。一体何処に閉じ込められているんだ?」
テオと一緒に片端から部屋を開けて回るとようやく檻が二つ置いてある部屋に行き着いた。
「テオ! ここだ!」
部屋に入ると片方の黒猫が立ち上がって檻に前足をかけていた。
「アラン!」
檻の駆け金を外してアランを出してやると、アランはすぐにもう一匹の黒猫の檻へと駆け出した。
そちらの檻にはぐったりと横たわって動かない黒猫がいた。
まるで先程までの母さんみたいだ。
僕はすぐにそちらの檻に近寄ると駆け金を外してぐったりとしている黒猫を檻から出した。
アランも心配そうに黒猫に寄り添っている。
黒猫を魔法陣の上に乗せて首輪を解除したけれど、ぐったりしたままで人型には戻らない。
「こいつは相当弱ってるな。アラン。お前もさっさと首輪を解除しろ」
テオに言われてようやくアランは魔法陣の上に乗り、自分の首輪を解除して人型に戻った。
「ブノワ、しっかりしろ! もう大丈夫だぞ! ブノワ!」
アランの呼びかけにもブノワはピクリとも反応しなかった。
「くそっ! ペルランの野郎、ブノワに回復魔法をかけなかったんだな!」
アランは必死にブノワの体を揺さぶるが、それでもブノワが目を開ける事はなかった。
「ブノワ! 息をしてるか? ブノワ!」
どうやら非常に危ないところまできているようだ。
僕は先程母さんにしたみたいにブノワに回復魔法をかける事にした。
ブノワの側に跪くとブノワの体に両手を当てて回復魔法をかける。
僕の手から眩い光が放たれるとブノワの体も光に包まれた。
やがてその光が徐々に消えていくと、ブノワの目が薄っすらと開いていった。
「…に、兄さん?」
「ブノワ! 気が付いたか?」
ブノワはゆっくり休んで立ち上がるとその姿を人型に変えた。
そこにはアランに瓜二つの青年が立っていた。
「兄さん、ごめんね。僕のせいで他の獣人を攫って来なきゃいけなかったんだよね。ごめんね」
アランに抱きついて泣きじゃくるブノワの背中をアランは優しくさすっている。
「もう、そんな事はしなくて済むんだ。ここにいるテオやシリル、そしてランベール樣のおかげだ」
それを聞いたブノワはパッと顔を上げてアランに問いかける。
「本当に? もう、誰も攫って来なくていいんだね」
アランが頷くのを見てブノワは、床に座り込んでいる僕を見た、
「君がシリル? ありがとう。君が僕を助けてくれたんだよね」
ブノワが僕に手を差し出してくる。
僕はブノワの手を取って立ち上がろうとしたが、その瞬間目の前が真っ暗になった。
あれ?
一体、僕はどうしたんだ?
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