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79 帰郷
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テオの家に着くと僕とビリー兄さんは一つの部屋に案内された。
「あまり広くはないが二人でこの部屋を使ってくれ。何か必要な物があったら遠慮なく言ってくれよ。夕食の支度が出来たら呼びに来るよ」
「ありがとうございます。遠慮なく使わせて貰います」
部屋にはベッドが一つとソファーが置いてあるだけだった。
普通の人間ならベッドが一つでは狭いだろうけど、狐の姿になって寝れば何の問題もない。
僕がベッドの上で狐の姿になると、ビリー兄さんも同じように狐の姿でベッドに上がってきた。
ベッドの上で丸くなると兄さんが僕の側に寄り添ってくる。
「…やっぱりこうして誰かと一緒にいるっていうのはいいもんだな」
「兄さん…」
アーリン兄さんと一緒に捕まったとはいえ、別々の檻に入れられて首輪を着けられたので会話すら出来なかったらしい。
僕も今まで関わった人達と一緒に寝ていたりしたけれど、やはりこうして兄さんといる方が安心する。
しばらく二人でまったりしているとテオが僕達を呼びに来た。
ベッドから下りて人型になったが、ビリー兄さんが不満そうな目で僕を見る。
「どうしたの、兄さん?」
「やっぱりその姿は慣れないな。せめて僕と同じくらいになってくれよ」
ビリー兄さんには僕の青年姿はお気に召さないらしい。
やれやれとは思ったが、赤ん坊の姿と言われるよりはいいかと兄さんと同じくらいの大きさになる。
満足そうに頷く兄さんと連れ立って食堂に向かうとテオのお母さんが目を見開いた。
「まあ、可愛い。ジャンヌも早く孫の顔を見せてくれればいいのに…。ねぇ、あなた」
そう言ってテオのお父さんの顔を見るけれど、テオのお父さんはそれには答えずに仏頂面を見せる。
ジャンヌさんが結婚して家を出ていったのが気に入らないんだろうけど、こういう人ほど孫が生まれたら孫にベッタリになるんだよね。
ジャンヌさんの話題には不機嫌になるテオのお父さんだけど、食事の間は和やかな雰囲気で僕達に話しかけてくれた。
楽しい食事の時間が終わって部屋に戻ると早々に休む事にする。
明かりを消して狐の姿でベッドに丸くなると、ビリー兄さんも同じように丸くなる。
暗闇の中、なかなか寝付けずにいると「なあ、シリル」とビリー兄さんが話しかけてきた。
「何、兄さん?」
「お前、僕達の里が何処にあるか知っているんだよな」
そう聞かれて、兄さんが何を言いたいのか理解した。
「うん、知ってるよ。兄さんも里に行きたいの?」
里には帰ったが、いるはずだと思っていた家族は誰もいなかった。
あの時の悲しみと絶望は言い表すことが出来ないものだった。
「俺も里に行ってみたい。…もしかしたら父さんと母さんが戻っているかもしれないだろ…」
その可能性はあるかもしれない。
父さん達が何処を探しているかはわからないが、何かの折に里に戻らないとは言い切れない。
もしかしたら里に帰ってあの狐の獣人のおばさんに僕が戻っていた事を聞かされているかもしれない。
そう思うと僕は居ても立っても居られなかった。
「うん、兄さん。僕ももう一度あの里に行きたい。明日すぐに出発しよう」
朝早くに出発すれば夜には里につけるはずだ。
僕達は明日に備えてぐっすりと眠った。
翌朝、目が覚めると僕達はテオに里に帰る事を告げた。
「多分、そう言うだろうと思っていたよ。二人だけで帰るのか? エリクを一緒に付けようか?」
流石にこれ以上新婚さんのエリクをジャンヌさんから引き離すのは気が引ける。
早く孫の顔が見たいと言ったテオのお母さんのためにもここは僕達だけで帰る事にしよう。
「大丈夫です。一度帰っているので二人だけで行きます」
「僕も付いて行ってやりたいが、ランベール様の手伝いがあってね。でもまたここに戻って来るんだろう?」
まだアーリン兄さんが見つからない以上、またここに戻って来るしかない。
「はい、そのつもりです」
僕達はテオの家族に別れを告げると里を目指して旅立った。
「あまり広くはないが二人でこの部屋を使ってくれ。何か必要な物があったら遠慮なく言ってくれよ。夕食の支度が出来たら呼びに来るよ」
「ありがとうございます。遠慮なく使わせて貰います」
部屋にはベッドが一つとソファーが置いてあるだけだった。
普通の人間ならベッドが一つでは狭いだろうけど、狐の姿になって寝れば何の問題もない。
僕がベッドの上で狐の姿になると、ビリー兄さんも同じように狐の姿でベッドに上がってきた。
ベッドの上で丸くなると兄さんが僕の側に寄り添ってくる。
「…やっぱりこうして誰かと一緒にいるっていうのはいいもんだな」
「兄さん…」
アーリン兄さんと一緒に捕まったとはいえ、別々の檻に入れられて首輪を着けられたので会話すら出来なかったらしい。
僕も今まで関わった人達と一緒に寝ていたりしたけれど、やはりこうして兄さんといる方が安心する。
しばらく二人でまったりしているとテオが僕達を呼びに来た。
ベッドから下りて人型になったが、ビリー兄さんが不満そうな目で僕を見る。
「どうしたの、兄さん?」
「やっぱりその姿は慣れないな。せめて僕と同じくらいになってくれよ」
ビリー兄さんには僕の青年姿はお気に召さないらしい。
やれやれとは思ったが、赤ん坊の姿と言われるよりはいいかと兄さんと同じくらいの大きさになる。
満足そうに頷く兄さんと連れ立って食堂に向かうとテオのお母さんが目を見開いた。
「まあ、可愛い。ジャンヌも早く孫の顔を見せてくれればいいのに…。ねぇ、あなた」
そう言ってテオのお父さんの顔を見るけれど、テオのお父さんはそれには答えずに仏頂面を見せる。
ジャンヌさんが結婚して家を出ていったのが気に入らないんだろうけど、こういう人ほど孫が生まれたら孫にベッタリになるんだよね。
ジャンヌさんの話題には不機嫌になるテオのお父さんだけど、食事の間は和やかな雰囲気で僕達に話しかけてくれた。
楽しい食事の時間が終わって部屋に戻ると早々に休む事にする。
明かりを消して狐の姿でベッドに丸くなると、ビリー兄さんも同じように丸くなる。
暗闇の中、なかなか寝付けずにいると「なあ、シリル」とビリー兄さんが話しかけてきた。
「何、兄さん?」
「お前、僕達の里が何処にあるか知っているんだよな」
そう聞かれて、兄さんが何を言いたいのか理解した。
「うん、知ってるよ。兄さんも里に行きたいの?」
里には帰ったが、いるはずだと思っていた家族は誰もいなかった。
あの時の悲しみと絶望は言い表すことが出来ないものだった。
「俺も里に行ってみたい。…もしかしたら父さんと母さんが戻っているかもしれないだろ…」
その可能性はあるかもしれない。
父さん達が何処を探しているかはわからないが、何かの折に里に戻らないとは言い切れない。
もしかしたら里に帰ってあの狐の獣人のおばさんに僕が戻っていた事を聞かされているかもしれない。
そう思うと僕は居ても立っても居られなかった。
「うん、兄さん。僕ももう一度あの里に行きたい。明日すぐに出発しよう」
朝早くに出発すれば夜には里につけるはずだ。
僕達は明日に備えてぐっすりと眠った。
翌朝、目が覚めると僕達はテオに里に帰る事を告げた。
「多分、そう言うだろうと思っていたよ。二人だけで帰るのか? エリクを一緒に付けようか?」
流石にこれ以上新婚さんのエリクをジャンヌさんから引き離すのは気が引ける。
早く孫の顔が見たいと言ったテオのお母さんのためにもここは僕達だけで帰る事にしよう。
「大丈夫です。一度帰っているので二人だけで行きます」
「僕も付いて行ってやりたいが、ランベール様の手伝いがあってね。でもまたここに戻って来るんだろう?」
まだアーリン兄さんが見つからない以上、またここに戻って来るしかない。
「はい、そのつもりです」
僕達はテオの家族に別れを告げると里を目指して旅立った。
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