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37 監禁部屋
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夕食をすっかり平らげて、侍女にお茶を淹れてもらってのんびりすすっていると、扉がノックされた。
侍女が扉を開けると入ってきたのは二人の王子だった。
慌てて立ち上がろうとする僕を片手で制して王子達は僕の前の席に腰を下ろした。
「やあ、シリル。勝手に部屋を移動してしまって済まなかったね。食事は済んだかい?」
ファビアン様に問われて僕はコクリと頷いた。
「はい、とても美味しかったです。ありがとうございました」
腹ごしらえも済んだ事だし、そろそろ僕に何かをやらせるつもりなんだろうな。
そう思い、ファビアン様をじっと見つめると、その横にいるランベール様の方が先に口を開いた。
「シリル。君にやってもらいたい事があるんだけど、協力してくれるか?」
勿論、そのつもりで付いてきたのだから、僕にイヤという選択肢はない。
「もちろんです。…もしかして先程の幻影魔法を使うのですか?」
二人に幻影魔法を見せた時にそう言われていたのを思い出した。
誰に使うのかはわからないけれど、僕で役に立てるのならば協力しておいた方がいいだろう。
そうすれば僕の家族がいる里についての情報も集めてもらえるかもしれない。
「その代わりと言ってはなんですが、僕の家族が住んでいる里について何かわかることがあれば教えてもらえますか?」
僕がそう切り出すと、ファビアン様とランベール様は顔を見合わせると軽く頷きあった。
「それについてはテオ達に情報を集めるように頼んでおいた。何か分かり次第知らせてくれるそうだ」
ファビアン様が請け負ってくれた事で僕はホッとした。
僕が協力する事を確信したのか、ランベール様が何やら書かれた紙を僕に差し出してきた。
「…これは、何ですか?」
僕がその紙を手に取って読み始めると、細々とした事が箇条書きにされていた。
「これから行ってもらう幻影魔法についての詳細だ。一度、私にかけて見せてくれ。変更してほしい箇所があれば伝える」
どうやらこの通りの幻影魔法をランベール様にかけて見せなければいけないようだ。
つまり予行演習って事かな。
「…わかりました。今、この場でかければよろしいですか?」
「ああ、頼む」
ランベール様は淡々と答えるけれど、僕の心境は複雑だった。
これを本当にランベール様にかけていいのか?
そう思いチラリとファビアン様を見やると、少し悲しそうに微笑まれた。
どちらかと言えばやりたくないけれど、協力すると言った以上、やらないわけにはいかない。
僕は軽く息を吐くとランベール様に向かって幻影魔法をかけた。
その後、変更点をいくつか挙げられて再度ランベール様に幻影魔法をかける。
……。
長い沈黙の後でランベール様は満足そうに頷いた。
「完璧だよ、シリル。…それじゃ、その幻影魔法をかけるべき相手の所に行こうか」
「…はい」
僕は思い腰を上げるとファビアン様とランベール様に連れられて部屋を出た。
******
リリアーナはソファーに座るとぐるりと部屋の中を眺めた。
部屋の中に置かれた家具はどれも高価な物で公爵令嬢であるリリアーナが使うには相応しい物ばかりだった。
ただ一点、扉にはめ込まれた鉄格子さえ無ければの話だが…。
会議室から連れ出されたリリアーナは騎士達によって、貴族の罪人が入れられるこの部屋へと連れてこられた。
おそらくリリアーナの父親もこの近くにある部屋に連れてこられたに違いない。
…何処で失敗したのかしら…。
国王が亡くなったら自分の息子であるランベールを国王にして、憎いあの女とその息子に国王を殺した罪を着せて断罪するはずだったのに…。
そのために父親である公爵が動いていたはずだったのに、気が付けば自分達親子が断罪をされていた。
おまけに自分の息子であるランベールがやけに異母弟であるファビアンと仲が良さげなのが気になった。
…一体どういう事?
ランベールの世話は乳母や使用人達に任せきりだったけれど、ファビアンとは仲が悪いともっぱらの噂だった。
リリアーナ自身もあの二人が一緒にいる所を見た事はない。
それなのにリリアーナの耳に入ってきていた情報は現実とは違ったものだったようだ。
リリアーナはぐったりとソファーにより掛かるときつく目を閉じた。
…これはきっと悪い夢だわ…
次に目を開けたら違う世界が広がっているはず…
目を閉じたリリアーナの耳に微かに赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
「嫌だわ、なんで赤ん坊なんかいるのよ」
そう呟いたリリアーナがゆっくりと目を開けると、そこは先程とは別の場所だった。
侍女が扉を開けると入ってきたのは二人の王子だった。
慌てて立ち上がろうとする僕を片手で制して王子達は僕の前の席に腰を下ろした。
「やあ、シリル。勝手に部屋を移動してしまって済まなかったね。食事は済んだかい?」
ファビアン様に問われて僕はコクリと頷いた。
「はい、とても美味しかったです。ありがとうございました」
腹ごしらえも済んだ事だし、そろそろ僕に何かをやらせるつもりなんだろうな。
そう思い、ファビアン様をじっと見つめると、その横にいるランベール様の方が先に口を開いた。
「シリル。君にやってもらいたい事があるんだけど、協力してくれるか?」
勿論、そのつもりで付いてきたのだから、僕にイヤという選択肢はない。
「もちろんです。…もしかして先程の幻影魔法を使うのですか?」
二人に幻影魔法を見せた時にそう言われていたのを思い出した。
誰に使うのかはわからないけれど、僕で役に立てるのならば協力しておいた方がいいだろう。
そうすれば僕の家族がいる里についての情報も集めてもらえるかもしれない。
「その代わりと言ってはなんですが、僕の家族が住んでいる里について何かわかることがあれば教えてもらえますか?」
僕がそう切り出すと、ファビアン様とランベール様は顔を見合わせると軽く頷きあった。
「それについてはテオ達に情報を集めるように頼んでおいた。何か分かり次第知らせてくれるそうだ」
ファビアン様が請け負ってくれた事で僕はホッとした。
僕が協力する事を確信したのか、ランベール様が何やら書かれた紙を僕に差し出してきた。
「…これは、何ですか?」
僕がその紙を手に取って読み始めると、細々とした事が箇条書きにされていた。
「これから行ってもらう幻影魔法についての詳細だ。一度、私にかけて見せてくれ。変更してほしい箇所があれば伝える」
どうやらこの通りの幻影魔法をランベール様にかけて見せなければいけないようだ。
つまり予行演習って事かな。
「…わかりました。今、この場でかければよろしいですか?」
「ああ、頼む」
ランベール様は淡々と答えるけれど、僕の心境は複雑だった。
これを本当にランベール様にかけていいのか?
そう思いチラリとファビアン様を見やると、少し悲しそうに微笑まれた。
どちらかと言えばやりたくないけれど、協力すると言った以上、やらないわけにはいかない。
僕は軽く息を吐くとランベール様に向かって幻影魔法をかけた。
その後、変更点をいくつか挙げられて再度ランベール様に幻影魔法をかける。
……。
長い沈黙の後でランベール様は満足そうに頷いた。
「完璧だよ、シリル。…それじゃ、その幻影魔法をかけるべき相手の所に行こうか」
「…はい」
僕は思い腰を上げるとファビアン様とランベール様に連れられて部屋を出た。
******
リリアーナはソファーに座るとぐるりと部屋の中を眺めた。
部屋の中に置かれた家具はどれも高価な物で公爵令嬢であるリリアーナが使うには相応しい物ばかりだった。
ただ一点、扉にはめ込まれた鉄格子さえ無ければの話だが…。
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おそらくリリアーナの父親もこの近くにある部屋に連れてこられたに違いない。
…何処で失敗したのかしら…。
国王が亡くなったら自分の息子であるランベールを国王にして、憎いあの女とその息子に国王を殺した罪を着せて断罪するはずだったのに…。
そのために父親である公爵が動いていたはずだったのに、気が付けば自分達親子が断罪をされていた。
おまけに自分の息子であるランベールがやけに異母弟であるファビアンと仲が良さげなのが気になった。
…一体どういう事?
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それなのにリリアーナの耳に入ってきていた情報は現実とは違ったものだったようだ。
リリアーナはぐったりとソファーにより掛かるときつく目を閉じた。
…これはきっと悪い夢だわ…
次に目を開けたら違う世界が広がっているはず…
目を閉じたリリアーナの耳に微かに赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
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