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31 僕の実体
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第二王子からも協力をしてくれと言われたが、この国の事を何も知らない僕に出来る事があるのだろうか?
「協力、と言われましても僕は何をどうしたらいいのかさっぱりわかっていないんです。それにまだこの世の中の事もあまりわかっていません。何しろまだ生まれてから一年も経っていないんです」
人間で言うならばようやくハイハイが出来るようになったくらいの赤ん坊だ。
少し恥ずかしげに告白をすると、その場がしん、と静まり返ったのち、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
「ちょっと待て! シリル! まだ1歳にもなってないって!?」
「冗談だろう? いくら獣人の成長が早いと言っても1歳にもなってないのに成人の姿になれるだと!?」
「ありえない! お前! 俺達を担ごうったって、そうはいかないぞ!」
テオもエリクも他の獣人も僕の発言に驚きの声をあげている。
ファビアン様も驚愕の眼差しを僕に向けたまま、口を半開きにしている。
ちょっと間の抜けた顔になっているんだけど、敢えて指摘しない方がいいかな。
一向に騒ぎが収まらないことに業を煮やしたファビアン様がスッと片手を上げるとピタッと皆の話し声が止まる。
「皆、少し落ち着け」
ファビアン様の発言に皆一斉に居住まいを正して次の言葉を待った。
「シリル。君は本当に生まれてまだ一年も経っていないのか?」
改めてファビアン様に問われて僕は狐の姿のまま、コクリと頷いた。
「はい、本当です。それに一緒に生まれた兄達に比べて僕はかなり成長が遅かったんです。家族とはぐれてから僕を拾ってくれたロジェの元で魔法を使っているうちに尻尾が増えて、体も大きさを変えられる事が出来るようになったんです」
僕の説明にまた皆がざわざわし始めた。
「狐の尻尾ってそんなに簡単に増えるものなのか?」
「体の大きさを変えられるって、俺達にはそんな事出来ないぞ」
などと言っているが、僕にも良くわかっていない事なので、説明のしようがない。
「静まれ!」
今度はファビアン様の後ろに控えていた従者が一喝した。
再び静寂に包まれた室内をファビアン様がぐるりと見回した。
「狐の獣人については良くわかっていない事が多いのでここであれこれ語るのは止めておこう。ましてやシリルは幻と言われている銀狐だからな。こういうものである、と受け入れたほうが賢明だ」
ファビアン様は一旦言葉を切ると僕を見てニコリと微笑んだ。
「では、シリル。君の実際の人型はどのくらいの大きさか見せてもらえるかな?」
えっ、ここで?
とは思ったが、特に断る理由もないので僕は人間の姿になる事にした。
モヤが僕を包み込み、狐から人間の姿へと変えていく。
椅子の上にちょこんと座った赤ん坊の姿の僕に「わっ」と室内が湧く。
「これはまた、えらく可愛いじゃないか」
「この場に女性がいなくて良かったよ。シリルに夢中になって話し合いどころじゃなくなってるぞ」
「俺達でもちょっとヤバいぞ」
そんな言葉が聞こえて来たので、これ以上赤ん坊の姿でいるのは不味いと思い、僕は成人の姿へと変えた。
途端にがっかりしたような声がどこからか聞こえてきた。
心なしかファビアン様も残念そうな顔に見えるのは気のせいだと思いたい。
気を取り直したようにファビアン様が僕を真っ直ぐに見つめてきた。
その目には何かを決意したような覚悟が透けて見えた。
「シリル。やはり君に協力を頼みたい。どうか我々に力を貸してくれないか? 協力をしてくれたら君の家族の情報を集めると約束しよう」
ファビアン様のお願いにテオ達も一斉に僕を見つめてくる。
そんなに期待に満ちた目を向けられると、断る事も出来ない。
それに家族についての情報を集めてくれるとなれば、一人で闇雲に探し回るよりはよほど効率がいいだろう。
「…わかりました。僕に何が出来るのかはわかりませんが、よろしくお願いします」
ファビアン様に向かってお辞儀をして頭を上げると、キラキラスマイルを向けられた。
流石は王族。
破壊力が半端ない。
こうして何をやらされるのかわからないまま、僕はファビアン様達に協力する事になった。
「協力、と言われましても僕は何をどうしたらいいのかさっぱりわかっていないんです。それにまだこの世の中の事もあまりわかっていません。何しろまだ生まれてから一年も経っていないんです」
人間で言うならばようやくハイハイが出来るようになったくらいの赤ん坊だ。
少し恥ずかしげに告白をすると、その場がしん、と静まり返ったのち、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。
「ちょっと待て! シリル! まだ1歳にもなってないって!?」
「冗談だろう? いくら獣人の成長が早いと言っても1歳にもなってないのに成人の姿になれるだと!?」
「ありえない! お前! 俺達を担ごうったって、そうはいかないぞ!」
テオもエリクも他の獣人も僕の発言に驚きの声をあげている。
ファビアン様も驚愕の眼差しを僕に向けたまま、口を半開きにしている。
ちょっと間の抜けた顔になっているんだけど、敢えて指摘しない方がいいかな。
一向に騒ぎが収まらないことに業を煮やしたファビアン様がスッと片手を上げるとピタッと皆の話し声が止まる。
「皆、少し落ち着け」
ファビアン様の発言に皆一斉に居住まいを正して次の言葉を待った。
「シリル。君は本当に生まれてまだ一年も経っていないのか?」
改めてファビアン様に問われて僕は狐の姿のまま、コクリと頷いた。
「はい、本当です。それに一緒に生まれた兄達に比べて僕はかなり成長が遅かったんです。家族とはぐれてから僕を拾ってくれたロジェの元で魔法を使っているうちに尻尾が増えて、体も大きさを変えられる事が出来るようになったんです」
僕の説明にまた皆がざわざわし始めた。
「狐の尻尾ってそんなに簡単に増えるものなのか?」
「体の大きさを変えられるって、俺達にはそんな事出来ないぞ」
などと言っているが、僕にも良くわかっていない事なので、説明のしようがない。
「静まれ!」
今度はファビアン様の後ろに控えていた従者が一喝した。
再び静寂に包まれた室内をファビアン様がぐるりと見回した。
「狐の獣人については良くわかっていない事が多いのでここであれこれ語るのは止めておこう。ましてやシリルは幻と言われている銀狐だからな。こういうものである、と受け入れたほうが賢明だ」
ファビアン様は一旦言葉を切ると僕を見てニコリと微笑んだ。
「では、シリル。君の実際の人型はどのくらいの大きさか見せてもらえるかな?」
えっ、ここで?
とは思ったが、特に断る理由もないので僕は人間の姿になる事にした。
モヤが僕を包み込み、狐から人間の姿へと変えていく。
椅子の上にちょこんと座った赤ん坊の姿の僕に「わっ」と室内が湧く。
「これはまた、えらく可愛いじゃないか」
「この場に女性がいなくて良かったよ。シリルに夢中になって話し合いどころじゃなくなってるぞ」
「俺達でもちょっとヤバいぞ」
そんな言葉が聞こえて来たので、これ以上赤ん坊の姿でいるのは不味いと思い、僕は成人の姿へと変えた。
途端にがっかりしたような声がどこからか聞こえてきた。
心なしかファビアン様も残念そうな顔に見えるのは気のせいだと思いたい。
気を取り直したようにファビアン様が僕を真っ直ぐに見つめてきた。
その目には何かを決意したような覚悟が透けて見えた。
「シリル。やはり君に協力を頼みたい。どうか我々に力を貸してくれないか? 協力をしてくれたら君の家族の情報を集めると約束しよう」
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それに家族についての情報を集めてくれるとなれば、一人で闇雲に探し回るよりはよほど効率がいいだろう。
「…わかりました。僕に何が出来るのかはわかりませんが、よろしくお願いします」
ファビアン様に向かってお辞儀をして頭を上げると、キラキラスマイルを向けられた。
流石は王族。
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こうして何をやらされるのかわからないまま、僕はファビアン様達に協力する事になった。
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