17 / 113
17 体の変化
しおりを挟む
まさか、と思って尻尾を動かしてみるが、やはり4本とも僕の尻尾に間違いはなかった。
「今のヒールで尻尾が増えたのか?」
ロジェが僕に近寄ってきてまじまじと尻尾を眺めている。
「…どうやら、そうみたいだね」
僕は尻尾を振るのを止めて自分の体を見回したが、体自体の大きさはあまり変わっていないように見える。
「シリル。人型の方は成長していないの?」
リーズに問われて僕は人型になってみたが、こちらも変化がないようだ。
「あまり大きさは変わっていないみたいだね。尻尾が増えただけなのかな?」
リーズは少し腰を折って僕と目線を合わせてくれる。
「ちぇ~。しぇめてリーズくりゃいのおっきさになればいいにょににゃ」
まだ少し舌足らずな口調でそう呟いた途端、僕の体が変化した。
気が付けばリーズと同じ大きさになっていたのだ。
「うわっ! シリル?」
屈んていたリーズが仰け反るように後ろに下がる。
ロジェも僕の急激な変化に驚いている。
「シリル? 何でそんなに急に大きくなったんだ?」
僕は正面にいるリーズに目を移すが、視線はほぼ同じ高さになっていた。
これは一体どういう事なんだろう。
まさか、自分の体の大きさを自由に変えられるようになったのか?
もしそうならば、試してみたほうがいいだろう。
【ロジェと同じ位の大きさになれ】
心の中で願うと体が大きくなっていくのが感じられ、気が付けばロジェと同じ位の少年の姿になっていた。
「「…シリル!」」
ロジェとリーズが同時に叫ぶ。
僕はニコリと二人に笑いかけた。
「どうやら人型の体の大きさを変えられるようになったみたいだよ」
二人が呆けているのを尻目に僕は自分の体をあちこち動かしてみた。
急激な変化で動かしにくい所があるかと思ったがそんな事はなかった。
屈伸運動をしたりその場で飛び跳ねたり、辺りを走ってみたりしたが特に何も問題はないようだ。
ひと通り体の動きを確認してからロジェ達の前に戻ると、ようやく二人とも落ち着きを取り戻したようだ。
「本当にシリル…だよね」
「まさか本当に魔法で体の大きさが変えられるようになるなんて…」
ロジェ自身も僕がここまで魔法で体を変化させる事が出来るようになるとは思っていなかったようだ。
僕はもう一つの事を試してみた。
つまり、狐の姿も変化させる事が出来るかどうか、をだ。
僕は人間の姿から狐の姿へと変化させ、更にその大きさをも変えてみた。
子狐から大人の狐へ、更にそれ以上の大きさの狐へと体を変化させる。
ロジェとリーズは僕のその様子を言葉も無く見つめていた。
「見て見て! 狐の姿も自由に大きさを変えられるようになったよ」
まさかこんなにも早く、自分の体を変化させる事が出来るようになるなんて思ってもみなかった。
僕は有頂天になって体を変化させていたが、そんな高揚した気分はリーズの一言で一気にしぼんだ。
「…そっか。体を変化させる事が出来るようになったから、シリルはもう家を出てシリルのお父さん達の所に帰っちゃうって事だよね」
リーズの声は震えていた。
僕は子狐の姿に戻ってリーズの足元に駆け寄る。
リーズは僕を抱き上げるとこらえきれずに泣き出した。
「シリルが大きくなる事が出来て、お父さん達の所に帰れるようになったのは嬉しいけど、…だけど、シリルと離れたくない!」
そんなふうにリーズに泣かれると僕自身もどうしたらいいかわからなくなる。
僕自身も自分の体を成長させることに夢中で、その後がどうなるか、なんて考えてもいなかった。
僕の成長はすなわちリーズ達との別れを意味する事なのだ。
泣きじゃくるリーズの涙をペロリと舌で舐めてやる。
ロジェがリーズの頭を優しくポンポンと叩いた。
「リーズ、そんなに泣いてシリルを困らせるんじゃない。親元に帰れるようになったことを喜んであげないとな」
ロジェはリーズの頭から手を離すと今度は僕の頭を撫でてきた。
「シリル。体を変化させる事が出来るようになってすぐに親元に帰りたいかもしれないが、今のお前の魔法の使い方じゃ、許可は出せないな」
僕が「ん?」と首を傾げると、ロジェは向こうに転がっている黒焦げになったアルミラージの死骸を指差した。
「せっかくの獲物を毎回こんなふうに使い物にならなくさせるのは冒険者として我慢ならんからな。しばらくは家で修業をさせるぞ。シリル、文句はないな」
僕はチラリとアルミラージの残骸に目をやるとロジェの申し出を受け入れた。
「そうだね。まだ魔法の扱いも完璧じゃないからもうしばらくロジェ達のお家で厄介になるよ」
僕が了承するとリーズが嬉しそうに僕の体に頬擦りしてくる。
「嬉しい! シリル。もう少しだけ一緒にいてね」
僕だって今すぐにリーズ達と離れたくはないから、ロジェの申し出は有り難かった。
だけどロジェの修業ってスパルタ教育じゃないよね。
「今のヒールで尻尾が増えたのか?」
ロジェが僕に近寄ってきてまじまじと尻尾を眺めている。
「…どうやら、そうみたいだね」
僕は尻尾を振るのを止めて自分の体を見回したが、体自体の大きさはあまり変わっていないように見える。
「シリル。人型の方は成長していないの?」
リーズに問われて僕は人型になってみたが、こちらも変化がないようだ。
「あまり大きさは変わっていないみたいだね。尻尾が増えただけなのかな?」
リーズは少し腰を折って僕と目線を合わせてくれる。
「ちぇ~。しぇめてリーズくりゃいのおっきさになればいいにょににゃ」
まだ少し舌足らずな口調でそう呟いた途端、僕の体が変化した。
気が付けばリーズと同じ大きさになっていたのだ。
「うわっ! シリル?」
屈んていたリーズが仰け反るように後ろに下がる。
ロジェも僕の急激な変化に驚いている。
「シリル? 何でそんなに急に大きくなったんだ?」
僕は正面にいるリーズに目を移すが、視線はほぼ同じ高さになっていた。
これは一体どういう事なんだろう。
まさか、自分の体の大きさを自由に変えられるようになったのか?
もしそうならば、試してみたほうがいいだろう。
【ロジェと同じ位の大きさになれ】
心の中で願うと体が大きくなっていくのが感じられ、気が付けばロジェと同じ位の少年の姿になっていた。
「「…シリル!」」
ロジェとリーズが同時に叫ぶ。
僕はニコリと二人に笑いかけた。
「どうやら人型の体の大きさを変えられるようになったみたいだよ」
二人が呆けているのを尻目に僕は自分の体をあちこち動かしてみた。
急激な変化で動かしにくい所があるかと思ったがそんな事はなかった。
屈伸運動をしたりその場で飛び跳ねたり、辺りを走ってみたりしたが特に何も問題はないようだ。
ひと通り体の動きを確認してからロジェ達の前に戻ると、ようやく二人とも落ち着きを取り戻したようだ。
「本当にシリル…だよね」
「まさか本当に魔法で体の大きさが変えられるようになるなんて…」
ロジェ自身も僕がここまで魔法で体を変化させる事が出来るようになるとは思っていなかったようだ。
僕はもう一つの事を試してみた。
つまり、狐の姿も変化させる事が出来るかどうか、をだ。
僕は人間の姿から狐の姿へと変化させ、更にその大きさをも変えてみた。
子狐から大人の狐へ、更にそれ以上の大きさの狐へと体を変化させる。
ロジェとリーズは僕のその様子を言葉も無く見つめていた。
「見て見て! 狐の姿も自由に大きさを変えられるようになったよ」
まさかこんなにも早く、自分の体を変化させる事が出来るようになるなんて思ってもみなかった。
僕は有頂天になって体を変化させていたが、そんな高揚した気分はリーズの一言で一気にしぼんだ。
「…そっか。体を変化させる事が出来るようになったから、シリルはもう家を出てシリルのお父さん達の所に帰っちゃうって事だよね」
リーズの声は震えていた。
僕は子狐の姿に戻ってリーズの足元に駆け寄る。
リーズは僕を抱き上げるとこらえきれずに泣き出した。
「シリルが大きくなる事が出来て、お父さん達の所に帰れるようになったのは嬉しいけど、…だけど、シリルと離れたくない!」
そんなふうにリーズに泣かれると僕自身もどうしたらいいかわからなくなる。
僕自身も自分の体を成長させることに夢中で、その後がどうなるか、なんて考えてもいなかった。
僕の成長はすなわちリーズ達との別れを意味する事なのだ。
泣きじゃくるリーズの涙をペロリと舌で舐めてやる。
ロジェがリーズの頭を優しくポンポンと叩いた。
「リーズ、そんなに泣いてシリルを困らせるんじゃない。親元に帰れるようになったことを喜んであげないとな」
ロジェはリーズの頭から手を離すと今度は僕の頭を撫でてきた。
「シリル。体を変化させる事が出来るようになってすぐに親元に帰りたいかもしれないが、今のお前の魔法の使い方じゃ、許可は出せないな」
僕が「ん?」と首を傾げると、ロジェは向こうに転がっている黒焦げになったアルミラージの死骸を指差した。
「せっかくの獲物を毎回こんなふうに使い物にならなくさせるのは冒険者として我慢ならんからな。しばらくは家で修業をさせるぞ。シリル、文句はないな」
僕はチラリとアルミラージの残骸に目をやるとロジェの申し出を受け入れた。
「そうだね。まだ魔法の扱いも完璧じゃないからもうしばらくロジェ達のお家で厄介になるよ」
僕が了承するとリーズが嬉しそうに僕の体に頬擦りしてくる。
「嬉しい! シリル。もう少しだけ一緒にいてね」
僕だって今すぐにリーズ達と離れたくはないから、ロジェの申し出は有り難かった。
だけどロジェの修業ってスパルタ教育じゃないよね。
10
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。
烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。
その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。
「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。
あなたの思うように過ごしていいのよ」
真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。
その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
農民レベル99 天候と大地を操り世界最強
九頭七尾
ファンタジー
【農民】という天職を授かり、憧れていた戦士の夢を断念した少年ルイス。
仕方なく故郷の村で農業に従事し、十二年が経ったある日のこと、新しく就任したばかりの代官が訊ねてきて――
「何だあの巨大な大根は? 一体どうやって収穫するのだ?」
「片手で抜けますけど? こんな感じで」
「200キロはありそうな大根を片手で……?」
「小麦の方も収穫しますね。えい」
「一帯の小麦が一瞬で刈り取られた!? 何をしたのだ!?」
「手刀で真空波を起こしただけですけど?」
その代官の勧めで、ルイスは冒険者になることに。
日々の農作業(?)を通し、最強の戦士に成長していた彼は、最年長ルーキーとして次々と規格外の戦果を挙げていくのだった。
「これは投擲用大根だ」
「「「投擲用大根???」」」
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる