15 / 113
15 扉の開閉
しおりを挟む
僕は自分の尻尾が3本になった事に呆然とした。
いくら何でも早すぎない?
だけど、これで体も成長しているのだろうか?
そう考えた所で、この部屋に入った目的を思い出して、パメラに向き直った。
「そうだ! パメラ、さっきの悲鳴は何だったの? 何があったの?」
不審者や魔獣に襲われたような形跡もないし、パメラも床に座り込んでいるが、怪我をしているような様子もない。
一体何があったのだろうか?
パメラはちょっと気まずそうに僕から目を反らした。
「あー、あれね。…実は掃除をしようと窓を開けたらカエルが私の顔に飛びついてきたので、思わず悲鳴をあげて振り払ったの…。それですぐに外に逃げて行ったんだけどね…。私、カエルは見る分にはいいんだけど、触ったり触られたりするのは嫌なのよ…」
振り払ってすぐに窓を締めたけど、そのまま座り込んでしまったと言うわけか。
カエルが苦手って言うのは分からなくもないな。
僕だって好きか? と聞かれても答えに詰まるしね。
「私の事よりシリルの尻尾が増えたことが気になるわ。一体どんな魔法を使ったの?」
パメラに聞かれて先程自分が使った魔法を思い返す。
「パメラの悲鳴が聞こえたから、こっちに来ようとしたけど扉が閉まってたんだ。狐の姿じゃ開けられないし、人間の姿になっても手が届かないから、ドアノブをじっと見てたら扉が開いたんだよ」
まさかそんな事で尻尾が増えるとは思ってもみなかったしね。
「凄いわ。手を使わずに扉を開けられたって事なのね」
パメラは手放しで喜んでいるが、こんなに立て続けに尻尾が増えると、この先どこまで尻尾が増えるのか不安になる。
尻尾は増えたけど、人型になった時の姿も成長しているのだろうか?
「シリル。ちょっと人型になってみて。そちらも成長しているのか確認してみたいわ」
パメラに促されて僕は人型になってみた。
狐の状態ではわからなかったけれど、変化をしながら大きくなっているのを感じていた。
「まぁあ。昨日の今日でこんな大きくなるとは思ってもみなかったわ」
パメラが僕を抱っこしながら感慨深そうに告げる。
「ぼく、おっちくなっちゃ?」
おお、喋れるぞ。
つい言葉を発してしまったが、舌足らずな部分はあるけれど、ちゃんと喋れるようになっていた。
「フフフ、そうね。大体2歳位の大きさかしらね。リーズが小さかった頃を思い出すわ」
そう言いながらパメラは僕のほっぺたにキスをしてきた。
これをセクハラと取るか、役得と取るか…。
僕は勿論、役得と捉えているけどね。
「しょんにゃに、おっちくにゃっちゃにょ?」
確かにパメラに抱き上げられている視線が昨日よりも高くなっているようだ。
「ええ、そうよ。だけどたった一日でこんなに大きくなっているなんて驚きだわ」
パメラはそう言うけれど一番驚いているのは僕の方だ。
たった一日で1歳も歳を取るなんて、普通じゃないよね。
…獣人だから普通じゃないのは当たり前か。
この調子で魔法を使っていったら2週間後には16歳、この世界での成人になれるって事かな。
そんなに上手くいくかどうかはわからないが、やってみなければわからないな。
とりあえずはこの舌足らずな喋り方をどうにかしたいんだが、やはり成長するしか道はないかな。
僕は狐の姿に戻るとパメラの腕からスルリと床に降りた。
「あっ、シリル~。どうして狐に戻っちゃうの? もっと可愛い姿を堪能したかったのにぃ!」
いやいや、流石に成人した記憶があるのに2歳児になって抱っこされてるなんて、恥ずかしくていたたまれないよ。
「だって、外から誰が見てるかわからないんでしょ? 不用意に人型になんてなれないよ」
僕はパメラの後ろにある窓を前足で指し示した。
窓は閉じられているけれど、誰もこちらを見ていないとは限らないからね。
パメラは残念がりつつも、僕の言葉に異論は唱えなかった。
寝室の掃除を再開するパメラをその場に残して僕はリビングへと戻った。
自分の寝床に丸くなり寝ようと思って、ふと、開けっ放しの扉が目に入った。
開けられたって事は閉める事も出来るという事だよね。
僕は寝床に寝そべったまま、ドアノブをじっと見つめた。
ゆっくりと扉が動き出し、パタン、と扉が閉まる。
成功だ!
これで今日はクリーン魔法と扉の開け閉めの魔法を使えるようになったわけだ。
ちょっと眠たくなって来たな。
僕は3本になった自分の尻尾を抱きしめて眠りについたが、その至福の時間もリーズが学校から帰って来るまでのほんのひと時だった。
いくら何でも早すぎない?
だけど、これで体も成長しているのだろうか?
そう考えた所で、この部屋に入った目的を思い出して、パメラに向き直った。
「そうだ! パメラ、さっきの悲鳴は何だったの? 何があったの?」
不審者や魔獣に襲われたような形跡もないし、パメラも床に座り込んでいるが、怪我をしているような様子もない。
一体何があったのだろうか?
パメラはちょっと気まずそうに僕から目を反らした。
「あー、あれね。…実は掃除をしようと窓を開けたらカエルが私の顔に飛びついてきたので、思わず悲鳴をあげて振り払ったの…。それですぐに外に逃げて行ったんだけどね…。私、カエルは見る分にはいいんだけど、触ったり触られたりするのは嫌なのよ…」
振り払ってすぐに窓を締めたけど、そのまま座り込んでしまったと言うわけか。
カエルが苦手って言うのは分からなくもないな。
僕だって好きか? と聞かれても答えに詰まるしね。
「私の事よりシリルの尻尾が増えたことが気になるわ。一体どんな魔法を使ったの?」
パメラに聞かれて先程自分が使った魔法を思い返す。
「パメラの悲鳴が聞こえたから、こっちに来ようとしたけど扉が閉まってたんだ。狐の姿じゃ開けられないし、人間の姿になっても手が届かないから、ドアノブをじっと見てたら扉が開いたんだよ」
まさかそんな事で尻尾が増えるとは思ってもみなかったしね。
「凄いわ。手を使わずに扉を開けられたって事なのね」
パメラは手放しで喜んでいるが、こんなに立て続けに尻尾が増えると、この先どこまで尻尾が増えるのか不安になる。
尻尾は増えたけど、人型になった時の姿も成長しているのだろうか?
「シリル。ちょっと人型になってみて。そちらも成長しているのか確認してみたいわ」
パメラに促されて僕は人型になってみた。
狐の状態ではわからなかったけれど、変化をしながら大きくなっているのを感じていた。
「まぁあ。昨日の今日でこんな大きくなるとは思ってもみなかったわ」
パメラが僕を抱っこしながら感慨深そうに告げる。
「ぼく、おっちくなっちゃ?」
おお、喋れるぞ。
つい言葉を発してしまったが、舌足らずな部分はあるけれど、ちゃんと喋れるようになっていた。
「フフフ、そうね。大体2歳位の大きさかしらね。リーズが小さかった頃を思い出すわ」
そう言いながらパメラは僕のほっぺたにキスをしてきた。
これをセクハラと取るか、役得と取るか…。
僕は勿論、役得と捉えているけどね。
「しょんにゃに、おっちくにゃっちゃにょ?」
確かにパメラに抱き上げられている視線が昨日よりも高くなっているようだ。
「ええ、そうよ。だけどたった一日でこんなに大きくなっているなんて驚きだわ」
パメラはそう言うけれど一番驚いているのは僕の方だ。
たった一日で1歳も歳を取るなんて、普通じゃないよね。
…獣人だから普通じゃないのは当たり前か。
この調子で魔法を使っていったら2週間後には16歳、この世界での成人になれるって事かな。
そんなに上手くいくかどうかはわからないが、やってみなければわからないな。
とりあえずはこの舌足らずな喋り方をどうにかしたいんだが、やはり成長するしか道はないかな。
僕は狐の姿に戻るとパメラの腕からスルリと床に降りた。
「あっ、シリル~。どうして狐に戻っちゃうの? もっと可愛い姿を堪能したかったのにぃ!」
いやいや、流石に成人した記憶があるのに2歳児になって抱っこされてるなんて、恥ずかしくていたたまれないよ。
「だって、外から誰が見てるかわからないんでしょ? 不用意に人型になんてなれないよ」
僕はパメラの後ろにある窓を前足で指し示した。
窓は閉じられているけれど、誰もこちらを見ていないとは限らないからね。
パメラは残念がりつつも、僕の言葉に異論は唱えなかった。
寝室の掃除を再開するパメラをその場に残して僕はリビングへと戻った。
自分の寝床に丸くなり寝ようと思って、ふと、開けっ放しの扉が目に入った。
開けられたって事は閉める事も出来るという事だよね。
僕は寝床に寝そべったまま、ドアノブをじっと見つめた。
ゆっくりと扉が動き出し、パタン、と扉が閉まる。
成功だ!
これで今日はクリーン魔法と扉の開け閉めの魔法を使えるようになったわけだ。
ちょっと眠たくなって来たな。
僕は3本になった自分の尻尾を抱きしめて眠りについたが、その至福の時間もリーズが学校から帰って来るまでのほんのひと時だった。
6
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。
烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。
その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。
「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。
あなたの思うように過ごしていいのよ」
真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。
その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
完結【清】ご都合主義で生きてます。-空間を切り取り、思ったものを創り出す。これで異世界は楽勝です-
ジェルミ
ファンタジー
社畜の村野玲奈(むらの れな)は23歳で過労死をした。
第二の人生を女神代行に誘われ異世界に転移する。
スキルは剣豪、大魔導士を提案されるが、転移してみないと役に立つのか分からない。
迷っていると想像したことを実現できる『創生魔法』を提案される。
空間を切り取り収納できる『空間魔法』。
思ったものを創り出すことができ『創生魔法』。
少女は冒険者として覇道を歩むのか、それとも魔道具師としてひっそり生きるのか?
『創生魔法』で便利な物を創り富を得ていく少女の物語。
物語はまったり、のんびりと進みます。
※カクヨム様にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる