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赤ん坊の姿になった僕に父さん達は大慌てだった。
「何だ? どうしてこんな姿になるんだ?」
「髪の毛も真っ白だよ」
「待って! 耳と尻尾がない!」
父さん達が騒然とする中で母さんだけは反応が違った。
「きゃあ、なんて可愛いの! 私こんなちっちゃい赤ちゃんを抱っこして見たかったのよ」
そう言って僕を抱き上げると聖母のような微笑みで僕を見つめた。
母さんにこんな風に抱っこされるのは嬉しいけれど、どうして兄さん達みたいな姿になれないのか不思議でならない。
「あー、あー」
喋ろうとして口を開いたが、普通の人間の赤ちゃんのような言葉しか出てこない。
その事が一層母さんを嬉しがらせていた。
「あら、お腹が空いたの? お乳をあげましょうか?」
そう言って胸をはだけようとしたので慌てて狐の姿に戻った。
狐の姿の母さんからお乳をもらうのはやぶさかではないが、人間の姿の母さんからお乳を貰うのは、前世の記憶がある僕としては流石に耐えられない。
僕が狐の姿に戻った事で母さんは「あら、違うの?」とボタンを外すのを止めた。
明らかにがっかりした口調だったので、そういうシチュエーションもやってみたかったんだろう。
「それにしてもどうしてシリルだけこんなに成長に違いがあるんだ?」
父さんがひょいと僕を抱き上げてまじまじと僕の顔を覗き込んだ。
父さんの心配そうな金色の瞳に見つめられて、僕は申し訳なさで目がウルウルとしてくる。
「父さん、ごめんね。僕だけこんなにちっちゃくて…」
ポロリと目から涙が溢れた途端、父さんはギュッと僕を抱きしめた。
「シリルが謝る事はない。謝るのは僕達の方だ。お前だけをこんな風に産んでしまって申し訳ない」
父さんの苦しそうな謝罪に僕は首を大きく振った。
「父さん達は悪くない! 僕が…、僕が…」
それ以上言葉を続けられずに言い淀んでいると、今度は母さんが僕を抱き上げた。
「二人とも、もうやめなさい。誰が悪いわけじゃないわ。シリルが人間と同じ成長しかしないのにはきっと何か理由があるのよ」
「シリルがどんな大きさだって僕達の弟に変わりはないんだからさ。そんなの気にすんなよ」
「シリルの事をいじめる奴がいたら俺達がやっつけてやるからな」
アーリン兄さんもビリー兄さんも僕に負担をかけさせまいと、あっけらかんとした口調で告げた。
兄さん達の言葉が嬉しくて僕は兄さん達に抱っこを求めた。
「わっ、凄い。モフモフだ。父さん達が僕達を抱っこしたがるのがわかる気がする」
「肉球もプニプニで柔らかい。…って、シリル。お前の尻尾じゃ叩いてもあんまり痛くないぞ」
ビリー兄さんがあまりにも肉球を触りまくるから思わず尻尾ではたいてみたけれど、あまり効果はなかったようだ。
兄さん達は人型になっても喋れるけれど、僕は赤ちゃんになってしまうので喋れなくなってしまう。
時々人型になる練習をする時以外は狐の姿で過ごすように父さん達に言われた。
僕だって動けなくなる赤ちゃんよりは狐の姿で駆け回れる方が有り難い。
兄さん達は一月で一歳、僕は人間と同じ成長度合いのようだ。
それはやはりこの白、いや銀色の体と関係があるのかな?
父さん達の話では何処かに狐の獣人の里があって、そこには様々な伝承が伝えられているらしい。
今、僕達が住んでいる獣人の里にはもう一組の狐の獣人夫婦が住んでいる。
この人達にはまだ子供はいないけれど、時々訪れては僕達を可愛がってくれた。
その日も夫婦で我が家を訪れて、僕達の成長に目を細めていた。
「子狐の姿も可愛いけど、獣人の子供の姿も可愛いわ。私達も早く子供が欲しいわね」
「それにしてもシリルが成長しないのはどうしてだろうな」
「それに人型になっても耳と尻尾がないのも不思議ね。白狐伝説に何かなかったかしら?」
その獣人夫婦も思い出そうとしていたが、結局思い出せないままだった。
それよりも重大な話があったからだ。
「行商に来ている人間が話してくれたが、どうやらまたこの里を襲おうとしている連中がいるそうだ」
「王様もそれを防ごうとしてくださっているらしいけど、怪しいだけで捕まえる事は出来ないみたいよ」
獣人夫婦の喚起に父さん達は顔を引き締めて言った。
「この里には結界が張ってあるからおいそれとは近付けないはずだ。それに万が一襲って来たとしても熊や狼の獣人がいるし、俺達も魔法で蹴散らす事が出来る」
「それでも用心に越した事はないわ。我が家には可愛い子供達も生まれたんだし…」
警戒を怠らないようにしようと言う事で、獣人夫婦は帰って行った。
僕達は不安になって父さん達に尋ねた。
「父さん。この里を襲おうとする連中って誰?」
「僕達、殺されちゃうの?」
父さん達は僕達を安心させるように代わる代わる抱きしめてくれた。
「他所の国では獣人を奴隷や愛玩動物として扱う所があるんだ。金儲けを企む連中がその国に売りつける為にこの里を襲いに来るんだ」
「だけど、大丈夫よ。この里には強い獣人がいるから、前回もその獣人達に散々痛い目にあわされたから、迂闊には近寄って来ないわ。万が一来たときは私達も応戦するからあなた達は家に閉じこもっていれば大丈夫よ」
そんな風に話してくれていたのに、まさか本当に襲撃されるとは思いもしなかった。
そして、それで僕が囮になって崖から落ちて家族と離れ離れになるなんて考えもしなかった。
父さん、母さん、兄さん達。
ごめんね。元気でね。
「何だ? どうしてこんな姿になるんだ?」
「髪の毛も真っ白だよ」
「待って! 耳と尻尾がない!」
父さん達が騒然とする中で母さんだけは反応が違った。
「きゃあ、なんて可愛いの! 私こんなちっちゃい赤ちゃんを抱っこして見たかったのよ」
そう言って僕を抱き上げると聖母のような微笑みで僕を見つめた。
母さんにこんな風に抱っこされるのは嬉しいけれど、どうして兄さん達みたいな姿になれないのか不思議でならない。
「あー、あー」
喋ろうとして口を開いたが、普通の人間の赤ちゃんのような言葉しか出てこない。
その事が一層母さんを嬉しがらせていた。
「あら、お腹が空いたの? お乳をあげましょうか?」
そう言って胸をはだけようとしたので慌てて狐の姿に戻った。
狐の姿の母さんからお乳をもらうのはやぶさかではないが、人間の姿の母さんからお乳を貰うのは、前世の記憶がある僕としては流石に耐えられない。
僕が狐の姿に戻った事で母さんは「あら、違うの?」とボタンを外すのを止めた。
明らかにがっかりした口調だったので、そういうシチュエーションもやってみたかったんだろう。
「それにしてもどうしてシリルだけこんなに成長に違いがあるんだ?」
父さんがひょいと僕を抱き上げてまじまじと僕の顔を覗き込んだ。
父さんの心配そうな金色の瞳に見つめられて、僕は申し訳なさで目がウルウルとしてくる。
「父さん、ごめんね。僕だけこんなにちっちゃくて…」
ポロリと目から涙が溢れた途端、父さんはギュッと僕を抱きしめた。
「シリルが謝る事はない。謝るのは僕達の方だ。お前だけをこんな風に産んでしまって申し訳ない」
父さんの苦しそうな謝罪に僕は首を大きく振った。
「父さん達は悪くない! 僕が…、僕が…」
それ以上言葉を続けられずに言い淀んでいると、今度は母さんが僕を抱き上げた。
「二人とも、もうやめなさい。誰が悪いわけじゃないわ。シリルが人間と同じ成長しかしないのにはきっと何か理由があるのよ」
「シリルがどんな大きさだって僕達の弟に変わりはないんだからさ。そんなの気にすんなよ」
「シリルの事をいじめる奴がいたら俺達がやっつけてやるからな」
アーリン兄さんもビリー兄さんも僕に負担をかけさせまいと、あっけらかんとした口調で告げた。
兄さん達の言葉が嬉しくて僕は兄さん達に抱っこを求めた。
「わっ、凄い。モフモフだ。父さん達が僕達を抱っこしたがるのがわかる気がする」
「肉球もプニプニで柔らかい。…って、シリル。お前の尻尾じゃ叩いてもあんまり痛くないぞ」
ビリー兄さんがあまりにも肉球を触りまくるから思わず尻尾ではたいてみたけれど、あまり効果はなかったようだ。
兄さん達は人型になっても喋れるけれど、僕は赤ちゃんになってしまうので喋れなくなってしまう。
時々人型になる練習をする時以外は狐の姿で過ごすように父さん達に言われた。
僕だって動けなくなる赤ちゃんよりは狐の姿で駆け回れる方が有り難い。
兄さん達は一月で一歳、僕は人間と同じ成長度合いのようだ。
それはやはりこの白、いや銀色の体と関係があるのかな?
父さん達の話では何処かに狐の獣人の里があって、そこには様々な伝承が伝えられているらしい。
今、僕達が住んでいる獣人の里にはもう一組の狐の獣人夫婦が住んでいる。
この人達にはまだ子供はいないけれど、時々訪れては僕達を可愛がってくれた。
その日も夫婦で我が家を訪れて、僕達の成長に目を細めていた。
「子狐の姿も可愛いけど、獣人の子供の姿も可愛いわ。私達も早く子供が欲しいわね」
「それにしてもシリルが成長しないのはどうしてだろうな」
「それに人型になっても耳と尻尾がないのも不思議ね。白狐伝説に何かなかったかしら?」
その獣人夫婦も思い出そうとしていたが、結局思い出せないままだった。
それよりも重大な話があったからだ。
「行商に来ている人間が話してくれたが、どうやらまたこの里を襲おうとしている連中がいるそうだ」
「王様もそれを防ごうとしてくださっているらしいけど、怪しいだけで捕まえる事は出来ないみたいよ」
獣人夫婦の喚起に父さん達は顔を引き締めて言った。
「この里には結界が張ってあるからおいそれとは近付けないはずだ。それに万が一襲って来たとしても熊や狼の獣人がいるし、俺達も魔法で蹴散らす事が出来る」
「それでも用心に越した事はないわ。我が家には可愛い子供達も生まれたんだし…」
警戒を怠らないようにしようと言う事で、獣人夫婦は帰って行った。
僕達は不安になって父さん達に尋ねた。
「父さん。この里を襲おうとする連中って誰?」
「僕達、殺されちゃうの?」
父さん達は僕達を安心させるように代わる代わる抱きしめてくれた。
「他所の国では獣人を奴隷や愛玩動物として扱う所があるんだ。金儲けを企む連中がその国に売りつける為にこの里を襲いに来るんだ」
「だけど、大丈夫よ。この里には強い獣人がいるから、前回もその獣人達に散々痛い目にあわされたから、迂闊には近寄って来ないわ。万が一来たときは私達も応戦するからあなた達は家に閉じこもっていれば大丈夫よ」
そんな風に話してくれていたのに、まさか本当に襲撃されるとは思いもしなかった。
そして、それで僕が囮になって崖から落ちて家族と離れ離れになるなんて考えもしなかった。
父さん、母さん、兄さん達。
ごめんね。元気でね。
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