【完結】世界で一番不幸な令嬢の行く末は…?

伽羅

文字の大きさ
40 / 72

40 目覚め

しおりを挟む
「…ん…」 

 デボラは誰かの身じろぎで意識を覚醒させた。

 しかし、思うように身体が動かない。

 目を開けるとそこは石造りの部屋の中だった。

「何、ここ?」

 その時点でデボラは自分の両手両足が拘束された状態で母親のパメラに寄りかかっていた事に気が付いた。

 その向こうには兄のミゲルが同じように拘束され、パメラに寄りかかっているのが見えた。

 固い木で出来た長椅子に拘束されたまま座らされているのに、未だに目を覚まさない。

「お母様、お兄様、起きて!」

 身体を揺するように動かして二人に呼びかけると、ようやく「…う…」とうめき声をあげた。

「な、何だこれ…」

 ミゲルがパメラから身体を起こして拘束を解こうともがいている。

「何なの? どういう事? …ダリオは?」

 パメラも戸惑った声を出したが、すぐにダリオが居ない事に気付いた。

「分からないわ。それにしてもこれはどういう事? アベラルド様があたし達をこんな目に合わせたの?」

 デボラは先ほどまでの事を思い返していた。

 確かにあれはアベラルド王太子からの手紙だった。

 それとも誰かがアベラルド王太子の名を語って自分達を誘い出したのだろうか?

 デボラはふと壁に目をやって、そこに鉄格子で出来た扉がはまっている事に気付いた。

「…一体、ここは何処なの?」

 口に出しても誰もその疑問に答える者はいない。

 目を覚ましてどのくらいの時間がたっただろうか?

 固い木の長椅子に馴染めず、何度も動ける範囲で座り直しを繰り返していた時、ようやく鉄格子の向こうに人影が現れた。

「アベラルド様?」

 学校で遠巻きに顔を見かけた事のあるアベラルド王太子が、騎士に鉄格子を開けさせて部屋の中に入ってきた。

 その後ろにはいつも一緒にいたレオナルドが当然のようにひっついている。

 デボラは初めて間近で見るアベラルド王太子に胸が高鳴った。

(まさか、これほどの美形だったなんて…。カルロスなんて目じゃないわ)

 学校に通っている時は近寄る事すら出来なかったアベラルド王太子が今目の前にいる。

(どうしてこういう状況になったのかはわからないけれど、あたしのこの身体でアベラルド様を落としてやるわ) 

 カルロスもこの身体で骨抜きにしてやったのだから、きっとアベラルド王太子も自分の身体に夢中になるに違いない。

 デボラはそう信じて疑わなかった。

「アベラルド様ぁ、お願いですからこの縛めを解いていただけませんかぁ?」

 デボラはウルウルと目を潤ませて上目遣いでアベラルド王太子を見つめ、胸を強調するように押し出した。

 どんな男でもデボラのはち切れんばかりの胸に釘付けになったというのに、アベラルド王太子は違った。

 まるで汚い物でも見るかのような目で、デボラ達を見下ろしている。

「縛めを解けだと? 一体誰に向かってそんな口をきいているんだ?」

 普通の声量ながら凄みのある声で切り捨てられ、デボラは身を縮こませる。

「…あ… あの…。…申し訳ございません」

 それだけを絞り出すのがやっとだった。

 チラリと横を見やるとパメラもミゲルも長椅子の上に背筋を伸ばして座っている。

 それを見てデボラも慌てて身体を真っ直ぐに伸ばしたが、徐々にまた元のような姿勢になる。

 アベラルド王太子はぐるりと三人を見回すとパメラに向かって口を開いた。

「さて、君達はどうしてここに連れられてきたのかわかるか?」

 アベラルド王太子の質問にパメラが必死に訴えかける。

「アベラルド様。私達はこのような仕打ちを受ける覚えはありません。一体どうしてこんな事になったのでしょう?」

 パメラの訴えにアベラルド王太子は片方の眉を吊り上げた。

「覚えがない? 随分と都合のいい記憶力だな。それじゃ私の方からお前達が行った事を報告してやろう」

 アベラルド王太子はレオナルドから渡された書類に目を落とした。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...