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27 謝罪
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ふと気付けば、ビアンカの横に立っていたはずのイリスが床に座り込んで頭を床に擦り付けている。
ビアンカと同じようにアベラルド王太子もイリスの格好に驚いていた。
「イリス、一体どうした? 何の真似だ? 頭を上げないか」
アベラルド王太子に言われてもイリスはそのままの格好で話し始める。
「申し訳ございません。ガブリエラをメイドに採用したのは私です。まさか、アベラルド様の客人に対してあのような態度を取るとは思ってもみませんでした。すべては彼女を採用した私の責任です。いかような罰でもお受けいたします」
どうやらイリスはガブリエラを採用した事への責任を感じているようだ。
(ガブリエラさんが私を襲うなんて、誰も想像しなかったと思うわ。私だってガブリエラさんがこの離宮でメイドをやっているなんて知らなかったし、ましてやデボラの婚約パーティーで、ある事ない事吹き込まれているとは思わないわ。悪い偶然が重なっただけで決してイリスさんのせいではないと思うのだけれど…)
ビアンカはイリスを擁護しようと思ったが、アベラルド王太子がまだ何も言わないのに口出しをするべきではないと判断して成り行きを見守る事にした。
万が一、アベラルド王太子がイリスに責任を取らせようとした場合、それを止めれば良いと思ったのだ。
レオナルドも何も言わずにただアベラルド王太子の言動を見守っている。
アベラルド王太子は土下座をしたままのイリスに近付き、彼女の前に膝をついた。
「イリス、顔を上げておくれ。さっきの事はただのアクシデントだ。誰も他人の心の中なんてわからないからね」
アベラルド王太子に肩を軽く叩かれ、イリスはようやく顔を上げる。
「…アベラルド様…」
イリスを立ち上がらせながら、自身も立ち上がったアベラルド王太子は、ニコリと笑いかける。
「ビアンカ嬢の支度が中断したままだろう? 続きを頼むよ」
「はい、今すぐに!」
イリスは目を赤くしたまま頷くと、ビアンカに向かって手を差し出した。
「ビアンカ様、ドレッサーの前にお座りください。アベラルド様、女性の身支度を見るものではありません。お部屋の外でお待ちくださいませ」
イリスに注意され、アベラルド王太子はおどけた調子で軽く肩を竦めると、レオナルドと共に部屋を出ていった。
ビアンカはイリスに手を引かれ、ドレッサーの前に座り直す。
「ビアンカ様、申し訳ございませんでした。ガブリエラがこの仕事に身が入っていないのは薄々感じてはいたのですが…。まさか、こんな事をしでかすとは…。私がもっと早くに解雇していれば…」
ビアンカの髪を整えながら、イリスが謝罪する。
「もう謝らないでください。私に怪我はなかったですし、そもそもここにガブリエラさんがいて、私を襲うなんて誰にも分からなかった事です」
ビアンカが必死にイリスの謝罪を止めようと言葉をつくしていると、鏡に映るイリスはビアンカに向かって柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます。ビアンカ様。…さぁ、お支度が整いましたよ」
ビアンカは鏡に映る自分の姿を見て、顔をほころばせた。
祖父や母親が生きていた頃、メイドに髪を整えてもらっていた時のように、髪飾りも付けられていた。
(学校に通っている間は華美な装いは禁止されていたし、学校を卒業してからは、自分で軽くまとめるだけだったから、こんな装いは久しぶりだわ)
ビアンカの華やいだ顔を見て、イリスは満足そうに微笑むと、扉の向こうに向かって声をかけた。
「アベラルド様。ビアンカ様の準備が整いました」
それを待っていたかのように扉が開いて、足早にアベラルド王太子が入ってくる。
鏡に映るビアンカを見て、目を見張ったまま黙り込んでしまったアベラルド王太子に、ビアンカは少々不安になる。
(何も言われないなんて、何処か変な所でもあるのかしら?)
ビアンカが振り返ってアベラルド王太子を見つめると、アベラルド王太子はわざとらしく咳払いをしてビアンカに手を差し出す。
「それではビアンカ嬢、あちらにお茶を用意させていますので参りましょう」
ビアンカはコクリと頷くとアベラルド王太子の手に掴まり立ち上がった。
ビアンカと同じようにアベラルド王太子もイリスの格好に驚いていた。
「イリス、一体どうした? 何の真似だ? 頭を上げないか」
アベラルド王太子に言われてもイリスはそのままの格好で話し始める。
「申し訳ございません。ガブリエラをメイドに採用したのは私です。まさか、アベラルド様の客人に対してあのような態度を取るとは思ってもみませんでした。すべては彼女を採用した私の責任です。いかような罰でもお受けいたします」
どうやらイリスはガブリエラを採用した事への責任を感じているようだ。
(ガブリエラさんが私を襲うなんて、誰も想像しなかったと思うわ。私だってガブリエラさんがこの離宮でメイドをやっているなんて知らなかったし、ましてやデボラの婚約パーティーで、ある事ない事吹き込まれているとは思わないわ。悪い偶然が重なっただけで決してイリスさんのせいではないと思うのだけれど…)
ビアンカはイリスを擁護しようと思ったが、アベラルド王太子がまだ何も言わないのに口出しをするべきではないと判断して成り行きを見守る事にした。
万が一、アベラルド王太子がイリスに責任を取らせようとした場合、それを止めれば良いと思ったのだ。
レオナルドも何も言わずにただアベラルド王太子の言動を見守っている。
アベラルド王太子は土下座をしたままのイリスに近付き、彼女の前に膝をついた。
「イリス、顔を上げておくれ。さっきの事はただのアクシデントだ。誰も他人の心の中なんてわからないからね」
アベラルド王太子に肩を軽く叩かれ、イリスはようやく顔を上げる。
「…アベラルド様…」
イリスを立ち上がらせながら、自身も立ち上がったアベラルド王太子は、ニコリと笑いかける。
「ビアンカ嬢の支度が中断したままだろう? 続きを頼むよ」
「はい、今すぐに!」
イリスは目を赤くしたまま頷くと、ビアンカに向かって手を差し出した。
「ビアンカ様、ドレッサーの前にお座りください。アベラルド様、女性の身支度を見るものではありません。お部屋の外でお待ちくださいませ」
イリスに注意され、アベラルド王太子はおどけた調子で軽く肩を竦めると、レオナルドと共に部屋を出ていった。
ビアンカはイリスに手を引かれ、ドレッサーの前に座り直す。
「ビアンカ様、申し訳ございませんでした。ガブリエラがこの仕事に身が入っていないのは薄々感じてはいたのですが…。まさか、こんな事をしでかすとは…。私がもっと早くに解雇していれば…」
ビアンカの髪を整えながら、イリスが謝罪する。
「もう謝らないでください。私に怪我はなかったですし、そもそもここにガブリエラさんがいて、私を襲うなんて誰にも分からなかった事です」
ビアンカが必死にイリスの謝罪を止めようと言葉をつくしていると、鏡に映るイリスはビアンカに向かって柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます。ビアンカ様。…さぁ、お支度が整いましたよ」
ビアンカは鏡に映る自分の姿を見て、顔をほころばせた。
祖父や母親が生きていた頃、メイドに髪を整えてもらっていた時のように、髪飾りも付けられていた。
(学校に通っている間は華美な装いは禁止されていたし、学校を卒業してからは、自分で軽くまとめるだけだったから、こんな装いは久しぶりだわ)
ビアンカの華やいだ顔を見て、イリスは満足そうに微笑むと、扉の向こうに向かって声をかけた。
「アベラルド様。ビアンカ様の準備が整いました」
それを待っていたかのように扉が開いて、足早にアベラルド王太子が入ってくる。
鏡に映るビアンカを見て、目を見張ったまま黙り込んでしまったアベラルド王太子に、ビアンカは少々不安になる。
(何も言われないなんて、何処か変な所でもあるのかしら?)
ビアンカが振り返ってアベラルド王太子を見つめると、アベラルド王太子はわざとらしく咳払いをしてビアンカに手を差し出す。
「それではビアンカ嬢、あちらにお茶を用意させていますので参りましょう」
ビアンカはコクリと頷くとアベラルド王太子の手に掴まり立ち上がった。
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