48 / 57
48 高等科のコース選択
しおりを挟む
マーリンの襲撃を撃退した後は、何事もなく日常が過ぎていった。
僕は16歳になり、学校も初等科を終え中等科も最終学年となっていた。
そろそろ高等科でのコースを決める時期になった頃の事だった。
授業を終えていつものようにクリスと馬車に乗って帰宅をしているとき、不意にクリスに質問された。
「そういえばジェレミーは高等科はどのコースに進むつもりなんだ?」
高等科は卒業後を見据えた上で、専門コースを選択することになっている。
「高等科のコース? …騎士コースにしようかと思ってるよ」
まだ両親には打ち明けていないが、僕は密かに騎士コースを選択しようと思っていた。
しかし、僕の答えはクリスには意外だったらしく目をパチクリとしている。
「騎士コース? てっきり父親の跡を継いで宰相を目指しているとばかり思ってたけど、違うのか」
そんな当たり前の事のように言うけれど、とても僕に父上のような腹黒宰相になれるとは思えない。
「ムリムリ。僕には父上のような駆け引きなんて出来ないよ。それにクリスだって知っているだろう? 僕が孤児院で育っていた事」
そう言ってクリスに同意を求めると、クリスも納得したような顔をした。
本当はそれ以外にも理由がある。
一般庶民として生きた記憶がある僕としては、貴族の矜持というものが薄い。
それらしく見せる事は出来るけど、やはり何処か無理をしていると感じてしまう。
せっかく転生したのだから、自分らしく生きていきたいと思うのだ。
「まぁ、わからなくもないけどね。…それはもう宰相には伝えたのかい?」
クリスに問われて僕はかぶりを振った。
「いや、まだ伝えていない。今日辺り話をしようと思っているけどね」
そんな話をしているうちに馬車は王宮へと門を潜っていく。
今日はクリスと一緒に王妃様と母上と昼食を取ることになっている。
母上はともかく王妃様と顔を合わせるのは久しぶりの事だ。
クリス自身、夕食はともかく昼食を一緒に食べるのは少ないらしい。
「ジェレミー、久しぶりね。しばらく見ないうちに一段とアルフレッドに似てきたみたいね」
クスクスと笑う王妃様にそう声をかけられて僕は苦笑を返すしかなかった。
自分では自覚はないが、そういう声を聞くことが多くなってきた。
身長もほぼ同じくらいになってきたし、並んで立つと遠目にはどちらがどちらかわからないくらいらしい。
まあ、最大の褒め言葉として受け取っておこう。
昼食を終えて僕と母上は揃って馬車に乗り、公爵家へと戻っていく。
馬車の中で向かいに座った母上が僕にこう告げた。
「今日の夕食の後でアルフレッド様があなたに話があるそうよ」
それに返事をする前に僕の懐からアーサーが飛び出して来た。
「きっと高等科のコースの話だな。お前が騎士になりたいって言ったらアルフレッドはどんな顔をするかな」
アーサーの爆弾発言に母上はおろか僕も衝撃を受けた。
まだクリス以外誰にも言ってないのに何でここで言っちゃうかな。
「なんですって!? ジェレミー、本当なの?」
母上がオロオロとしたように僕を問い詰める。
どうやら母上は僕が父上の跡を継いで宰相になると思っていたようだ。
「あ、いえ、その…」
言葉に詰まって僕はふよふよと浮いているアーサーを睨みつけるが、アーサーはそんな僕の事などどこ吹く風だ。
アーサーが僕達の先祖なのに敬われないのは多分こういう所だろうな。
母上は「わたくしがランスロットに騙されたばっかりに…」と泣き出すし…。
グィネヴィアが出て来て母上に慰めの声をかけているけど、なかなか泣き止んでくれなかった。
流石に公爵家に着いた時には、身だしなみを整えていつもの母上に戻っていたけれどね。
屋敷に入るとこれ以上母上に追求されないうちにと、僕は自室に戻った。
部屋に入るといつもの定位置にシヴァが寝そべっている。
「シヴァ、ただいま~」
ボスン、とシヴァのモフモフに顔を埋めてしばらく堪能する。
いつもの行動にシヴァも慣れたもので、このくらいではピクリとも動かない。
いくら平和だからってだらけ過ぎじゃない?
シヴァに寄りかかったまま、夕食後の父上との話し合いについて考えていると、ぐらりと頭が浮き上がった。
「ジェレミー、いい加減にどいてくれ」
どうやらシヴァが枕にされてるのに嫌気が指したようだ。
僕の頭の下から体を抜くと、大きな伸びをした。こうしてると普通の犬か猫みたいだな。
床に寝っ転がる趣味はないので僕も体を起こして立ち上がる。
「ジェレミー、暇なんだろう? 打ち合いをしよう」
アーサーがまた懐から這い出てきて、僕に剣の稽古を申し出てくる。
僕は庭に続くテラスの窓から外に出るとグィネヴィアを手に取った。
グィネヴィアはすぐにペーパーナイフから普通の剣へと大きさを変える。
その僕に対峙するのは、やはり普通の剣の大きさになったアーサーだ。
アーサーとグィネヴィアがいるからこうして一人でも剣の稽古が出来るけど、その分二人の(?)魔力消費は大きい。
つまり二人に魔力を注ぐ僕の魔力消費も大きくなると言うことだ。
そうして二人を相手に汗を流していると、間もなく夕食の時間が迫ってきた。
僕は16歳になり、学校も初等科を終え中等科も最終学年となっていた。
そろそろ高等科でのコースを決める時期になった頃の事だった。
授業を終えていつものようにクリスと馬車に乗って帰宅をしているとき、不意にクリスに質問された。
「そういえばジェレミーは高等科はどのコースに進むつもりなんだ?」
高等科は卒業後を見据えた上で、専門コースを選択することになっている。
「高等科のコース? …騎士コースにしようかと思ってるよ」
まだ両親には打ち明けていないが、僕は密かに騎士コースを選択しようと思っていた。
しかし、僕の答えはクリスには意外だったらしく目をパチクリとしている。
「騎士コース? てっきり父親の跡を継いで宰相を目指しているとばかり思ってたけど、違うのか」
そんな当たり前の事のように言うけれど、とても僕に父上のような腹黒宰相になれるとは思えない。
「ムリムリ。僕には父上のような駆け引きなんて出来ないよ。それにクリスだって知っているだろう? 僕が孤児院で育っていた事」
そう言ってクリスに同意を求めると、クリスも納得したような顔をした。
本当はそれ以外にも理由がある。
一般庶民として生きた記憶がある僕としては、貴族の矜持というものが薄い。
それらしく見せる事は出来るけど、やはり何処か無理をしていると感じてしまう。
せっかく転生したのだから、自分らしく生きていきたいと思うのだ。
「まぁ、わからなくもないけどね。…それはもう宰相には伝えたのかい?」
クリスに問われて僕はかぶりを振った。
「いや、まだ伝えていない。今日辺り話をしようと思っているけどね」
そんな話をしているうちに馬車は王宮へと門を潜っていく。
今日はクリスと一緒に王妃様と母上と昼食を取ることになっている。
母上はともかく王妃様と顔を合わせるのは久しぶりの事だ。
クリス自身、夕食はともかく昼食を一緒に食べるのは少ないらしい。
「ジェレミー、久しぶりね。しばらく見ないうちに一段とアルフレッドに似てきたみたいね」
クスクスと笑う王妃様にそう声をかけられて僕は苦笑を返すしかなかった。
自分では自覚はないが、そういう声を聞くことが多くなってきた。
身長もほぼ同じくらいになってきたし、並んで立つと遠目にはどちらがどちらかわからないくらいらしい。
まあ、最大の褒め言葉として受け取っておこう。
昼食を終えて僕と母上は揃って馬車に乗り、公爵家へと戻っていく。
馬車の中で向かいに座った母上が僕にこう告げた。
「今日の夕食の後でアルフレッド様があなたに話があるそうよ」
それに返事をする前に僕の懐からアーサーが飛び出して来た。
「きっと高等科のコースの話だな。お前が騎士になりたいって言ったらアルフレッドはどんな顔をするかな」
アーサーの爆弾発言に母上はおろか僕も衝撃を受けた。
まだクリス以外誰にも言ってないのに何でここで言っちゃうかな。
「なんですって!? ジェレミー、本当なの?」
母上がオロオロとしたように僕を問い詰める。
どうやら母上は僕が父上の跡を継いで宰相になると思っていたようだ。
「あ、いえ、その…」
言葉に詰まって僕はふよふよと浮いているアーサーを睨みつけるが、アーサーはそんな僕の事などどこ吹く風だ。
アーサーが僕達の先祖なのに敬われないのは多分こういう所だろうな。
母上は「わたくしがランスロットに騙されたばっかりに…」と泣き出すし…。
グィネヴィアが出て来て母上に慰めの声をかけているけど、なかなか泣き止んでくれなかった。
流石に公爵家に着いた時には、身だしなみを整えていつもの母上に戻っていたけれどね。
屋敷に入るとこれ以上母上に追求されないうちにと、僕は自室に戻った。
部屋に入るといつもの定位置にシヴァが寝そべっている。
「シヴァ、ただいま~」
ボスン、とシヴァのモフモフに顔を埋めてしばらく堪能する。
いつもの行動にシヴァも慣れたもので、このくらいではピクリとも動かない。
いくら平和だからってだらけ過ぎじゃない?
シヴァに寄りかかったまま、夕食後の父上との話し合いについて考えていると、ぐらりと頭が浮き上がった。
「ジェレミー、いい加減にどいてくれ」
どうやらシヴァが枕にされてるのに嫌気が指したようだ。
僕の頭の下から体を抜くと、大きな伸びをした。こうしてると普通の犬か猫みたいだな。
床に寝っ転がる趣味はないので僕も体を起こして立ち上がる。
「ジェレミー、暇なんだろう? 打ち合いをしよう」
アーサーがまた懐から這い出てきて、僕に剣の稽古を申し出てくる。
僕は庭に続くテラスの窓から外に出るとグィネヴィアを手に取った。
グィネヴィアはすぐにペーパーナイフから普通の剣へと大きさを変える。
その僕に対峙するのは、やはり普通の剣の大きさになったアーサーだ。
アーサーとグィネヴィアがいるからこうして一人でも剣の稽古が出来るけど、その分二人の(?)魔力消費は大きい。
つまり二人に魔力を注ぐ僕の魔力消費も大きくなると言うことだ。
そうして二人を相手に汗を流していると、間もなく夕食の時間が迫ってきた。
2
お気に入りに追加
1,364
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる