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46 聖剣の出現
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カキィィーン!
父上は魔石にグィネヴィアを突き刺そうとしたが、魔石は硬質な音をたててグィネヴィアを弾き返す。
「グィネヴィアでは駄目か。ジェレミー! アーサーを魔石に突き立てろ!」
父上が忌々しそうに魔石を見やった後、僕に向かって叫んだ。
僕はアーサーを構え直して魔石の上からアーサーを突き立てた。
キィィィン!
先程と同じような硬質な音をたててアーサーの切っ先が魔石に弾かれる。
その様子を見ていたマーリンは高らかな笑い声を上げる。
「アハハッ! そんな物で私をどうにか出来るとでも思ってたの? …ねぇ、アーサー。私と一緒に人間の姿に戻りましょうよ」
マーリンの幻影がアーサーへと手を伸ばす。
すると手の中のアーサーがマーリンへと吸い寄せられるような感覚を覚えた。
アーサーを奪われないように必死に握りしめる。
シヴァはマーリンの魔石を破壊するには魔力の籠もった剣が必要だと言った。
だけどアーサーやグィネヴィアでは破壊出来なかった。
他にも魔力の籠もった剣が何処かにあるのだろうか。
そう考えて僕は前世に伝わっているアーサー王伝説を思い返していた。
アーサー王伝説の中に剣に関する話があったはずだ。
アーサー王の剣の名前は…。
「…エクスカリバー…」
その名前を口にした途端、アーサーとグィネヴィアが眩い光に包まれた。
「な、何事だ?」
父上が驚きの声を上げると同時に光に包まれたグィネヴィアがアーサーへと向かって飛んできた。
そしてアーサーの柄の魔石へと吸い込まれていった。
「グィネヴィア? アーサー?」
グィネヴィアを吸い込んだ魔石が更に光輝くとアーサーの剣が徐々に形を変えていった。
そして僕の手には全く違う一振りの剣が握られていた。
「…これが、エクスカリバー?」
先程までの剣とは魔力のほとばしりが全く違う。
そのエクスカリバーを目にしたマーリンは、驚愕の表情を見せた。
「…何なの? アーサーじゃないわ。一体どうしたの。…やめて! それを私に向けないで…」
僕はエクスカリバーを握りしめて、マーリンの魔石へと向き直る。
「お願い、ジェレミー。許して。もう何もしないと誓うわ。だから魔石を壊したりしないで」
先程までの態度とは違って、弱々しい声で僕に許しを請う。
「ジェレミー。マーリンの言葉に耳を貸すんじゃない。ここで仕留めないとまた襲ってくるぞ」
シヴァが僕に早くとどめを刺すように促してくる。
父上とお祖父様の方を見ると、二人とも僕に向かって頷いた。
僕は決心を固めてマーリンの魔石へと狙いを定める。
「やめて、やめて! アーサー、お願い。ジェレミーを止めて。…ねぇ、アーサー…」
マーリンの声が徐々に涙声になっていく。
マーリンの幻覚にふと目をやると、泣き腫らした目をして僕に命乞いをしている。
その姿に決意が鈍る。
エクスカリバーを握りしめている手が少し緩みかけたとき、アーサーの叱責が頭の中に響いた。
「ジェレミー! 躊躇うな! 今だ!」
僕はブルリと頭を振るとマーリンの魔石に向かって思い切りエクスカリバーを突き立てた。
「ギャアアア!」
マーリンの断末魔と共に魔石が粉々に砕け散る。
砕け散った魔石からドロリと真っ赤な血が流れ出てくる。
魔石から浮かび上がっているマーリンの幻影の胸からも真っ赤な血が滴り落ちている。
マーリンは片方の手で胸を抑え、もう片方の手をエクスカリバーへと伸ばす。
「アーサー、アーサー…」
両方の目から涙をポロポロと零しながら必死にアーサーの名を呼んでいる。
アーサーの代わりに僕がマーリンに手を伸ばそうとした、その時。
エクスカリバーからスッとアーサーが姿を現した。
アーサーの姿を目にした途端、マーリンの顔に喜びの表情が浮かぶ。
「…アーサー。…愛してるわ…」
マーリンが必死に手を伸ばすと、そこにアーサーの手が差し出される。
ブルブルと震える手を必死に伸ばして、マーリンはアーサーに触れようとする。
しかし、マーリンの幻影は徐々に小さな霧状になって消えようとしている。
そしてようやくマーリンの指先がアーサーに触れた瞬間、マーリンの幻影はかき消えていった。
「…マーリン。…済まない」
アーサーは悲痛な顔でマーリンが触れた指先をじっと見つめた。
マーリンの幻影が消えた事で僕はようやくすべてが終わったのだと思った。
安心した途端に持っているエクスカリバーの重みが更に増したような感覚に陥る。
エクスカリバーを持ったまま、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。
「どうした、ジェレミー。大丈夫か?」
父上とお祖父様が慌てて僕に駆け寄って来る。
どうやら緊張が緩んだせいで腰を抜かしてしまったみたいだ。
全く持って恥ずかしい。
「大丈夫です。ちょっと気が緩んだみたいです」
そんな僕を見てアーサーがふん、と鼻を鳴らす。
「全くだらしがないな。もっと鍛えないと駄目だ!」
…女にだらしないアーサーには言われたくないな。
ところでアーサーとグィネヴィアは元に戻る事が出来るんだろうか?
父上は魔石にグィネヴィアを突き刺そうとしたが、魔石は硬質な音をたててグィネヴィアを弾き返す。
「グィネヴィアでは駄目か。ジェレミー! アーサーを魔石に突き立てろ!」
父上が忌々しそうに魔石を見やった後、僕に向かって叫んだ。
僕はアーサーを構え直して魔石の上からアーサーを突き立てた。
キィィィン!
先程と同じような硬質な音をたててアーサーの切っ先が魔石に弾かれる。
その様子を見ていたマーリンは高らかな笑い声を上げる。
「アハハッ! そんな物で私をどうにか出来るとでも思ってたの? …ねぇ、アーサー。私と一緒に人間の姿に戻りましょうよ」
マーリンの幻影がアーサーへと手を伸ばす。
すると手の中のアーサーがマーリンへと吸い寄せられるような感覚を覚えた。
アーサーを奪われないように必死に握りしめる。
シヴァはマーリンの魔石を破壊するには魔力の籠もった剣が必要だと言った。
だけどアーサーやグィネヴィアでは破壊出来なかった。
他にも魔力の籠もった剣が何処かにあるのだろうか。
そう考えて僕は前世に伝わっているアーサー王伝説を思い返していた。
アーサー王伝説の中に剣に関する話があったはずだ。
アーサー王の剣の名前は…。
「…エクスカリバー…」
その名前を口にした途端、アーサーとグィネヴィアが眩い光に包まれた。
「な、何事だ?」
父上が驚きの声を上げると同時に光に包まれたグィネヴィアがアーサーへと向かって飛んできた。
そしてアーサーの柄の魔石へと吸い込まれていった。
「グィネヴィア? アーサー?」
グィネヴィアを吸い込んだ魔石が更に光輝くとアーサーの剣が徐々に形を変えていった。
そして僕の手には全く違う一振りの剣が握られていた。
「…これが、エクスカリバー?」
先程までの剣とは魔力のほとばしりが全く違う。
そのエクスカリバーを目にしたマーリンは、驚愕の表情を見せた。
「…何なの? アーサーじゃないわ。一体どうしたの。…やめて! それを私に向けないで…」
僕はエクスカリバーを握りしめて、マーリンの魔石へと向き直る。
「お願い、ジェレミー。許して。もう何もしないと誓うわ。だから魔石を壊したりしないで」
先程までの態度とは違って、弱々しい声で僕に許しを請う。
「ジェレミー。マーリンの言葉に耳を貸すんじゃない。ここで仕留めないとまた襲ってくるぞ」
シヴァが僕に早くとどめを刺すように促してくる。
父上とお祖父様の方を見ると、二人とも僕に向かって頷いた。
僕は決心を固めてマーリンの魔石へと狙いを定める。
「やめて、やめて! アーサー、お願い。ジェレミーを止めて。…ねぇ、アーサー…」
マーリンの声が徐々に涙声になっていく。
マーリンの幻覚にふと目をやると、泣き腫らした目をして僕に命乞いをしている。
その姿に決意が鈍る。
エクスカリバーを握りしめている手が少し緩みかけたとき、アーサーの叱責が頭の中に響いた。
「ジェレミー! 躊躇うな! 今だ!」
僕はブルリと頭を振るとマーリンの魔石に向かって思い切りエクスカリバーを突き立てた。
「ギャアアア!」
マーリンの断末魔と共に魔石が粉々に砕け散る。
砕け散った魔石からドロリと真っ赤な血が流れ出てくる。
魔石から浮かび上がっているマーリンの幻影の胸からも真っ赤な血が滴り落ちている。
マーリンは片方の手で胸を抑え、もう片方の手をエクスカリバーへと伸ばす。
「アーサー、アーサー…」
両方の目から涙をポロポロと零しながら必死にアーサーの名を呼んでいる。
アーサーの代わりに僕がマーリンに手を伸ばそうとした、その時。
エクスカリバーからスッとアーサーが姿を現した。
アーサーの姿を目にした途端、マーリンの顔に喜びの表情が浮かぶ。
「…アーサー。…愛してるわ…」
マーリンが必死に手を伸ばすと、そこにアーサーの手が差し出される。
ブルブルと震える手を必死に伸ばして、マーリンはアーサーに触れようとする。
しかし、マーリンの幻影は徐々に小さな霧状になって消えようとしている。
そしてようやくマーリンの指先がアーサーに触れた瞬間、マーリンの幻影はかき消えていった。
「…マーリン。…済まない」
アーサーは悲痛な顔でマーリンが触れた指先をじっと見つめた。
マーリンの幻影が消えた事で僕はようやくすべてが終わったのだと思った。
安心した途端に持っているエクスカリバーの重みが更に増したような感覚に陥る。
エクスカリバーを持ったまま、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。
「どうした、ジェレミー。大丈夫か?」
父上とお祖父様が慌てて僕に駆け寄って来る。
どうやら緊張が緩んだせいで腰を抜かしてしまったみたいだ。
全く持って恥ずかしい。
「大丈夫です。ちょっと気が緩んだみたいです」
そんな僕を見てアーサーがふん、と鼻を鳴らす。
「全くだらしがないな。もっと鍛えないと駄目だ!」
…女にだらしないアーサーには言われたくないな。
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