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40 マーリンの狙い
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アーサーが話し終えると父上はフッと笑った。
僕はびっくりして父上の顔を見た。どうして今の話を聞いて笑うんだろう?
訝しげに父上の顔を見つめていると父上は凄みのある笑顔をアーサーに向けた。
ペーパーナイフから浮かび上がっているアーサーの幻影が父上の笑顔を見て引きつったような顔をした。
「…なるほど。昨日ジェレミーが感じた視線はそのマーリンという魔女のものなんだな。つまりアーサーの浮気のとばっちりを私達が受けていると言うわけか」
え? 浮気?
アーサーってば、マーリンという魔女と浮気をしていたって事?
父上に言われてアーサーはものすごく狼狽えている。
「…い、いや、私は浮気なんか…」
そんなアーサーにグィネヴィアが詰め寄る。
「ちょっと、アーサー! あなたやっぱりあの女と浮気をしていたの?」
グィネヴィアに詰め寄られてアーサーは後ろへ下がろうとするが、あまりペーパーナイフの本体からは離れられないようでただのけぞるだけになっている。
そんなアーサーに父上が追い打ちをかける。
「だってそうだろう。いくらマーリンが暴走してグィネヴィアを排除しようとしたとしても、それなりの出来事がないと女が勘違いをしたりしないだろう。つまりアーサーが何かしらマーリンに手を出したに決まっている」
父上に言われて僕もちょっと納得した。
ただ好きになっただけで相手の奥さんを殺そうなんて普通はしないよね。…する人もいるかもしれないけど…。
つまりアーサーとマーリンは何かしらの進展があったと考える方が自然だ。
「…い、一度だけ二人きりの時にいい雰囲気になってキスをした事がある。本当にそれだけだ!」
グィネヴィアに詰め寄られたアーサーが苦し紛れに白状した。
それを聞いたグィネヴィアはボロっと目から涙を零すとさめざめと泣き出した。
「…まさか、二人がそんな関係になっていたなんて…。アーサーを信じていたのに…」
グィネヴィアを慰めてあげたいけど、実体がないから僕達にはどうする事も出来ない。
ここはアーサーが責任を取ってどうにかするしかないだろう。
それよりも問題はその魔女マーリンへの対策をどうするかだ。
そこへベッドで寝ていたシヴァが起き出して僕の側にやってきた。
「シヴァ、起きたのか」
シヴァの頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細めた後で父上に向き直った。
「マーリンを封印した魔石を収めた祠は破壊されていたが、マーリンはまだ魔石に封印されたままだと思う。ただ、誰がその魔石を持っているのかがわからない。アルフレッドは心当たりはないか? 多分ランスロットに近い人物ではないかと思うのだが…」
あのアンデッド化したランスロットの姿を思い出して僕は身震いをした。
ランスロットがアンデッドになったのも魔女マーリンの力によるものなのだろうか。
直接僕達を襲って来ないところをみるとやはり魔石に封印されたままなのだろう。
それでも魔石から思念を出して他人を操る事が出来るなんてどれだけの魔力の持ち主なのだろうか。
実体が無いことを感謝すべきなのか、誰を操ってくるかわからない事に恐怖を感じればいいのか…。
シヴァの問い掛けに父上はしばらく考えていたが、やがて首を横に振った。
「ランスロットとそれほど親しいわけではなかったから、すぐには思いつかないな。祠があった場所はランスロットの親族の領地なのか? ならば身内から探ってみたほうがいいかもしれない」
父上はそう告げるといまだに揉めているアーサーとグィネヴィアに目をやった。
「アーサー、私はこれから王都に戻る。ジュリアとジェレミーを頼んだぞ」
ペシリとアーサーのペーパーナイフをはたくと足早に部屋を出ていった。
僕と母上はアーサー達やシヴァがいるけれど、父上は大丈夫なのだろうか。
魔女マーリンは父上を襲ったりしないのだろうか。
「アーサー。マーリンはどうして僕を狙っているのかな」
ようやくグィネヴィアを宥め終えたアーサーはペーパーナイフの体でスッと僕に近付いた。
「ジェレミーが死んだら私の血筋が途絶えるからだろう」
アーサーに言われて「ああ、そうか」と納得した。
公爵家には子供は一人しか生まれない。つまり父上にはもう僕が生まれたから、他に子供は生まれない。
だから僕がいなくなれば公爵家の血はそこで終わってしまうと言うことだ。
そこで僕はふと、とんでもない事を考えてしまった。
今の公爵家はアーサーとグィネヴィアの血をひいている。
それを排除してマーリンは自分とアーサーの血をひいた子供を作るつもりではないのかと。
そんな事を考えて僕はブルブルと頭を振った。
いくらなんでもそんな馬鹿な話はないだろう。
だってアーサーは既に実体はなくて幽体でしかない。
いくらマーリンが封印から解かれて生身の体を取り戻したとしても幽体と子供を作るなんてそんな馬鹿な話があるもんか。
僕はグィネヴィアに母上の所に行くように促して父上の帰りを待った。
僕はびっくりして父上の顔を見た。どうして今の話を聞いて笑うんだろう?
訝しげに父上の顔を見つめていると父上は凄みのある笑顔をアーサーに向けた。
ペーパーナイフから浮かび上がっているアーサーの幻影が父上の笑顔を見て引きつったような顔をした。
「…なるほど。昨日ジェレミーが感じた視線はそのマーリンという魔女のものなんだな。つまりアーサーの浮気のとばっちりを私達が受けていると言うわけか」
え? 浮気?
アーサーってば、マーリンという魔女と浮気をしていたって事?
父上に言われてアーサーはものすごく狼狽えている。
「…い、いや、私は浮気なんか…」
そんなアーサーにグィネヴィアが詰め寄る。
「ちょっと、アーサー! あなたやっぱりあの女と浮気をしていたの?」
グィネヴィアに詰め寄られてアーサーは後ろへ下がろうとするが、あまりペーパーナイフの本体からは離れられないようでただのけぞるだけになっている。
そんなアーサーに父上が追い打ちをかける。
「だってそうだろう。いくらマーリンが暴走してグィネヴィアを排除しようとしたとしても、それなりの出来事がないと女が勘違いをしたりしないだろう。つまりアーサーが何かしらマーリンに手を出したに決まっている」
父上に言われて僕もちょっと納得した。
ただ好きになっただけで相手の奥さんを殺そうなんて普通はしないよね。…する人もいるかもしれないけど…。
つまりアーサーとマーリンは何かしらの進展があったと考える方が自然だ。
「…い、一度だけ二人きりの時にいい雰囲気になってキスをした事がある。本当にそれだけだ!」
グィネヴィアに詰め寄られたアーサーが苦し紛れに白状した。
それを聞いたグィネヴィアはボロっと目から涙を零すとさめざめと泣き出した。
「…まさか、二人がそんな関係になっていたなんて…。アーサーを信じていたのに…」
グィネヴィアを慰めてあげたいけど、実体がないから僕達にはどうする事も出来ない。
ここはアーサーが責任を取ってどうにかするしかないだろう。
それよりも問題はその魔女マーリンへの対策をどうするかだ。
そこへベッドで寝ていたシヴァが起き出して僕の側にやってきた。
「シヴァ、起きたのか」
シヴァの頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細めた後で父上に向き直った。
「マーリンを封印した魔石を収めた祠は破壊されていたが、マーリンはまだ魔石に封印されたままだと思う。ただ、誰がその魔石を持っているのかがわからない。アルフレッドは心当たりはないか? 多分ランスロットに近い人物ではないかと思うのだが…」
あのアンデッド化したランスロットの姿を思い出して僕は身震いをした。
ランスロットがアンデッドになったのも魔女マーリンの力によるものなのだろうか。
直接僕達を襲って来ないところをみるとやはり魔石に封印されたままなのだろう。
それでも魔石から思念を出して他人を操る事が出来るなんてどれだけの魔力の持ち主なのだろうか。
実体が無いことを感謝すべきなのか、誰を操ってくるかわからない事に恐怖を感じればいいのか…。
シヴァの問い掛けに父上はしばらく考えていたが、やがて首を横に振った。
「ランスロットとそれほど親しいわけではなかったから、すぐには思いつかないな。祠があった場所はランスロットの親族の領地なのか? ならば身内から探ってみたほうがいいかもしれない」
父上はそう告げるといまだに揉めているアーサーとグィネヴィアに目をやった。
「アーサー、私はこれから王都に戻る。ジュリアとジェレミーを頼んだぞ」
ペシリとアーサーのペーパーナイフをはたくと足早に部屋を出ていった。
僕と母上はアーサー達やシヴァがいるけれど、父上は大丈夫なのだろうか。
魔女マーリンは父上を襲ったりしないのだろうか。
「アーサー。マーリンはどうして僕を狙っているのかな」
ようやくグィネヴィアを宥め終えたアーサーはペーパーナイフの体でスッと僕に近付いた。
「ジェレミーが死んだら私の血筋が途絶えるからだろう」
アーサーに言われて「ああ、そうか」と納得した。
公爵家には子供は一人しか生まれない。つまり父上にはもう僕が生まれたから、他に子供は生まれない。
だから僕がいなくなれば公爵家の血はそこで終わってしまうと言うことだ。
そこで僕はふと、とんでもない事を考えてしまった。
今の公爵家はアーサーとグィネヴィアの血をひいている。
それを排除してマーリンは自分とアーサーの血をひいた子供を作るつもりではないのかと。
そんな事を考えて僕はブルブルと頭を振った。
いくらなんでもそんな馬鹿な話はないだろう。
だってアーサーは既に実体はなくて幽体でしかない。
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